麻耶雄嵩のレビュー一覧

  • 名探偵 木更津悠也

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    ネタバレ

    【本格推理小説】なんて括弧書きがついてるし、作者は麻耶雄嵩だし、と警戒して読んだら案外普通の(?)本格ミステリだった。
    「白幽霊」が全ての作品に出てくる短編で、連作といえば連作なんだけれども、幽霊自体は直接事件とはそう関わらない、幽霊の正体自体は語られないというモチーフの扱い方に作者らしさを感じた。

    というか、やっぱり何より何より、木更津悠也と香月実朝の、名探偵と助手としては歪すぎる関係が読みどころなんだろうと思う。
    「さすが木更津は格好いいなあ」とか、いやいやいや…..ほんと怖すぎるわい。

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    2021年12月01日
  • あいにくの雨で

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    廃墟の塔で起きた密室殺人。被害者の身元がわかり、過去の事件との関連が疑われるなか、再び事件が起こる。被害者が友だちの父親だったことから、如月烏有の弟・烏兎は親しい友だちの獅子丸と共に、真相究明に乗り出す。
    これまた救いのない話。如月家の様子が垣間見える。
    真犯人の犯行動機がなんとも軽く、人に対する歪んだ執着も見えてつらい。
    単行本で読んだものの再読。

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    2021年11月05日
  • 貴族探偵対女探偵

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    最後に収録されている作品が、一番面白いかも。“貴族探偵”とは、安楽椅子探偵とは違って、まさに“貴族の”??探偵なんですが、本書収録の差後の作品は、まさかそういうオチになるとはねぇ。まぁ、作中伏線は張ってあって、初出の時は「?」と思ったんですが、最後に「あぁ、そういう意味だったのね?」と氷解。

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    2021年10月10日
  • 貴族探偵

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    安楽椅子探偵というものは、推理小説のジャンルに歴として存在していますが、事件の調査は言うに及ばず、推理までも使用人にさせてしまう探偵の事は、何といえばよいのでしょうね?貴族探偵というのでしょうか?

    そのシチュエーションを楽しむ作品で、事件そのものは、多少捻りや、練り方が足りない印象を受けます。ある意味、出オチと言っても過言ではないかもしれません。

    嵐の相葉雅紀主演でフジテレビ系にてドラマ化もされましたが、そちらは見ておりません。設定を見る限り、だいぶ原作とは異なっているっぽいですね。

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    2021年10月06日
  • メルカトルと美袋のための殺人

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    【収録作品】遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる/化粧した男の冒険/小人閑居為不善/水難/ノスタルジア/彷徨える美袋/シベリア急行西へ
     メルカトル鮎の邪悪さが際立つ短編集。
     ノベルスで読む。

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    2021年09月26日
  • あぶない叔父さん(新潮文庫)

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    解説より
    タイトルは古典探偵小説のアンクル・アブナーのもじりらしい

    鬱々とした霧に覆われた霧ヶ町で起こる事件の謎を叔父さんが解き明かしてくれる…がよくよく考えると叔父さんあぶないよ…

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    2021年07月31日
  • 友達以上探偵未満

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    書店で最初表紙を見た時はそのままスルーしかけたのですが、よくよく見ると著者は麻耶さんじゃないですか!というわけで迷わず購入して読んでみました。
    2人の女子高生を探偵役に据えた連作中編3本が収められています。『神様ゲーム』『隻眼の少女』みたいな強烈なインパクトを残す後味の悪いものを期待していたのですが、、、うーん、メインのトリックは割と凝っていると思うので本格ミステリ好きの人はそれなりに楽しめそうですが、それでもこのレベルのミステリだったら別に麻耶さんじゃなくても書ける人はいっぱいいるんじゃないかなあ。つまるところ普通のミステリ小説だったので、普通じゃないものを求めていた身からするとちょっと肩透かしを食ったような読後感だったのでした。
    物語の終盤に描かれている、探偵モノのミステリにおけるホームズ役とワトソン役に関する考察の部分も本作のポイントのひとつなのかなあと思われますが、個人的には本格の様式美的な部分には興味が無いので割とどうでもいいというか。小説なんだから無理に型にはめず基本自由に描けばいいんじゃない?って傍からは思えちゃうのですが、そこはやっぱり難しいんですかね。
    つらつら余計なことばかり書いてますが、筆致はライトで読み易いです。そういう意味ではライトノベルっぽい表紙にしているのは正解ですね。

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    2021年07月24日
  • 化石少女

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    別の本を読んでいる途中に気分転換で手を出しちゃった本。そのくらいの気軽さで大丈夫な本。麻耶さんだからなぁと身構えてると麻耶さんらしくハズしてくる本。

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    2021年06月04日
  • 貴族探偵 1

    購入済み

    友人に誘われて訪れた別荘で殺人事件に遭遇してしまいました。新米探偵高徳愛香の推理があまり役にたってませんでした。

    #ドキドキハラハラ

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    2021年05月20日
  • 友達以上探偵未満

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    ネタバレ

     3編目が一番面白かった。同時に一番つまらない部分ーーというか飽きる箇所がいくつかあった。でも、この話の中盤くらいから好みの話になって来て、更にこれを踏まえて読むと、前2編の味わいも結構変わって来ちゃうんじゃないか、とすら思う。面白い仕掛けだけど、こんな隠し球最後まで取っておくのは勿体ない。取っておいたからこその衝撃/得心があるとも言えるけど。
     基本的には、児童書を彷彿とさせる設定とやりとり。学生が、そんな動機で、殺すかよ(17文字)とは毎回思うし、ワイダニットはもう少ししっかり描いて欲しかった。ハウダニットも今ひとつ腑に落ちない。
     また特に前2編は、女子高生のやりとりのはずなのに、おじさん臭かったり、逆に無理して「らしさ」を出そうとしているように見えたりする箇所があったりする。
     探偵にとってワトソン役とは、他者とは、みたいな話をもっと中心に据えればもっと好きだったのかも知れない。語り手としてあおが登場しない2編を、3編目を読んだ状態で読み返すとどう感じるかは非常に気になるところ。いつか読み返したい。

     ただ、殺すという字をあてておいて、そうじゃないというのはずるくないかな、と思った。

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    2021年05月16日
  • 7人の名探偵

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    全編書き下ろしアンソロジー作品で、それぞれの作品に名探偵が登場します。

    中には、シリーズ物の人物が出てくる作品もあって、キャラや世界観が分かりづらい話も少し…

    30周年記念作品と言う事で、豪華な顔ぶれが揃っているので、ミステリー好きの人には嬉しい作品です。

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    2021年05月08日
  • 7人の名探偵

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    新本格ミステリ30周年記念のアンソロジー

    それぞれのシリーズを知らない読者にとっては、背景が判らない名探偵の出現は唐突だろうが、
    アンソロジーのための書下ろし故か、多分、
    甘めになっている感じがしたので、読み易かった。

    ラストを締めくくる綾辻氏の作品は名探偵モノといっていいか判別し難いが、
    実名の作家たちが登場する 新本格を愛する読者にとっては嬉しい一作だと思う。

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    2021年03月11日
  • 鴉

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    読みやすい文章。ただ、全体的に引っ掛かりが弱い印象で、細部の詰めも気になった。今時はこういうのが好まれるんだろうか?それなりに面白かったです。

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    2021年02月06日
  • 化石少女

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    主人公にイライラし、事件が解決しないことにスッキリしませんが、最後にそんな気持ちも少しだけ解消されました。でも、なんかモヤモヤします。

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    2021年01月22日
  • 貴族探偵 1

    購入済み

    探偵

    ひうらさとる先生の探偵ものです。女探偵がキュート。ところどころになぜか貴族探偵と女性との絡みがでてきて不思議でした。

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    2020年12月22日
  • 鴉

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    ザミステリーです。
    世界観、文調ともに、
    凝っていて、どこにトリックが隠されているのか、
    探しながら読んでしまいます。

    ただ、最後が。。
    複雑にしようしようとして、
    複雑になりすぎて、結局すこし腑に落ちませんでした。

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    2020年12月03日
  • 7人の名探偵

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    97作品目( * ॑꒳ ॑* )♪アンソロジー作品を読むのは、初めてです。読み始めて、(。-_-。)ウーン失敗だったかな…と思ったけど、有栖川有栖さんの船長が死んだ夜を読み始めてから、ページ捲るスピード早くなりました(*´艸`*)ァハ♪この7人の作家さん達で、歌野晶午さんと綾辻行人さんしか読んだことなかったので、有栖川有栖さんの小説読んでみたいかなぁと思った( * ॑꒳ ॑* )♪特に綾辻行人さんの本格なのか?って思ったりしたが、実体験の事を書かれていたならば、凄い嬉しい(๑´ლ`๑)笑

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    2020年11月30日
  • メルカトルかく語りき

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    ネタバレ

    ○ メモ
    ○ 死人を起こす
     高校生グループが,1階がレンガ造り,2階が古い日本の民家という奇妙な建物に泊まりに行く。その最中,メンバーの一人である生野という男が2階の窓から落ちて死亡する。警察は事故死と判断するが,本当に事故死か疑問があったメンバーの一人,長谷友幸,メルカトル鮎に依頼し,真相を調査してもらう。
     メルカトルが訪れる日に,再びメンバーが集まるが,今度は新井という男が死亡する。道中で,ワトソン役の美袋が死体が乗った車を見つけてしまったことから,到着が遅れたメルカトル鮎は,依頼があった15年前の生野の死の真相と,新井の死について残ったメンバーに告げる。
     メルカトルが,高校生グループに告げたダミーの真相。それは,1年前の生野の死は,警察の見立てどおり事故死であるということ。そして,新たに生じた新井の死は蝶が嫌いな男が犯人であると推理し,生野が蝶が大嫌いだったことを告げる。真犯人は,1年前に死んだ生野であることを,状況が論理的に示していると告げた。その証拠として,今いるメンバーの誰のものでもない男物のシューズを建物の裏で拾ったことを告げる。それが生野が建物に来て,新井を殺した証拠であるとして。
     本当の真相。15年前の生野の死は事故死。新井殺しは,蝶が嫌いな謎の人物が犯人だが,それ以上は限定するための要素がない。容疑者は日本人全員,いやこの地球上の全員。事件があった建物は閉鎖空間でもなんでもなく,誰でも忍び込めた状態だった。メルカトル鮎が持っている犯人の条件は,蝶が嫌いな人物ということだけ。メルカトルは,報酬である館をすぐに手に入れるために,たまたま真犯人と同じ「蝶が嫌い」という性癖を持つ生野を犯人に仕立て挙げたのだった。
     この短編の犯人は,地球上の人間全員が容疑者というところまでしか限定できないというのが真相。そうい短編である。麻耶雄嵩らしいといえば麻耶雄嵩らしい,なんとも言えない真相。メルカトルのキャラクターとめちゃめちゃな筋書きが楽しめないわけではないが,サプライズや爽快感はない。
    ○ 九州旅行
     メルカトルは捜査で手に入れたロムディスクを美袋のパソコンに挿入し,美袋のパソコンのハードディスクを大破させる。たまたま,原稿のバックアップは取ってあったが,美袋はメルカトルを糾弾。メルカトルはお詫びに次の作品のアイディアを提供するという。事件を探すために部屋を出ると,メルカトルは美袋の部屋のすぐ近くの301号室の前で,「血の匂いがする。」と言い出す。
     メルカトルと美袋が勝手に部屋に入るとこたつの脇に,背中に包丁を突き立てられた男が俯せに倒れていた。メルカトルは,美袋の作品のネタのために推理を始める。
     死体は,右手にキャップをしたままの太目の油性マジックペンを持っていた。持ち去られたダイイングメッセージと嵌められたキャップの謎。しばらくするとテレビが勝手についた。そして午前6時頃,新聞が投函される。メルカトルは美袋に短編のネタがほしいなら3時間警察への通報を待つように言う。メルカトルは小説のネタとして人物設定について考え始める。容疑者と被害者の名前,温和で人見知りで実家が裕福といったパーソナリティについての推理をした後,寸劇を始める。
     メルカトルは最後の詰めをしなければならないので少し出かけるという。美袋に,キャップをしたマジックペンとダイイングメッセージの謎と,ピースが欠けていると思われるジグソーパズルの存在について示唆した上で部屋を出る。美袋は推理を始める。
     2時間ほど経って,メルカトルからの電話。真相を語る。真犯人はアリバイ作りをしていたという。メルカトルと美袋は,犯人が偽装工作をしている途中の部屋に入り込んだのだという。マジックのキャップはそもそも空いていなかった。これから,新聞の朝刊に,偽のダイイングメッセージを書く。被害者は,新聞が投函されるまでは生きていた,そう見せかけ,真の殺害時間のアリバイを作るというわけだ。
     メルカトルは,美袋が原稿のバックアップを取っていることに気付いていた。そこで,原稿を消去した上で,ネタとして,殺人犯とミステリ作家の遭遇という機会を与えようとしていた。ラストシーンは,これまで推理していた恋人のナースではなく,謎の大柄なおっさんと美袋が対面するシーンで終わる。
     これは傑作といっていい作品。キャップをしたままの油性マジックの謎に,偽装工作中に出くわしており,アリバイ工作の途中だったという真相は,それだけでもそれなりのアイデア。それを,このような形で料理するとは。犯人が恋人の看護師…ではなく謎のおっさんで,謎のおっさんと美袋が出くわすというオチのインパクトも抜群。犯人のパーソナリティ情報が一切分からないという点で,全ての短編が犯人不明のまま終わるというこの短編集の中に入っているが,その部分だけでなく,全体として完成度が高い。
    ○ 収束
     冒頭で,3つの殺人シーンが描かれる。タイトルは収束。この短編は,冒頭の3つの殺人シーンのどれが本当に起こるのか。2番目の被害者となる可能性がある3人のうち,誰が本当に死ぬかで,実際に起こる殺人が決まるというプロットで描かれている。すなわち,3人の犯人の候補者がいるが,誰が犯人になるかまだ収束していない…というプロットの短編である。
     冒頭部分とラストをつなぐ部分には,新興宗教の存在がある。「カテジナ書」という聖書を手に入れた小針満英という元IT長者が,新興宗教を起こした。5人の信者と2人の使用人とともに,ある島で生活をする。
     メルカトルは神秘博士アストロという人物と称し,美袋を助手のヴァレスカと偽って島にやってくる。目的は使用人の一人である家政婦の娘を連れ戻すため。
     小針が殺害される。メルカトルが連れ戻そうとしていた家政婦の青山が疑われる。台風が来ており,警察が来るのは翌日。メルカトルは青山を閉じ込めることを提案する。
     ここで冒頭部分につながる。メルカトルは,翌日までに,もう一つの殺人,それも自殺に偽装された殺人が起こると推理する。冒頭部分で描かれた3つの殺人シーンのうちの一つが本当に生じる…のである。
     被害者となり得るものは3人まで絞れるが,それ以上は絞れない。メルカトルは殺人が起こるのを寝て待つという。美袋も,それに反対はするが…犯罪を止める勇気はない。どの殺人が本当に起こるのか,収束前の場面で終わる。
     九州旅行ほどのインパクトはないが,よくできているなと感じさせる作品。情より理よりというか,面白くないけど,面白そうな作品というか。シュレディンガーの猫を思わせる全体のプロットは面白いが,短編向きではないようにも思える。もう少し作りこんで長編にすれば傑作になったかも。
    ○ 答えのない絵本
     メフィスト学園で物理の教師の那須野山彦が殺害される。容疑者は20人の生徒。被害者の那須野には5つの傷があり,4つは灰皿で殴られ,1つは角材のようなもので殴られていた。犯行時刻は午後4時から午後5時の間
     メルカトルは,警察関係者と堅気でない者,2人か容疑者となっている娘のために真犯人を暴き,娘の容疑を晴らしてほしいという依頼を受けていた。
     問題作というか話題作というか,犯人が特定されない短編だけで構成された「メルカトルかく語りき」の中でも,最も異端の作品。メルカトルが推理した結果,容疑者の20人の中から犯人足りえる者がいなくなるという作品である。
     メルカトルの推理は怒涛の消去法。まず,犯人は被害者が殺害現場である準備室にいないと考えたことが推理される。それは,被害者が廊下を通らなかったことを確認できなかった者,すなわち,4度の放送があったときにずっと1組と2組にいた生徒が除外される。これで6人が除外。残りは14人
     続いて,被害者のパソコンの画面,スクリーンセイバーの状況から,殺害時刻が午後4時40分以前であると推理。犯人は,1度目か2度目の放送を聞いて侵入を思いたったものであり,最初の2回の放送時に,放送が流れなかった2組と4組にいた生徒を除外。これで5人が消去。1つ目の条件と併せて11人が消去される。残りは9人
     被害者は午後4時30分頃までアニメを見ていた。犯人が忍び込もうとした時間にはテレビは消えていたはず。そうすると,午後4時30分の放送時に3組の教室にいた中に犯人がいると推理。これで5人が消去され,4人が残る。
     残る4人は,鳳,佐倉,信濃,土岐。奇しくも,メルカトルに依頼した2人の依頼人の娘は両方残っていた。
     佐倉と土岐は,犯行時刻にずっと3組にいたことが分かる。残るは鳳と信濃。依頼者の娘の二人が残った。ところが,鳳と信濃も消去されてしまう。鳳は1組から3組に移っているので,2回放送を聞いているので,放送を聞いてすぐに犯行に及んだのなら午後4時30分には犯行はしないはず。信濃は3組にずっといたのだから,被害者が居眠りをしている可能性を考え,犯行を躊躇したのではないかとの推理だ。
     容疑者は20人の生徒の中にしかいない。被害者は明らかな他殺。容疑者は嘘を付く理由がない。メルカトルの推理は間違っていない。そうすると犯人がいなくなってしまう。
     メルカトルは1つだけ可能性を告げる。背後にとんでもない優秀な人物がいて,事件後に生徒全員に口裏合わせを計画し,全く偽の証言を教え込んだ場合の存在だ。それも全員にアリバイがあるというのではなく,一見アリバイがないように見せかけて,論理によって犯人がいなくなるように仕向けたという。メルカトルは,自分以外にそんな真似ができる人物が存在するとは思えないという。
     この事件に犯人は存在しない。それが唯一の答えだ。「神託のごときメルの言葉は重々しく室内に響いた。」という一文でこの短編は終わる。
     なんなんだ,この短編は。これが傑作という人もいるかもしれないが,私にはまったく合わなかった。駄作としか思えない。
     しっかり読めば納得できるのかもしれないが,犯人がいないわけはないので,どこかに何らかの仕掛けがあるはずだ。その仕掛けを明らかにしないで終わるというのは・・・。ミステリを娯楽として楽しんでいる人にとっては,オチが隠されたまま終わっているだけ。未完成の作品に感じてしまう。
     あとがきで,麻耶雄嵩自身が,「さすがに,これは額面通り受け取ってくれないだろうな。」という不安が強く過ぎりました。」とある。「ロジック重視のミステリとしては袋小路の作品で,それはそれでいいのですが,塀で囲まれた曲がり角を一つ曲がったところにゴール地点があるので,誰もゴールの旗に気付かないというか…」とある。ならば,要所要所に目印となる旗を立てた方がいいだろう。として,いわば橋渡しの意味合いを込めて,死人を起こすから収束に至る作品を書いたという。
     この部分をどう読めばいいのか。死人が至るから収束までの作品は,行ってみれば犯人が特定されていない作品ばかりである。死人を起こすは,容疑者が全人類で終わる。九州旅行は,犯人のパーソナリティ情報が全く分からない。収束は,3つの殺人のうち,どの殺人が起こるのかが分からない。これらを見ると,すなわち,どの短編も解決まで至る途中で終わっているという点に特徴がある。
     すると,答えのない絵本もまだ途中だと考えれば。作中に,メルカトルの「自分以外にそんな真似ができる人物が存在するとは思えない。」という発言があることを踏まえると,メルカトルが黒幕と考えるべき作品なのだろうか。
     そういう風に推理しているサイトもあるし,そう考えるのが穏当か。しかし,個人的には,やはり作者に作品の中で答えを示してほしいと思う。そういう作品が好みだ。

    ○ 密室荘 
     メルカトルと美袋しか存在しない,完全な密室に謎の男の死体が存在する。年は20代半ば。170センチ前後。金髪の日本人。メルカトルがいうには,容疑者は2人しかいない。メルカトル自身と美袋。ほかには容疑者はいない。犯人足りえないという。
     そして,メルカトルは自分は犯人ではないという。そうすると犯人は美袋しかいない。しかし,美袋は自分は犯人ではないと知っている。どういうことだ?
     メルカトルは,この不条理を解消するために,死体を密室荘の地下にセメントで埋めるという。不条理の根源の地下室の身元不明の死体をなくす。不条理な死体には不条理な解決がふさわしいという。
     美袋は納得がいかない。死体を埋めるというのは,犯人に負けを認めるのでは?解けない謎から目を背けているのでは?メルカトルは,犯人が美袋だと確信しているという。その上で,死体を隠ぺいすると。
     自分が犯人でないと確信している双方にとって,犯人は相手。永年の友人を失いたくないから解決法として死体を隠ぺいするというメルカトル
     美袋は,密室荘までも事故物件となり,虎の子のオアシスを失うことに,ただただ肩を落とした。
     これも何というか。私にとってみれば未完成の作品としか思えない。この短編集の流れで見れば,この作品も途中で終わっている。隠された真相は,メルカトルが犯人というものであろうか。そもそもこの作品は,ミステリではなく不条理な作品として描いているのか。
     メルカトルかく語りきという短編集が,答えのない絵本という短編のために構成されているのであれば,答えのない絵本の黒幕はメルカトル。そして,この作品の犯人もメルカトルと考えるべきなのか。「私はこんなくだらない殺人などしないよ。」というメルカトルの発言。くだらない殺人ではないものにしようとしたのか。
     好きな人には好きな作品なのだろうが,個人的には好きな作風ではない。手品とは種明かしをしたらつまらないものなのかもしれないが,種明かしがされないままの手品も嫌いなのである。

     問題作という評価が,この短編集にはふさわしい。キャラクターや作品の雰囲気,文体等は好きだが,作者が解決まで書いていない作品はどうしても好きになれない。完全な駄作ではないが,好きな作品ではない。★3としておく。
     
     

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    2021年04月18日
  • 7人の名探偵

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    綾辻行人/歌野晶午/法月綸太郎/有栖川有栖/我孫子武丸/山口雅也/麻耶雄嵩の7人の新本格ミステリの旗手による、豪華な豪華なミステリ・アンソロジー。
    有栖川有栖の火村英生とかも出てきますが・・・名探偵?の定義って、何でしょう?
    (んなモンあるのか??)
    本格ですが、私的には・・・??? な、感じでした。

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    2020年11月07日
  • 7人の名探偵

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    千差万別。『船長が死んだ夜』『あべこべの遺書』は従来っぽい。『仮題・ぬえの密室』はミステリと呼べるのかな。

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    2020年10月24日