あらすじ
弟・襾鈴(あべる)の失踪と死の謎を追って地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允(かいん)。襲いかかる鴉の大群。四つの祭りと薪能。蔵の奥の人形。錬金術。嫉妬と憎悪と偽善。五行思想。足跡なき連続殺害現場。盲点衝く大トリック。支配者・大鏡の正体。再び襲う鴉。そしてメルカトル鮎が導く逆転と驚愕の大結末。一九九七年のNo.1ミステリに輝く神話的最高傑作。
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地図にも載っておらず、大鏡が支配する歪な村で起こる連続殺人。そこに錬金術や五行思想と色々な要素が盛り込まれていて、ワクワクしながら読めた。
中盤までは少し冗長に感じたが、
そこは麻耶雄嵩。ラストにかけての怒涛の解決編に圧倒されました!!
「翼ある闇」や「夏冬」のような全てを無に返す結末は、初見は開いた口が塞がりませんが、今はもう虜になってますw
Posted by ブクログ
素晴らしい。シリーズの中ではかなり普通な部類だがそれでもやはり麻耶作品で、攻めた作りになっている。シリーズとしてはメルカトルのバックボーンが気になりすぎて眠れなくなりそう……彼は一体……。ミステリとしても優れた一作。
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実に麻耶雄嵩らしい一作。
探偵小説家が固有名詞を伏せたら基本的に叙述トリックを疑うことにしているので、やはりといったところではあった。
ただ、それを明かすのにくどい説明がないのがとても良い、やっぱりどんでん返しは数行でスマートに決まるとかっこいい。
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十数年ぶりの再読。初読時(取り分け死んだと思われた橘花が珂允の許に現れた箇所。495頁)に感じた世界がぐらつくような感覚こそ薄れはしたものの、今度はその構成の強かさに感嘆させられる。〈人格が変わると顔まで変化する〉というのはミステリ的にはかなりアウトな気がするのだが、それでも『夏と冬の奏鳴曲』と並ぶ麻耶雄嵩の二大傑作である点は揺らがないと自分は思っている。
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メルカトル鮎シリーズ5作目(登場してこないがシリーズっぽいのを含めると6作目)で長編でいくと館、孤島、京都、田舎の塔、閉鎖された村と設定が変えられている。
神話的傑作とは仰々しいが主人公の名前から何となくは察せられる部分はある。それにトリックが特殊というかアンフェアというか無理があるので本格ミステリー愛好家からは忌避されそうな作品である。それでも個人的にこの作品を捨てがたいのはメルカトル鮎の存在。詳述は避けるがミステリー世界でのトリックスターとしては最高峰ではなかろうか。
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またとんでもないものを読んでしまった。
兄弟の名前から示唆されるところはぼんやり予想しつつ、しかし結末までページが少なくなっても全然全体図を掴めなくて、麻耶雄嵩すごいな…の一言。
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盲点を突くトリックってまさに色盲というところを指しているわけで、すでに書評や帯から実はいろいろとヒントが出ていたのだなと、読み終えてから感じた。
なにぶん長いので読むのが大変に感じてしまうかもしれないが、できることならまとめて読んだ方が話の筋は理解しやすくなると思う。
まあ自分はかなり細切れに長い期間かけてしまったけれど…
叙述トリックに近いものも入っていたり、村を支配する謎めいた信仰によって不思議な雰囲気が漂っていたりして、自分もその村の中にいるかのような空気を感じることができる。
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正直に言うと、思ってたより普通。
「神話的最高傑作」とか言うんだし、一瞬理解不能になるようなものを期待していたのだが、残念ながら予想の範囲内。
叙述トリックが使われていると知っていたからか、櫻花は弟の名前が明記されないので怪しいとは思っていた。
が、おそらくこっちがメインであろう村の秘密、大鏡の正体には驚いた。
櫻花が履いていた汚れたズボン、カインの服の色などの伏線もあったし、独特の世界観やカタルシスはやはり一級品。
だが色々な書評サイトでも取り上げられていたが、アンフェアな記述もあり、さすがにそれはいただけない。
楽しみだっただけに少し残念。
(御簾を開けたら御座に鎮座するメルカトルっていうのは笑った)
Posted by ブクログ
あらすじ、本編、解説を読む限り、著者の他作品のキャラクターが登場しているようだが、未読でも遜色なく楽しめた。
主人公がようやく辿り着いた、隔離された名もなく地図にも載ってない村。
そこは大鏡という神が支配する閉鎖的な村だった。
村で起こる全てのことがどこか怪しく、村人の肚の底も見えず不気味さを感じさせる。
村人全員に疑惑を感じ、孤独が際立つ状況での推理から雪崩れ込むように明らかになる事実まで、テンポよく読み進められる。
しかし最後4ページでの更なる事実は読み直した。
自分自身の中で読み積み上げてきた情報が、ダルマ落としのようにスコッと抜けたようだった。
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弟アベルが死んだ理由を探しに地図のない村に来た兄のカイン。現人神として君臨する大鏡様、半年前に死んだ金を作ろうとしていた男、南に住んでいたが滅ばされた一族、鬼子として殺された娘。人殺しをすると痣が浮かび上がるはずの村で新たに殺人事件が起こる。
謎の風習が残る村で起こる殺人で、色々な謎がある。
鬼子の定義(?)が個人的にとても感動した。あと叙述トリックで兄弟と思っていた話が、主人公の過去だとは思わなかった…確かに名前がおかしすぎる…
ずっと鬱々とした感じだけど、それが村の異質さを表現しているようで良かった
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殺された弟、襾鈴の足取りを掴むため、「大鏡様」を神と崇める独特の宗教が信仰されている村に潜入した珂允。
その村では夕刻になるとカラスが人を襲うのだが、そのせいで祭り事が中止になった翌日、男が死体で発見される。
よそ者ということで疑いの眼差しを向けられる主人公だが、さらに第2、第3と殺人が起こっていく。
探偵役は主人公かと思いきや、メルカトル鮎が出てくるし、謎解きもメルカトルが行うため探偵はメルカトル鮎だろう。
トリックについては、複数の人物による一人称(珂允、橘花、櫻花)を使うことで、珂允視点では『赤色』と描写されているものをを村の住人である橘花が『緑』と称することにより、村人のほとんどが色盲であると判明し、事件の手がかりを掴むこととなる。
色盲のトリックはダイナミックで上手いと思ったが、橘花が『紫色』を認識している描写があり、赤色が認識できないのに赤と青の混ざった紫が認識できるのだろうかと少しだけ疑問には思った。
しかし、自然現象による密室や、暗示による放火殺人などの作品よりも、ロジックはきっちりしていたと思う。
人を襲うカラスは説明がなかったので自然現象で、人を殺すと浮かぶ痣は信仰心による暗示かもしれないが。
さらに、村での殺人とは関係がないが、襾鈴の殺人と関わる複数の一人称によるトリックとして、村の外に出るという夢を持つ橘花のパートの次に『櫻花』という橘花によく似た名前の兄の奔放な弟に対する憎しみの心境を語らせることで、『櫻花』が『橘花』の兄であると思わせているが、終盤メルカトルによって『櫻花』は『橘花』の兄ではなく、『珂允』自身の過去であると判明する。
一瞬混乱したが、そう知らされると、確かに橘花の一人称中に、兄の名前はどこにも出てこなかったし、櫻花の一人称中にも、弟の名前は出てこなかった。
名前が似ているからといって、同じ時代の兄弟とは限らない。終盤で、櫻花に殺されたはずの橘花が出てきたのは、珂允の妄想ではなく、橘花は殺されていなかったからなのだ。
珂允(カイン)と襾鈴(アベル)と聞くと聖書の、兄が弟を殺す人類最初の殺人を思い出すが、よりによって男兄弟にそんな名前をつけるなんて親は変わっているなと思っていたのだが、弟を殺し、それを忘れた櫻花が無意識に自分の罪の記憶から偽名として名乗ったのかもしれない。
主人公は死ぬし、主人公を庇った親切な村人一家も殺される。
決して後味は良くないものの、散りばめられた伏線が見事で一度読むとすぐもう一度読み返したくなる作品だった。
Posted by ブクログ
メルカトル鮎の神出鬼没っぷりはそういうものとして諦めるとして、解き明かした(と思った)謎が綺麗にひっくり返る不意討ち感が気に入った。
殺された弟・襾鈴の真相を探るため、弟が滞在していた地図にない村に潜入する珂允。そこは大鏡様を信仰する村だった。そのうちに起きる、殺人のないはずの村で起こる殺人事件。半年前の村人の自殺と絡んでいそうなのに珂允は犯人に仕立てあげられていく。
いったい何が起こっているのか?
果たして真相は?
みたいな話。
ちょっと浮世離れした時代錯誤的な村の雰囲気は、何となく伊坂さんの『オーデュポンの祈り』みたいだった。
でも麻耶ワールドは、ずっとおどろおどろしい。
ミステリを読み慣れちゃって、櫻花が橘花の兄だと思わせるミスリードに引っ掛からなかったのが、逆に残念だった。もっと驚けたのに。
麻耶さんの話って、高い確率で宗教が絡んでくる。
で、だいたい教祖的な人が犯人なの。
途中でがっかりしかけたけど、宮の御簾の奥にメルが座ってた時は本気で「メル教祖だったの??」と思ってしまった(思う壺)。
大鏡様信仰に隠された村のシステム、村人の遺伝子的欠陥(色盲)、鬼子の正体(正常識別者)、大鏡様の正体(野長瀬)、そういうのがとても論理的で唸ってしまった。
メルはやっぱり有能。能力は。人として駄目だけど。
でももはやメルカトル鮎は私にとって、登場するたびに『翼ある闇』での死に様がフラッシュバックして、可哀想な人にしか見えなくなってる。
珂允=櫻花は15年も前に弟を殺していて、珂允=襾鈴なわけで、自作自演というか、多重人格者になっちゃってるんでしょ。
病み人じゃん。
後出しで茅子が襾鈴の恋人だったとか言い出すの、いかにも病んでる人っぽい。
ひたすら茅子さんが不憫すぎる。
弟と出来てるだろ、とかワケわからないことで責められてたんでしょ。
離婚して正解だよ、事故に遭ったと思って幸せになってほしい。
結局鴉は何だったのか。
村人に知られずして綻びかけていたシステムに呼応するかのような振る舞いは、案外と神の遣いというのは正しいのかも、という余韻を残してる。
Posted by ブクログ
最後の最後で驚かされるパターンだってわかっているのに、毎回その罠に引っかかってしまう。二度読み必至。
櫻花が弟を殺したシーンで中原中也(弟の死をうたったのが詩作の始まりである詩人)の詩を引用するまーや先生はある意味すごい。
この時代にちゅーや先生がいたら酒席で絡まれていたことでしょう。
Posted by ブクログ
大鏡と呼ばれる神様が支配する村で起こる連続殺人事件。閉鎖された空間では、外の世界での常識が通じることはなく、読みながらこの村の不気味さにどっぷりと浸っているうちに、最後には、えっ??と思わせてくれる!
横溝ワールドに浸るのが好きな自分にとって、この世界観はとても好き。現代にもこんなに自分の好みに合う作家さんがいてるとは!
Posted by ブクログ
星3か4か迷ったけど、4。
最近、麻耶さんばかり読んでるなあ。
失踪して帰ってきて殺された弟の謎を知るために
隔離された村にやってきた主人公。
そこでは大鏡と呼ばれる一人の人物が村の全てを支配していた。
最後まで読み終えて、整理して理解するのに時間がかかった。
本物の弟は自身がずっと昔に殺害しており、
架空の弟の姿をずっと追いつづけていた。
色覚異常って遺伝なのだということを初めて知った。
Posted by ブクログ
メルカトル鮎が出てくる長編を読むのはこれが発行順じゃないけど翼ある闇に続いて二冊目。
閉鎖された村で独特の神が崇められていてなぞの鴉の大群が襲って来る。そこに弟の死の原因を探るため主人公がやってくる…という結構オーソドックスなミステリの雰囲気で私の好きな感じだったので読みやすかった。
伏線がしっかりといろいろ張られているのでそこに注意して読んでればある程度はオチが予測できるので翼ある闇ほど最後「はぁ!?」とはならなかった。
でもやっぱりオチは普通のミステリより癖がある。
メルの新たな出自がわかって、メル好きな私には嬉しかった。
Posted by ブクログ
地図に載っていない異郷の村が舞台で、登場人物の名前はルビがないと読めないような個性的な名前で、一風変わった独特な世界観にすぐに魅了させられました。外の世界から閉ざされた四方を山に囲まれた村だなんて、ミステリーの舞台にぴったり!
本書は97年のNo1ミステリーにも輝いた作品だそうで、どこにどんな伏線が張られているのかと目を凝らして読んでいたんですが、読めば読むほど謎が深まるばかり。
とはいえ、やっぱり伏線はいたるところに張られていたんですよね。読み返してみるとなるほどと思うところもたくさん。
<ネタばれ>
さて、犯人については「紙」がヒントになって宮の人が怪しい…と思いつつも、琢ちゃんの態度から、琢ちゃんが見たであろう橘花たちには言えないような近しい人…橘花のお兄ちゃんが実行犯か?!とか思ったり(あんなに兄目線のエピソードも出てくるし、何かあると思いますよね)したんですが、まさかあの人とは。
それから、兄目線と弟目線の語りにはすっかり騙されましたね。読み返してみると、確かにどちらの視点からも橘花の兄が櫻花とは言っていないし、櫻花の弟が橘花とは言っていない…。名前から何の疑いもなく、兄弟のそれぞれの視点からの物語だと思いましたよ。兄弟の年齢もどちらも1つ違いだし、畑仕事とかも共通してるし…!ミスリードのさせ方がうまいですよね。
弟の誕生日エピソードで「お寿司」を用意したという母のセリフがあって、海がないのにお寿司?とちょっと違和感はあったのに深く考えずに読み飛ばしてました。もちろん巻き寿司とかの可能性もあるけど、お寿司っていったら普通はお魚が乗ってるお寿司を思い浮かべますよね?それに蒸し鶏なんてちょっとハイカラな料理、なんだかこの村で作られなさそうに思ったのに、最後にネタばらしされるまで気付かなくて悔しい!
そして、まさかみんなが○○というオチだったとは。閉鎖的なこの村の独特な色合いの背景にこんな秘密が隠されていたなんて。私たちに当たり前に見えているものが当たり前じゃない、ということを示すおもしろい着眼点ですよね。
ミステリーとしてはすごく面白かったけど、やっぱりどこか現実味がなく感じてしまう。罪を犯すと浮かび上がるという痣についても、実際に見た人がいるからこそ信じられているけど、大鏡様の正体を知る側近までもが心底信じられる程吸引力のあるものには思えない。時を司ると言われている大鏡様の鐘は、大鏡様亡き後は側近が時計を見ながら撞いていたんでしょうか。なんだか、絶対的な信仰心と、大鏡様を軸とした政治的システムが自分の中
でいまいち上手く両立できるものに感じられなくて、少しもやもや。俗世的な考えに塗れているところがありつつも、信仰心を建前として動いてるとは思えないくらい、みんな信じている様子だったので。
側近にはいっそ、信仰心よりも村を守りたいというシステムの維持に重点を置いてほしかったかも。とはいえ、これは好みの問題ですね。
そしてあべるとかいんが同一人物だったのいうのも最大の驚きポイント。最初はいくらなんでも同一人物と気付かないはずないだろうと思ったのですが、入れ物が同じでも中身が違えば立ち振る舞いや雰囲気が全く変わるし、そういうこともありえるのかな。主人公が現実と夢をゆらゆら彷徨っていて、何が本当なのか見失いそうにもなりましたが、わりとすっきりした読み心地です。しいていえば、タイトルにもなっている「烏」について、半年くらい前から始まった烏の襲撃に何か理由があると思いきや何もなかったことに謎が残るくらいでしょうか。
Posted by ブクログ
1998年度本格ミステリ・ベスト10の第1位。
伏線を探そうと注意深く読みましたが、トリックはほとんど分かりませんでした。
独特な世界観でした。
最後は、怒涛のどんでん返しでした。
Posted by ブクログ
またメルカトル鮎がメチャクチャ言ってる話かよ。
ブラフの推理の方が説得力あるの、笑っちゃう。
運営システムとして機能する神とか、それゆえ個性を剥ぎ取られた人間とかのテーマは結構おもしろく読めた。閉塞感のある村って独特の魅力がある。
大オチであろう叙述の云々が意味不明なのに何故これほど惹きつけられるのか。すごいな。謎の大群カラスなんだったんだよマジで。
Posted by ブクログ
麻耶雄嵩4作品目
隔離された村と外人、細かい時代は分からないが雰囲気は良かったと思う。
■珂允・襾鈴・庚・櫻花
珂允と襾鈴が同一人物でおぉとなって、櫻花も同一人物で???となった。
どこまでが本当の話でどこまでが櫻花の妄想なのか分からなくなってしまった。
一気に話の時系列がごちゃごちゃになったが辻褄合ってるのかな??
驚きはしたが、確認する気力はなくなってしまった。
■村の絶対権力
色々な作品で小さな村の絶対権力者や謎の掟が出てくるけど、限られた世界だとその中のことが当たり前で常識になってしまう。
それは学校でも会社でも同じことだと思う。
外から見るとおかしなことがまかり通ってることはよくある。
村の人たちもそれを心の拠り所にしてるしてる側面もあるのかなぁ
見たくないものは大鏡様(野長瀬)のせいにしておけば自分達は責任をとらずに済む。
村人の罪も重いと思う
メルカトルシリーズは初めて読みました。
本作は比較的理解しやすいみたいだけど、個人的には螢とから神様ゲームの方が好みでした。
Posted by ブクログ
読みやすい文章。ただ、全体的に引っ掛かりが弱い印象で、細部の詰めも気になった。今時はこういうのが好まれるんだろうか?それなりに面白かったです。
Posted by ブクログ
ザミステリーです。
世界観、文調ともに、
凝っていて、どこにトリックが隠されているのか、
探しながら読んでしまいます。
ただ、最後が。。
複雑にしようしようとして、
複雑になりすぎて、結局すこし腑に落ちませんでした。
Posted by ブクログ
叙述トリックは意識してなかった。よくよく考えたら、弟視点のときに兄の名前はでてこないし、兄視点の時には弟の名前がでてこないという典型的なしかけが。完全に騙された。
今回の閉鎖空間が色を使ったものだとして、それがどの程度不自然じゃないかといえば不自然過ぎるわけだが。どれくらいの人口がいるのかとか、たまに現れる鬼子が「周りが知らない色をなぜ『知る』ことができたか」とか。「見えた」としても、「存在し得ないそれを知っている」ことが「存在していることを知らない」周りにはっきりわかるレベルで発露するものだろうか。それを定義づける言葉すらないはずなのに。
など、少し無理矢理感がないわけでもないなぁと。それが麻耶雄嵩だと言われたらその通りなんだけども(笑)
Posted by ブクログ
「翼ある闇」に難儀した記憶があるので警戒したが、これはすいすい読めた。これまで読んできたミステリが育んでくれた手触りがもたらしたとおもえる違和感が、的を射ていたわけではなかったけれど、作品のスリリングさを増す働きをしてくれたのがうれしかった。とちゅう「あれ?」と疑問を感じて、ある本を引っ張りだして読んだりもしつつ。「そうきたか!」と驚く真相は、麻耶さんの作品であることを考えるとかなり正統派というか、真っ向勝負な印象。ファン歴はまだまだ短いが、麻耶さんの作品はどんどん読んでいきたいと改めて決意するに至った。
*****
!!!以下、ネタバレ(?)注意!!!(ネタバレではないとはおもうのですが、一応コメントしておきます。)暴言かもしれないが……なんだかメルがまともな人間に見えた。本編を読んでいる最中、ずっと「こいつは本物のメルなのか?」と疑問を抱いたまま。さすがのメルも、じぶんの出自に関わることは中途半端にはできなかったのだろうか。メルカトルの出てくる作品はまだ読んでいないものがあるので、探して読み進めたい。そして「翼ある闇」も読み返そう。
Posted by ブクログ
予想通りの予想外
麻耶作品の長編ものに挑戦。いつの時代のどこの国だよ、と思わせる辺境の地で、弟の死の原因を追う青年の話。自ら長編には向かないと自負するだけあり、大ボリュームの本作の最後の最後に明かされる種明かしに対しては、様々な感情がせめぎ合うことだろう。だが、まんまと騙されたあの仕掛けと、銘探偵参上シーンににやにやさせられたので許す。