いやー、真梨幸子節炸裂という感じ。良いイヤミスだった!
読み進めるごとに様々な事実(らしきもの)か明らかになるのだが、「本当にこれが真実なのか?」「もしくは、真実の一部に過ぎないのではないか?」というモヤが晴れないまま物語は進行していく。
それは、全てが語られないことであったり、何となくの違和感で
...続きを読むあったり。
それが終始拭えないままどんどんと降り積もっていくので、後味の悪さだけでなく、読んでいる最中もずっと暗く重い気分を味わい続けることができます。(褒めています)
最後に真相がわかった後は、ほんとにスッキリ。でも、当然黒幕はお咎めなしなので、後味の悪さもしっかりあります。
いやー、橋本に関してはほんと、ずっと怪しかったよね。早すぎた自叙伝の「蒸しパン」と橋本の実家が蒸しパン売ってて…という繋がりも、うーん?と気になってはいた。
そして橋本が家族の話をチラ見せする度に感じる違和感。
コイツは、何を隠しているんだろう?何を考えているんだろう?と。
ああ、冒頭の【わたし】はコイツだったか〜!と最後にきちんと答え合わせさせてくれる仕掛けはとても気持ちが良かった。
そして橋本の手のひらの上で踊らされる面々。
読み終えてから橋本の立場で読み返してみると、一気にスカッと物語になるお見事な働きぶり。笑
特に市川聖子がいい仕事している。
逆に登場時の大物感とは打って変わって察しの悪い笠原智子が何と言うか、アホっぽく見えて癒されます。
ちなみに、この物語で一人勝ちしているのは橋本のように見えるが、約一千万円を手にして逃げおおせているエイコもなかなかだ。(最初、エイコも誰かの差し金?と思ったけど違うようだし、殺されることもなく、ほんとに一人勝ちでは?)
どの「犯人」「関係者」も、生まれ育った家庭に影響を受け、歪んでいったという人格形成の過程を垣間見れるのも良い。
さらに言えば、そこには「嫉妬」が満ちている。
自分より優遇されるきょうだいを見て。もしくは、恵まれた環境にいる他者を見て。
澱んだ負の感情が渦巻いて、大きな負のエネルギーとなって表出されてしまった感じ。
これぞイヤミスですね。