信田さよ子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
“深い底の部分では怒りが渦巻いているのに、四方八方からの張力によって、それは流れそうで流れない涙のようにギリギリのところでとどまっている。それはまさに言葉を失うとしか言いようのない現実への直面に思えた。そこから這い上がるように言葉を新しく獲得していく姿、その張り詰めた感じが、読む私の胸を打ったのである。”
---「まえがき」より
公認心理士・臨床心理士の信田さよ子さんと、社会学者・教育学者の上間陽子さんの、数回にわたる対談を書籍化したもの。
性被害に遭った女性へのアプローチについて語っているので、内容はとても重いのだけれど、文章から伝わってくるお二人のキャラクターが真逆のように感じられて、対 -
Posted by ブクログ
柚木麻子さんの『BUTTER』からこちらに流れ着いた。木嶋佳苗の事件当時、私は20代前半だった。その頃は、へえ、なんか大変な事件が起こったんだな、くらいの関心しかなかった。もう20年近く前の事件に興味を惹かれるのは、ルッキズムやミソジニーの社会的状況が当時と変わっていないからだし、私自身がそこにちょっと敏感になっているからだろう。いくつかの事件をとおして、男とは、女とは、男女の関係とは、について、ここまで断定的に迷いなく語ることができる御三方に憧れのようなものを感じたし、御三方間の捉え方、見方も違っていて(特に上野先生と信田先生は社会学=マクロ、心理臨床=ミクロというモノの見方の違いがあるんだ
-
Posted by ブクログ
ネタバレわたし自身が、母への憎しみをもつことへの罪悪感を抱えてきた。母へ尊敬の念をもつことができないのは、私が精神的に成長せず、いつまでも幼稚なせいだ。
同じ状況でも親に激しく怒鳴られることもあれば、何も起きないこともある…というような因果の見えない精神的な危険にさらされた子どもが、その状況をまるっと呑み込める呪文が「わたしが悪い」なのだという。「わたしが怖い思いをするのは、わたしが悪いから」と、自分の存在を悪だと定義すれば、どんな状況で困難が起きたとしても必ず適用することができる魔法の呪文だと。
安全安心に生きていくための規範を教えることが躾などだとすると、一定の規範がない状況でも生きざるを得ない子 -
Posted by ブクログ
“母性愛なんてものはありません。
人間ってそういうものでしょうとか、母性愛がないのかなどと言っちゃいけないんですよ。それがどう時間をかけて、歴史的に私たちに埋め込まれてきたのか考えないといけない。”(p.131)
“娘もしくは息子から母への罪悪感の背後には、父がまったく機能しないということも、私は付け加えなければいけないんじゃないかと思う。
「娘には娘の人生がある。言いたいことがあれば、夫である僕が聞くよ」と正面から妻と向かい合っていれば、娘から母への、もしくは息子から母への罪悪感は、すこしは軽減されたはずです。”(p.134)
“子どもに腹を立てることもあるし、母と同じようにひどい -
Posted by ブクログ
ネタバレとても面白かった。著者の口調がどこかいい意味でふてぶてしく、パンクな感じにすごく好感を持った。大きなものに萎縮せず、堂々と啖呵を切るような感じで、こういう知識人があと100人くらいいたら、日本社会のナラティブが変わるのになと思う。
臨床心理士と精神科の領域の棲み分けやアプローチの違いなど、あまり知らなかったことがわかり面白かった。
また、アメリカではベトナム戦争後の復員兵のトラウマ、その家族のDV被害から、精神科で診断基準ができ治療が進み始めたこと、一方日本では、戦後同様に復員兵とその家族に大きなトラウマと暴力の問題があったのに、全て家族に対応を押し付け国として医療面からの対策は取らなかっ -
Posted by ブクログ
依存症・嗜癖、AC(アダルトチルドレン)、DV、虐待、性加害、母親と娘の問題などについて積極的に発言されてきた信田さよ子氏によるオンラインセミナーを書籍化したもの。
読みやすかった。
信田氏をよく知らない人の入門書としてもおすすめできると思う。
⭐︎印象に残ったところ
p190 「子どもは責任ゼロで生まれてくるんですよ。」
子育てにおいて子どもは、「解決の見通しがない世の中に生まれさせられたんですよ、あなたは」ということを誰かに承認されなきゃいけないんです。
p191 「愛着とは、本来はこの根源的受動性の承認を意味してるんじゃないかと思います。」
(愛着障害について)「ぴったりくっついたり、 -
Posted by ブクログ
個人的にこの本から受け取った一番印象に残った言葉は「非合理的万能感」。
これがあると自分を責めることにつながってしまう。
一回しか用いられていない言葉だけど、この本の主題である自責感の背景を、端的に、そして親子関係に限られない広範囲の文脈で示すのは、非合理的万能感だと思う。
読んだというより、眺めたという感覚で向き合った本だった。ここでの内容を鵜呑みにし過ぎて現実に当てはめることは、それこそ少し現実的ではないと思う。現実は想像以上に複雑だし、個々によって置かれてる環境は異なる。だから、この本の内容を鵜呑みにせずに、自分にとって印象的な部分をつまんでいけばいいし、それを無理に実践しようとせ