亀山郁夫のレビュー一覧
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母と妹の登場、予審判事や妹の婚約者との対決、そして明らかになっていく犯罪の理由。福音書が彼に寄り添う。
加速感のある第3部と第4部を収録。追い詰められていくラスコーリニコフ。愛する母と妹に再会しても喜ぶ余裕もない彼の横で展開する家族ドラマ。超絶美人な妹の、傲慢な婚約者やストーカーとのすったもんだ、親友ラズミーヒンの人物像など、人間描写が魅力的で引き込まれる。
いっぽうで事件の方も進行しており、予審判事ポルフィーリーとのやり取りでラスコーリニコフの選民思想が明かされる。『非凡人』には犯罪の権利がある――良心にしたがった殺人を許容する、という結論は極端だとしても、命の価値を判断する=軽い命がある、という考えには現代においても答えが出ない人が多いのではないか。
ソーニャと聖書のエピソードが胸にくるものの、難解でもあり今ひとつ理解がおぼつかない。彼女の境遇が絶望的すぎてひいた。これを冷静に見きっているラスコーリニコフすげえ。「きみにひざまずいたんじゃない、人間のすべての苦しみにひざまずいたんだ」という言葉が心に残る。 -
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命の価値によって殺人は許されるか?普遍のテーマに切り込む永遠の名作。あちこちで使われてしまうタイトル……元ネタはこちら。椎名林檎でもNintendo64でもないぞ!
これは面白い。難解な内容を想像していたが、犯行前後のサスペンスと犯人が心理的に追い詰められていく過程、深みのある人間関係のドラマに夢中になってしまった。
第1巻を読み終えた時点では、殺人の動機がまだぼんやりしているもののおそらくは、「多数の若者のために死んでくれこの老害!」ということだろうか。これは高齢化社会のなかで老人が命の価値をはかられる現状の日本にとってもリアルなテーマだし、犯罪を正当化する心理という意味では普遍的なテーマをはらんでいると思う。先が気になる展開な上、非常に考えさせられる内容に驚き、難解そうなタイトルに敬遠していた自分を説教したくなった。迷っている人は、とりあえずメッチャ面白いので読めー! -
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ネタバレドストエフスキーの癲癇と父殺し -2006.03.27記
以下、フロイトの孫引きになるが、
「少年フョードルは、ライバルでありかつ支配者である父親を憎み、その反面、強者である父親を賛美し、模範にしたいというアンビバレントな感情に苦しめられていた。しかし、ライバルたる父親を亡き者にしたいという願いは、父親から下される罰、すなわち、去勢に対する恐怖によって抑圧されていた。そして、その父親が、彼の支配下であった農奴たちによって殺されたことで、図らずもその願いが現実化したため、まるで自分が犯人であるかのような錯覚にとらわれた」というのである。
「ドストエフスキーの発作は、18才のときのあの震撼的な体験、すなわち父親の殺害という事件を経てのち、はじめて癲癇という形態-痙攣をともなう大発作の型-をとるに至った」或いはまた「この癲癇の発作においては、瞬間的に訪れるエクスタシー-アウラ-のあと、激しい痙攣をともなう意識の喪失に襲われ、その後にしばらく欝の状態が訪れる」といい、「発作の前駆的症状においては、一瞬ではあるが、無上の法悦が体験されるのであって、それは多分、父の死の報告を受け取ったときに彼が味わった誇らかな気持ちと解放感とが固着したものと考えていいだろう。そしてこの法悦の一瞬の後には、喜びの後であるだけに、いっそう残忍と感ぜられる罰が、ただちに踵を接してやってくるのが常であった」と。
フロイトはさらに、少年フョードルの心の深く根を下ろしている罪の意識や、後年現れる浪費癖、賭博熱などいくつかの異常な行動様式にも同じ視点から光をあてている、としたあとでこの著者は、「60年に及んだドストエフスキーの生涯が<エディプス.コンプレックス>の稀にみるモデルを呈示していることは否定できないだろう。フロイトの存在も、フロイトの理論も知らなかったドストエフスキーは、父親の殺害と癲癇の発作を結びつけている見えざる謎を、ひたすら直感にしたがって論理化し、表象化するほかに手立てはなかったのだ。」と、ドストエフスキー文学の深い森の中へと読者を誘ってゆく。 -
購入済み
おもしろかった
半分も理解できてないだろうけど
ともかく読み終わった。おもしろかった。
なぜそうなったのかと思うところもあるが
世の中理屈で割り切れるものではないということからすると
とても現実的な物語なのかもしれない。
気力があれば読み返してみたいところだが
今はちょっと無理。 -
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長老の遺体による腐臭騒ぎで、迷いが生じるアレクセイ。一方、ドミートリイは愛人のため金策に走り回っていた。
グルーシェニカの人柄と背景がよくわかる深掘りと、アリョーシャ(アレクセイ)の信仰が新生する第7編。第8編ではミーチャ(ドミートリイ)が奔走するなか、ついに事件が起こってしまう。続く第9編では、ジャンルが変わったのかと思うほどミステリー小説な展開に。疾走感のあるこの第3部で物語は一気に加速した感がある。相変わらず会話文の分量が多く、読みやすいが長い。とはいえ、思想性や哲学性の高かった第2部と比べるとよりエンタメ性が増し、それぞれの人物への感情移入も深まって、夢中で読み切ってしまった。
アリョーシャは誰にも好かれる主人公的な人物だが、ミーチャの複雑な人間性はかなり独特な魅力がある。欠点によって嫌われるか、逆に愛されるか、きわどいラインの個性を持っているのだ。グルーシェニカの心変わりにも心洗われるし、ますます各キャラクターが好きになった。 -
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3回目なのにすっかり忘れているから、やっぱりおもしろいなあと読み進む。
忘れるからと、第1部と第2部はあらすじを追って書き出したが、何のことはない『罪と罰 2』巻末の「読書ガイド」に、翻訳者の亀山先生が第1部と第2部のあらすじを完璧にまとめてくださっていたのだ。第3部と第4部は最後の『罪と罰 3』の巻末にあった(それも忘れていて)。
この文庫本がある限り、そこを見ればよい、ということで、ここからはラクをしよう。
第3部の感想
もうろうとして母と妹に再開し、妹ドゥーニャの犠牲的婚約の話が面白くないラスコーリニコフなんだけど、自分の罪にもおびえて複雑。そりゃそうだ。でも、妹アヴドーチャ(ドゥーニャ)がすごい美人で、だから家庭教師先でも追いかけられ、お金目当てで婚約したルージンにも執着されるのだが、嫌気がさして彼を振りそうな時に、ラスコーリニコフを献身的に看護してくれた人のいい友人ラズミーヒンとも速攻、恋に落ちるとは…、都合よすぎ。しかしそこがまた面白くさせ、うまいのかもね。
ラスコーリニコフはちょっと変人。殺人を疑われていると知りながら、予審判事ポルフィリーや警察官にちょっかいを出すのだもの。幽霊や悪夢を見てしまうのも当然。過去雑誌に「犯罪の研究」の文章を発表していたのをバレるなぞ、SNS時代じゃないのに、わかってしまうのは昔の斬新なリアルかな。
第4部の感想
スヴィドリガイロフがラスコーリニコフの前に登場。妹ドゥーニャを子供の家庭教師なのに追いかけて困らせた張本人。この人もおかしな人、不思議なことを言う人で物語を複雑にしている。
登場人物多数なのに皆がみな、個性的で饒舌で、長い長いセリフ。策士策に溺れる、じゃなくて小説家小説に溺れて、読者読みに溺れるというところ。
妹ドゥーニャのしみったれ婚約者ルージンをみんなでやっつけるところは痛快。しかし予審判事ポルフィリーとの息詰まるやり取りは真に迫ってすごい。ソーニャとの邂逅は唐突感を抱くのだけど。 -
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第一部あらすじ
7月の太陽が照りつけるペテルブルグの街中を、元大学生ラスコーリニコフは歩いている。
彼は殺人計画を立てていて、そのターゲット金貸し老女アリョーナの居室を下見の目的で訪れるのである。はたして実行できるのか、神経質にびくびくしている様子が描かれる。
いよいよ金貸しアリョーナの部屋に着き、古い銀時計を質草に金を借り、また訪れると予告して去る。
幾ばくかのお金を手にして居酒屋に寄るラスコーリニコフ。そこで、マルメラードフという飲んだくれの元役人に出合い、酔いに任せたおしゃべりで彼の家庭事情を聴かされる。再婚した妻の病気、子沢山、そして前妻との実娘ソフィアの稼ぎ(売春)に頼る生活。
ラスコーリニコフは酔っぱらったマルメラードフをそのアパートまで送り、貧困にあえぐとても悲惨な生活状況をつぶさに見る。
自分の下宿に帰ったラスコーリニコフは母からの手紙を読む。仕送りが途絶えた事情、妹ドゥーニャの家庭教師先での災難、ルージンという男との婚約を知る。しかし、その婚約は母や妹の貧困脱出の打算が見え、暗澹となる彼。
ラスコーリニコフは、自身の非力、むなしさに悲嘆・無気力で自堕落になっている様子、そして金貸し老婆を殺さなくてはいけない、という極端な思想に走る狂気的状態が描かれる。
いよいよ、息詰まる殺人実行の描写で、第一部は終わる
わたしの感想
ラスコーリニコフが殺人を実行するまでにどうして至ってしまうのか?あまりにも唐突で、ちょっと理解できなかった。ストリーが進むにしたがってわかるのだろうか。
それはむしろ、酒場で知り合ったマルメラードフという飲んだくれの独白。どうしようもない哀れな自虐話の内容。母親からの手紙の内容のおぞましさ悲惨さ。母・妹が彼に期待し犠牲に走る心理。それを知り怒り不甲斐なく思うラスコーリニコフ、そんな別物語が潜んでいるのを感じるのは、読む視点が変わったのだ。
第二部あらすじ
夢中で下宿に帰って死んだように眠っても興奮冷めやらないラスコーリニコフ。そこへ突然の警察からの呼び出し状にぎくりとする。
ドキドキしながら警察を訪れ、別件「不払い下宿代の催促だったとだった」と知る。警察の事務官ザメートフにラスコーリニコフが「自身が父親の早世による貧困で大学をやめざるを得なかった事情、下宿屋の娘との婚約、死別したために借金になってしまった」事情を語り、書類にサインするも、警察では「金貸し老婆殺人の話題」が飛び交っていて、精神が持たず失神してしまう様子。そこから彼の罰が始まる。
下宿で寝込み、友人ラズミーヒンや医師のゾシーモフたちが親身に介護するも、抜け出してアリョーナのところから盗んだものを隠したりする。妹の婚約者ルージンが下宿に来れば喧嘩したり、警察事務官ザメートフと危険な会話をしたり、街をさまよい懊悩する。
そのさなか、マルメラードフの事故死に遭遇、母から送金されたなけなしの25ルーブルをマルメラードフの残された家族にあげてしまう。
下宿に戻ると田舎から出て来た母と妹ドゥーニャが待っていた。
わたしの感想
あらすじを忘れていたからなのか、ジェットコースターのように変化にとんだ展開に驚く。さすが犯罪ミステリー小説の古典だ。それから、スラブ人のというか、ロシア人の極端な性格、熱するかと思いきや、氷のように冷める上がったり下がったりの行動の満載に圧倒される。『カラマーゾフの兄弟』もそうだったが、ドストエフスキーの骨頂だ。 -
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2巻は母と妹が上京(ではないのか)してくるところからスタート。私のイチオシラズミーヒン大活躍。そして妹の婚約者ルージンの小物感もすごい(笑)今でいうモラ夫だよな。
ポルフィーリーがラスコーリニコフの論文の話をするところは手に汗握る展開!うぉぉぉっ!ってなった(笑)やっとここでラスコーリニコフがなにを考え殺害に至ったかがわかる。そう言うことかぁ。
後半は私のもう一人の推しキャラであるスヴィドリガイロフ(名前が長い!)が登場。会話が成立していない感じが好き。ソーニャと聖書の朗読シーンは聖書がイマイチわかんないからアレだったけど、ラストのポルフィーリーとの対決は面白かった!
いやぁ、盛り上がり場面が多くてページをめくる手が止まらん。わくわくしながら3巻へ。 -
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ネタバレ第2巻では、主人公・ムイシキン公爵について「黄金時代にすら聞いたこともない純真さ、無垢さを披露したかと思うと、今みたいにとてつもなく深い心理観察でもって、いきなり弓矢みたいにぷすりと人の心を射貫く」という人物評が語られる。その評は的を射ているが前巻のムイシキン像に近く、本巻でのムイシキンはそのように聖人然とした様子だけでいることはできず、懐疑や嫉妬といった人間的な感情に苦しんでおり、物語全体にも不安感が漂う。
本巻では、ムイシキンとロゴージンとの対話が印象的だった。特にロゴージンがどのようにムイシキンのことを感じているか語る場面が面白い。
「レフ、おれはな、あんたが目の前からいなくなると、とたんにあんたが憎くなってくる」「ところがいま、あんたといっしょにいて十五分と経っていねえのに、憎しみなんぞまるで消えちまって、あんたのことが、また元どおり好きになっている」「あんたといっしょにいるとき、おれが信じているのは、あんたの声なんだよ」
ここには友情というだけに留まらず、神に対して背を向けようとしている人間の(それでも美しいものから逃れ得ず、背を向け切ることのできない罪人としての)告白の趣きさえあるように感じられる。
次巻以降、2人の関係がどのように変化するか、もしくは変化しないのか、続きを読み進めたい。