亀山郁夫のレビュー一覧
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上巻の感想でも述べたが、オウム地下鉄サリン事件が起きた1995年が、本作の舞台として選ばれたのはやはり意味深いという印象が強く残る。
90年代には、ソ連崩壊により冷戦も集結し、近代からの脱却を目指した我が国でも個人主義が進み、他者に無関心な人々が増殖した。インターネットが普及し、人々はネットを介した疎結合に依拠するようになった。国家間の覇権をかけた戦争は、むしろ局所的なテロリズムにその戦いの形態を変え、冷戦終結とともにそもそも世界の覇権はアメリカに一極化した。そうした世相の間隙を突くように起きたのが、地下鉄サリン事件だったのではないか。
1995年という時代を背景に、あるいは新興宗教集団に傾倒 -
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いよいよ、本巻ではラスコーリニコフが追い詰められていきます。本巻でのメインイベントは妹アヴドーチヤの婚約者である成金弁護士のルージンとの対決、ラスコーリニコフと娼婦のソーニャの密会、そしてラスコーリニコフと予審判事ポルフィーリィーとの2度の対決と盛り沢山。
まずは、ルージンですね。彼の人間性自体が今の時代ならセクハラ(笑)。大きく歳の離れたアヴドーチヤに対しての彼の歪んだ愛情(これは愛情と呼ぶよりも所有欲と言ってしまった方が近いかもしれない)が描かれます。
そのルージンの「愛情」とは、『金銭的に不自由している若くて美しく、それでいて不幸な女性に対して、自分と結婚することにより、大金と弁護士の -
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数年前、急遽、チャイコフスキイの弦楽セレナードで舞台に乗ることになった。1カ月で合奏から脱落しない程度に難しい譜面をさらわなければならず、文字通り気が狂ったように練習した。自分のパートをさらうのはきつかったが、合奏練習に行くとそれは喜びに変わった。冒頭のノスタルジーをかきたてられる旋律、見たこともないのに「ロシアの大地」などという言葉が頭に浮かぶ。他方、第1楽章主部のテーマの何たる典雅。あるいは通俗に堕ちそうで堕ちないワルツ。エレジーのセンティメント。そして快活でも優雅なフィナーレの最後に戻ってくる冒頭の旋律の感動。チャイコフスキイとの蜜月を過ごしたのである。
でもチャイコフスキイはなぜか -
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『新カラマーゾフ』が新刊書の棚に並んでいるのを見て、正直鳥肌が立った。
しかも、訳者である亀山郁夫さんの小説。(私が読んだのは原卓也版だから申し訳ないけど)
それでも単なる焼き直しなら、先日『カラマーゾフの妹』を読んだことだし、しばらく待っていただろう。
舞台は1995年の日本。
阪神淡路大震災であり、地下鉄サリン事件のあった年をクローズアップして、カラマーゾフ家を送り込むなんて、凄すぎる展開じゃないか!
と、ここで誘惑に負けて購入に至ったのだった。
前巻だけで700ページ近い量に圧倒されながらも、一気に読めてしまった。
なるほど。本家カラマーゾフのような国家的広さは持ち合わせてはいない。 -
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『永遠のロストナンバー』という宿命を持ち続けるドストエフスキーの『悪霊』の中にある「チーホンのもとで」の中にある『スタヴローギンの告白』ここでは世界初の試みとして現存する3つの告白を収録しております。
「<告白>のない『悪霊』は丸屋根のない正教寺院である」
これはロシアを代表するドストエフスキー学者の一人であるユーリー・カリャーキンの言葉です。『永遠のロストナンバー』という宿命を持ち続ける“スタヴローギンの告白”を含んだ『チーホンのもとで』。これは小説『悪霊』の劇中で重要なクライマックスのひとつとして第2部9章、もしくは第3部1章に収録される予定ではありましたが、掲載誌である『ロシア報知』 -
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ドストエフスキーが後年に著した『五大長編』の内、政治的な意味あいが最も強いといわれる『悪霊』その完結編です。全ての物語上の複線が回収され、狂乱と崩壊に向かって疾走する様子が描かれております。
登場人物の実に3分の1が何らかの形で死を迎えるという陰惨極まりない小説であるドストエフスキーの『悪霊』その完結編です。しかし、改めて思うのはストーリー全体の時間軸が秋から冬にかけての「一季節」であるということに衝撃を受けた、ということです。ようやくこの第3部で全ての複線が回収され、物語は一気に崩壊へと突き進んでいくのです。『革命組織の内ゲバリンチ殺人事件』と美貌。知力。腕力に加え、貴族という特権的な身分 -
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亀山郁夫教授によるドストエフスキー文学の解説および伝記です。下巻では人生の後半部に表した『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』の解説を中心に波乱に満ちた人生から穏やかな晩年に至るまでを追います。
ようやく読み終えることができました。亀山郁夫教授によるドストエフスキーの解説書。その下巻です。ここでは人生の後半部に起こった出来事や彼の人生および作品に重大な影響を与えた事件などを取り上げ、詳細な解説を行ったものです。作品では革命組織の内ゲバリンチ殺人とニコライ・スタヴローギンという『善悪の彼岸』に立ち続ける人間を描いた『悪霊』ひとりの『運命の女性』をめぐって父と子が相争う(どこかで聞いたことがあ