あらすじ
世界最大の文学は未完だった。もし「第二の小説」がありえたら、ドストエフスキーは何をそこに描いたか? 作家の精神と思想をたどり、空想する、新しい文学の試みである。
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Posted by ブクログ
光文社カラマーゾフの兄弟を読み終え、翻訳者の方の熱量に圧倒されていたら、同じ方の続編空想があることを知り「まだまだ書き足りないなんて」と驚きを感じて手に取りました。豊富な背景知識を持った方が深く洞察したからこそ導かれる考えが、みっしりと詰まっていました。
個人的には、原作の方でなぜページを割くのか困惑していたコーリャ界隈の記述が続編に繋がる布石だったことが説明されていて、腑に落ちる思いでした。
失われた続編、なんてロマンがあってわくわくするものなのか。100年後に研究する人も同じ書物に当たりながら空想するのでしょうか。ドストエフスキーの書いた文章を読み込ませたAIに続編を書いてもらう遊びも楽しそう。
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ベストセラーのカラマーゾフの5冊が読み終わりましたが、まだまだ楽しみが残っていました。訳者だった亀山氏がその続編を空想するという何とも素晴らしいファンタスティックな本を用意してくれたのです。カラマーゾフの中に隠された謎の数々、そして妻アンナ他に語った言葉、他作品の中のヒント、そしてドストエフスキー自身の生涯、ロシアを騒がせた事件・思想家たち。それらを組み合わせ、大胆な推理になりますが、実に説得力に富む粗筋が展開しています。あまり解き明かすのも野暮ではありますが、アリョーシャとコーリャそしてリーザの3人が中心に展開し、皇帝暗殺事件へつながっていくのです、その中でアリョーシャは一体どのような役割を果たすのか? むしろコーリャが中心的な位置を占めることは確実な模様です。
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「アリョーシャがそんなことするなんてっ!!」カラマーゾフを読み始める前は、全然こんな本「ケッ」って思ってたんだけど、読み終わったら、ぜひ買わなくては読まなくては、と思った。書かれなかった第2の小説。それがどんな展開になるかを科学的(?)に分析。どうなるの?どうなるの?と思ってさくさくと読めました。特にこの本、訳者の亀山先生(現在『罪と罰』を訳し中らしい☆楽しみ!!)が書いているんだから、信憑性が高い!!そうか、そうかー、なるほどーー、ふむふむ、と思って読めました。読みながら自分も第2の小説を考えられて、もしかして、こんな筋道!?と思ってたら合ってたりして・・・そこらへんの推理小説よりは面白いかも♪(カラマーゾフの後なら)
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序文で約束された「第2の小説」とは何か?
「少年たち」のディテール、当時の連続テロ、主要人物の行動や性格を分析し、「第2の小説」の事件と実行犯を推理する。著者でなければ書けない楽しい新書。小説を読破した方はぜひ!
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第2のカラマーゾフの兄弟の前に、カラマーゾフの兄弟を読んでいない人間はついていくのが大変だった。
読む順番を間違えた。
だけど、確かな論拠をもとに続編を予測したのはすごいし、まだカラマーゾフの兄弟を読んでいない人間にも、物語は様々な複線を帯びていて、壮大なことになっていることが伝わった。
さて、まずはカラマーゾフの兄弟を読もう。
Posted by ブクログ
なぜ父は殺されるのか?
それは復活のために。
アリョーシャ実行犯説は聞いたときからピンと来なかった。
モチーフである父殺しの反復といえど、ガリラヤのカナで目覚めたアリョーシャが皇帝を、というかキリストを象徴的にでも殺すということがピンと来なかった。
で、本書。読む前は、イワンが無意識にスメルジャコフをそそのかしてフョードルを殺しミーチャが巻き添えをくらったように、アリョーシャが無意識にコーリャをそそのかして皇帝を殺しイワンが巻き添えをくらうのかな、なんて思ってたけど、ガチョウの下りを読んでたときにはたとひらめく。
コーリャがバカをそそのかしてエサに夢中なガチョウの首をはねたように、アリョーシャがトロイをそそのかしてテロに夢中なコーリャの首をはねるんじゃないだろうか。
だからカルタショフはトロイのエピソードを割り当てられたんだよ(木馬だけに)。な、なんだってー!?
とまあ、この思いつき自体には大した意味はない。このひらめきがもたらした意味は内容じゃなく、第二の小説は父殺しを反復する物語ではなく、父殺しを踏みとどまる物語なんじゃないかという考え。
そう考えるなら散々いわれてる検閲も問題ない。そして最後まで読んでるうちにその考えが、冒頭にでてきた言葉にまで発展した。
なぜ第一の小説で父は殺されなければならなかったのか?
自伝的要素のため?古来から用いられてきたモチーフだから?キリスト教を否定するため?
否。それは復活のため。新たなキリストとしてアリョーシャが、ロシアのキリストとして、神の人アレクセイとして提示されるために。
な、なんだってー!?
とまあ、本文とは全然ちがう読み方をして楽しんでいた。ミステリーで謎解きが楽しいよね、って感覚がいまいちわからなかったけど、これは確かに楽しいもんがある。
本文の推理は非常にスマート。さまざまな伏線、構造、自伝的要素までをも巧みに回収して、第二の小説のプロットを提示する。
確かにコーリャはガチョウの断頭台よりは、ミーチャの誤審を反復する方が強いわなー。さらにシベリアなんて裏ドラつき。そしてカラマーゾフシチナや無言のキスまで回収する鮮やかさ。
しかし、まあ、冒頭の考えは捨ててない。
新たなキリストというよりは、神の人アレクセイのように、その死後有名になるパターンだから序文じゃ無名だったんじゃないかなって具合に、いまだにあーだこーだと空想してる。
そういった意味でこの偉大すぎる小説が、より偉大な第二の小説の前振りでしかなかったという事実は、そしてその第二の小説が書かれなかったという事実は、人類の莫大な損失ではあるけれど、測りきれない恩恵でもあるよねっつー。
ま、恩恵たるには今後数百年かかるだろうけど、そのおこぼれとして、こういった楽しみ方ができるんだから、それはそれでありあり。フェルマーの最終定理的な、もしかしたら素人でも人類を悩ませてきた偉大な謎を解くことができるかもしれない、っていう20年くらい前の空気にも近い。
本書はそんな謎解きの世界に読者を誘ってくれる。豊潤で汲み尽くせない謎がそこには待っている。偉大な、偉大な小説家が残した謎が。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
未完に終わった大長編の新訳から浮かび上がった驚くべき「続編」の可能性。
ドストエフスキー最晩年の思想がいま、蘇る。
[ 目次 ]
第1章 作者の死、残された小説(残された手がかり 空想のための九つの条件 友人、妻……同時代人の証言)
第2章 皇帝を殺すのは誰か(序文にすべての秘密がある 「始まる物語」の主人公たち 思想の未来)
第3章 託される自伝層(年代設定とタイトル アリョーシャはどんな人間か テロルと『カラマーゾフの兄弟』と検閲)
第4章 「第二の小説」における性と信仰(リーザと異端派 「第二の小説」のプロットを空想する 影の主役、真の主役)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
作者の予告が有りながら、死去により未刊となった「カラマーゾフの兄弟」の「第二の小説」。そのストーリーを新訳文庫の訳者が組み立てる試み。
新訳本出版社の企画ながら、奇を衒わずに公表されている資料に忠実に、解明・組み立てを行っている。
最大の注目は、ドストエフスキーの死後一ヶ月余りで、予想されたストーリーである「皇帝暗殺」が実際に「行われて」しまった事だ。ここをどう片付けるかに注目だ。
作者の予告は「一つの伝記に、二つの小説」。よって、アリョーシャが主人公、エピローグ前に出てくる「少年たち」が物語の中心になることは言うまでもない。
「空想」は資料・史実に照らして、蓋然性有りと読めた。おそらく多数が納得できるはずだ。
Posted by ブクログ
これまでよく唱えられていたアリョーシャが皇帝殺しのテロリストになるという説を修正し、コーリャが実行犯になりアリョーシャはそれに影響を与える側にまわるとする。当時の検閲の徹底ぶりの指摘など説得力がある部分と、そうか?と思わせるところ両方あり。
Posted by ブクログ
期待以上に面白かった。
続編の予想としてよりも、本編の背景解説として楽しめた。
アリョーシャが変貌するのかぁ。
本物の続編、読んでみたい。でもそれは叶わないのですね。