亀山郁夫のレビュー一覧

  • ドストエフスキー 父殺しの文学 (上)

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    『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』の新訳で有名な筆者によるドストエフスキーの生涯及び作品を講義形式で行う上巻です。彼の生い立ちから『白痴』についての詳細を極める解説が素晴らしかったと思います。

    ドストエフスキーの作品を読みながらこういう解説を読むのは果たしていいものなのかどうかということは非常に迷うのですが、多様な解釈のできるドストエフスキーの作品を『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』の新訳で知られる亀山郁夫氏の筆による解説と講義で綴られる本書は、ドストエフスキーの悩み多き人生と、数々の要素に引き裂かれた心の中から生み出される複雑な小説及び登場人物、ストーリーに鋭く迫っております。

    18歳で

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    2013年08月16日
  • チャイコフスキーがなぜか好き 熱狂とノスタルジーのロシア音楽

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    ドストエフスキーの小説の新訳が有名な亀山先生ですが、わたしは先生の翻訳したドストエフスキーをまだ読んだことがありません。そのかわり、『磔のロシア』などロシアの文化史の研究書を何冊か読み、たいへん強い印象を受けました。
    本書は亀山先生のロシア音楽への熱い思いが溢れていて、巻末のロストロポーヴィッチ(チェロ奏者)、ゲルギエフ(指揮者)との対談も含め、たいへん興味深く読むことができました。ただ、音楽を切り口にしたロシア文化論である本書を、入門書的な本のタイトルから内容を想像して読み始めると、戸惑うかもしれません。著者はチャイコフスキーそのものよりも、副題「熱狂とノスタルジーのロシア音楽」の方に力点を

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    2013年08月03日
  • 悪霊 1

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    ネタバレ

    キリスト教的世界観の抱える問題をどう突き詰めるか。
    それを表現するにあたって、
    『悪霊』はうってつけの舞台である。

    ドストエフスキーは本作において、
    記憶するのが容易でない数の人物を登場させ、
    かの世界を、政治的文脈を交えた隘路を超克しうるものとして提示する。

    ここに脈絡づけられるものとして、
    本作に据えられたプーシキンの詩とルカ福音書のエピグラフは
    あまりにも象徴的である。

    《悪霊》には少なくとも三つの意味を見出すことができる。
    西欧から入り込んできた無神論という思想。
    無政府主義実現のため、活動組織をオルガナイズすべく暗躍するピョートル。
    そして、ニヒリストであり退廃的なスタヴローギ

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    2013年03月26日
  • 悪霊 別巻~「スタヴローギンの告白」異稿~

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    マニアックではあるけど、ドストエフスキーの苦悩の過程はよくわかる。人物の造形を変えて受け入れられやすくする努力はもちろんのこと、とても些細な部分にもそれぞれの版で修正が入っているところに作家の作業、こだわりを感じる。

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    2012年12月18日
  • チャイコフスキーがなぜか好き 熱狂とノスタルジーのロシア音楽

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     ロシア音楽の単純で複雑なところ。良く分析されている。正教と西欧の板挟みならず、異端(分離派)との葛藤。しかし19世紀末のロシア人音楽家はかようにして生き残ったのだ。

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    2013年05月09日
  • 悪霊 3

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    スタヴローギンはブラックホールのような虚無であり、そこに何か自分好みの意味を見出してしまう周りの人々、という受け取り方もできるのかな。そしてその虚無は悪霊のように人々の中に入り込み湖に飛び込ませてしまう。もっと噛みしめるようにもう一度読みたい。

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    2012年11月22日
  • 悪霊 2

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    本作品の核となる「チーホンのもとでーースタヴローギンの告白」が80年近くも封印されていたことに驚き、そして今読めることに感謝する。これを読んではじめてスタヴローギンの人となりが分かって面白くなった。登場人物は多いし関係も複雑だし背景知識も乏しい中で、これだけ引き込まれるのにはドストエフスキーの筆力を感じざるを得ない。ほんとキャラクターが際立っていて、会話の場面がすごく面白いです。もースタヴローギンとピョートルの緊張感ある関係がたまらないのだけどどうしよう。
    『悪霊』の意味、『悪霊』に憑かれていく人々の末路、壮大な物語のからくりが気になって気になって仕方ないこのテンションのまま次巻いきたい!

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    2013年03月01日
  • 謎とき『悪霊』

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    悪霊は、自分が最も好きな本で、最もよく意味が分かっていない本。その悪霊の謎を、亀山郁夫先生が読み解いてくれる。だが、それでも分かった気にしかならない。

    今回分かったことは、悪霊が書かれた当時のロシア、スタヴローギンの告白出版における揉め事がストーリーに大きな影響を及ぼした事。

    そして、スタヴローギンという人物が、もう少しクリアになったこと。悪霊の意味の分からなさは、スタヴローギンという人物が悪魔的にも関わらず、物語の中では特に何もしない事だ。だが、物語の中では語られていない、過去に行われていたであろう事、スタヴローギンの心情を想像する事から垣間見得る恐ろしさ、そしてスタヴローギンの分身とも

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    2012年10月08日
  • 悪霊 1

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    ネタバレ

    殺人とか反社会主義とか神がかりとか、ドストエフスキーおなじみの要素満載。登場人物が意図的にせよそうでないでせよ狂いすぎていて、感情移入して読むにはキツイ。しかも救いがない分やや胃もたれ。
    古典を読んで思うのは聖書やらのモチーフに関する知識がないせいで解説がないとキツイ。

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    2012年08月21日
  • チャイコフスキーがなぜか好き 熱狂とノスタルジーのロシア音楽

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    ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012の会場で手にして、
    待ち時間の間に読み終えた…途中で著者本人の
    講演も聴いて…それまで、やや退屈にも感じていた本書が
    俄然面白くなったんです!

    もともと本人は、あまりチャイコフスキーがお好きではないらしく…
    副題の「熱狂とノスタルジーのロシア音楽」に思い入れがあったのです。
    新書のタイトルは、版元の意向で、よりキャッチーなものへと
    替えられることが多く、多くは内容にそぐわないタイトルになっている…

    もしかしたら、本書も、よくあるそんな一冊であるのかもしれません。
    ただ、著者本人がロシア音楽が大好きであるのは疑いようもなく、
    そんな熱気は、本書からも

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    2012年05月17日
  • ドストエフスキー『悪霊』の衝撃

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     ドフトエフスキーの五大長編の中で、もっとも解釈に苦しむ「悪霊」。この作品につき新訳で知られる亀山氏、ロシアの研究者サラスキナ氏の討論と質疑応答を中心に組み込んだ、文学好きには必読の書。

     特に主人公スタヴローギンの「告白」の取り扱い方と解釈。また、彼のエルサレムからヨーロッパを縦断し、アイスランドに至る放浪をどのように位置づけるのか。という二点がヤマ。

     ロシア正教とその異端、ここのところが事前の知識として必要である。正直、自分はスタヴローギンのアイスランドへの渡航を、作者はどのようなバックボーンを得て作品に入れたのかを解説した終盤の部分にもっとも興味をそそられた。

     「悪霊」そのもの

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    2012年05月12日
  • 悪霊 1

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    ネタバレ

    ロシア人って、こんなにしゃべるんだろうか?
    でも好き。
    巻末の読書案内も分かりやすくて良いです。
    訳は昔なじみの新潮文庫のほうが好き。

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    2012年02月12日
  • 『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する

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    なぜ父は殺されるのか?
    それは復活のために。

    アリョーシャ実行犯説は聞いたときからピンと来なかった。
    モチーフである父殺しの反復といえど、ガリラヤのカナで目覚めたアリョーシャが皇帝を、というかキリストを象徴的にでも殺すということがピンと来なかった。


    で、本書。読む前は、イワンが無意識にスメルジャコフをそそのかしてフョードルを殺しミーチャが巻き添えをくらったように、アリョーシャが無意識にコーリャをそそのかして皇帝を殺しイワンが巻き添えをくらうのかな、なんて思ってたけど、ガチョウの下りを読んでたときにはたとひらめく。

    コーリャがバカをそそのかしてエサに夢中なガチョウの首をはねたように、アリ

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    2011年08月05日
  • 悪霊 2

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    ややのんびりした感のあった第1巻と打って変わって、めまぐるしく物語が展開する第2巻。キリスト教や社会主義思想の知識に乏しい自分にとっては難解な部分もあったが、それでも巻末まで一気に読めてしまうのは、ストーリー手リングのうまさ、登場人物の個性豊かさのゆえだろう(特にピョートルの気忙しい性質の描かれ方は印象的だった)。
    第1巻の刊行からかなり間が空いているので、巻末にある「第1部のあらすじ」は巻頭にあるとなお便利だったと思う。

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    2011年05月17日
  • 『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    未完に終わった大長編の新訳から浮かび上がった驚くべき「続編」の可能性。
    ドストエフスキー最晩年の思想がいま、蘇る。

    [ 目次 ]
    第1章 作者の死、残された小説(残された手がかり 空想のための九つの条件 友人、妻……同時代人の証言)
    第2章 皇帝を殺すのは誰か(序文にすべての秘密がある 「始まる物語」の主人公たち 思想の未来)
    第3章 託される自伝層(年代設定とタイトル アリョーシャはどんな人間か テロルと『カラマーゾフの兄弟』と検閲)
    第4章 「第二の小説」における性と信仰(リーザと異端派 「第二の小説」のプロットを空想する 影の主役、真の主役)

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    [ お

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    2011年04月07日
  • ドストエフスキー 父殺しの文学 (上)

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    [ 内容 ]
    崩壊への道をひた走る帝政ロシア。
    貧困、凶悪犯罪、性の退廃、革命の夢と挫折。
    世界の変革を夢見る若いドストエフスキーに死刑判決が下る。
    八年のシベリア徒刑、賭博、恋愛の修羅場から『罪と罰』『白痴』が生まれた。
    青春時代の内面に刻まれた四つの事件=トラウマの深層に迫り、自己犠牲と欲望に引き裂かれた主人公たちの悲劇的な運命を通して、隠された「父殺し」の謎を焙り出す。

    [ 目次 ]
    第1部 若き魂の刻印(楽園追放;引き裂かれた夢想家;回心、神をはらめる民;地下室の誕生)
    第2部 聖なる徴のもとに(観念という狂気;聖なるものの運命)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆

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    2010年06月04日
  • 『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する

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     作者の予告が有りながら、死去により未刊となった「カラマーゾフの兄弟」の「第二の小説」。そのストーリーを新訳文庫の訳者が組み立てる試み。
     新訳本出版社の企画ながら、奇を衒わずに公表されている資料に忠実に、解明・組み立てを行っている。

     最大の注目は、ドストエフスキーの死後一ヶ月余りで、予想されたストーリーである「皇帝暗殺」が実際に「行われて」しまった事だ。ここをどう片付けるかに注目だ。
     作者の予告は「一つの伝記に、二つの小説」。よって、アリョーシャが主人公、エピローグ前に出てくる「少年たち」が物語の中心になることは言うまでもない。

     「空想」は資料・史実に照らして、蓋然性有りと

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    2010年05月04日
  • 『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する

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    これまでよく唱えられていたアリョーシャが皇帝殺しのテロリストになるという説を修正し、コーリャが実行犯になりアリョーシャはそれに影響を与える側にまわるとする。当時の検閲の徹底ぶりの指摘など説得力がある部分と、そうか?と思わせるところ両方あり。

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    2009年10月04日
  • 悪霊 1

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    ネタバレ

    『罪と罰』を読んだときのような引き込まれるような感覚はないかな。まだ長い物語の序章のような展開で登場人物の紹介と事件に向けた伏線をはりまくってる状態なので仕方ないかな。後半になって濃い目のキャラクターたちが登場してきて2部に進むのに期待が持てる。解説が分かりやすくて良いな。光文社の古典新訳文庫は良い。

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    2025年12月04日
  • 罪と罰 3

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    殺人を許される人がいるというか、大義のためには誰かが死んでも仕方ないだけなのでは。勧善懲悪は好きだから主人公には少し同意した、デスノートも同じ系譜なんだね。でもその大義っていうのも一方向的な価値観だから傲慢な勘違いの可能性もある、結局結果を出した人の行いが正当化されるって事なのかな、世知辛い。

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    2025年11月06日