山極寿一のレビュー一覧
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激しく共感
人間の住居は家族や共同体の信頼関係を反映する場所なのである。だから、人間の住居で雨をしのぐやれだけではなく、外からの視線を防ぐ壁がある。
アフリカの奥地の熱帯雨林で訪問した村は、道沿いに家が立っていて、1番奥に村長の家、真ん中付近にバラザと呼ばれる集会所があった。法務局はまずこのバラザに立ち寄り、自分の素性や旅の目的をまず説明し、村長に挨拶することになっている。
家の構造もそこで暮らす人々の人間関係を表していた。
しかし現代の住居は人間関係を一切考慮していない。いくつかの住居のモデルがあって、それを個人が自分たちの生活設計に従って選ぶ。住居を作る側がそこで得られる利便性と夢を解 -
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鳥の研究者である鈴木さんと、ゴリラの研究者である山極さんの対談形式の本。
まず本書の主旨とは違うが、お二人の研究スタイルにびっくりした。
動物の研究って、人間↔︎動物の構造だと思ってた。主に人間が動物になにかアクションを起こし、その反応を観察するみたいな。
それもあるけど、お二人は対象動物のコミュニティの中に自ら入り込み、一緒に生活することで観察をしている。とても衝撃を受けた。文化人類学のフィールドワークだなと思った。
そしてこの姿勢こそが、大事なことなんだと思う。
近年まで人間は他の動物よりも優れている、言語を扱えるから賢い、みたいな(キリスト教的な)考え方が根底にあったせいで、動物の研究っ -
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ゴリラがむねをたたくのは、「ほんとうに戦いの宣言なんだろうか。」そんなぎもんをいだいた山ぎわさんが、ゴリラとともに暮らし、かんさつして気づいたことを教えてくれる。
ゴリラって、とても友好的で、平和をもとめているんだな。遊ぶ方法だって、すごくやさしい。大きなゴリラは自分の力をおさえて、小さなゴリラにあわせるんだって。
人間は、ゴリラから学ぶべきことがたくさんあるなあ。
100年以上前、人間がゴリラへまちがったイメージをもち、それを広めたせいで、たくさんのゴリラが殺されてきた。こうした人間のおろかなこういへの、ちょしゃのしずかないかりと、ゴリラへのあいを感じられた。
「もし、19世紀の探検 -
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鳥になった研究者とゴリラになった研究者が、
動物たちの言葉とコミュニケーション能力、
そしてヒトの言葉の進化と現状についてをも語り合う。
・まえがき
Part1 おしゃべりな動物たち Part2 動物たちの心
Part3 言葉から見える、ヒトという動物
Part4 暴走する言葉、置いてきぼりの身体
・あとがき
参考文献有り。
「言語」というキーワードで繋がる二人の研究者の対談集。
お互いの知識を相手が理解し易いように述べているから、
読む者にも分かり易い内容になっている。
それでいて、自分たちの研究と対象についての語りは、熱い。
それを受け入れて理解し合い、同調してゆくのも、微笑ましい。
鳥 -
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「鳥になりたかった男」と「ゴリラになりたかった男」の対談。
それぞれの分野の知見を話し合うところから、最後には人の言語についての啓蒙のような話に及ぶ、壮大で聞き応えのある対談だった。
環境に適応するために言語は進化した。
人間だけではなく、すべての生物が、それぞれの置かれた環境で生き延びるべく進化している。
しかし、人間は人間主体で世界を捉えている。
「人間にできることが動物にもできるかな?」という目線での研究や実験がたくさんある。
言葉を理解できるか?計算ができるか?と言うものが例えばそうだ。
しかし人間は一つの生き物に過ぎず、人間だけが優れているわけではなく、優劣はない。
私たちは犬が見て -
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ゴリラの生態を研究している山際氏とシジュウガラの言葉を研究している鈴木俊貴氏という若い学者の会話。哺乳類と鳥類と全く遠い分類に属するこれらの動物の共通点もあり、そこが面白いところ。喋っているだけではなく、彼らに意識があるのか、まで追究している研究は興味深い。ゴリラもシジュウガラも思ったより頭が良いようだ。歌うこと、踊ることは人間と彼らが共通している点で、言葉を抜きにしても共鳴・共感・協調のためのコミュニケーションをしているということは確かにそのとおりなのだと感じた。山際氏がルワンダのゴリラ・タイタスと26年ぶりに会った際に、「グッフーム」とゴリラの言葉で語りかけるとタイタスの顔が急に子供っぽく
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著者は、霊長類学者としてゴリラ研究の権威である。
今西錦司氏が創始した日本の霊長類研究は、「猿になりかわって彼らの社会や歴史を記録せよ」つまり、猿の群れの中に入り込み、自らが猿のような暮らしを味わい、コミュニケーションの輪に参加して、彼らの社会の仕組みを理解せよ、という。
研究のために観察をする著者に、最初は逃げたり攻撃してきたゴリラたちも、しばらくすると著者を敵視しなくなり、群れの中で観察することを許すようになったという。それでも、ゴリラは人間の行動に常に目を配り、彼らの気にさわることをすると必ず叱って行動を改めさせたという。そうやって、自分達のルールを教えていくのだろう。
ゴリラの研究をす