山極寿一のレビュー一覧
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霊長類学者山際寿一と作家小川洋子の対談集。山際さんは京都大学学長になる人を巻き込む言い方が出きる人だなと感じ入った。小川さんは対話する人のこれまでの経験や記憶のかけらをうまく言葉にさせる力がある人だなと思った。山際さんの人だけが持つ家族を結びつけるものを愛と叫ばせたのは、小川さんの力だなと思い、吉本の対幻想を思い起こさせた。ゴリラの子殺しの話は結局原因が自分の子供を残したい雄の欲望の発露なのか、人に生息域を狭められたことによる反動なのか結論が出ていない。なんとも陰鬱な話だがゴリラもチンパンジーも子殺しをするなら、人間の児童虐待も動物としての性なのかとも思ってしまった。さまざまな感慨を生む刺激に満ちた対談である。
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京都大学総長を務めたゴリラ学者が、自身の経験や大学論、未来と学術の関係等について論じる。
2004年に国立大学が法人化され、国の財政から切り離されて予算が不足したり教員の業務が増えたりといった弊害が生まれた。
アフリカでのゴリラ研究のフィールドワークの体験談も面白い。アフリカの学生に学位を取得させる努力家も。
教育は贈与。人間には家族とその外の共同体があるが、ゴリラには家族しかない。人間はジャングルを出て直立二足歩行によって食物の運搬と分配をすることで高い共感力を有するようになった。その結果家族を越えた共同体が生まれた。
オーグスタン・ベルクのコスモス国際賞受賞時の「西洋近代の古典的パラダイムは二元論お拝中律に基づき、必然的に近代性と工業化をともなったがために人間存在を脱宇宙化した。再宇宙化には新たな思考のあり方が必要」という講演を引用、和辻哲郎や西田幾太郎を紹介している。 -
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ネタバレ心に残った部分(要約)
✔実際の五感で感じる世界ではなく言葉などのフィクションのフィルターを通して自然を眺めている。フィールドワークではあえて言葉に翻訳しないのが極意である。
✔「家族」を持つのは人間のみ。人間の社会性は、仲間と一緒に安全な場所で食べる「共食」から始まった。しかし今は効率性を求め「自分の時間」をつくることが自分の欲求を満足させる近道とする考えも広まった。それによって孤独をつくり時間を手に入れても何をしたらいいか分からない人がいる。それはそもそも人間が一人で時間を使うようにできていないからである。
感想
山極先生の考える世界観が僕と親しいと感じてうなずきながら読む場面が多かった。特にシェアの時代であるということは多くの人が頭では理解していることだと思う。 -
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山極先生4冊目。
山極先生サイドからは人類の起源、小原先生サイドからは宗教の誕生をめぐるエピソードや考察が提示されて、現代社会が抱える諸問題を分析していくという構成。
山極先生が豊富なフィールドワークをもとにお話されるエピソードは、ホント、毎回毎回面白い。けど、本書はこれまでに読んだ山極先生の本よりはエピソード少な目なので星は4つ。でも、自分の考察は多方面で深められた気がする。ハラリさんの著書にも触れた部分があって、専門家の先生方の受け止め方を知ることができたのも面白かった。
まずは、山極先生の発言から。
①一度グループを離れたメンバーがまた同じグループに戻れるのは人間だけだけど、それがなぜなのかは山極先生にもまだ分かってない。不在の者への思いやりは人間に特有の心情ってこれ、内田樹先生の『死と身体』にも重なる内容で、すごく興味深い。
②宗教は個人の命の救済のために出てきたけれど、それが集団の共通幻想になってしまうと力を必要とし始め、逆に個人の犠牲を求めだす、という山極先生の指摘は、「倫理は常に少数派のものでしかありえない」という内田樹先生の指摘と重なり合う。
次に、小原先生の発言から。
③共同体の秩序維持、あるいは不安一掃のためにスケープゴートを捧げる儀式は世界各地にある、とのこと。コロナがもたらす不安は何を供物に求めているのだろう?と思わされる。とりあえず組織的スケープゴートってことで陶片追放について書かれた本でも読んでみるか。
④アメリカのキリスト教は成功哲学と結びついて資本主義化したキリスト教だということ。とするなら、日本が戦後、近代化への過剰適応ともいえる反応を見せてあらゆる分野に合理主義を持ち込んだのは、アメリカをスタンダードだと勘違いしたからか?丸山眞男氏はそこを指摘した?
⑤クエーカーは非暴力を重視する一派らしい。なるほど、だから『侍女の物語』の中でクエーカー教徒はギレアデにおいては異教徒扱いだったわけか!!
などなど。
こっからまた色んな方面に広げて読書を進めてみよう!という気持ちにさせられた。
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人類が他の動物と異なる特質を得たのは、共感能力を獲得したとの由だが、その共感が暴発するところに暴力の根源があると述べている.共感と宗教の関連も詳しく解説してあり、非常に参考になった.スマホ中毒になっている人々に 、ラマダーンを真似てe安息日を提案していたが、面白い発想だ.人類に近いゴリラやオラウータンは群れから離れた存在は元に戻れないが、人類は不在だったものを受け入れることができる.これは人間の性質として重要だと解説してあったが、その通りだと思う.この不在に関して、過去と現在での考察だけでなく未来について考えるべきだとの論考があったが、素晴らしい視点だと感じた.