Posted by ブクログ
2015年05月24日
共通の祖先であるヒト科の仲間であるゴリラの生態を知り、非ヒト科のサル等と比較することにより、ゴリラとサルとヒトの違い、特に家族・集団・上下関係さらにコミュニケーション行動に関してその違いを明らかにしてくれる本です。▼▼▼言語が人間の食料革命(運搬→肉食→火による調理→農耕牧畜)に伴って生まれたという...続きを読む説も面白い。▼ゴリラは群れの中で序列をつくらない。反対にヒト科ではない多くのサルは勝ち負けの世界をつくり、ヒエラルキーを構築。▼人間社会は、両方の部分を備えている。そして、ゴリラ的な性格から、加速的にサル社会化している。▼人間が人間らしさを保つために必要な家族をないがしろにして、個人主義が突き進んでいけば、社会は平等性を失っていくと想像できます。それは、優劣を行動原理とするサルの社会に似ています。▼人間は家族を重要視する生き物です。家族無しには生きられません。個人一人きりの存在には決してなりきれないのです。▼霊長学研究の創始者は今西錦司。1941年『生物の世界』;人間とは特別な存在ではなく、生物の中の一つの種に過ぎない。▼誰にも負けず、誰にも勝たないゴリラ社会。ゴリラは仲直りをするとき、対面してじっと顔を突き合わせるという解決方法をとります。「覗き込み行動」といいます。食べ物を共有し、共存と許容を仲間に示し合う。▼ゴリラのオスの同性愛行動は、人間に似ている。サル社会では起きない。▼ゴリラは父系社会、娘はひとりで群れを離れて一人オスか別の群れに移動する。人間社会に似ているが、人間社会は家族があって、複数の家族が共同体を作る。ゴリラの集団同士は非常に敵対的である点が異なる。▼人間は、家族と共同体の二つの集団に所属して暮らしています。しかし、現在、家族の崩壊ということがよく言われます。食事を共にする人たちである家族が変わろうとしています。個人が好きなときに好きなものを食べる時代に変わっています。サルは所属する集団に愛着は持ちません。▼「霊長類の共感力と人間特有の同情心」同情心とは相手の気持ちになり、痛みを分かち合う心です。共感以上の同情という感情を手に入れた人間は、次第に「向社会的行動」を起こすようになります。「相手のために何かをしてあげたい」という思いに基づく行動です。▼人間の社会性とはなにか。1)見返りのない奉仕をする。2)互酬性(お返しをする)3)帰属意識(家、職場)▼個人の利益と効率を優先するのは、サル的な序列社会。「人間が一人で生きることは、平等に生きることに結びつかない」は、危険な事実です。▼SNS等の通信革命の流れの中で、人間はどんどん自由になるでしょうが、同時にますます孤独になるでしょう。インターネットなどをきっかけに緩やかにつながることを目的とする集団は、サル的な序列社会となじみやすいものです。▼勝ち負けや上下関係のないゴリラの社会のルールがもともと人間にはあったはずです。フェイス・トゥ・フェイスの相手の顔を見ながらのコミュニケーションを大切にしてきました。人間の脳が許容できる集団の最大の人数は150人。