山極寿一のレビュー一覧
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人間と近しい生き物である類人猿の行動を観察、把握し、それを人間の行動に当てはめて考えてみよう、という学問を基礎に書かれた本。多くの生物は生殖を行えなくなると死ぬが、人間だけそうなった後も長く生きる。それは老人が子供の育成などに一役買って来たからだ、というような内容が書かれている。
確かに人間は猿の一種ではあるので、なるほどそうなるのかと思うことが多かった。
共同体と家族のどちらかには属しておくべき、という話は私の老後の指針になりそう。
ただ、世代間のギャップを感じる内容も多く、この本で批判されている最近の人間の挙動は、私が老年期に入るころにはそれが当たり前の世界になっているはずなので、そう -
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ゴリラは20種類の鳴き方をもっている。
シジュウカラもたくさん。
だが鳥籠や動物園ではあまり鳴かない。
危険もないし、ご飯もあるから。
言葉を使える個体の方が使えない個体より上手く生存したからその遺伝子が集団内で広がり環境に適応した。
人間にとっての単語はシンボル。単語の音と指し示すものの関係は完全に恣意的。例えばりんごと聞いて、赤くて甘酸っぱい果物と思い浮かべること。
シジュウカラにとって意味を持つ鳴き声、つまり言語の起源は生存に直結する重大な情報のカテゴリー化。敵が来た。食べ物を見つけたなど。複数の5組み合わせる文法があることもわかっている。
言葉を持たない音楽的なコミュニケーションや認 -
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ルー大柴の「ルー語」で鳥の文法を解き明かす話から、「テキスト文化」の恐ろしい強大さまで
ゴリラの研究の第一人者である山極寿一さんと、シジュウカラの言語研究で注目されている鈴木俊貴さんの対談形式の共著です。山極さんの著作『ゴリラに学ぶ男らしさ』は私の人生の中でもトップレベルに面白い本で、類人猿と人間のあいだの垣根がぼやける感覚を味わえる名著でした。この本では動物たちの生態やコミニュケーションから、人間の言語の根本をつかもうとする試みが行われています。この本の中で触れられている『アレックスと私』という本を以前読んだ時、鳥の言語感覚が想像以上に豊かなものだと知り、「動物の言語というものはけしてファ -
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シジュウカラの研究で有名な鈴木博士の名前が気になって手に取った本
鳥の専門家と霊長類の専門家が「言葉」を軸に対談したものをまとめてあります。
なにか一つのことに熱中した人どうしの会話はどうしてこんなに興味深いのか!
特に興味深いと思った点を以下に箇条書き
・鳥や犬が知覚している世界は人間とは全く異なるものになるだろうということ
(紫外線が見えたり、嗅覚がすごくするどかったり)
・利他的な行為が残ってきた理由とそれが原因で暴力や戦争が生まれているかもしれないということ
・人間の言葉はとても便利だけど、便利すぎて言語化した際に非言語情報が捨てられてしまっている。そのことで起きている問題について -
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ネタバレゆる言語学ラジオで紹介されていて、ようやく予約が回ってきた。読みやすく、これをきっかけに深く言語などを考えたり読んだりしたいなと思わせる…
Part1 おしゃべりな動物たち
Part2 動物たちの心
動物の意識:
山極「意識については哲学的な議論がたくさんありますが、私はシンプルに「自分が何をしているかわかっていること」と定義していいと思います。」
鈴木「つまり、自意識ですね。…心の理論を保つためには、自意識に加えて共感能力が必要じゃないかって思っています。共感する相手がいなくても、自意識だけを保つことは可能だけれど、そこに共感する相手が現れて心の理論が進化したのではないかと」
まとめ -
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少し前の本ですが、学びある。
動物の世界は必然性の世界であり、
アルゴリズムが支配する世界であり、
強いつながりの世界である。
それは友達を作りたいなと思ったら自分と趣味の合う人たちを探してオフ会をやる世界です。
人間が人間らしいと思っているものの多くは誤作動の結果起きている。
だから人間らしい感情は根拠づけたり設計したりするものではない。
人間のコミュニケーションには誤作動がすごく多くて、その誤作動こそが我々の自由や生きているという事実を支えている。
だから、それをなるべく潰していくというのはまずいと思います。
そうした誤作動をどうこれからの社会に組み込んでいくかという話になると思います -
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昔、立花隆の「サル学の現在」を読んで、人類の先祖がチンパンジーのように残忍ではなく、ゴリラのように穏やかな性格だったら我々はもっと平和な歴史を刻んだだろうなと思っていた。どうやら、僕の考え違いだったようだ。山際先生は集団間の暴力の理由を言葉、死者の利用、共感性としている。ユヴァル・ノア・ハラリ「サンオピエンス全史」言う処の認知革命が原因なんだな。
山際先生の近親相姦のタブーの起原説に納得した。育てる経験が性的な関心を抑制する。そのインセスト・タブーがあるからこそ娘を他の家に差し出すことができる。また、類人猿のメスは親元を離れて繁殖するとある。
ここでレヴィ・ストロースの云う「女の交換」が発生