山極寿一のレビュー一覧
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ジャングルの知性。
山極先生は、ジャングルがすべての生物のコモンズ、だという。
「ゴリラの社会で暮らしてみて私が感じた人間の本質とは、150人以下の小規模な社会で顔見知りの仲間とともに、自己犠牲の精神を発揮して助け合う能力であった。」
けれど、定住化、技術の発展を通して、社会が急速に拡大し、人口も増大。
大きくなった集団間で領土や所有権を競うようになった帰結が、争いの絶えない人間界となってしまった。
この時期、平和を考えるうえでもとても大事な示唆を与えてくれる本です。
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・言葉こそ文明、ではない。
例えば、人間の脳はゴリラの3倍の大きさだけれども、この脳はだいたい40万年前に -
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霊長類研究者の山極先生が京都大学の総長時代に執筆された著書。
ゴリラやチンパンジー、サルなどの生態と人間の生態を比較しながら、現代社会で我々が直面する様々な課題について言及しており、大変興味深い内容でした。
今更後戻りはできないですが、グローバル化も進んで人間社会の規模が大きくなりすぎて生きづらくなっているんだろうなとゴリラの群れの話などを読んでいて感じました。
「道徳は自分が属したい共同体があってこそ成り立つ。それがなければ、道徳は心に宿らないのである。道徳の低下は、現代の日本人が急速に孤独になったことを示している。」と書かれており印象に残りましたが、小中学校で「特別の教科」として位置づけら -
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絶対読むべき。これからの時代をどう生きていくのが幸福に繋がるのかを教えてくれた。
スマホを使うのは最終手段であり、現実世界での人と人との繋がりを大切にするべきという筆者の主張は素晴らしいと思った。たしかに、人と人との繋がりは大切であり、誰とも話さずに1日過ごすのはストレスを感じるし、それが数日続くと心が荒んでくる。昔は便利な連絡手段が無いから直接対話をするしかなかった。しかし、そこで生まれる会話は実に貴重である。そういう意味では、メールやSNSが無かった昭和に生まれた人が「昔は良かった」というのは否定できないと感じた。だからこそ、昔の良い所と今の良い所を上手く融合させることが大事だと思う。そ -
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山極先生と小原先生の対談がメイン。
狩の現場で獲物をそのまま食べずに仲間が持ち帰った食物を分けて食べるのはホモ・サピエンスだけらしい。仲間を信頼するという能力があるからこそできる行為なんだという山極先生の主張。
それと、長期間グループを離脱していた仲間が帰ってきて受け入れることができるのもホモ・サピエンスだけなのだが、そこには不在者に対する倫理が存在する。現在の不在者、過去の不在者、未来の不在者の倫理という小原先生の考え方も大変示唆に富んでいて面白かった。
宗教に対してステレオタイプな見方をするだけではなく、その意味を考える機会にもなるかと思う。
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生まれた時から、言葉が当たり前にある環境だから、言葉ですべての物事を定義してしまうこと自体の意味や、不可解さについて考えたことなかったな
言葉遣いなど、言葉に達者な人でありたいなあとは思っていたけれど、そのマイナス面についてもあるのね、やっぱり物事って全て両面性がある。。当たり前って危険ね
普段よく人間で(笑)話題になる恋愛、結婚、親子関係その他、人間も動物の一種と考えるとなんだか単純化された
今は特に戦争について考えさせられることが多いから、争いのテーマの部分も納得しながら読みました
共存、想像力は私にとって永遠のテーマ!
戦争が存在する理由:言葉 死者 共感性 (トーテム 農耕社会 -
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Posted by ブクログ
お二人とも大学で教育に携わっていらっしゃったフィールドワーカーなので、やっぱり、教育に関する言葉がズシズシ響く。
以外、一部引用。
--心地よいものばかり求めていったら、ダメになると思います。……AIが分析したら、心地のいいものばかりつくる可能性がありますよね。(山極先生)
--今のような環境に子どもを放り込んじゃうと……ようするにもう、「受け付けない人」ができちゃう。(養老先生)
--学校って、何かを教わる場所だと、皆さん思っていませんかね。学習というのはようするに「自習」なんですよ。……自分が学ぶ以外に、学びはないんです。(養老先生)
--学習というのは「自習」と「対話」だと思います。(