山極先生4冊目。
山極先生サイドからは人類の起源、小原先生サイドからは宗教の誕生をめぐるエピソードや考察が提示されて、現代社会が抱える諸問題を分析していくという構成。
山極先生が豊富なフィールドワークをもとにお話されるエピソードは、ホント、毎回毎回面白い。けど、本書はこれまでに読んだ山極先生の本より
...続きを読むはエピソード少な目なので星は4つ。でも、自分の考察は多方面で深められた気がする。ハラリさんの著書にも触れた部分があって、専門家の先生方の受け止め方を知ることができたのも面白かった。
まずは、山極先生の発言から。
①一度グループを離れたメンバーがまた同じグループに戻れるのは人間だけだけど、それがなぜなのかは山極先生にもまだ分かってない。不在の者への思いやりは人間に特有の心情ってこれ、内田樹先生の『死と身体』にも重なる内容で、すごく興味深い。
②宗教は個人の命の救済のために出てきたけれど、それが集団の共通幻想になってしまうと力を必要とし始め、逆に個人の犠牲を求めだす、という山極先生の指摘は、「倫理は常に少数派のものでしかありえない」という内田樹先生の指摘と重なり合う。
次に、小原先生の発言から。
③共同体の秩序維持、あるいは不安一掃のためにスケープゴートを捧げる儀式は世界各地にある、とのこと。コロナがもたらす不安は何を供物に求めているのだろう?と思わされる。とりあえず組織的スケープゴートってことで陶片追放について書かれた本でも読んでみるか。
④アメリカのキリスト教は成功哲学と結びついて資本主義化したキリスト教だということ。とするなら、日本が戦後、近代化への過剰適応ともいえる反応を見せてあらゆる分野に合理主義を持ち込んだのは、アメリカをスタンダードだと勘違いしたからか?丸山眞男氏はそこを指摘した?
⑤クエーカーは非暴力を重視する一派らしい。なるほど、だから『侍女の物語』の中でクエーカー教徒はギレアデにおいては異教徒扱いだったわけか!!
などなど。
こっからまた色んな方面に広げて読書を進めてみよう!という気持ちにさせられた。