あらすじ
既存の枠にとらわれない新しい価値観をどのように生み出していけるのか。「個」が強調される中、信頼に足る家族・コミュニティーをいかに作り上げることができるのか。みなの声に耳を傾ける社会を実現するには、どうすればよいのか。霊長類の目があれば、自ずと答えは見えてくる。学びの基本、サル真似ができる霊長類は人間だけ?
大量発生中のイクメンはゴリラ型の父親?
「ぼっち飯」ブームは、人間社会がサル化している証拠?
現代日本の民主主義はゴリラのそれ以下?
動物の一種としての人間に立ち返り、これからの共同体・国家のあり方を問い直す。
※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
激しく共感
人間の住居は家族や共同体の信頼関係を反映する場所なのである。だから、人間の住居で雨をしのぐやれだけではなく、外からの視線を防ぐ壁がある。
アフリカの奥地の熱帯雨林で訪問した村は、道沿いに家が立っていて、1番奥に村長の家、真ん中付近にバラザと呼ばれる集会所があった。法務局はまずこのバラザに立ち寄り、自分の素性や旅の目的をまず説明し、村長に挨拶することになっている。
家の構造もそこで暮らす人々の人間関係を表していた。
しかし現代の住居は人間関係を一切考慮していない。いくつかの住居のモデルがあって、それを個人が自分たちの生活設計に従って選ぶ。住居を作る側がそこで得られる利便性と夢を解説し、住む側はその条件が自分の希望に合うかどうか判断するだけである。両者が合意すれば、住居はモデルに従ってまた瞬く間に建てられる。
私が子供の頃はいろんな人の共同作業で家が立っていた。
家は個人の所有物となり、外の世界と隔絶する場所となった。
昔とは逆に人間関係を規定し、個人や家族を隔離し、社会のつながりを分断している。
子どもたちは今、知りたい事を人から学ぶ必要がない。
学びの方法が変われば、教え方も変わらざるを得ない。子どもたちは知識を人に求めてはいないので、知識を与えるだけでは信頼も尊敬もしてくれない。
現代は、知識そのものではなく、実践する力や考える力を教える時代である。
人と関わりを持ちながら、他者のなかに自分を見つける楽しさを知ってほしい。そこに新しい時代の信頼と学びの場が開かれるのではないか。
おわりに
京都大学総長
大学はジャングル
ジャングルは地上で最も生物多様性の高い生態系であり、常に新しい種が生まれる。大学も社会で最も多様な知性がすむ場所で常に新しい考えが生み出される。
研究者たちは自分の分野は熟知 他の学者が何をしているかはよく知らない それでも共存 大学が許容性の高い場所だから
ジャングル 太陽光と水
大学 社会の支持と資金
世界一になろうとしている研究者や学生
ジャングルの王者 ゴリラと付き合い慣れている
大学の猛獣たちともうまく付き合える
Posted by ブクログ
著者は、霊長類学者としてゴリラ研究の権威である。
今西錦司氏が創始した日本の霊長類研究は、「猿になりかわって彼らの社会や歴史を記録せよ」つまり、猿の群れの中に入り込み、自らが猿のような暮らしを味わい、コミュニケーションの輪に参加して、彼らの社会の仕組みを理解せよ、という。
研究のために観察をする著者に、最初は逃げたり攻撃してきたゴリラたちも、しばらくすると著者を敵視しなくなり、群れの中で観察することを許すようになったという。それでも、ゴリラは人間の行動に常に目を配り、彼らの気にさわることをすると必ず叱って行動を改めさせたという。そうやって、自分達のルールを教えていくのだろう。
ゴリラの研究をするようになってから、人間社会について疑問に思うことがでてきたと言う。
私が最も興味を持ったのは、
なぜ、人間は集まって一緒に食べようとするのか。という箇所だった。
猿は群れで暮らすけれど、食べるときは分散してなるべく仲間と顔を合わせないようにする。数や場所が限られている自然の食物を食べようとすると、どうしても仲間と鉢合わせしてけんかになるからだ。
いままで、人間が家族ともしくは友達と一緒に食べることに疑問を持ったことがなかった。
当たり前に行っていることに素朴な疑問を持ち、それについて歴史や行動を深く考えてみる。
外国人が日本の良さを認識することで、日本人が自らの良さを再発見したように、人間を外から考えてみるのは興味深い。
Posted by ブクログ
霊長類研究者の山極先生が京都大学の総長時代に執筆された著書。
ゴリラやチンパンジー、サルなどの生態と人間の生態を比較しながら、現代社会で我々が直面する様々な課題について言及しており、大変興味深い内容でした。
今更後戻りはできないですが、グローバル化も進んで人間社会の規模が大きくなりすぎて生きづらくなっているんだろうなとゴリラの群れの話などを読んでいて感じました。
「道徳は自分が属したい共同体があってこそ成り立つ。それがなければ、道徳は心に宿らないのである。道徳の低下は、現代の日本人が急速に孤独になったことを示している。」と書かれており印象に残りましたが、小中学校で「特別の教科」として位置づけられるようになった道徳の授業では現在どんなことを教えられているのか気になりました。
Posted by ブクログ
人間が明らかに変化してきていることを感じた。
ある一面では進化であり、一方で退化でもあり、というのは個人的な感想である。
人間にとって本当に大切なことを気づかせてもらえる1冊だが、現代社会において、実践可能な人や家庭の割合が気になるところ。
Posted by ブクログ
◯大変面白かった。最近ゴリラがマイブームだったので、何かゴリラの本を読もうと思って手に取ったのだが、ゴリラの本というよりは、著者の魅力が溢れる本という方が正しいような気がする。
◯新聞で掲載されていたコラムがまとめられた本であり、ゴリラに関する知識が別段増えるわけではない。著者の世界を見るときの考え方、京都大学総長として、学生を教える側としての考え方が心を打つコラムが多い。その語りに思わずグッときて、自分の生活を改めてみようと思うこともある。なんというか徳が高い。
◯タイトルはこれ以外は考えられないが、ゴリラに興味がない、タイトルで買ってみた、それ以外の人にも幅広く読んでほしいと思う。
Posted by ブクログ
ゴリラの国へ留学してきたという著者。ヒト、サル、ゴリラ、霊長類は他にもあるが、一体何が違うのか。ヒトは本当に進化してきたのか。ゴリラにあって、サルやヒトには無いもの。それは進化と共に置き忘れてしまった共生の心なのかしら。コミュニケーション能力や他者を慮る能力に長けているゴリラの国から戻ってきた著者が、これからの人間社会のあるべき姿について、非常にわかりやすい語り口で述べている。ひとつの文章量も読みやすい。
Posted by ブクログ
とても読みやすかった。
ゴリラの眼から世界を見つめたとき、人間たちはなぜ満たされないのか?どうすればしなかやかな人間になれるのか?どうして平和への近道を見落としてしまっているのか?
人間をいち動物として考え直すことができた。
私もゴリラのように泰然自若に生きたいものだ。
Posted by ブクログ
ゴリラから見た人間とは!?
とても考えさせられる一冊でした。
視点が独特で面白い!
人間が人間たる所以を少しでも知ることができたように思います。
人間らしい、とは何のだろうか!?
Posted by ブクログ
少し前の話ですが
京大の学生寮「吉田寮」のことが
いっとき話題になっていましたね
その時に
「学生諸君も もう少しゴリラらしく対応できれば
いいのだけれど…」
というニュアンスのコメントが
山際寿一総長のお言葉として
報じられていた記事を読みました
それも
どちらかといえば
ーなんということを
人間ならぬ
ゴリラ並みに例えるとは
という非難めいた調子で
紹介されていたように覚えています
むろん
山際寿一さんの真意は
気高く賢明で協調を重んじる
尊敬すべきゴリラ諸君
としておっしゃっているのですが…
改めて、思うのは
地球上で傲慢になってしまった
我々ニンゲン、
そしてニホンジン、
に対しての
傾聴すべき警告の書になっています
Posted by ブクログ
久々に、目から鱗!
そして、衝撃的な解釈で、涙が出てしまった。
外国で暮らし、異文化を知る。
それだけなら、自分自身にもある話だけど、
筆者は、ゴリラの住む森で、ゴリラに受け入れてもらい、ゴリラと遊び、ゴリラに「友達」として認められるまでになった。
そんなガチのフィールドワークの体験に基づき繰り広げられる洞察。
比較対象が、人間の文明同士、人類の文明数千年をはるかに凌駕し、類人猿ができた数十万年前に及ぶから、圧倒的。
まず、「父親」とは、社会に認められて初めてできるもの。動物界でオスが育児に参加する種は、ゴリラくらい。「父親」役のゴリラは、雌や子供の期待に応えるようにふるまう。
ヒトは二足歩行の上頭が重くなってしまったために未熟な状態で生まれるから、育児にオスが関わることになった。
親の役割を虚構化し、子育てを共同体ですることにした。
西洋文明は、シートンのような、動物が環境の影響によって共同体を形成したり、人間と共通の特徴を持つ、といった研究を嫌ったらしい。あくまで、人間は自然から切り離されたものであり、独立したものである。ヨーロッパには、森でさえ隅々まで人の手が入っている。
一方の日本やアフリカは、手付かずの森がたくさんある。
日本には、動物がヒトとなり、家族の一員となる昔話がたくさんある。
霊長類の行動を観察し、ヒトのコミュニティの考察に応用する霊長類学は、今西錦司が提唱し、日本でスタートした。しかし、当初は、「擬人化」といって欧米からは見向きもされなかったらしい。
人間は、言葉を手にすることにより、感情をも代々伝えることができるようになった。その結果、怨念的な感情も伝えることができるようになってしまった。
ゴリラも、昔は狂暴な動物とみなされ殺された。
芥川龍之介の「桃太郎」。鬼にしてみたら、悪いことしてないのに成敗されてしまう。
個人はみんな優しく、思いやりに満ちているのに、民族や国の間で理解不能な敵対関係が生じるのはなぜか。
つくり手側から物語を読むのではなく、多様な側面や視点に立って解釈してほしい。
大学はジャングル!いろんな生物がそれぞれの個体の繁栄のための最適化をし、出たり入ったりする。
Posted by ブクログ
ゴリラやチンパンジー、オラウータン、猿など様々な霊長類の生態を例にあげながら人間社会を見ていく構成で興味深く面白かった
垣間見える思想がちょっと…という部分があった
Posted by ブクログ
Audibleで聴いた。ゴリラからヒトの社会を考えるというのが斬新で大変面白い。確かに…と思うことばかりで、現代のヒト社会における「当たり前」がもたらしている生き辛さなどを違った観点で考えることができた。
なお、同書のなかで、著者は「人間同士の生活が見える暮らし」の重要性を指摘していた。その際、自分の頭にぱっと浮かんできたのは、ひろゆきの1%の努力の本で紹介されていた赤羽桐ヶ丘団地のエピソードだった。
Posted by ブクログ
とくに第一章は面白い。
西洋人が自らを知るためにインディアンを定義することを目指したように、人類が自身を知るためにゴリラを調べる。
比較対照があってこそ、そのものを理解できる。ということの意味を知ることができた。
Posted by ブクログ
ゴリラを通して見えてくる人間の姿。サルやゴリラを知ることは人間の体や心に秘められている歴史を知ることにつながると筆者は書いている。ゴリラは私たちの本来あるべき姿なのかもしれない。経済的な概念によって、多くの敵意や孤独があふれる現代において、私たちが忘れていることを気づかせてくれる。
Posted by ブクログ
元京都大学総長にして類人猿研究者でもある著者。ゴリラの話は半分くらいで、あとは自身の京大での取り組み紹介。
ゴリラ研究のためにゴリラの集団に入って一緒に過ごした、というエピソードはびっくりした。
小さな猿は食事を単独で摂るが、類人猿はヒトのように集団で食事し、コミュニケーションの一つの手段となっている。
Posted by ブクログ
霊長類学者である著者からの提言ともいえる1冊。書いた当時は京都大学の総長でもあったようだ。
人間とゴリラを対比させ、人間のよいところは継承し、ゴリラのよいところは取り入れ、これからの社会をよりよくしたいという思いがよくわかる。
特に、争いを避けるゴリラを例に出し、平和への思いを強く伝えている。
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面白かった。
人間だけが文化を持つ存在じゃない。ゴリラを中心に、チンパンジーやサルなど類人猿の社会性から、人間が生活する現代社会を見直す本。
京大で勉強したくなった…
Posted by ブクログ
ゴリラ研究の第一人者にして、京大総長の、毎日新聞に寄せたコラムをまとめた、非常に読みやすい一冊。
2012年4月から16年3月までの記事をもとにしたものだが、著者の筋の通った考え方に共感する。
ゴリラ、サルを通じていかに人間が進化してきたかを知れるともに、果たして本当に我々は進化しているのかとも考えさせられる。
また本書では、大学総長となった著者の大学の運用に関する考え方にも触れることができる。
ゴリラに心血を注いだ著者だからこそ説得力があるのだろうが、よく日本人は、日本をよく理解してしていないとの指摘もあるが、それは日本という領域のみで考えるからで、一端世界に出てみればその特徴、特異性が容易に理解できるように、人というものも一端離れて別生物から眺めてみるのも、大きな理解の一助となるのだろう。
Posted by ブクログ
著者の山極さんは、ゴリラ研究の世界的権威であり、京都大学総長でもあります。内容は「毎日新聞」の連載コラムに手を入れたもので、手頃な長さの小文集です。自ら群れの中に入って体験したゴリラの生態を「鏡」に、今の人間の考え方や行動を、それが個人としてのものもあれば、集団としてのものもありますが、省みて、分析・評価し、山極さんなりの示唆を書き連ねています。ゴリラ・チンパンジー・オランウータンといった類人猿は、やはり私たちと同類との感を強くしますね。今の人間は「無くしつつあるもの」が多すぎる気がします。
Posted by ブクログ
君たち(人間)はどう生きるか、のセンスの良さ。
内容は京大総長による現代社会批評である。気遣い、笑いの共有、広い共同体などはサルにはない人間特異な性質。ネットばかり見て個人の利益だけ考えるのではなく、せっかく人間なのだからもっと他者と関わったら?という話。サルが進化の過程でその能力を身につけなかった理由も、中立的な立場で論じている。どちらがいい、どちらが悪いと断定しないところが優しい。しかしその言い方だと、私はサルでもいいと思ってしまうんだよな。
ゴリラ愛が随所に溢れていて素敵。
Posted by ブクログ
あまり中身を見ずに手に取ったので、ゴリラが物申す!のような内容なのかと考えていたが、「変なゴリラ」と化したことのある京大総長、山極先生が霊長類視点から現代の人間社会を見つめて、生物としての人間はどういったものなのか、何の影響で現代社会はこうなってしまったのか、今の社会はこうしていかないと…と問題を提示していく。
元々がコラムだったこともあって、どちらかといえば社会学メインという印象。でも合間で急に入る霊長類やサル、ゴリラの話が飽きさせず、何が問題なのかを理解しやすくしてくれている。
あとゴリラ愛がすごい。
Posted by ブクログ
ゴリラや類人猿を書いた科学ノンフィクションかと思ったら、文明批評のエッセーであった。
現代の人間社会より、ゴリラの世界の方が平和だというのはよくわかるが、ゴリラに倣えといったところで世の中は何も変わらないだろう。