松永美穂のレビュー一覧

  • 朗読者(新潮文庫)
    他の方も書かれているように出だしの章はきつかった。投げ出しそうになりながらこの本を薦めてくれた人のことを思って乗り切った。
    そのためか再会からの流れが衝撃的で切なかった。
    戦争を起こした親世代のことをわたしたちは糾弾したり謝罪を求めたりしただろうか。断罪を要求する資格がないにしろ、納得のいく答えを欲...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    舞台は第二次大戦後のドイツ。ふとしたきっかけで母親くらいの女性と逢瀬を重ねるようになった(日本でいう)高校生。彼女のために本を朗読するようになるが、彼女は突然姿を消す。その後法律の勉強を重ね、父親世代が犯した戦争犯罪について研究する。彼女と再会したのは裁判所の法廷で、彼女はナチスの活動に関わったとし...続きを読む
  • オルガ
    第一次大戦前のドイツ、祖母に引き取られたオルガは、農園主の息子ヘルベルトと仲良くなるが、農園主に反対される。ヘルベルトは英雄を夢見て北極圏の冒険に出かけるが、音信不通になってしまう。オルガは、祖母の反対を押し切り師範学校へ行き教師になる。行方のわからないヘルベルトに局留めの手紙を書きながら、オルガは...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    15歳の僕と36歳のハンナ。戦争中に芽生えた2人の恋。それは戦後に悲劇を迎えた。ハンナの気持ちが痛いほどわかる。ピュアな気持ち。戦中の日本文学を読むような懐かしさと切なさ。人生に明確な答えはないし、今後も迷い続けるだろう。それは良いことでも悪いことでもない。もどかしいけど白黒つけることではない。
  • 車輪の下で
    要所要所での人間に対する分析が非常に鋭く、登場人物それぞれの人生もどこか見過ごせないような感じがして、とても面白かった。ハッピーエンドと捉えるか、バッドエンドと捉えるかは人によりそう。主人公のような人生を歩む人は多いと思う。
  • 朗読者(新潮文庫)
    買って、ずいぶん読まないでいましたが、やっと読みました。映画化もしているようなのでそちらも観てみたいと思いました。カセットでの朗読や若い清潔だった恋人が刑務所で老人になっていたとか、重々しくもあり、でも感情に横溢になることなく書れていて考えさせられました。後書きで勧められているように、再読をいつかし...続きを読む
  • オルガ
    "墓地を歩くのが好きな理由は、ここではすべての人が対等だから、とのことだった。強者も弱者も、貧者も富者も、愛された者も心にかけてもらえなかった者も、成功した者も、破滅した者も。霊廟や天使の像や大きな墓石も関係ない。みんな同じように死んでいて、もはや偉大であることもできないし、偉大すぎることなんてぜん...続きを読む
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ
    3つの短編ドイツの自然ってこんなにも美しいんだって。鳥がそれぞれの物語に出てくるところもすてき。

    みずうみ
    自然の描写が美しい。
    結ばれなかったふたりだから美しい物語になるのかなぁ。それにしても、彼女の夫は鈍感なの。優しいの。人生についてパンになぞらえる部分など鋭い教訓だなぁ。なんで?なんで?って...続きを読む
  • 才女の運命
    読後はドッシリずっしりとした重苦しい気持ちになる。
    1人の女性について20ページ程度にまとめられており、読みやすい。

    結婚や、結婚でなくとも男性との繋がりによって才能や時間、人生を搾取され、そして男性の見方によって歴史からも排除されてきた、才能豊かで努力家でもあった、稀有な女性の先輩方。

    過去の...続きを読む
  • 才女の運命
    大学時代、「青年期の病理」という講座で、「芸術的才能がある人から芸術を取り上げるとやばい。病気になる」と聞きました。
    この本に出てくる女性たちの多くが病に向かっていったこと、その事実に切ないものを感じました。
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ
    短編集.
    3編共過去を思い出すというより,過去と寄り添っているような味わい深い物語.訳もいいのだろうが簡潔な文章で物語の風景世界が目の前に広がっている.森の中のいちご摘み,枯れたバラ園,人形劇など目に見えるようだった.
  • オルガ
    遠く離れて時折にしか会えない人を、どうやって思い続け心を通い合わせることが出来るのだろう。そして会うことも叶わなくなった亡き人を。
    静かで強い。既読がつかなかったり返信がないだけで一喜一憂するような現代からは遠い強さ。多分、相手や相手との関係というより、自分自身の強さなのだろうな。

    オルガにも不安...続きを読む
  • オルガ
    格調高い文学の香りに包まれました。一生ヘルベルトへの愛を貫いたオルガは幸せですね。手紙一通一通から熱い思いが伝わります。腹を立て喧嘩するからこそパートナー、、オルガに教えられました。夫とはしっかりパートナーだったんだな。戦争を絡めて人の強い意志をあぶり出す、朗読者でも感じたことです。久しぶりにシュリ...続きを読む
  • オルガ
    個人の葛藤と世代的トラウマが折り重なる。

    苦痛と困難の時代。

    世界大戦、戦間期、再びの大戦、戦後。

    近代から現代へ急速な変貌、それはオルガにとっても、彼女の世代にとっても苦痛と喪失を伴うものだった。

    この物語に言うべき言葉はあまり見つからない。

    喪失を乗り越えるために必死に生き、届くはずの...続きを読む
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ
    みずうみ
    エリーザベトとラインハルトの物語。
    ラインハルトの鳥が、カナリアに変わったことが悲しかった。在学中、彼は思いを持ちながら、自分の世界に入ってしまった。時は巻き戻せなかった。

    3色スミレ
    希望がたくさんで、読み終えてホッとした。若い新妻は前妻と一緒で肖像画になるのかとやきもきした。新妻の成...続きを読む
  • 車輪の下で
    ヘッセが若い頃に書いたようだけど教育機関、細い一本道の進路の閉塞感に反発しまくり。批判的な自伝的小説。ロックンロール。
    生真面目に頑張ったけど落ちぶれて川に落ちて死んだハンスと、詩人で自由人で周囲から疎まれ退学してそれなりにいい人生を送ったらしいハイルナー、親友同士のこの二人が、実はヘッセ自身の分身...続きを読む
  • 車輪の下で
    思春期の少年の、細かな心の動きをしつこく客観的に描いた作品。
    10代の頃に出会っていたら、すごく救われるか図星すぎて直視できなかったか。
    思春期って命がけなことを思い出した。
    それとは別に季節と風景の捉え方が秀逸。
  • 車輪の下で
    小学生の時、母親から、読むようにと無理やり押し付けられた本の中に「車輪の下」があった。たしかポプラ社から出てた小学生用に易しく翻訳された「車輪の下」である。当時、どうしてもその本を読む気になれず、そのまま年月は過ぎてたんだが、今回、新訳という事で「車輪の下」に初挑戦してみた。
    読んでみる気になったの...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    いい本だった。
    読むと分かるけど、この本には確実に伝えたい事がある。でもそれをオブラートに包むどころか、殆ど匂わないように封じ込めて、年の差カップルの恋愛としてお話が始まる。

    第一部は、恋愛の行く末。私は女性だけど、主人公と一緒にハンナに恋をする。

    第二部は、法学部教授である作者の本領発揮どころ...続きを読む
  • 車輪の下で
    ヘッセが1905年に発表した自身の学生時代を描いた自伝的な長編小説。初めて読んだのは、中学生の頃に新潮文庫から出ている高橋健二訳でしたが、今回は新訳で。しかし、100年以上前の作品が、今も読む度に新しい感動を生みだすという持っている力に本当に驚かされる。ハンスの周りにいた大人たちがもっと色々なサイン...続きを読む