松永美穂のレビュー一覧
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簡単に言ってしまえば自伝的悲劇なんだとは思うが、ヘッセ自身の幼少期は悪いことばかりってわけではなかったのだろうなと思う。
ハンスの育った町や神学校、工場といった舞台と、それらで関わってゆく人物たち。今作では彼らについては基本的には冷ややかな視線で描写されているが、そんな冷笑的な中にも田舎の素朴な美しさであったり、(結果的にハンスを追い込むきっかけとなったが)学問の奥深さや知識を得ることの喜び、一筋縄ではいかない同級生たちの個性や“ノリ”、労働者階級のガサツながらも誇らしい一面をもっている気風だったりと、どのステージでも魅力的な要素も忘れられていない。
物語は悲劇を辿るが、これが創作でなかったら -
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映画の方を先に見て、ずっと読みたかった作品です。
少年時代の年上の女性との濃密な恋愛、そして突然の幕切れ。
相手のハンナは、魅力的であり、エキセントリックなところありで、主人公ミヒャエルの心に一生住み続ける。
ミヒャエルのハンナへの想いは、「純愛」という綺麗で単純な言葉では表せられない複雑なもので、物語の底を流れ続けるが、この作品はこの恋愛話だけが主眼ではないように思えた。
本作は、ホロコーストという重い題材を扱っているが、読みにくさはなく、中盤のミヒャエルとハンナの衝撃の再会からは、(結末を知ってはいたが)先が読みたくて仕方ない衝動に駆られた。
ドイツの戦後世代の抱えるジレンマも勉強になりま -
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お父さんは道化師、お母さんは髪で高いところにぶら下がる曲芸師、お姉ちゃんはフリークス。ルーマニアから西ドイツへ亡命したサーカス団一家の末っ子の目から見た世界を感覚まるごと体験させられるような、痛く苦しいジュヴナイル。
正直に言って、読むのが辛かった。一章一章は断章的かつぷつんぷつんと途切れがちな文体で、文字量でみれば短く軽い作品なのだけれど、読みながら、そして読み終えてから心に溜まるものはとても重い。それから解説を読み、この重みを受け止め苦みを噛み締めていくのが読者の使命だと思った。
サーカスは非日常の象徴だ。私も子どものころから『ダレン・シャン』にはじまり、アンジェラ・カーターの『夜ごと -
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ドイツ文学です。
原題はドイツ語で「朗読する男」だったのが、英語訳で出版された時に「The Reader」というタイトルがつけられて、そのまま日本語版では「朗読者」となっています。
読み終えて思うのは、悲しみでもなく、怒りでもなく、もちろん感動でもなく、この複雑な気持ちをどう表現したら良いのか困っています。
これは、個人の意思ではどうすることもできなかった過去の戦争犯罪に巻き込まれてしまった個人が、その人生を狂わされてしまった悲劇の小説だと思います。
物語の前半は、15歳の主人公ミヒャエル・バーグが、ある出来事をきっかけに、母親と言ってもおかしくないほど年上の独身女性36歳のハンナ・シュ -
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19世紀に書かれた小説。アニメのオープニング、断片的なシーンは覚えているが全体のストーリーは全く記憶していなかったのだが、原作の面白さを聞いて読んでみた。病弱なクララが山の生活で健康を取り戻していくというハイライトだけでなく、偏屈なお爺さんが再びコミュニティの一員となっていくなど、大人になっても人は変わることができるというストーリー。一貫して勤勉を美徳とするプロテスタント的な価値観が書かれている。篤い信仰は金銭的にも報われるというオチもあり。ハッピーエンドになるとわかっていて読めるので良い娯楽だった。
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19世紀のスイスは既に中立国となっていたが、お爺さんは若い頃には傭兵として出稼 -
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独裁者によって生活ができなくなった主人公の家族が、国外へ脱出しサーカスの団員として生活をする半生を書いたもの。
社会的な弾圧と家族の中での個々との共存、サーカスという世界、信仰によって造らせた精神がとても危ういと感じる。
子どもという狭い世界での知識による外と内との折り合いの付け方がアンバランスすぎて、環境のせいではあるものの崩れることをこんなにも予感させることはない。
家族をものとして扱う父親や、恐怖で支配し自分で作った世界に押し込める母親、対になる姉、存在することで自分の価値だと思い込むペット、今でいう毒親に育てられ大きく育った主人公の、願いなどなくやっぱりねとなる終わりに向けて読むことを -
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NHKでアルプスの少女ハイジの作者、ヨハンナ・シュピリの特集番組があり、それを見て本書を手に取りました。私自身子供時代にアニメで見たことはありましたが、本書でやっと本当の原作に触れたことになります。本書は大人が手にとっても全然問題ない水準だと思います。ぜひ大人も本書を読んでほしいと思いました。
アニメでは、ハイジ、ペーター、クララという子供たちの交流が中心になっている印象を受けますが、本書を読んで改めて実感したのは、クララという少女が周りの大人たちを幸せにしていく存在だということです。おじいさんを改心させるだけでなく、羊飼いのペーターのおばあさんや、クララのお父さん、おばあさん、さらにフラン -
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ミヒャエル・エンデ『モモ』絵本版。
ある町のはずれにいつの間にか住み始めた風変わりな小さな女の子、モモ。最初は町の皆は怪しいと思い用心していたが、その内にたくさんの人たちがモモに会いに来るようになった。小さなモモがだれよりも得意だったのは、ほかの人の話を聞くこと。そんな聞き上手なモモには、たくさんの友達の中で、特に親しい友達が二人いた。
「聞くこと」に特化して描かれている。
モモのお話が全て描かれているわけではなく、一部分に焦点を当てた絵本でした。
お話を全く知らない低学年児の導入としては難しく思えましたが、一通り読み聞かせをきちんと聞いていたように思います。いつか原作を知った時に思 -
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朗読者を読んだ、泣いた。ハンナの心は永遠に分からない、私たちは戦争を経験したことがない。他人の命を無関心に見たことがない、ホロコーストに賛成したことがない、時代を感じていない。でも愛することは間違いだったんだろうか?どうしたらよかったのか?あなただったらどうした?
ハンナが裁判で、「私はジーメンスに転職を申し出ないほうがよかったの?」と自問する
彼女の文盲を隠すための逃避が恐ろしい、直面しなくていい地獄まで通じているなんて誰もわからなかったでしょう
主人公も手紙を書いてあげればよかった。
でも書けなかった。愛する人が戦争犯罪者だと、自分は断罪者であり受刑者になるから
もう一度読みたい -
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モモは最初に原作を読んで感動し、その後に映画を見て良かったので、絵本もさっそく購入してみました。
この絵本の絵そのものは、とても情感あふれるもので、何かしら心に響くものがありました。
そして、この絵本を見て最初に感じたのは、映画を見ないほうが良かった…でした。
エンデの伝えたかったことを感じたかったのですが、どうしても映画の映像が浮かんでしまい、一読した時はこの絵本の伝えたいものが私には感じられませんでした。
でも絵を見ているだけでも感じるものがあり、むしろこの絵本は文章を読まずに絵からモモを感じることができるものかな、と思いました。
文字を読めない幼い子のほうが、もしかたらエンデの -
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少年の繊細な心は、まるで剥き出しの心臓を見ているかのようでした。受験、宗教、学校教育に対する批判や、後半に描かれる労働や初々しい恋といった要素も含め、心理描写が非常に細やかで、ハンスの葛藤や孤独が強烈に伝わってきます。彼のプライドや挫折、苦悩にも大いに共感しました。結末は悲しいですが、それ故に深く考えさせられる作品だと思います。高校生の頃に読んだ際はハンスと同じく学校への批判的な視点を持ちましたが、30代の今、再読してみると、もう少し器用に生きられなかったのか、不合理や葛藤とうまく付き合えたのではないかと、異なる視点が得られました。読み直して本当に良かったと思います。
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歳の離れた恋愛とアウシュビッツと 第一章を読んで、青年と歳のいった女性との文学的な恋愛話かと思いきや、第二章でアウシュビッツが出て来て驚いた。恋愛云々の話ではなく、それを踏まえてのアウシュビッツに関わる戦後の話だった。
戦争のグロい話ではなく、アウシュビッツにおける少しの知識をもってして、あなてはどう捉えるか、どう考えますか?と問いているストーリーだった。
ドイツで教材になっているのもかなり頷ける。
いろんな視点で考えられるとても優れたストーリー。かつ第二章以降は、自然の描写が美しい。訳者も素晴らしいが、ドイツ作家はやはり素晴らしいものなのかも。この作者の他の作品も読みたくなった。