松永美穂のレビュー一覧
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伝記が出ているレベルの偉人の裏にいた、才女たちの生涯を静かな筆致で描いた本。まず、”偉人”になっている男性(ドストエフスキー、マルクス、アインシュタイン・・・)の方は知っていたが、その妻、また妻やその他女性とどう接していたかに関しては全く知らなったことに気付かされた。才気あふれる彼女たちの記録(日記、手紙など)は少ないが、著者の調査によってあぶりだされた才女たちの人生は、あくまで”偉人”たる男性を支えるサポーター役に収まらせようとする圧力によって潰されてしまっていた。また多産によって気力が吸い取られているケースも多い。
このあたりの描写は、なぜか結婚すると「主人と奥さん」という言葉で描写される -
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『オルガは一九五〇年代の初めにあちこち走り回って、失われた書類や破壊された記録を見つ出し、プロイセンでかつて勤めた国民学校教師として、自分に権利のあったちょっとした年金をもらえるようになった。それからは、ぼくたちの家でだけ、縫い物をするようになった』―『第一部』
ドイツの起こした戦争を背景に物語を描くベルンハルト・シュリンクは多くを語らないことで善悪の色彩を物語に鮮明に付さないままに描く。戦争の悲惨さを敢えて正面から描写しないことは、市井の人々にとっての戦争が如何なるものであったかを深く語り得る大きな力なのだが、時として戦争そのものを直視するのを避けるように描かれるのには何か良からぬ思想を肯 -
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今年、様々な書評で見かけた一冊。
クリスマスキャロルに匹敵するような、心が暖かくなる物語。
まず、表題の「みずうみ」。これは、自分の初恋回顧のお話。言ってしまえばそれだけなのだけれど何故かみずみずしさと切なさと、それからちょっぴりの後悔とが心を惹き付けます。色鮮やかな情景が目の前に広がるような繊細で素敵な文章です。
「人形使いのポーレ」
人形使い。なかなか身近な職人ではないが何故かまるで身近でお話を見ているような臨場感がある。時代の流れは残酷ではあるが身近な人を大切に思う心は美しく、そんな心を持ち続けたいと思わされる。
過去に読んだ古典文学の中でも、かなり心捕まれた一冊。 -
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ネタバレ19世期から20世紀の激動のドイツを生きたひとりの女性オルガ。
身分や性別、戦争によって翻弄されながらも常に姿勢を正して毅然と生きる彼女の半生が淡々と語られる第一部。
中年になった彼女が裁縫師として雇われた牧師一家の末息子「ぼく」によって、晩年のオルガについて語られる第二部。
そして第三部は書簡小説。1913年から1971年までにオルガが書き残した手紙によって全てが明かされて行く。
私のうすっぺらな言語能力ではこの物語の素晴らしさは到底伝えきれないから、ひとつだけ。
気丈で、賢く、自分を貫いて生きた強いオルガが望んでいた幸せのささやかさを知って胸が苦しかった。
堪えきれず嗚咽した箇所を、外 -
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あの有名なモモの絵本版。絵がとても美しい。
モモという名前の少女が野外劇場で暮らしながら、そこに来る人々の話に耳を傾け一緒に時を過ごす。
モモは人の話を聞く時に何かをたずねたり、口を挟むことなく、ただそこにすわって、注意深く、熱心に話を聞いているだけだった。モモからそうやって受容され続けることで、大人も子どもも動物までもみんな元気になっていく。そして自分が大切な唯一無二の存在だと気づく。モモはカウンセラーのような存在だと思いました。
時間に追われSNSが流行るこの世の中、こうやって大切な誰かの横に座ってじっくり耳を傾ける時間こそ尊く豊かなものだと教えてくれます。子どもたちにとってのモモで在 -
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南の島の村長の名を借りたわかりやすい現代批判の書
訳者あとがきにある通り、著者はナチズムに傾倒しました
それはたまたまではなく、ナチスも文明批判をし、良き時代に回帰しようと提唱していました
過去を理想化するとこのような危険に陥りやすいのです
過去は、絶対的なリーダーが民衆を支配していました
今までの悪かったことも都合よく良いことに変えられます
とはいえ、未来はまったく手さぐりで、良くなるか悪くなるかなんてなってみないとわからない意外な落とし穴があったりするものです
宇宙ロケットの開発のようねものです
改革は怖いものなのです
待って待って、ほんとうにそれでいいの? と問いかけることも必要です
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