松永美穂のレビュー一覧

  • 朗読者(新潮文庫)

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    本を好きな方、読まない方、朗読をする人、朗読が好きな人、老若男女。
    誰もが1度読んで欲しい!20年前の作品ですが、古さを感じません。
    ただ、面白いとか、いい話とか、単純か言葉が当てはまらない本だと思う。
    なんとも言えない読書感。後半は涙なしでは、読めませんでした。

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    2021年04月19日
  • オルガ

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    『オルガは一九五〇年代の初めにあちこち走り回って、失われた書類や破壊された記録を見つ出し、プロイセンでかつて勤めた国民学校教師として、自分に権利のあったちょっとした年金をもらえるようになった。それからは、ぼくたちの家でだけ、縫い物をするようになった』―『第一部』

    ドイツの起こした戦争を背景に物語を描くベルンハルト・シュリンクは多くを語らないことで善悪の色彩を物語に鮮明に付さないままに描く。戦争の悲惨さを敢えて正面から描写しないことは、市井の人々にとっての戦争が如何なるものであったかを深く語り得る大きな力なのだが、時として戦争そのものを直視するのを避けるように描かれるのには何か良からぬ思想を肯

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    2021年03月10日
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ

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    今年、様々な書評で見かけた一冊。

    クリスマスキャロルに匹敵するような、心が暖かくなる物語。
    まず、表題の「みずうみ」。これは、自分の初恋回顧のお話。言ってしまえばそれだけなのだけれど何故かみずみずしさと切なさと、それからちょっぴりの後悔とが心を惹き付けます。色鮮やかな情景が目の前に広がるような繊細で素敵な文章です。

    「人形使いのポーレ」
    人形使い。なかなか身近な職人ではないが何故かまるで身近でお話を見ているような臨場感がある。時代の流れは残酷ではあるが身近な人を大切に思う心は美しく、そんな心を持ち続けたいと思わされる。

    過去に読んだ古典文学の中でも、かなり心捕まれた一冊。

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    2020年12月22日
  • オルガ

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    ネタバレ

    19世期から20世紀の激動のドイツを生きたひとりの女性オルガ。
    身分や性別、戦争によって翻弄されながらも常に姿勢を正して毅然と生きる彼女の半生が淡々と語られる第一部。
    中年になった彼女が裁縫師として雇われた牧師一家の末息子「ぼく」によって、晩年のオルガについて語られる第二部。
    そして第三部は書簡小説。1913年から1971年までにオルガが書き残した手紙によって全てが明かされて行く。

    私のうすっぺらな言語能力ではこの物語の素晴らしさは到底伝えきれないから、ひとつだけ。
    気丈で、賢く、自分を貫いて生きた強いオルガが望んでいた幸せのささやかさを知って胸が苦しかった。

    堪えきれず嗚咽した箇所を、外

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    2020年08月20日
  • オルガ

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    楽しみにしていた本作。

    他作にも通ずる、一人で生きざるを得なかった女性が身につけた強さ、裏にある葛藤が描かれていた。

    私のペラペラな感想なんてどうでもよいので、人類全員に読んでもらいたいと読後の余韻の中で思う。

    訳も良い。

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    2020年08月20日
  • 車輪の下で

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    ネタバレ

    ハンスが死を支えに生きるとき、そして冷たい水の中で帰らぬ人となったとき、安堵した。無慈悲に回る車輪の轟音のふもとで生きるには、彼の心は小鳥の雛のように柔らかくはかなすぎた。人生にピリオドをあっさりと打てる人もいるけれど、そうでない人もたくさんいる。小鳥の心の周りを頑丈な鎧で固めたり、小鳥の心に知らん顔して、新たな大人の理性をインストールしたりして生きてる人をたくさんしっている。私の中のハンスは、ぼんやり遠いうつろな目をして日曜日の終焉に絶望している。

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    2020年07月05日
  • オルガ

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    両親の死で祖母に愛なく育てられたオルガと金持ちの農場主の息子ヘルベルト.二人の友情が愛に育つ純愛と大きな物への果てしない欲望,探検,侵略,戦争.困難な時代を逞しく愛しながら生き抜いたオルガの記録.オルガの時代や流行にとらわれない真実を見つめて揺るがない生き方は素晴らしい.オルガから届くことのなかった手紙で構成された第3部によって露わになる真実に驚かされ,二人の間に流れていた珠玉の情愛に感動した.

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    2020年06月28日
  • オルガ

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    偉大なるドイツの幻影を追い求め、若くして北の果てに消えた恋人。彼を想い続けながら、激動の時代を力強く生き抜いた一人の女性。残された手紙が明らかにする彼女の秘められた激情、秘密、死の真相。ささやかな幸福を追い求めながらも男の従属物となることを拒み続けた彼女の心の叫びが静かに胸を打つ逸品。

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    2020年06月13日
  • 車輪の下で

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    昔大学生のころだったと思いますが。。
    そのころに付き合っていた人に紹介してもらった
    と思う本。
    そのころは読まなかったのですが。
    その時にこの本を読んでいれば、どう思って
    どうなっていたのか?
    もういまとなっては、そんなに重くは受け止めることは
    ないですが。
    やはり、自分のことを考えてしまう内容だったと思います。
    だれでもある感情だとは思いますが。

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    2018年08月29日
  • アルプスの少女ハイジ

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    ・ハイジがゼーゼマン家にいるときに、アルプスに住むおじいさんとペーターの一家との思いがすごく分かるところがおすすめです。
    ・さいごのほうで、ハイジが家に帰って、クララもついてきて、クララはあるけなかったのに、あるけるようになったところがおすすめです。
    ・さいごにクララがあるくれんしゅうをして、あるけるようになったところが、おすすめのポイントです。

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    2018年02月06日
  • マルテの手記

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    死から生。視ることと書くこと。愛することと愛されること。愛されたくないこと。

    いろいろ言葉は知ってるけど、今回は何も言いたくないです。多分言葉にしちゃったら、言葉の外にある思いまで閉じ込めちゃうからかな(某ゲーム四天王風に笑)。
    でもこれだけは言わせてください。マルテ、マジグレートです!

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    2015年06月19日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    刺激的なタイトルが気になってずっと読みたかったもの。作者の自伝的小説とのこと。作者はサーカスの踊り子の少女として登場する。内容は結構心を抉られるような個所もあるのだが、語り口が淡々としていてするすると読めてしまうのが怖い。作者は39歳の若さで入水自殺したとのこと。生前唯一発表されたのがこの小説。

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    2025年12月17日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    するすると読める。その読み心地とは裏腹に、文章が心に絡みついて離れない。
    余白が、「わたし」の叫びを表す太字が。
    「わたし」は幼年期を過ぎ、少女になり、思春期を迎える。とても危うい時代。「わたし」の周りの世界は残酷で、不確かで、風が吹けば飛んでいってしまいそうだ。
    少女の語り口は明るくて、それでいて不安を常に抱えている。私は「わたし」の世界から目が離せない。

    とても良い作品だった。また月日を経て再読したい。
    世界中すべての子どもたちが、「子どもがなぜおかゆの中で煮えているのか」を忘れられる世界であってほしい。

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    2025年12月04日
  • モモ(絵本版)

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    優しくて可愛らしい絵とともに、モモの魅力についてわかりやすくまとめてあった。小学生の頃とかにこの絵本に出会っていたら、美しい世界の景色にもっと早く気づけていたのかもしれない。

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    2025年11月27日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    残酷な環境を少女の純粋で明るい語りで伝えられるので心をグサグサ刺される。

    物語の終わはあまりすっきりしない。何故かというと、本当のラストはあとがきで伝えられる作者の早すぎる最期だから。

    「地獄の裏に天国がある」

    生まれる国が違うだけでここまで境遇の違いがあっていいのだろうか。

    文字数も少なく読みやすいのに、読後に色々考えさせられる。この作品に出会えてよかった。

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    2025年11月23日
  • モモ(絵本版)

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    モモはタイトルは知っていても今まで読んだことなくてこの絵本が初めて。
    まず絵がいい。丁寧で空気を感じる。
    話は、ものすごく聞き上手のモモという少女の話なのは分かるんだけど、結局なんなのか読み取れなかった。

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    2025年11月22日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    ふしぎな書物。まるでわたしが主人公になったみたい。
    父さんと母さんと姉さんと、ほかの人たち。
    ところどころ、絶叫したり、余白をもたせたり、繰り返したり。
    少女の肉声が絶えず語りかけてくるようだった。

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    2025年11月12日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    どれが実体験でどれが小説なのかは分からないけれど、小説であって欲しいところが全て実体験のような気がする。両親がルーマニアを出たことは良かったのかも知れない。ずっと不幸の霧の中を生き抜いていくわけだけど、一度も食べるものがないとか衣服靴がないなどの描写はない。とはいえ食料や衣服があれば幸せかといえば、おおむねそうではあるけれど絶対ではない。
    ルーマニアからの避難民、サーカスで各国を転々とする毎日。これだけでも子供にとって安心出来る場所はない。その上に母親が死と隣り合わせの曲芸を毎日やっているとなると子供が不安定な精神状態になるのは当たり前。その様子はロリコンだけでなく全ての男達にとって好都合だっ

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    2025年10月26日
  • 別れの色彩

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     何かの書評での紹介を見て興味を持って読み始めた。短編集だが、言葉が極めて多い、読み続けるのに難儀する類の本だった。様々な人と人との出会いや別れが描かれていているが、日常の細々した出来事というより、季節の流れや長い歴史を持つ小都市の街並みを背景として描きながら、ひたすら回顧したり思索したりする話だった。人物が抱える困難な状況や哀しみも、複雑で一筋縄ではいかないものばかりだった。ヨーロッパやアメリカの小都市の街並みや郊外の自然に馴染みがないのでイメージが膨らまないというのは、鑑賞する上で障害になった。また、なかなかアイロニカルな展開や結末が、新鮮だが共感しづらく、普段読む日本の短編集と違っていて

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    2025年09月27日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    サーカス団に入って移動している移民家族。その娘のどこか危うい成長。ゆるやかに、あるいは突然に崩れる文体が彼女の精神状態のようで目が離せなせずひりひりする。

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    2025年07月19日