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年齢を重ねた今だからわかる、あの日の別れへの後悔、そしてその本当の意味を――。男と女、親と子、友だち、隣人。『朗読者』で世界中の読者を魅了したドイツの人気作家が、「人生の秋」を迎えた自らの心象風景にも重ねて、さまざまな人々のあの日への思いを綴る。色調豊かな紅葉の山々を渡り歩くかのような味わいに包まれる短篇集。
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Posted by ブクログ
何かの書評での紹介を見て興味を持って読み始めた。短編集だが、言葉が極めて多い、読み続けるのに難儀する類の本だった。様々な人と人との出会いや別れが描かれていているが、日常の細々した出来事というより、季節の流れや長い歴史を持つ小都市の街並みを背景として描きながら、ひたすら回顧したり思索したりする話だっ...続きを読むた。人物が抱える困難な状況や哀しみも、複雑で一筋縄ではいかないものばかりだった。ヨーロッパやアメリカの小都市の街並みや郊外の自然に馴染みがないのでイメージが膨らまないというのは、鑑賞する上で障害になった。また、なかなかアイロニカルな展開や結末が、新鮮だが共感しづらく、普段読む日本の短編集と違っていて、重厚な石造りの街の乾いた空気感を彷彿とさせる小説だった。
感想。ベルンハルト・シュリンクは「朗読者」の著者。そんな事忘れていたけれど。9つの短編集なんだけれどどの話も年老いた人々が何かしらの「別れ」に遭遇した時の話。亡くなった人に対するもの、随分昔に別れた恋人にまた出会うもの、ご近所の幼い頃から見守り続けていた少女の死にで会うもの。そんな別れの時に脳裏に浮...続きを読むかぶのは思い出で、その思い出も明るさがあるだけではなく、後ろめたさや自己欺瞞、焦燥、そんな向き合いたくないものをちょっぴり混ぜ合わせながらつらつらと脳は過去を浮かび上がらせる。そんな別れの一つ一つが身に染みるのは私もそんな歳に近づいていっているのがわかっているからなのだろう。
年老いた男たちの振る舞いに、少しギョッとした話もあった。枯れきっていてもおかしくないような年齢の男たちの心を思いがけず覗いてしまったような、ヒヤリとするような気持ちに。 もう少し私自身が歳を重ねたら味わいも変わるんだろうか。 難しいテーマも多いが、それぞれの別れの受け取り方や傷を、読者も受け取って...続きを読む自分なりに味わえる、短編ならではの余韻も読み心地も好きだった。 訳も素晴らしかった。
別れの形態を様々な事例から検証している短編が9本.舞台はアメリカとドイツだが、普通の人たちの生活が事細かに描写されており、日本との違いを実感した.どの話も楽しめたが「愛娘」でLGBTQ+の実態をのぞき見できた感じがした.女性同士の結婚を周囲が問題なく受け入れていること、当事者らが妊活に励むこと など...続きを読む日本の状況と大きく違った空気を感じた.義理の娘との行為の結果もある意味で起こりうるものだと思った.
この作者の作品はなんだかんだで読んでいるのだけれど、いつもあまりピンと来ない。『朗読者』でさえもそうだった。合わないのかもな。 今回のこれは"老い"が時にコミカルで、なんかちょっと面白かった。 若干ドタバタかなと思う『愛娘』がクスッと笑えてしまって、後味も悪くなく印象に残った。...続きを読む『島で過ごした夏』もありがちな”過ぎた青春の夏”もの?だけれど、最後の母のセリフに思わずジンとしてしまう。 年をとったからこそわかる、しみじみする話が多かった。
赦しと別れ 癒しと別れ 目覚めと別れ 裏切りと別れ 若い時に絡まった糸は、歳をとってからでも解すことはできる。それはまるで、深いところにしまってあったものをもう一度表に出すように、別れ、離れていく。 死は別れのプロセスの終着点 その時点で別れられなかった事は、もうずっと離れない。 作者の淡麗で...続きを読むどこか妖艶な文章が彩る九つの物語は、確かに男目線である事は否定できないし、歳を取っても男性なんだなぁ。 自分が歳を取ってしまうと、老齢期を描いた物語は、古い日記を覗き見されたような妙な生々しさが伴ってしまう。 なんともいえず恥ずかしい。 でも、「老いたるがゆえのシミ」……現実では、こんな結末は滅多にないから……。
年を重ねたことでわかってきた若い頃の気持ち、過ちだったり思い上がりだったり…。様々なシチュエーションの短編だが、それぞれが思い返して初めて気づいた事を語っている。 シュリンクは、良い文章を書く人だなぁ。
淡い印象の短編集。一人称でこそないが、各話とも多少読み進めないと主人公の年齢層がわからないのが気になった。映像でいえば、冒頭からしばらく主役の顔だけが映らない感じ。狙ってのことかもしれないが効果は薄い気もする。 作品としては、兄夫婦に死なれた弟の話が一番じわりと浸みた。自分も一人の兄として、弟にどう...続きを読む思われているのか気になってくる。 (追記)二年(一年十か月)経って久しぶりに読んでみたが、やはりもう少し歳を取ってみないと染みてこない気もする大人の文学。
主人公はほぼ全員男性だったが、読み進めるにつれて、それを意識させられる本だなと思った。もし女性目線の「別れの色彩」だったら、これほど昔の恋人や妻を振り返り、そこに湿っぽさを感じることはないように思ったけれど、どうなのだろう。 短編にも関わらず、どれも人生がきゅっと凝縮されているところはすごいと思っ...続きを読むた。 お気に入りは、自分のせいで障害者となった弟を持つ姉とその姉に恋をしていた主人公が再会する「姉弟の音楽」、夫婦で自殺した兄と兄ともてなかった繋がりに折り合いをつけようとする弟の心境を描いた「ダニエル・マイブラザー」。 (幼少期、病弱だったゆえに親戚の家に預けられていた兄。「クリスは別れを告げなければならないものをきっぱりと置いてくることによってのみ、それを克服できたのかもしれない」という弟の考察が興味深かった)。
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