あらすじ
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」――ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
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Posted by ブクログ
ドイツ文学です。
原題はドイツ語で「朗読する男」だったのが、英語訳で出版された時に「The Reader」というタイトルがつけられて、そのまま日本語版では「朗読者」となっています。
読み終えて思うのは、悲しみでもなく、怒りでもなく、もちろん感動でもなく、この複雑な気持ちをどう表現したら良いのか困っています。
これは、個人の意思ではどうすることもできなかった過去の戦争犯罪に巻き込まれてしまった個人が、その人生を狂わされてしまった悲劇の小説だと思います。
物語の前半は、15歳の主人公ミヒャエル・バーグが、ある出来事をきっかけに、母親と言ってもおかしくないほど年上の独身女性36歳のハンナ・シュミッツと出会い、彼女に恋愛感情を抱いて彼女の家を訪ねては男女の関係を重ねる様子が描かれます。
ただ、何故かいつもハンナは「なにか朗読してよ、坊や!」と、ミヒャエルに本を朗読して聞かせて欲しいと求め、ミヒャエルはハンナに本を朗読して聞かせることが習慣となっている関係でもありました。
そんなことが続いたある日、ハンナはミヒャエルの前から突然姿を消します。
ミヒャエルは手を尽くして探しますが見つけることはできませんでした。
その後、大学生になったミヒャエルは、法学部でナチス時代とそれに関連する裁判を研究していた教授のゼミに入ります。過去の戦争犯罪を裁く裁判を傍聴していたある日、裁判所で被告人としてのハンナの姿を目にするのですか、彼女はナチス時代、強制収容所で看守をしていたという罪で裁かれており、ここでミヒャエルは初めてハンナの過去を知ることになります。
裁判を傍聴し続けたミヒャエルは、こう思います。
「彼女は僕を捨てたのだし、僕を騙していて、僕が見ていたような、空想していたような人間ではなかった。それに彼女にとって僕はなんだったんだろう? 彼女に利用された小さな朗読者、彼女を楽しませた小さな愛人?」
などと考えて距離を置こうとしてしまいます。
裁判でハンナにかけられた容疑は、実際に行われた事実よりも重い罪であることが明白なのに、ある理由からハンナは抗弁を全くせず、裁判はハンナに不利に進みます。
しかし、ミヒャエルは、ハンナが全く抗弁しない理由、ずっとハンナが隠していた切ない秘密に気づくと、
その秘密を公表できないゆえにハンナにとって不利に進行する裁判について、ハンナが公平な裁判を受けられるよう、ハンナを助けようと考えます。
私もミヒャエルの良心と行動力に期待しましたが、裁判長に面会できても結局何も行動には移せないまま終わってしまいしました。
いよいよ判決が下る日、ハンナは強制収容所で看守をしていたときの服装(制服姿)で法廷に現れ、潔く判決を受け入れます。
それはハンナにとっての、せめてもの主張であるかのように思え、個人としては善悪を判断する余地のない戦争犯罪すなわちその制服姿で遂行した組織的な行為への裁きとしてとらえる一方で、個人の責任としても受け入れたように思えました。
もしハンナがきちんと教育を受けられる環境で育っていたら、裁判で不利な扱いを受けることもなく、そもそも裁きを受けるような職務に携わることもなく、ハンナの人生は全く異なっていたに違いないと思います。不条理という言葉が頭をよぎります。
ハンナは刑務所に服役中、隠し通していた自身の秘密を努力して克服し、苦労してミヒャエルに宛ての手紙を書くなどしますが、その一方、ミヒャエルは本を朗読したカセットテープを服役中のハンナに送ることはあっても、決して逢おうとはせず手紙すら書かず、ハンナと過ごした過去の事実を遠ざけ意識的に逃げていたような気がしました。ハンナは敏感にそれを感じていたのだと思います。
私はミヒャエルの行動があまりにも身勝手と思う一方で、私がもしミヒャエルだったらどうしただろうかと考えると、複雑な気持ちであることも事実です。
やがて、18年が経過しハンナの刑務所からの出所が決定しますが、私自身もしかしたらと予想してはいたものの、最も恐れていた形で出所することなく終わります。ハンナにとっては、過去の罪の意識、良心の呵責が、そのような結果を選んだ一番の理由と思いますが、それだけが全てでは無かったようにも思います。
何だかやりきれない気持ちでいっぱいでした。
ところで、この小説はなぜこのような年齢差のある2人を主人公としたのでしょうか?
それは後半の、「ナチスドイツ時代の過去の犯罪」を「今裁く」という裁判の場面以降で生かされているのだと思います。
主人公の一方は、過去の戦争犯罪を今裁くことを研究しその裁判を傍聴する法学部の大学生、一方は、過去の戦争犯罪に関わった罪で今裁かれようとしている被告人、という裁く側と裁かれる側に分かれ、しかもその2人が過去親密な関係にあったという構図を考えたとき、この年齢差はやはり必要だったのだと思います。これがどちらもナチスドイツ時代を経験した同世代だったとすれば、ともに過去の罪の意識を共有して、再開した2人に複雑な感情が生じることはなかったのだろうと思います。
そんなことを考えていると、ハンナは当時から罪の意識を引きずっていて、相手がナチスドイツ時代を知らないミヒャエルだから、年齢差があっても愛することが出来たのかもしれないと思いました。ハンナにとって罪の意識を忘れられるひとときだったのかもしれません。
そして、ナチスドイツ時代を経験していないミヒャエルは、過去に恋愛感情を抱いていたハンナのナチスドイツ時代に犯した罪を知った時点で、当時の感情が失われていく様子が描かれています。
また、ハンナの出所前日に一度だけ2人は逢って話をしますが、当時はほとんど意識することの無かった年齢差を、このときミヒャエルが強く感じる様子も描かれています。ハンナもそれを感じたのかもしれません。
冒頭にも書きましたが、やむを得ない当時の状況下で、個人の意思ではないまま関わってしまった戦争犯罪によって、その後の人生を狂わされてしまった悲劇の小説だと思います。
しかし、それ以上にこの小説の大きなテーマと思えるのが、「過去の克服」ということで、国家としても裁判を通じて過去の過ちを克服しようとしており、ハンナ自身も過去の過ちを常に心の中に抱えて続けながら、個人として克服しよう努力していたのだと思います。ただひとり過去の過ちを体験していないミヒャエルは、その苦しみを心から共有することが出来なかった、というのがこの物語なのかなと思います。
あと、余談になってしまいますが、ドイツが今もこれだけ過去の戦争犯罪に向き合っている中で、私たち日本は、ヒロシマ・ナガサキの惨禍を広く世界に訴える一方で、朝鮮半島の植民地支配や中国に対する侵略戦争の加害者意識が希薄なのは、何故なのだろうか、日本とドイツ、歴史認識に大きな違いがあるように、思えてしまいました。
Posted by ブクログ
朗読者を読んだ、泣いた。ハンナの心は永遠に分からない、私たちは戦争を経験したことがない。他人の命を無関心に見たことがない、ホロコーストに賛成したことがない、時代を感じていない。でも愛することは間違いだったんだろうか?どうしたらよかったのか?あなただったらどうした?
ハンナが裁判で、「私はジーメンスに転職を申し出ないほうがよかったの?」と自問する
彼女の文盲を隠すための逃避が恐ろしい、直面しなくていい地獄まで通じているなんて誰もわからなかったでしょう
主人公も手紙を書いてあげればよかった。
でも書けなかった。愛する人が戦争犯罪者だと、自分は断罪者であり受刑者になるから
もう一度読みたい
Posted by ブクログ
是非オススメしたい本です。(私の1番大好きな本)
◆ホロコースト時代の「ドイツ人」と「ユダヤ人」の禁断の悲劇の恋愛物語
【あらすじ】
15歳のドイツ人少年のミハイルが帰宅途中嘔吐してしまい、そこに現れたユダヤ人ハンナが助けたことで、2人が出会った。最初は、お礼の挨拶をするためにお家に行くが、訪問回数を重ねるごとに恋愛へ発展する。ハンナには誰にも言えない『秘密』があり、その『秘密』が2人の関係、人生を大きく動かすことになる。
【ポイント】
1.なぜ、ハンナはミハイルに『本を読んでほしかったのか』
2.なぜ『秘密』を打ち明かすことが出来なかったのか
3.もしあなたがハンナなら/ミハイルなら、どのようなアクションを起こすか。
(是非考えて頂きたいポイントです)
【映画】
「愛を読むひと」の題名で映画化されています。
本の内容を忠実に再現されており、映画を最初に見てこの本を読むのもありです。
【問】
・もしあなたが社会的弱者(ホロコースト時代のユダヤ人)だとしたら、どのような行動ができますか?
・もし愛する人が社会的弱者(他人の批判の的)だとしたら、助けることができますか?
悲劇の恋愛物語です。是非一読を。
Posted by ブクログ
親子ほど歳の離れた2人の恋愛を描き、戦争で分断された世代間の闘争(ナチスに加担したかどうか)が浮き彫りになる、、
ハンナアーレントの「悪の陳腐さ」とは、実は当事者も苦しむものだったのだ!と思わされた
だからこそ、人間の悪とは陳腐なのかも。
Posted by ブクログ
薦められて読んだ本ですが、本当に読んで良かったと思える1冊でした。
「あなたならどうしましたか?」という言葉が本全体にかかってくるようで重い。
この言葉が苦しいのは、ハンナは裁判長をせめるつもりもなく、本当に分からなかったから何でも知ってそうな人に教えてほしかっただけで... という...
裁判長が作中でこの問いに答えられないのも、著者自身が答えをだせなかったからなのか、読者に答えを委ねたからなのか
簡単に答えがほしいと願う読者に対して、そうそう容易く答えなんか得ようとするなと言われているようで。
「僕たち後にくる世代が恥と知と罪のなかで押し黙る ─それが求めていた結果だったのだろうか」
覚えておきたい言葉です。
Posted by ブクログ
文盲であることの恥と苦しみはどれほどのものだろう。それを知られるくらいなら、戦犯として裁かれ服役することを選んだハンナ。
文字を学び、本を読んだことで初めて自らの罪の重さを知った時、、、
どうしようもなく切なく胸を打つラストでした。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ深い本でした。
序盤の恋愛話からの急展開、、最後の結末!へと続くストーリーにハマり、先が気になって、一気読みしてしましました。
再読したくなる深い本でした!!
ぜひぜひ読んでみて下さい。
Posted by ブクログ
個人的に推しているイラストレーターさんが、この作品から着想を得て漫画を描いたと言っていたのを見て、気になって軽い気持ちで手に取ってみたのだけど、
朝の通勤電車や会社のお昼休憩や、家で寝る前のベッドの上で、何度涙を堪えながら読んだことか。
【いつか終わりが来る】と心のどこかで気づいていても、その人を愛さずにはいられない。
そんな無防備で、無垢で、純真そのものだった恋心を丸ごと想起させられ、
自分の中に仕舞い込んでいた過去の苦い体験が、感情ごと引っ張り上げられてきてしまう。
それだけではなく、ここで扱われているユダヤ人迫害の歴史やその事実の悲惨さに、心が耐えられず潰されそうになる。
まさに感情のジェットコースター。
15歳のミヒャエルが36歳のハンナと出逢って関係を持った事。
彼女が彼にした事。
ミヒャエルが彼女の過去を知らなかった事。
ハンナが自分の"ある秘密"とプライドを守り続けた事や、
その為に自分の人生をも台無しにしてしまった事。
どれもこれもが正しかったのかどうか誰にも答えが分からない。
まるで先の見えない中で選択をし続けなければならない、"人生そのもの"のようなこの小説について、しばらく私も考え続ける事だろう。
あなたの愛した人が戦争犯罪者だったらどうしますか?
Posted by ブクログ
年上の恋人が突然いなくなり、その後戦争犯罪の被告として裁判に登場する、という様な話なのですが。とにかく人間描写が見事。「人生においてぼくはもう充分すぎるほど、決断しなかったことを実行に移してしまい、決断したことを実行に移さなかった。」
Posted by ブクログ
25年ぶりくらいの再読
当時に比べて細かい所の
描写に気づいたり
理解出来たり
読みなおしして良かった
恋愛小説?みたいな扱いを
受けてる時があるけど
もっと深い物語だと思う
一二三館書店にて購入
Posted by ブクログ
「ぼくたちの逢瀬も、記憶の中ではただ一度の長い逢い引きだったように思える。」美しくも実に刹那い。
映画『愛を読むひと』の原作
シャワーを浴びてベットに入るまで、少年は彼女に本の読み聞かせをする。
それを愛と呼びたい。時代背景が憎い。
Posted by ブクログ
本を好きな方、読まない方、朗読をする人、朗読が好きな人、老若男女。
誰もが1度読んで欲しい!20年前の作品ですが、古さを感じません。
ただ、面白いとか、いい話とか、単純か言葉が当てはまらない本だと思う。
なんとも言えない読書感。後半は涙なしでは、読めませんでした。
Posted by ブクログ
第二章からグンっと重いテーマになった。
2人だけの物語であれば、もっと違う結果になった気がするけど、ハンナの過去を考えると本の結末が妥当な気がする。主人公は手紙を書かなかったけど、きっと、書いたところでこの結末は変わらなくて、
やっぱり重い。
重いし、もっと違う結末を望むけど、読んで良かったと思える作品。
Posted by ブクログ
僕からみた市電の乗務員、過去ナチの女看守をしていたハンナ。裁判を通してハンナの過去を知る。僕はあの頃の楽しかった時のハンナを追っていただけ、何年も経って少しずつ裏切ってしまう。心がしんとする考えてしまう。
Posted by ブクログ
ナチ強制収容所の看守であり、同じドイツ人から有罪の判決を受ける。文盲であることが結果的に重罪となったが、育った環境、好んで看守になったわけではないことは想像できる。頑なにそれを弁明にしなかったことは、恥辱を受けることを避けること、表面的にわかっても深くは理解してもらえないであろう諦めも交じったものに感じる。主人公は、付き合っているうちにそうした彼女に気づく。主人公の苦悩は、戦犯者を身内に持ったとしたらどう考えるかと読者は投げかけられる。戦争はなぜ起こるのか、過去の歴史をどう活かすのか、の問いでもある。2024.5.12
Posted by ブクログ
かえりみちさんの選書
ドイツ文学だけどとても読みやすく訳されている。
自分の愛した人が戦争犯罪者だったらどうするか。
自分たちの世代ではないのに、ナチ時代の過去を負の遺産として背負わされるとまどい。
戦争が過去のことではなくなった今、より考えさせられる、哀しくも美しい本でした。
”愛を読む人”で映画化されているのでぜひ近いうちに観たいなぁ。(しかもケイトウィンスレットが主演女優賞を受賞されてる)
_φ(・_・
”幸せな歳月だと思うと同時に語れるような思い出がない”
”思い出に別れを告げたものの、けっしてそれを精算したわけではない”
Posted by ブクログ
わかりやすく丁寧な翻訳で、細やかな心情描写が印象的だった。
ハンナの存在に無言の圧力というか、凄みを感じたが、その印象も再読すると変わって感じるかもしれない。
刑務所から出て、はじめて生身のまま罰を受ける気持ちになるのかと想像した。
今後もこの本は、誰かの拠り所になったり、自分を見つめ直したり、責めたりするのに使われるのだろうなと思った。
Posted by ブクログ
感想がまとまらない…
ドイツに、ドイツ国内で戦争犯罪を犯した人たちを裁いた時代があることを初めて知った。
戦争は経験していないけど、二度と繰り返してはならない罪の歴史として教育された、親や愛した人が戦争の当事者でありえた世代の人たちは、身近な人が犯罪者であることに、どれだけたくさんのことを考えたんだろう…
ヨーロッパの真ん中にあるドイツが負の歴史を抱えていることが、ヨーロッパの人たちにとって、どんなに身近な出来事で、記憶や文化として残っているのか、ナチズムを扱った本を読むたびに考える。
日本も決して蚊帳の外の話ではなく、かつて戦争の時代を生きた人がいて、その子どもの世代があって、今がある…戦争の時代を歴史として学んで、当時の状況を一生懸命想像するよりも、この本はいろんなことを考えさせてくれた。
訳者あとがきに、この本は二度読むと登場人物たちの繊細な心情がわかると書いてあったので、いつか再読したい。たしかに一回目はストーリーの中の大きな出来事が印象に残った。
Posted by ブクログ
わぁ、こういう本だったのか。
第一章を読んでいるときには、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。
めちゃくちゃに重いテーマ。
・時代や状況が違ったあとで、過去の事柄を裁くことができるのか。
・大切な人を守るために、その大切な人の守りたい秘密をつまびらかにしてしまう権利はあるのか。
そして第三章、ハンナの選んだ選択肢
ドイツ文学を読んだことが今までなかったけれど、これはドイツ人であるが故に書けるテーマ。
戦時を生き抜いてきた親世代を子世代が軽蔑する権利はあるのか。口先だけで生きてはいけない。
もちろん、命が無意味に奪われていいわけがない。
人類は色々な経験をしているのに、後に活かすことが下手だ。本当に自らの血を流さないとわからないのだろうか。そんなにバカじゃないはずなのに。
Posted by ブクログ
再読。
15歳の少年が、母親ほど年上の女性に恋をする。
彼女が、隠していたのは、文盲だということ。
どうしても言えない…その気持ちがなんとも切ない。
朗読してもらうという、そのことに喜びを感じていたのか。
別れ、出会いは、裁判所。
やはり、何度読んでも救われない。
残酷な愛…と感じてしまう。
Posted by ブクログ
ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「あの時私はどうしたらよかったの?あなたならどうしましたか?」という問いかけは切実だ。また罪が重くなることより文盲が知られることが彼女にとって耐えられなかったこと、恩赦を前に死を選んだこと、理由は想像できるが…。幸せいっぱいではないかもしれないけど、静かな余生を送ることもできたのに。理解が難しい。
Posted by ブクログ
いい本だった。
読むと分かるけど、この本には確実に伝えたい事がある。でもそれをオブラートに包むどころか、殆ど匂わないように封じ込めて、年の差カップルの恋愛としてお話が始まる。
第一部は、恋愛の行く末。私は女性だけど、主人公と一緒にハンナに恋をする。
第二部は、法学部教授である作者の本領発揮どころ。法学を学ぶ人が読むと、感じることが違うのではないだろうかとい思わせる内容。黒と白の狭間で揺れる主人公。
第三部は、ハンナとの穏やかな関係と意外な終焉。
ドイツというと、、、という話を想像したが、逆の立場からの話で私にはその方が共感できる。人は弱い生き物で、よく考えもせずマスコミに煽られ、現在の行動はどうなのかという人に対しても不用な同情心をもったり味方をしたりする。それに、勇気を持って(世間のあおりとは反対側に立っているように見える可能性もあるから)、穏やかに誰を責めるでもなく、こういう見方もあるよと提案してくれる良著だと思った。
Posted by ブクログ
禁断の恋愛関係がメインストーリーかと思いきや、中盤はナチス時代の話など非常に重たい部分が多かった。
翻訳だからか哲学的な文章が多い作者の傾向なのか分からないが少し読みにくさを感じた。
文盲であるというコンプレックスから冤罪を認めてしまのは拍子抜けしてしまうけれど、文章が書かれた当時の社会においてはわかる人にはわかる感覚なのかなー。
コンプレックスを少年に対してはさらけ出せて素直に交流が出来て良かったな、と心があたたまった。
物語の本筋とはずれちゃうけど、物理的にある程度距離感があった方が尊い関係が築けるっていうの、分かるなー。
「話の真実の中身は、ぼくの行動の中に含まれているのだから、話はやめてしまってもいいのだった。」
「ぼくたちの人生は何層にも重なっていて、以前経験したことが、成し終えられ片が付いたものとしてではなく、現在進行中の生き生きしたものとして後の体験の中に見いだされることもある。ぼくにはそのことが充分理解できる。にもかかわらず、ときにはそれが耐え難く思えるのだ。ぼくはやっぱり、自由になるために物語を書いたのかもしれない。自由にはけっして手が届かないとしても。」
Posted by ブクログ
親子ほど年の離れたハンナとの恋、ナチの強制収容所をめぐる裁判、服役中のハンナとの交流。
恋愛小説かと思いきや、メインはナチズムの戦争犯罪だった。
まだ自分が産まれてもいない時代の罪を、我が事のように捉える。
この“集団罪責”に共鳴できず戸惑った。
これは…人種の違いなんだろうか。
でも世界的ベストセラーになるってことは、メジャーな考え方といえるよね。
服役してまである事実を隠したいハンナの心情も分からなくて、モヤモヤしてしまった。
Posted by ブクログ
親子ほどの歳が離れた二人の情愛と突然の別れ、そして戦争の影を伴う再会のお話
以下、公式のあらすじ
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過去に犯した罪をどのように裁き、どのように受け入れるか――。
数々の賛辞に迎えられて、ドイツでの刊行後5年間に25カ国で翻訳され、
アメリカでは200万部を超えるベストセラーに。
15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わったはずの戦争が影を落していた。
現代ドイツ文学の旗手による、世界中を感動させた大ベストセラー。
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15歳の主人公ミヒャエルが病み上がりの不調を介抱してくれるという偶然出会った36歳のハンナ
ミヒャエルはハンナと恋に落ち、学業に復帰した傍ら、彼女の家を訪ねては逢瀬を重ねる
出会う度に朗読をせがむハンナ
ただ、二人の関係はハンナの突然の引っ越しによって終わりを告げる
その後、大学で法律を専攻したミヒャエルは、ゼミで傍聴した裁判でハンナを見つける
彼女は、ユダヤ人の大量殺害事件に関わっていた疑いで告発されていた
真摯に受け答えをするハンナだが、何かを隠すようにやってもいない罪を認める
彼女が隠したかった事を察したミヒャエルは裁判長に進言しようとするが……
そして、その後のハンナとの再会
36歳と15歳のお姉ねショタはどうなんだ?
まぁ、ハンナはミヒャエルを17歳だと思っていたようだけど、それでも19歳差
20歳と41歳だとしたら許容できなくもないけど、これは流石にいけないのではなかろうか?
物語の序盤でハンナの隠し事は察しが付く
名前を敢えて尋ねるところとか、そもそものタイトルの朗読をせがむあたりはそうなんだろうなぁと容易に思い至る
失踪に至る過程にしても、もっとやりようはあったと思うけれども、彼女にとってはそうするしかなかったのだろうなぁとも思う
そして裁判所での再会というか、発見と彼女の過去の罪の発覚
ユダヤ人をアウシュビッツ収容所に送った罪
囚人の移送中に起こった火事で、教会の鍵を開けずに見殺しにした罪
他の看守達はハンナに罪を被せるような発言をする
事実とは異なる証言でも、隠し事を暴かれたくなくて受け入れるハンナ
彼女の隠し事を察し、その事を裁判長に進言すれば罪は軽くなるかも知れない
しかし、彼女が隠したがっている事を自分が暴露してもよいのかという葛藤
無実の罪を被ろうとしてでも隠したいという想いを汲み取るミヒャエル
大学に入学した頃は、まだハンナへの想いはあっただろうけど
裁判所でハンナを見つけた際には、明らかに気持ちが醒めているように思う
なので、既にこの時点で彼女への想いはとっくになくなっている
もし彼女と今後も何等かの形で関係を持とうと思うのであれば、裁判長に言っていたと思う
その後もコンタクトを取ろうとしないし、刑務所にも朗読のテープは送っていたのに、手紙は頑なに送っていない
なぜ手紙を書かなかったのか?という疑問もあるけど
恐らく、ハンナに対して疚しい気持ちや負い目、もしくは見下した感情があったのではなかろうか
ハンナが出所する際に所長から相談されたときの反応もそう
ハンナの面倒を自分が見るという事に対する戸惑いや困惑、もしくはある種の嫌悪感も読み取れる
だからこそ、ハンナの最終的な選択に至ったようにも思える
ただ、ハンナはその前から食べ過ぎであったり体を洗わなかったりと、自分を顧みない行動を取っているわけで
ミヒャエルの態度だけではない可能性もあるけど、それでもやはり最後の引き金であったように感じる
物語として読んでいるからこそハンナの隠し事には容易に気づく事ができるけど
実生活でこんな人に出会っていたら、私は気付けるだろうか?
ハンナの特徴に限らず、人は何か隠し事をしていても察する事ができないかもしれない
なので、周りから見て愚かな行動をしている人は、もしかしたら何か隠したいものがある人かもしれない」んだよな
前半の歳の差恋愛という雰囲気から、後半は戦争犯罪と世代間の問題がテーマになっている
戦争当時に生まれてすらいなかった世代に、罪や責任はあるのか?
若い世代に「罪」はないが、「責任」はあるというのがドイツの認識のようだけど
果たしてこれもどうなのだろうね?
日本でも同じ事が言えるだろうか?
特に、既に戦後80年が経過した現在において……
もちろん、当時の日本が犯した罪から目を背けてはいけないけれども
戦勝国に反省する要素はひと欠片もないのか?という疑問もある
そして、当時生まれていなかった世代の人間が背負わなければいけないのか?
国としての罪と責任はあるけど、ただその国の人として生まれただけの個人にそこまで責任を負わせる必要はないと思う
ただ、その国で生まれ育ち、どんな思想を持つのかというのは個人の問題だし
その結果、培われた思想はその人の責任だろうな
Posted by ブクログ
これはね舞台がそもそも難しい。
日本人には特に。
あとね普通に倫理的に無理って人がいると思う。
人を選ぶ小説だなと。
全体的な雰囲気は嫌いじゃない。
景色が浮かぶ。
映画を観てみようかなって思った。
Posted by ブクログ
前半の青年の妄想小説のような展開はなかなかインパクトがあるが、中盤以降、ムードは打って変わり、過去の隠された事実、ハンナを取り巻く悍ましい事実が明らかになる。前半が濃密な生の時間だとすれば、裁判以降の章は死の時間のような。時間は前に進んでいるはずなのに、主人公の意識は後ろへ後ろへと遡り続けている。ハンナを愛することは、先代の大きな過ちを肯定することになるのか?次代の子は過去にどのように対峙すればよいのか?もはや歳の差恋愛の物語にはとうに収まらず、加害の歴史をその直接の経験がない世代はいかに受け止めることができるかという、歴史認識のあり方を読者に問う物語だった。この問いは、日本人にも投げかけ考えさせるべきものだと思う。
Posted by ブクログ
【読み終わって感じたこと】
悲しく切ない物語だと思った。私にはハンナのプライドも、ミヒャエルの行動も全て理解できるわけではない。それでも、ハンナの生涯を思うと辛い気持ちになった。歴史について、教育について、愛について考えさせられる本だった。
【印象に残ったシーン】
ホテルでハンナが激怒したシーン。全てが明らかになってから考えると、本当に悲しいなと思った。どうして自分の秘密を打ち明けられなかったのだろう? それさえできていれば、結末は変わっていたかもしれないのに。
【好きなセリフ】
「苦しい結末を迎えてしまうと、思い出もその幸福を忠実には伝えないのか? 幸せというのは、それが永久に続く場合にのみ本物だというのか?」
何度も繰り返し読んでしまうほど、心に響いた言葉。ミヒャエルとハンナの恋は本物だったこと、それだけは事実であることを示しているのだと思う。そして、単なる悲劇として捉えてほしくないという強い思いも伝わった。
Posted by ブクログ
まず、題名がこれはなんだろうと思わせる。
それはあっと驚くこと、ミステリーではないけどここでは言えない。
15歳の少年ミヒャエルと36歳の女性ハンナとの恋愛。
なんだか新聞沙汰のようでしっくりしないんだけど、そんなこともあるかと読み進むほどに嫌な気はしない。
不思議なことに、彼女の家で逢うごとに「オデュセイア」や「戦争と平和」などを読んでとせがまれ、読みつづける。
そうして逢瀬を重ね、落第しそうな彼に「勉強しなさい!しないなら来ないで!」という。
『バカだって?バカってのがどういうことだかわかってないのね』という彼女の悲痛な叫び。
彼は勉強も頑張り、落第はしないが別れは来る。
7年後、法学の大学生となった彼は、ゼミのため訪れた法廷でハンナと再会。
ちょっとトルストイの「復活」を思い出すが。
ナチス・ドイツ戦争の影。
彼女の秘密。
ふたたび、朗読が始まる。
朗読は18年続く。そして...。
主人公が哲学者の父に諭される言葉が、私には印象的だった。
私がよくしてしまって、後で後悔することだ。
でもどちらがいいのだろう?
父
『でも、わたしは大人たちにたいしても、他人がよいと思うことを自分自身がよいと思うことより上位に置くべき理由はまったく認めないね』
主人公
『もし他人の忠告のおかげで将来幸福になるとしても?』
父
『わたしたちは幸福についてはなしているんじゃなくて、自由と尊厳の話をしているんだよ。…(後略)』
解説に、この本は二度読むように勧められているとある。
感想を書きながら、そうこれも二度読むことになったと実感した。