松永美穂のレビュー一覧

  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    社会主義国ルーマニアから亡命してきた一家。
    ロクデナシでピエロの父。曲芸師の母。父に溺愛され、その関係は家族を超えている姉。そして踊り子の私の一家が、放浪生活をしながらサーカスで何とかお金を稼いでいく。

    作者のアグラヤ・ヴァテラニーは39歳で亡くなっており、本作は37歳のときに出版された作品。
    作者自身がルーマニア生まれで5歳のときに亡命して、77年にスイスのチューリッヒに定住するまでサーカスの興行をしながら生活していたらしい。

    余白が多く、作品自体とても短い。だが、読むのは結構苦しかった。
    タイトルからすでに何だこれ、となるのだが常に不穏な気配がずっと張りついている作品で、ときには禍々し

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    2024年10月25日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    僕からみた市電の乗務員、過去ナチの女看守をしていたハンナ。裁判を通してハンナの過去を知る。僕はあの頃の楽しかった時のハンナを追っていただけ、何年も経って少しずつ裏切ってしまう。心がしんとする考えてしまう。

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    2024年07月31日
  • 車輪の下で

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    繊細すぎる主人公に寄せる共感は、残念ながら持ち合わせないが、俗物の大人たちには自分を含め思い当たる節だらけだ。自然世界を描く描写力の見事さと、俗物を淡々と理解して言葉にする能力の高さに圧倒された。

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    2024年05月17日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ナチ強制収容所の看守であり、同じドイツ人から有罪の判決を受ける。文盲であることが結果的に重罪となったが、育った環境、好んで看守になったわけではないことは想像できる。頑なにそれを弁明にしなかったことは、恥辱を受けることを避けること、表面的にわかっても深くは理解してもらえないであろう諦めも交じったものに感じる。主人公は、付き合っているうちにそうした彼女に気づく。主人公の苦悩は、戦犯者を身内に持ったとしたらどう考えるかと読者は投げかけられる。戦争はなぜ起こるのか、過去の歴史をどう活かすのか、の問いでもある。2024.5.12

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    2024年05月12日
  • 別れの色彩

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    感想。ベルンハルト・シュリンクは「朗読者」の著者。そんな事忘れていたけれど。9つの短編集なんだけれどどの話も年老いた人々が何かしらの「別れ」に遭遇した時の話。亡くなった人に対するもの、随分昔に別れた恋人にまた出会うもの、ご近所の幼い頃から見守り続けていた少女の死にで会うもの。そんな別れの時に脳裏に浮かぶのは思い出で、その思い出も明るさがあるだけではなく、後ろめたさや自己欺瞞、焦燥、そんな向き合いたくないものをちょっぴり混ぜ合わせながらつらつらと脳は過去を浮かび上がらせる。そんな別れの一つ一つが身に染みるのは私もそんな歳に近づいていっているのがわかっているからなのだろう。

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    2024年01月05日
  • 別れの色彩

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    年老いた男たちの振る舞いに、少しギョッとした話もあった。枯れきっていてもおかしくないような年齢の男たちの心を思いがけず覗いてしまったような、ヒヤリとするような気持ちに。
    もう少し私自身が歳を重ねたら味わいも変わるんだろうか。

    難しいテーマも多いが、それぞれの別れの受け取り方や傷を、読者も受け取って自分なりに味わえる、短編ならではの余韻も読み心地も好きだった。
    訳も素晴らしかった。

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    2023年11月11日
  • ナチ・ドイツ最後の8日間 1945.5.1-1945.5.8

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    間違った国の規範で動いた人間は、それを知っているから、逃げ惑う。同調圧力に弱いのは、ドイツも日本も同じか。現在のドイツは、どうだろう…。イタリアは、ムッソリーニを吊るしあげたので異なるのかな。

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    2023年10月30日
  • 別れの色彩

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    別れの形態を様々な事例から検証している短編が9本.舞台はアメリカとドイツだが、普通の人たちの生活が事細かに描写されており、日本との違いを実感した.どの話も楽しめたが「愛娘」でLGBTQ+の実態をのぞき見できた感じがした.女性同士の結婚を周囲が問題なく受け入れていること、当事者らが妊活に励むこと など日本の状況と大きく違った空気を感じた.義理の娘との行為の結果もある意味で起こりうるものだと思った.

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    2023年09月15日
  • 別れの色彩

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    この作者の作品はなんだかんだで読んでいるのだけれど、いつもあまりピンと来ない。『朗読者』でさえもそうだった。合わないのかもな。
    今回のこれは"老い"が時にコミカルで、なんかちょっと面白かった。

    若干ドタバタかなと思う『愛娘』がクスッと笑えてしまって、後味も悪くなく印象に残った。『島で過ごした夏』もありがちな”過ぎた青春の夏”もの?だけれど、最後の母のセリフに思わずジンとしてしまう。

    年をとったからこそわかる、しみじみする話が多かった。

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    2023年04月30日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    かえりみちさんの選書

    ドイツ文学だけどとても読みやすく訳されている。
    自分の愛した人が戦争犯罪者だったらどうするか。
    自分たちの世代ではないのに、ナチ時代の過去を負の遺産として背負わされるとまどい。
    戦争が過去のことではなくなった今、より考えさせられる、哀しくも美しい本でした。

    ”愛を読む人”で映画化されているのでぜひ近いうちに観たいなぁ。(しかもケイトウィンスレットが主演女優賞を受賞されてる)

    _φ(・_・
    ”幸せな歳月だと思うと同時に語れるような思い出がない”
    ”思い出に別れを告げたものの、けっしてそれを精算したわけではない”

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    2023年03月20日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わかりやすく丁寧な翻訳で、細やかな心情描写が印象的だった。
    ハンナの存在に無言の圧力というか、凄みを感じたが、その印象も再読すると変わって感じるかもしれない。
    刑務所から出て、はじめて生身のまま罰を受ける気持ちになるのかと想像した。
    今後もこの本は、誰かの拠り所になったり、自分を見つめ直したり、責めたりするのに使われるのだろうなと思った。

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    2023年03月04日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ネタバレ

    感想がまとまらない…
    ドイツに、ドイツ国内で戦争犯罪を犯した人たちを裁いた時代があることを初めて知った。
    戦争は経験していないけど、二度と繰り返してはならない罪の歴史として教育された、親や愛した人が戦争の当事者でありえた世代の人たちは、身近な人が犯罪者であることに、どれだけたくさんのことを考えたんだろう…
    ヨーロッパの真ん中にあるドイツが負の歴史を抱えていることが、ヨーロッパの人たちにとって、どんなに身近な出来事で、記憶や文化として残っているのか、ナチズムを扱った本を読むたびに考える。
    日本も決して蚊帳の外の話ではなく、かつて戦争の時代を生きた人がいて、その子どもの世代があって、今がある…戦争

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    2023年02月11日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わぁ、こういう本だったのか。
    第一章を読んでいるときには、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。

    めちゃくちゃに重いテーマ。
    ・時代や状況が違ったあとで、過去の事柄を裁くことができるのか。
    ・大切な人を守るために、その大切な人の守りたい秘密をつまびらかにしてしまう権利はあるのか。

    そして第三章、ハンナの選んだ選択肢

    ドイツ文学を読んだことが今までなかったけれど、これはドイツ人であるが故に書けるテーマ。

    戦時を生き抜いてきた親世代を子世代が軽蔑する権利はあるのか。口先だけで生きてはいけない。
    もちろん、命が無意味に奪われていいわけがない。

    人類は色々な経験をしているのに、後に活

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    2023年02月01日
  • 才女の運命

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    ネタバレ

    「男たちの名声の陰で」の副題通り、豊かな才能や野心を抱きながら、その仕事すべてが有名な夫または愛人のものになってしまった女性たちの生きようを記した一冊。読んでいて何度も腹が立ち、やるせなくなり、家父長制くたばれと悪態をついた。いっそグウィンの短篇小説ーー男は城に閉じ込めて身体ゲームに興じさせ、優位に立っているかに思わせ、受精の時だけ女に買われる。そのじつ研究などの分野はなべて女のものであるーーのごとくになってしまえと呪いそうにもなった。これは現在もいちぶを除いて女性に降り掛かりつづけているできごとなのだから! ……けれどまちがいなく「女性」である我が身を振り返って、たれかの助けが必要なのは自分

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    2022年09月06日
  • 誤解でございます

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    ドイツ文学者・翻訳家である著者の初エッセイ集。
    略歴やプロフィール写真を見るといかにも才女といった風情だが、ちょっぴり妄想癖があったりと可愛らしい一面もお持ちのようで…(にやり)『へんてこ任侠伝』(本作に収められているエッセイの一つ)ではその妄想癖が炸裂、オチがきれいに収まらないところも松永氏らしくて推しエピソードとなった。ちなみに「続編」もある笑

    おっとりした印象の反面、たくましい一面も兼ね備えられている。
    周囲からのサポートがあったとは言え院時代は2児の子育てに追われ、その後は留学のため子供達(+お母様)とドイツに長期滞在された。留学前には国際免許を取得されていたという。(どひゃー)

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    2022年06月15日
  • 車輪の下で

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    キスシーンが幻想的で、ザ・耽美でもう最高
    美しい自然の描写は、煌びやかな川の流れが目の前に浮かぶようだった

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    2022年05月24日
  • オルガ

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    ネタバレ

    オルガの愛情深さに尊敬。自立心に共感。
    愛する幸福を愛される幸福より上におくゲーテに対しての、愛されている保証のうちに生きている人はそんな詩が書けるというオルガの感想が好き。
    死んだ人は貴族も農民も関係なく平等だから墓地を歩くのが好きなオルガが好き。
    中盤から散りばめられた謎が気になって、深夜まで一気読みしてしまった。
    後半の手紙はただただ切ない。
    オルガの揺れ動く心情がものすごく伝わってきて涙が止まらない。
    元の文章自体読めないけれど、翻訳者の人が上手な気がする。するする読める。
    そして改めてつくづく戦争は滑稽だと思う。
    これまでの歴史がすべてを物語っている。
    戦争反対。

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    2022年03月20日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    再読。
    15歳の少年が、母親ほど年上の女性に恋をする。
    彼女が、隠していたのは、文盲だということ。
    どうしても言えない…その気持ちがなんとも切ない。
    朗読してもらうという、そのことに喜びを感じていたのか。
    別れ、出会いは、裁判所。
    やはり、何度読んでも救われない。
    残酷な愛…と感じてしまう。

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    2022年02月15日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「あの時私はどうしたらよかったの?あなたならどうしましたか?」という問いかけは切実だ。また罪が重くなることより文盲が知られることが彼女にとって耐えられなかったこと、恩赦を前に死を選んだこと、理由は想像できるが…。幸せいっぱいではないかもしれないけど、静かな余生を送ることもできたのに。理解が難しい。

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    2021年10月14日
  • アルプスの少女ハイジ

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    「100分de名著」で取り上げられていたこと、WOWOWでアニメを久しぶりに全部見たことで新発見があり、原作も読みたくなった。
    昔の訳で読んだ覚えが在るが、何となく古い言い回しで挫折した気がするので、躊躇していた。忘れた頃、この文庫を見つけたら、「100分de名著」に出ていた方の訳だった。
    訳が素晴らしい。すんなり読めました。
    アニメではいろいろストーリーが付け足され、変更してるところもあったんですね。
    いくつになっても、人は変われる!と希望が持てました。大人こそ読んで欲しい。

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    2021年10月02日