松永美穂のレビュー一覧
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社会主義国ルーマニアから亡命してきた一家。
ロクデナシでピエロの父。曲芸師の母。父に溺愛され、その関係は家族を超えている姉。そして踊り子の私の一家が、放浪生活をしながらサーカスで何とかお金を稼いでいく。
作者のアグラヤ・ヴァテラニーは39歳で亡くなっており、本作は37歳のときに出版された作品。
作者自身がルーマニア生まれで5歳のときに亡命して、77年にスイスのチューリッヒに定住するまでサーカスの興行をしながら生活していたらしい。
余白が多く、作品自体とても短い。だが、読むのは結構苦しかった。
タイトルからすでに何だこれ、となるのだが常に不穏な気配がずっと張りついている作品で、ときには禍々し -
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感想。ベルンハルト・シュリンクは「朗読者」の著者。そんな事忘れていたけれど。9つの短編集なんだけれどどの話も年老いた人々が何かしらの「別れ」に遭遇した時の話。亡くなった人に対するもの、随分昔に別れた恋人にまた出会うもの、ご近所の幼い頃から見守り続けていた少女の死にで会うもの。そんな別れの時に脳裏に浮かぶのは思い出で、その思い出も明るさがあるだけではなく、後ろめたさや自己欺瞞、焦燥、そんな向き合いたくないものをちょっぴり混ぜ合わせながらつらつらと脳は過去を浮かび上がらせる。そんな別れの一つ一つが身に染みるのは私もそんな歳に近づいていっているのがわかっているからなのだろう。
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ネタバレ感想がまとまらない…
ドイツに、ドイツ国内で戦争犯罪を犯した人たちを裁いた時代があることを初めて知った。
戦争は経験していないけど、二度と繰り返してはならない罪の歴史として教育された、親や愛した人が戦争の当事者でありえた世代の人たちは、身近な人が犯罪者であることに、どれだけたくさんのことを考えたんだろう…
ヨーロッパの真ん中にあるドイツが負の歴史を抱えていることが、ヨーロッパの人たちにとって、どんなに身近な出来事で、記憶や文化として残っているのか、ナチズムを扱った本を読むたびに考える。
日本も決して蚊帳の外の話ではなく、かつて戦争の時代を生きた人がいて、その子どもの世代があって、今がある…戦争 -
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わぁ、こういう本だったのか。
第一章を読んでいるときには、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。
めちゃくちゃに重いテーマ。
・時代や状況が違ったあとで、過去の事柄を裁くことができるのか。
・大切な人を守るために、その大切な人の守りたい秘密をつまびらかにしてしまう権利はあるのか。
そして第三章、ハンナの選んだ選択肢
ドイツ文学を読んだことが今までなかったけれど、これはドイツ人であるが故に書けるテーマ。
戦時を生き抜いてきた親世代を子世代が軽蔑する権利はあるのか。口先だけで生きてはいけない。
もちろん、命が無意味に奪われていいわけがない。
人類は色々な経験をしているのに、後に活 -
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ネタバレ「男たちの名声の陰で」の副題通り、豊かな才能や野心を抱きながら、その仕事すべてが有名な夫または愛人のものになってしまった女性たちの生きようを記した一冊。読んでいて何度も腹が立ち、やるせなくなり、家父長制くたばれと悪態をついた。いっそグウィンの短篇小説ーー男は城に閉じ込めて身体ゲームに興じさせ、優位に立っているかに思わせ、受精の時だけ女に買われる。そのじつ研究などの分野はなべて女のものであるーーのごとくになってしまえと呪いそうにもなった。これは現在もいちぶを除いて女性に降り掛かりつづけているできごとなのだから! ……けれどまちがいなく「女性」である我が身を振り返って、たれかの助けが必要なのは自分
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ドイツ文学者・翻訳家である著者の初エッセイ集。
略歴やプロフィール写真を見るといかにも才女といった風情だが、ちょっぴり妄想癖があったりと可愛らしい一面もお持ちのようで…(にやり)『へんてこ任侠伝』(本作に収められているエッセイの一つ)ではその妄想癖が炸裂、オチがきれいに収まらないところも松永氏らしくて推しエピソードとなった。ちなみに「続編」もある笑
おっとりした印象の反面、たくましい一面も兼ね備えられている。
周囲からのサポートがあったとは言え院時代は2児の子育てに追われ、その後は留学のため子供達(+お母様)とドイツに長期滞在された。留学前には国際免許を取得されていたという。(どひゃー)
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ネタバレオルガの愛情深さに尊敬。自立心に共感。
愛する幸福を愛される幸福より上におくゲーテに対しての、愛されている保証のうちに生きている人はそんな詩が書けるというオルガの感想が好き。
死んだ人は貴族も農民も関係なく平等だから墓地を歩くのが好きなオルガが好き。
中盤から散りばめられた謎が気になって、深夜まで一気読みしてしまった。
後半の手紙はただただ切ない。
オルガの揺れ動く心情がものすごく伝わってきて涙が止まらない。
元の文章自体読めないけれど、翻訳者の人が上手な気がする。するする読める。
そして改めてつくづく戦争は滑稽だと思う。
これまでの歴史がすべてを物語っている。
戦争反対。 -
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ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「あの時私はどうしたらよかったの?あなたならどうしましたか?」という問いかけは切実だ。また罪が重くなることより文盲が知られることが彼女にとって耐えられなかったこと、恩赦を前に死を選んだこと、理由は想像できるが…。幸せいっぱいではないかもしれないけど、静かな余生を送ることもできたのに。理解が難しい。