松永美穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ感想がまとまらない…
ドイツに、ドイツ国内で戦争犯罪を犯した人たちを裁いた時代があることを初めて知った。
戦争は経験していないけど、二度と繰り返してはならない罪の歴史として教育された、親や愛した人が戦争の当事者でありえた世代の人たちは、身近な人が犯罪者であることに、どれだけたくさんのことを考えたんだろう…
ヨーロッパの真ん中にあるドイツが負の歴史を抱えていることが、ヨーロッパの人たちにとって、どんなに身近な出来事で、記憶や文化として残っているのか、ナチズムを扱った本を読むたびに考える。
日本も決して蚊帳の外の話ではなく、かつて戦争の時代を生きた人がいて、その子どもの世代があって、今がある…戦争 -
Posted by ブクログ
わぁ、こういう本だったのか。
第一章を読んでいるときには、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。
めちゃくちゃに重いテーマ。
・時代や状況が違ったあとで、過去の事柄を裁くことができるのか。
・大切な人を守るために、その大切な人の守りたい秘密をつまびらかにしてしまう権利はあるのか。
そして第三章、ハンナの選んだ選択肢
ドイツ文学を読んだことが今までなかったけれど、これはドイツ人であるが故に書けるテーマ。
戦時を生き抜いてきた親世代を子世代が軽蔑する権利はあるのか。口先だけで生きてはいけない。
もちろん、命が無意味に奪われていいわけがない。
人類は色々な経験をしているのに、後に活 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「男たちの名声の陰で」の副題通り、豊かな才能や野心を抱きながら、その仕事すべてが有名な夫または愛人のものになってしまった女性たちの生きようを記した一冊。読んでいて何度も腹が立ち、やるせなくなり、家父長制くたばれと悪態をついた。いっそグウィンの短篇小説ーー男は城に閉じ込めて身体ゲームに興じさせ、優位に立っているかに思わせ、受精の時だけ女に買われる。そのじつ研究などの分野はなべて女のものであるーーのごとくになってしまえと呪いそうにもなった。これは現在もいちぶを除いて女性に降り掛かりつづけているできごとなのだから! ……けれどまちがいなく「女性」である我が身を振り返って、たれかの助けが必要なのは自分
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ドイツ文学者・翻訳家である著者の初エッセイ集。
略歴やプロフィール写真を見るといかにも才女といった風情だが、ちょっぴり妄想癖があったりと可愛らしい一面もお持ちのようで…(にやり)『へんてこ任侠伝』(本作に収められているエッセイの一つ)ではその妄想癖が炸裂、オチがきれいに収まらないところも松永氏らしくて推しエピソードとなった。ちなみに「続編」もある笑
おっとりした印象の反面、たくましい一面も兼ね備えられている。
周囲からのサポートがあったとは言え院時代は2児の子育てに追われ、その後は留学のため子供達(+お母様)とドイツに長期滞在された。留学前には国際免許を取得されていたという。(どひゃー)
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ネタバレオルガの愛情深さに尊敬。自立心に共感。
愛する幸福を愛される幸福より上におくゲーテに対しての、愛されている保証のうちに生きている人はそんな詩が書けるというオルガの感想が好き。
死んだ人は貴族も農民も関係なく平等だから墓地を歩くのが好きなオルガが好き。
中盤から散りばめられた謎が気になって、深夜まで一気読みしてしまった。
後半の手紙はただただ切ない。
オルガの揺れ動く心情がものすごく伝わってきて涙が止まらない。
元の文章自体読めないけれど、翻訳者の人が上手な気がする。するする読める。
そして改めてつくづく戦争は滑稽だと思う。
これまでの歴史がすべてを物語っている。
戦争反対。 -
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ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「あの時私はどうしたらよかったの?あなたならどうしましたか?」という問いかけは切実だ。また罪が重くなることより文盲が知られることが彼女にとって耐えられなかったこと、恩赦を前に死を選んだこと、理由は想像できるが…。幸せいっぱいではないかもしれないけど、静かな余生を送ることもできたのに。理解が難しい。
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第一次大戦前のドイツ、祖母に引き取られたオルガは、農園主の息子ヘルベルトと仲良くなるが、農園主に反対される。ヘルベルトは英雄を夢見て北極圏の冒険に出かけるが、音信不通になってしまう。オルガは、祖母の反対を押し切り師範学校へ行き教師になる。行方のわからないヘルベルトに局留めの手紙を書きながら、オルガは第二次世界大戦を迎える。
第一部は、オルガとヘルベルトの若い日々と、ヘルベルトがいなくなったあとのオルガの日々をオルガが語る。
第二部は、大戦後オルガが親しくし家で裁縫をしていた家庭の息子フェルディナンドが、年老いたオルガを語る。
第三部は、オルガの死後フェルディナンドが手に入れたオルガのヘルベル -
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ネタバレ3つの短編ドイツの自然ってこんなにも美しいんだって。鳥がそれぞれの物語に出てくるところもすてき。
みずうみ
自然の描写が美しい。
結ばれなかったふたりだから美しい物語になるのかなぁ。それにしても、彼女の夫は鈍感なの。優しいの。人生についてパンになぞらえる部分など鋭い教訓だなぁ。なんで?なんで?って思ってしまいました。
エリザーベトのもとにラインハルトがいなくなってから、ラインハルトの幼馴染のエーリヒさんが通ってきてたけど、ラインハルトはその人のこと、自分の着ている茶色のオーバーにそっくりだって言ってて。悪口にきこえるけど、エリサーベトは、それをそんなふうに思ってないみたいで、手紙に描いたりし -
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読後はドッシリずっしりとした重苦しい気持ちになる。
1人の女性について20ページ程度にまとめられており、読みやすい。
結婚や、結婚でなくとも男性との繋がりによって才能や時間、人生を搾取され、そして男性の見方によって歴史からも排除されてきた、才能豊かで努力家でもあった、稀有な女性の先輩方。
過去の話だけど、今の日本でも個人差はあれど続いているのではないか。
結婚という契約により、女性は男性の帰属下になり、女性の人生をコントロールできる、より口出しできると無意識下に思っているのは現代にも繋がっていないか。
事実婚を選ぶ一因は、こういうこともあるのだと思う。
シャルロッテ・ベーレント=コリン