松永美穂のレビュー一覧

  • 車輪の下で

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    ネタバレ

    思いやりのない少年ハイルナーに出会ったことが、ハンスの不幸の始まりだった。ハンスの取り柄は優等生であることだ。それは周りから褒められる美点であり、自尊心と成長心を持たせて、ハンスの思春期の芯となる大事なものだった。しかし、それをハイルナーはずかずかとハンスの心に入り込み、思わせぶりな態度でハンスに友達として依存させる。そして、勉強の邪魔までしてくる。人を見下し、迷惑をかけるハイルナーは友達ではない。もし友達であれば、当然、持つべき友達への興味や思いやりを持っているはずだ。だが、ハイルナーにはそれがない。周りの大人たちも、優等生であるハンスが優等生でなくなったことに対して辛辣だ。機械工としての仕

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    2025年01月21日
  • モモ(絵本版)

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    モモの世界観をギュッと寄せ集めたような本。とても美しい絵が添えられていて、原作と共に配置したい。原作読み返したいな〜

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    2025年01月15日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    どこまでが自伝で、どこまで妄想なのか創作なのか、よくわからない不思議な世界に連れ込まれる。
    元靴職人と揶揄されるチャウシェスク政権下のルーマニアでの悲惨な生活は繰り返し語られ、豊かな生活を求めて西側に脱出しても旅回りサーカスの一員であるロマでは難民の暮らししかできない。
    にもかかわらずルーマニアに残った親戚縁者からは西側で富裕な生活をしていると信じ込まれて繰り返し支援を求められる。
    父母は離婚し、映画スターになる夢も実現しない。
    という陰々滅々な世界が延々と続いて、後半では少々うんざりする。

    この本の訳者あとがきで驚いたのは、韓国文学の紹介で八面六臂の活躍をされている斉藤真理子さんが翻訳され

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    2025年01月09日
  • モモ(絵本版)

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    ネタバレ

    高校生位の時に読んだ『モモ』。だいぶ内容を忘れてしまっているが、この絵本版はモモにはいろんな人の話をじっくりよく聞ける才能があり、ジジと道路そうじのベッポという二人の特に親しい友だちがいるという本編の序盤の一部分が描かれ、既読の人は懐かしさと共に、未読の人は未知の高鳴りと共に続きの物語へ導いてくれる。
    時間どろぼうの影もまだないけれど、見返しの「時間とは、いのちだからです。そして、いのちは心にやどっているのです」の言葉が全て。
    ベッポの仕事に対する極意はそのまま学校生活や生き方にも当てはまりそうで沁みるなぁ。

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    2024年12月08日
  • アルプスの少女ハイジ

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    ネタバレ

    アルプスの住むおじいさんと暮らす事になったハイジ。山での暮らしは、ペーター一家との出会いや大自然の風景など、感動がいっぱいで楽しい日々だった。ところが、ある日突然、都会のお屋敷に連れていかれてしまって…。
    かわいいハイジの物語が読めて嬉しいです!ただ、アニメのイメージが強いため、アニメの方がしっくりきました。前半はだいたい原作に忠実にアニメ化されていますが、後半はアニメならではのオリジナルストーリーがあったり、原作の内容が変更されていたり…。特に、クララの車椅子を壊した人物が、原作ではペーターだったのがショックでした。ヤキモチが原因で壊したようですが…。アニメでは、クララが車椅子を取りに行こう

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    2024年11月17日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    ひと目見ていま読むべき作品だと手に取って読んだものの、衝撃すぎてなかなか感想がまとまらなかった。

    抽象画を言葉にしたらこうなるのではないかという、散文詩のような形式でつづられていくのは、時代と、場所と、家族に翻弄された一人の少女の内側からの視点。
    読んでいる方が、おかゆの中で煮られているような感覚を覚えていく。

    どこからどこまでが作者の投影なのかはわからないものの、まだ若くして亡くなられたということにどこか納得してしまった。
    キャンバスに叩きつけるような言葉を吐き出す感性の持ち主が、このような世界で生きていかざるをえなかった人生の激しさを思わずにいられなかった。

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    2024年11月03日
  • モモ(絵本版)

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    エンデさんの本は、「モモ」は履修済み、「はてしない物語」は未履修ですが、どちらも書棚のどこかに積んであります。今回は「モモ」の方が絵本になったということで、この素晴らしい物語のエッセンスを、何十年かぶりに、美しい絵と共に堪能しました。「時間泥棒」のくだりは省略されていましたが、「話を聞いてもらうこと」の大切さについて、あの頃よりもよく理解できたような気がします。原本もまた、読んでみようかな。

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    2024年10月30日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    社会主義国ルーマニアから亡命してきた一家。
    ロクデナシでピエロの父。曲芸師の母。父に溺愛され、その関係は家族を超えている姉。そして踊り子の私の一家が、放浪生活をしながらサーカスで何とかお金を稼いでいく。

    作者のアグラヤ・ヴァテラニーは39歳で亡くなっており、本作は37歳のときに出版された作品。
    作者自身がルーマニア生まれで5歳のときに亡命して、77年にスイスのチューリッヒに定住するまでサーカスの興行をしながら生活していたらしい。

    余白が多く、作品自体とても短い。だが、読むのは結構苦しかった。
    タイトルからすでに何だこれ、となるのだが常に不穏な気配がずっと張りついている作品で、ときには禍々し

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    2024年10月25日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    僕からみた市電の乗務員、過去ナチの女看守をしていたハンナ。裁判を通してハンナの過去を知る。僕はあの頃の楽しかった時のハンナを追っていただけ、何年も経って少しずつ裏切ってしまう。心がしんとする考えてしまう。

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    2024年07月31日
  • 車輪の下で

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    繊細すぎる主人公に寄せる共感は、残念ながら持ち合わせないが、俗物の大人たちには自分を含め思い当たる節だらけだ。自然世界を描く描写力の見事さと、俗物を淡々と理解して言葉にする能力の高さに圧倒された。

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    2024年05月17日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ナチ強制収容所の看守であり、同じドイツ人から有罪の判決を受ける。文盲であることが結果的に重罪となったが、育った環境、好んで看守になったわけではないことは想像できる。頑なにそれを弁明にしなかったことは、恥辱を受けることを避けること、表面的にわかっても深くは理解してもらえないであろう諦めも交じったものに感じる。主人公は、付き合っているうちにそうした彼女に気づく。主人公の苦悩は、戦犯者を身内に持ったとしたらどう考えるかと読者は投げかけられる。戦争はなぜ起こるのか、過去の歴史をどう活かすのか、の問いでもある。2024.5.12

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    2024年05月12日
  • 別れの色彩

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    感想。ベルンハルト・シュリンクは「朗読者」の著者。そんな事忘れていたけれど。9つの短編集なんだけれどどの話も年老いた人々が何かしらの「別れ」に遭遇した時の話。亡くなった人に対するもの、随分昔に別れた恋人にまた出会うもの、ご近所の幼い頃から見守り続けていた少女の死にで会うもの。そんな別れの時に脳裏に浮かぶのは思い出で、その思い出も明るさがあるだけではなく、後ろめたさや自己欺瞞、焦燥、そんな向き合いたくないものをちょっぴり混ぜ合わせながらつらつらと脳は過去を浮かび上がらせる。そんな別れの一つ一つが身に染みるのは私もそんな歳に近づいていっているのがわかっているからなのだろう。

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    2024年01月05日
  • 別れの色彩

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    年老いた男たちの振る舞いに、少しギョッとした話もあった。枯れきっていてもおかしくないような年齢の男たちの心を思いがけず覗いてしまったような、ヒヤリとするような気持ちに。
    もう少し私自身が歳を重ねたら味わいも変わるんだろうか。

    難しいテーマも多いが、それぞれの別れの受け取り方や傷を、読者も受け取って自分なりに味わえる、短編ならではの余韻も読み心地も好きだった。
    訳も素晴らしかった。

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    2023年11月11日
  • ナチ・ドイツ最後の8日間 1945.5.1-1945.5.8

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    間違った国の規範で動いた人間は、それを知っているから、逃げ惑う。同調圧力に弱いのは、ドイツも日本も同じか。現在のドイツは、どうだろう…。イタリアは、ムッソリーニを吊るしあげたので異なるのかな。

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    2023年10月30日
  • 別れの色彩

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    別れの形態を様々な事例から検証している短編が9本.舞台はアメリカとドイツだが、普通の人たちの生活が事細かに描写されており、日本との違いを実感した.どの話も楽しめたが「愛娘」でLGBTQ+の実態をのぞき見できた感じがした.女性同士の結婚を周囲が問題なく受け入れていること、当事者らが妊活に励むこと など日本の状況と大きく違った空気を感じた.義理の娘との行為の結果もある意味で起こりうるものだと思った.

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    2023年09月15日
  • 別れの色彩

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    この作者の作品はなんだかんだで読んでいるのだけれど、いつもあまりピンと来ない。『朗読者』でさえもそうだった。合わないのかもな。
    今回のこれは"老い"が時にコミカルで、なんかちょっと面白かった。

    若干ドタバタかなと思う『愛娘』がクスッと笑えてしまって、後味も悪くなく印象に残った。『島で過ごした夏』もありがちな”過ぎた青春の夏”もの?だけれど、最後の母のセリフに思わずジンとしてしまう。

    年をとったからこそわかる、しみじみする話が多かった。

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    2023年04月30日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    かえりみちさんの選書

    ドイツ文学だけどとても読みやすく訳されている。
    自分の愛した人が戦争犯罪者だったらどうするか。
    自分たちの世代ではないのに、ナチ時代の過去を負の遺産として背負わされるとまどい。
    戦争が過去のことではなくなった今、より考えさせられる、哀しくも美しい本でした。

    ”愛を読む人”で映画化されているのでぜひ近いうちに観たいなぁ。(しかもケイトウィンスレットが主演女優賞を受賞されてる)

    _φ(・_・
    ”幸せな歳月だと思うと同時に語れるような思い出がない”
    ”思い出に別れを告げたものの、けっしてそれを精算したわけではない”

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    2023年03月20日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わかりやすく丁寧な翻訳で、細やかな心情描写が印象的だった。
    ハンナの存在に無言の圧力というか、凄みを感じたが、その印象も再読すると変わって感じるかもしれない。
    刑務所から出て、はじめて生身のまま罰を受ける気持ちになるのかと想像した。
    今後もこの本は、誰かの拠り所になったり、自分を見つめ直したり、責めたりするのに使われるのだろうなと思った。

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    2023年03月04日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ネタバレ

    感想がまとまらない…
    ドイツに、ドイツ国内で戦争犯罪を犯した人たちを裁いた時代があることを初めて知った。
    戦争は経験していないけど、二度と繰り返してはならない罪の歴史として教育された、親や愛した人が戦争の当事者でありえた世代の人たちは、身近な人が犯罪者であることに、どれだけたくさんのことを考えたんだろう…
    ヨーロッパの真ん中にあるドイツが負の歴史を抱えていることが、ヨーロッパの人たちにとって、どんなに身近な出来事で、記憶や文化として残っているのか、ナチズムを扱った本を読むたびに考える。
    日本も決して蚊帳の外の話ではなく、かつて戦争の時代を生きた人がいて、その子どもの世代があって、今がある…戦争

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    2023年02月11日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わぁ、こういう本だったのか。
    第一章を読んでいるときには、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。

    めちゃくちゃに重いテーマ。
    ・時代や状況が違ったあとで、過去の事柄を裁くことができるのか。
    ・大切な人を守るために、その大切な人の守りたい秘密をつまびらかにしてしまう権利はあるのか。

    そして第三章、ハンナの選んだ選択肢

    ドイツ文学を読んだことが今までなかったけれど、これはドイツ人であるが故に書けるテーマ。

    戦時を生き抜いてきた親世代を子世代が軽蔑する権利はあるのか。口先だけで生きてはいけない。
    もちろん、命が無意味に奪われていいわけがない。

    人類は色々な経験をしているのに、後に活

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    2023年02月01日