松永美穂のレビュー一覧

  • 別れの色彩

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    別れの形態を様々な事例から検証している短編が9本.舞台はアメリカとドイツだが、普通の人たちの生活が事細かに描写されており、日本との違いを実感した.どの話も楽しめたが「愛娘」でLGBTQ+の実態をのぞき見できた感じがした.女性同士の結婚を周囲が問題なく受け入れていること、当事者らが妊活に励むこと など日本の状況と大きく違った空気を感じた.義理の娘との行為の結果もある意味で起こりうるものだと思った.

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    2023年09月15日
  • 別れの色彩

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    この作者の作品はなんだかんだで読んでいるのだけれど、いつもあまりピンと来ない。『朗読者』でさえもそうだった。合わないのかもな。
    今回のこれは"老い"が時にコミカルで、なんかちょっと面白かった。

    若干ドタバタかなと思う『愛娘』がクスッと笑えてしまって、後味も悪くなく印象に残った。『島で過ごした夏』もありがちな”過ぎた青春の夏”もの?だけれど、最後の母のセリフに思わずジンとしてしまう。

    年をとったからこそわかる、しみじみする話が多かった。

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    2023年04月30日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    かえりみちさんの選書

    ドイツ文学だけどとても読みやすく訳されている。
    自分の愛した人が戦争犯罪者だったらどうするか。
    自分たちの世代ではないのに、ナチ時代の過去を負の遺産として背負わされるとまどい。
    戦争が過去のことではなくなった今、より考えさせられる、哀しくも美しい本でした。

    ”愛を読む人”で映画化されているのでぜひ近いうちに観たいなぁ。(しかもケイトウィンスレットが主演女優賞を受賞されてる)

    _φ(・_・
    ”幸せな歳月だと思うと同時に語れるような思い出がない”
    ”思い出に別れを告げたものの、けっしてそれを精算したわけではない”

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    2023年03月20日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わかりやすく丁寧な翻訳で、細やかな心情描写が印象的だった。
    ハンナの存在に無言の圧力というか、凄みを感じたが、その印象も再読すると変わって感じるかもしれない。
    刑務所から出て、はじめて生身のまま罰を受ける気持ちになるのかと想像した。
    今後もこの本は、誰かの拠り所になったり、自分を見つめ直したり、責めたりするのに使われるのだろうなと思った。

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    2023年03月04日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ネタバレ

    感想がまとまらない…
    ドイツに、ドイツ国内で戦争犯罪を犯した人たちを裁いた時代があることを初めて知った。
    戦争は経験していないけど、二度と繰り返してはならない罪の歴史として教育された、親や愛した人が戦争の当事者でありえた世代の人たちは、身近な人が犯罪者であることに、どれだけたくさんのことを考えたんだろう…
    ヨーロッパの真ん中にあるドイツが負の歴史を抱えていることが、ヨーロッパの人たちにとって、どんなに身近な出来事で、記憶や文化として残っているのか、ナチズムを扱った本を読むたびに考える。
    日本も決して蚊帳の外の話ではなく、かつて戦争の時代を生きた人がいて、その子どもの世代があって、今がある…戦争

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    2023年02月11日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    わぁ、こういう本だったのか。
    第一章を読んでいるときには、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。

    めちゃくちゃに重いテーマ。
    ・時代や状況が違ったあとで、過去の事柄を裁くことができるのか。
    ・大切な人を守るために、その大切な人の守りたい秘密をつまびらかにしてしまう権利はあるのか。

    そして第三章、ハンナの選んだ選択肢

    ドイツ文学を読んだことが今までなかったけれど、これはドイツ人であるが故に書けるテーマ。

    戦時を生き抜いてきた親世代を子世代が軽蔑する権利はあるのか。口先だけで生きてはいけない。
    もちろん、命が無意味に奪われていいわけがない。

    人類は色々な経験をしているのに、後に活

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    2023年02月01日
  • 才女の運命

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    ネタバレ

    「男たちの名声の陰で」の副題通り、豊かな才能や野心を抱きながら、その仕事すべてが有名な夫または愛人のものになってしまった女性たちの生きようを記した一冊。読んでいて何度も腹が立ち、やるせなくなり、家父長制くたばれと悪態をついた。いっそグウィンの短篇小説ーー男は城に閉じ込めて身体ゲームに興じさせ、優位に立っているかに思わせ、受精の時だけ女に買われる。そのじつ研究などの分野はなべて女のものであるーーのごとくになってしまえと呪いそうにもなった。これは現在もいちぶを除いて女性に降り掛かりつづけているできごとなのだから! ……けれどまちがいなく「女性」である我が身を振り返って、たれかの助けが必要なのは自分

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    2022年09月06日
  • 誤解でございます

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    ドイツ文学者・翻訳家である著者の初エッセイ集。
    略歴やプロフィール写真を見るといかにも才女といった風情だが、ちょっぴり妄想癖があったりと可愛らしい一面もお持ちのようで…(にやり)『へんてこ任侠伝』(本作に収められているエッセイの一つ)ではその妄想癖が炸裂、オチがきれいに収まらないところも松永氏らしくて推しエピソードとなった。ちなみに「続編」もある笑

    おっとりした印象の反面、たくましい一面も兼ね備えられている。
    周囲からのサポートがあったとは言え院時代は2児の子育てに追われ、その後は留学のため子供達(+お母様)とドイツに長期滞在された。留学前には国際免許を取得されていたという。(どひゃー)

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    2022年06月15日
  • 車輪の下で

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    キスシーンが幻想的で、ザ・耽美でもう最高
    美しい自然の描写は、煌びやかな川の流れが目の前に浮かぶようだった

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    2022年05月24日
  • オルガ

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    ネタバレ

    オルガの愛情深さに尊敬。自立心に共感。
    愛する幸福を愛される幸福より上におくゲーテに対しての、愛されている保証のうちに生きている人はそんな詩が書けるというオルガの感想が好き。
    死んだ人は貴族も農民も関係なく平等だから墓地を歩くのが好きなオルガが好き。
    中盤から散りばめられた謎が気になって、深夜まで一気読みしてしまった。
    後半の手紙はただただ切ない。
    オルガの揺れ動く心情がものすごく伝わってきて涙が止まらない。
    元の文章自体読めないけれど、翻訳者の人が上手な気がする。するする読める。
    そして改めてつくづく戦争は滑稽だと思う。
    これまでの歴史がすべてを物語っている。
    戦争反対。

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    2022年03月20日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    再読。
    15歳の少年が、母親ほど年上の女性に恋をする。
    彼女が、隠していたのは、文盲だということ。
    どうしても言えない…その気持ちがなんとも切ない。
    朗読してもらうという、そのことに喜びを感じていたのか。
    別れ、出会いは、裁判所。
    やはり、何度読んでも救われない。
    残酷な愛…と感じてしまう。

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    2022年02月15日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    ハンナを理解することは難しい。戦時はナチの看守として勤務し、移送中の事故の折にはとらわれていた人たちを見殺しにした。その後、ふとしたきっかけで出会った15歳の少年と関係を持ったというと、道徳心のない人物のようだけど、実際のハンナは激しやすくやや不安定とはいえ、普通の人に見える。「あの時私はどうしたらよかったの?あなたならどうしましたか?」という問いかけは切実だ。また罪が重くなることより文盲が知られることが彼女にとって耐えられなかったこと、恩赦を前に死を選んだこと、理由は想像できるが…。幸せいっぱいではないかもしれないけど、静かな余生を送ることもできたのに。理解が難しい。

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    2021年10月14日
  • アルプスの少女ハイジ

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    「100分de名著」で取り上げられていたこと、WOWOWでアニメを久しぶりに全部見たことで新発見があり、原作も読みたくなった。
    昔の訳で読んだ覚えが在るが、何となく古い言い回しで挫折した気がするので、躊躇していた。忘れた頃、この文庫を見つけたら、「100分de名著」に出ていた方の訳だった。
    訳が素晴らしい。すんなり読めました。
    アニメではいろいろストーリーが付け足され、変更してるところもあったんですね。
    いくつになっても、人は変われる!と希望が持てました。大人こそ読んで欲しい。

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    2021年10月02日
  • オルガ

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    第一次大戦前のドイツ、祖母に引き取られたオルガは、農園主の息子ヘルベルトと仲良くなるが、農園主に反対される。ヘルベルトは英雄を夢見て北極圏の冒険に出かけるが、音信不通になってしまう。オルガは、祖母の反対を押し切り師範学校へ行き教師になる。行方のわからないヘルベルトに局留めの手紙を書きながら、オルガは第二次世界大戦を迎える。

    第一部は、オルガとヘルベルトの若い日々と、ヘルベルトがいなくなったあとのオルガの日々をオルガが語る。
    第二部は、大戦後オルガが親しくし家で裁縫をしていた家庭の息子フェルディナンドが、年老いたオルガを語る。
    第三部は、オルガの死後フェルディナンドが手に入れたオルガのヘルベル

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    2021年07月15日
  • 車輪の下で

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    要所要所での人間に対する分析が非常に鋭く、登場人物それぞれの人生もどこか見過ごせないような感じがして、とても面白かった。ハッピーエンドと捉えるか、バッドエンドと捉えるかは人によりそう。主人公のような人生を歩む人は多いと思う。

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    2021年05月08日
  • オルガ

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    "墓地を歩くのが好きな理由は、ここではすべての人が対等だから、とのことだった。強者も弱者も、貧者も富者も、愛された者も心にかけてもらえなかった者も、成功した者も、破滅した者も。霊廟や天使の像や大きな墓石も関係ない。みんな同じように死んでいて、もはや偉大であることもできないし、偉大すぎることなんてぜんぜんない。"(p.102)


    "沈黙は学べるのだ――沈黙に含まれる、待機の姿勢によって。"(p.119)

    "要求は出さず、期待もせず、一番いいのは、言葉では何も言わないことです。"(p.170)



    "雪や氷、武器や戦争――

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    2024年06月13日
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ

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    ネタバレ

    3つの短編ドイツの自然ってこんなにも美しいんだって。鳥がそれぞれの物語に出てくるところもすてき。

    みずうみ
    自然の描写が美しい。
    結ばれなかったふたりだから美しい物語になるのかなぁ。それにしても、彼女の夫は鈍感なの。優しいの。人生についてパンになぞらえる部分など鋭い教訓だなぁ。なんで?なんで?って思ってしまいました。
    エリザーベトのもとにラインハルトがいなくなってから、ラインハルトの幼馴染のエーリヒさんが通ってきてたけど、ラインハルトはその人のこと、自分の着ている茶色のオーバーにそっくりだって言ってて。悪口にきこえるけど、エリサーベトは、それをそんなふうに思ってないみたいで、手紙に描いたりし

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    2020年11月29日
  • 才女の運命

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    読後はドッシリずっしりとした重苦しい気持ちになる。
    1人の女性について20ページ程度にまとめられており、読みやすい。

    結婚や、結婚でなくとも男性との繋がりによって才能や時間、人生を搾取され、そして男性の見方によって歴史からも排除されてきた、才能豊かで努力家でもあった、稀有な女性の先輩方。

    過去の話だけど、今の日本でも個人差はあれど続いているのではないか。
    結婚という契約により、女性は男性の帰属下になり、女性の人生をコントロールできる、より口出しできると無意識下に思っているのは現代にも繋がっていないか。

    事実婚を選ぶ一因は、こういうこともあるのだと思う。

    シャルロッテ・ベーレント=コリン

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    2020年10月03日
  • 才女の運命

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    大学時代、「青年期の病理」という講座で、「芸術的才能がある人から芸術を取り上げるとやばい。病気になる」と聞きました。
    この本に出てくる女性たちの多くが病に向かっていったこと、その事実に切ないものを感じました。

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    2020年08月25日
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ

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    短編集.
    3編共過去を思い出すというより,過去と寄り添っているような味わい深い物語.訳もいいのだろうが簡潔な文章で物語の風景世界が目の前に広がっている.森の中のいちご摘み,枯れたバラ園,人形劇など目に見えるようだった.

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    2020年07月28日