【感想・ネタバレ】誤解でございますのレビュー

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Posted by ブクログ

ドイツ文学者・翻訳家である著者の初エッセイ集。
略歴やプロフィール写真を見るといかにも才女といった風情だが、ちょっぴり妄想癖があったりと可愛らしい一面もお持ちのようで…(にやり)『へんてこ任侠伝』(本作に収められているエッセイの一つ)ではその妄想癖が炸裂、オチがきれいに収まらないところも松永氏らしくて推しエピソードとなった。ちなみに「続編」もある笑

おっとりした印象の反面、たくましい一面も兼ね備えられている。
周囲からのサポートがあったとは言え院時代は2児の子育てに追われ、その後は留学のため子供達(+お母様)とドイツに長期滞在された。留学前には国際免許を取得されていたという。(どひゃー)

タフなマインドにも感服したが一番凄いと思ったのは、「もし〇〇していたら今の私はいない(別の私がいて、それはそれで良かったかもしれないけど)」という彼女独自の視点。
「今の私はいない」でストップせず、別の世界線を生きていたであろう自分も尊重する。何てことない一文だろうけど、まさに雷に打たれたような衝撃だった。こういう視点、欲しい!


『校閲者は偉大である』ほか、翻訳家さんの仕事にまつわるエッセイはやっぱり興味深い。ただ訳すのではなく、作品の世界観を崩さずに翻訳家ご自身の言葉でアウトプットまでしなきゃいけない。更に作品によってラテン語やフランス語が混じっていることがよくあるらしい。(ドイツの方言も然り…)

ライプツィヒの書籍見本市見聞録も良かった。(「ライプツィヒ ブックフェア」で検索すればヒットする)市では書籍(コミック含)の販売だけでなく原作者による読み聞かせから質疑応答コーナーまで設けられている。
見本市以外でも都市部では日常的に作家による朗読会をやっているみたいで、読書好きにとってまさにドイツはユートピア!一人活字を追うのも楽しいが、本の言葉があちこちから聞こえてきたらもっとワクワクすると思う。
思えば作品に多言語が溢れているのも、読書文化が豊かな証拠だったりして。


「目が見える限り、ずっと本を読んでいたい」
"通訳翻訳WEB"というサイトのインタビューで松永氏はこう語っている。
読書大国に引けを取らず、氏も幼い頃から大の読書家。今のお仕事はその読書好きから高じたようなもの。東独時代の作家C.ヴォルフのメタファーに満ちた原書を読み解いた時は、とにかく楽しかったという。

妄想力がたくましいのも読書の賜物?…という戯れ言はさておき、本が氏の人生を切り開いてくれたのは確か。そんな彼女が手がけてきた翻訳本も俄然読みたくなってきた!

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2022年06月15日

Posted by ブクログ

朗読者の翻訳者。
現代ドイツ文学の大学教授。
ドイツ留学したり書評書いたり。
同時期にひとり百物語の立原透耶(中国語専攻の大学の先生)を
平行して読んだためどっちが誰だか
分からなくなった。

著者近影を見れば可愛らしい人なのに
結構運動されるのだそう。
大学生のときバレーに打ち込み
バレー部のコーチと学生結婚(!?無計画……)

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2011年04月19日

Posted by ブクログ

タイトル買い。
帯に、

「あるときからエレベーターに乗るたびに、「5階」が「誤解」と聞こえるようになってしまった。同僚に打ち明けると、その人は心配そうにわたしの顔を見つめ、「それは病気です。翻訳者がかかる病気ですね」と言って降りていった……。」

とあって、わたしは翻訳家でもなんでもないけど、
社のエレベーターが「5階です」というのが
いつも「誤解です」にきこえて笑いそうになってしまうので
あ、おんなじこと思ってる人がいる、と思って買ったのでした。


ただ、うしろ帯に「留学」のことが書かれていたので、そのときの話を中心にしたエッセイかと思ったら、そうでもなく、そこはちょっと期待と違った点。

でも、内容はおもしろかったです。ドイツ語翻訳で、『朗読者』の訳者といったら勝手にもっとシリアスな方を想像していたら、ぜんぜんそんなことはなく(もちろん良い意味で)、楽しく読み進めました。

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2011年02月14日

Posted by ブクログ

エッセイ集なんですけど、なんだか「知的」な雰囲気が漂っています。気持ちよく読めます。そして、著者に対して勝手に親しみを感じてしまいました。この本を通して、新しい音楽や本など、さらに自分に広がりを与えてもらいました。たとえば、CD「エウミール デオダートのツァラトゥストラはかく語りき」をさっそく聞きたくなり手配しています。数冊の書評ものっているので、その本も今度読んでみようかと思っています。

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2011年07月16日

Posted by ブクログ

翻訳者がいてくれるから、外国語の小説が読める。いつもありがたく思っております。
その有難い人がエッセイをお書きになりました。
翻訳者でありドイツ文学の研究者でありW大学の教育者であり、八面六臂の活躍ながら、奔走し時に学務に翻弄されているさまが、親近感のわくところで(笑)

学生が連れて行ってくれるから、普通の中高年女性にはしづらい経験もできたり、翻訳者としての覚えがめでたかったから著者本人とコンタクトが取れたりと、研究一本やりでないから広がったり深まったりする人生の味もある。そんなエピソードのあれこれに、禍福はあざなえる縄であり、人間万事塞翁が馬だなあと思います。

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2010年09月01日

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