松永美穂のレビュー一覧

  • オルガ

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    遠く離れて時折にしか会えない人を、どうやって思い続け心を通い合わせることが出来るのだろう。そして会うことも叶わなくなった亡き人を。
    静かで強い。既読がつかなかったり返信がないだけで一喜一憂するような現代からは遠い強さ。多分、相手や相手との関係というより、自分自身の強さなのだろうな。

    オルガにも不安や悲しみや眠れない夜はたくさんあったはずで、そしてそれはその時代の女性たちには珍しいことではなかったはず、とも思う。
    我が身を問われる思い。

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    2020年07月22日
  • オルガ

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    格調高い文学の香りに包まれました。一生ヘルベルトへの愛を貫いたオルガは幸せですね。手紙一通一通から熱い思いが伝わります。腹を立て喧嘩するからこそパートナー、、オルガに教えられました。夫とはしっかりパートナーだったんだな。戦争を絡めて人の強い意志をあぶり出す、朗読者でも感じたことです。久しぶりにシュリンク氏の著作を読み、久しぶりにその魅力に浸れました。しばらく強く生きられそうです。

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    2020年06月26日
  • オルガ

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    個人の葛藤と世代的トラウマが折り重なる。

    苦痛と困難の時代。

    世界大戦、戦間期、再びの大戦、戦後。

    近代から現代へ急速な変貌、それはオルガにとっても、彼女の世代にとっても苦痛と喪失を伴うものだった。

    この物語に言うべき言葉はあまり見つからない。

    喪失を乗り越えるために必死に生き、届くはずのない手紙を送るオルガ。

    歴史は語られるものであって、読み解かれるものになる。

    翻訳あとがき(松永美穂氏)の引用『「シュリンクは不愉快な問いを投げかけることを忘れない」』

    まさしく、葛藤とは直面化したくないものだ。
    しかし、その葛藤から洞察を得たいと思うのも健全な人間の文化だとも思う。

    物語の

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    2020年06月10日
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ

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    ネタバレ

    みずうみ
    エリーザベトとラインハルトの物語。
    ラインハルトの鳥が、カナリアに変わったことが悲しかった。在学中、彼は思いを持ちながら、自分の世界に入ってしまった。時は巻き戻せなかった。

    3色スミレ
    希望がたくさんで、読み終えてホッとした。若い新妻は前妻と一緒で肖像画になるのかとやきもきした。新妻の成長に感謝。同じ名前はつけないとした夫に尊敬を。

    人形使いのポーレ
    婦人のお父様は残念だった。だが夫人は幸せで、これからも幸せを紡いでいくのだと考えると、お父様の無念も晴れると思った。ドイツ中部の工房を離れるときの決心は見事だった。工房のおかみさんにも賛辞を。

    繊細な描写が多く、勢いで読む本ではな

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    2020年06月05日
  • 車輪の下で

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    ネタバレ

    ヘッセが若い頃に書いたようだけど教育機関、細い一本道の進路の閉塞感に反発しまくり。批判的な自伝的小説。ロックンロール。
    生真面目に頑張ったけど落ちぶれて川に落ちて死んだハンスと、詩人で自由人で周囲から疎まれ退学してそれなりにいい人生を送ったらしいハイルナー、親友同士のこの二人が、実はヘッセ自身の分身的存在であると解説で知り、面白い。
    レールに敷かれた人生を真面目に生きても周囲の重圧に揉まれ運もよくなくて病んで落ちぶれダメになったハンス、これは割と「あるある」なのだろうけど、そういう人たちへの哀れみ、鎮魂歌、或いは祈りのように感じる。そうさせた社会への怒りも。十代で読むか大人の側に立って読むかで

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    2020年02月12日
  • 車輪の下で

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    思春期の少年の、細かな心の動きをしつこく客観的に描いた作品。
    10代の頃に出会っていたら、すごく救われるか図星すぎて直視できなかったか。
    思春期って命がけなことを思い出した。
    それとは別に季節と風景の捉え方が秀逸。

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    2020年01月12日
  • 車輪の下で

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    小学生の時、母親から、読むようにと無理やり押し付けられた本の中に「車輪の下」があった。たしかポプラ社から出てた小学生用に易しく翻訳された「車輪の下」である。当時、どうしてもその本を読む気になれず、そのまま年月は過ぎてたんだが、今回、新訳という事で「車輪の下」に初挑戦してみた。
    読んでみる気になったのは、あるラジオ番組で、新訳で出された本書のことを褒めていたからだ。非常に読みやすい訳って聞いて、読んでみようと思ったわけだ。もっとも本書を購入してから半年近く積読状態だったんだが・・・。

    ヘッセの自伝的小説とも言われる本書。おおまかな流れは、ドイツのある田舎町。町で一番の優等生ハンスは、神学校に入

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    2016年07月04日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    いい本だった。
    読むと分かるけど、この本には確実に伝えたい事がある。でもそれをオブラートに包むどころか、殆ど匂わないように封じ込めて、年の差カップルの恋愛としてお話が始まる。

    第一部は、恋愛の行く末。私は女性だけど、主人公と一緒にハンナに恋をする。

    第二部は、法学部教授である作者の本領発揮どころ。法学を学ぶ人が読むと、感じることが違うのではないだろうかとい思わせる内容。黒と白の狭間で揺れる主人公。

    第三部は、ハンナとの穏やかな関係と意外な終焉。

    ドイツというと、、、という話を想像したが、逆の立場からの話で私にはその方が共感できる。人は弱い生き物で、よく考えもせずマスコミに煽られ、現在の

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    2023年03月02日
  • 車輪の下で

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    ヘッセが1905年に発表した自身の学生時代を描いた自伝的な長編小説。初めて読んだのは、中学生の頃に新潮文庫から出ている高橋健二訳でしたが、今回は新訳で。しかし、100年以上前の作品が、今も読む度に新しい感動を生みだすという持っている力に本当に驚かされる。ハンスの周りにいた大人たちがもっと色々なサインに気づいていれば、彼は死なずに済んだんだろうと思うとやるせない気持ちになる。新訳はかなり読みやすいので多くの人に読まれると良いな。とは言うものの、四苦八苦しながら、あえて旧訳で読むという選択肢も面白いと思う。

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    2014年11月24日
  • マルテの手記

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    パリの情景と人々の暮らしに関する、青年・マルテのモノローグである。彼は見ることから学び、そして考える。断片的な思索の過程そのものと、世界と絡まる自身の内面を描いている。「病み」の中に隠れている健全さも印象的。

    表紙の絵はまさしく「クラインの壺」。

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    2014年09月03日
  • モモ(絵本版)

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    内容 ミヒャエル・エンデの名作「モモ」の第一部を絵本化。聞き上手なモモと友人たち、特にベッポとのエピソードを取り上げる。
    感想 「時間どろぼう」との闘いが始まる前の「第一部」にフューチャーしているところが良い。本編の前段階とも言えるこの部分はつい読み飛ばしてしまいがちだが、ここだけでもひとつの物語にできるほどの魅力がある。原作への導入としても良いと思う。ただ、声に出して読んだ時の読みやすさや理解しやすさは、個人的には、原作の訳文の方がしっくりきた。

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    2025年12月14日
  • モモ(絵本版)

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    「モモ」という名作があることを知り、この絵本を手に取った。原作のすべてを表現しているわけではないらしいが、今を見つめることの大切さを感じることができた。原作も読んでみたい。

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    2025年09月27日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    親子ほど年の離れたハンナとの恋、ナチの強制収容所をめぐる裁判、服役中のハンナとの交流。
    恋愛小説かと思いきや、メインはナチズムの戦争犯罪だった。
    まだ自分が産まれてもいない時代の罪を、我が事のように捉える。
    この“集団罪責”に共鳴できず戸惑った。
    これは…人種の違いなんだろうか。
    でも世界的ベストセラーになるってことは、メジャーな考え方といえるよね。
    服役してまである事実を隠したいハンナの心情も分からなくて、モヤモヤしてしまった。

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    2025年09月14日
  • モモ(絵本版)

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    詩のような絵本。
    押し付けがましくもなく、教訓じみた話でもなく。
    この本の中に登場するモモの話の聞き方と同じように近くに寄り添って座ってくれているような、自分の思索に耽ることができるような本。

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    2025年09月03日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    親子ほどの歳が離れた二人の情愛と突然の別れ、そして戦争の影を伴う再会のお話
    
    以下、公式のあらすじ
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    過去に犯した罪をどのように裁き、どのように受け入れるか――。
    数々の賛辞に迎えられて、ドイツでの刊行後5年間に25カ国で翻訳され、
    アメリカでは200万部を超えるベストセラーに。
    
    15歳のぼくは、母親といってもおかしくないほど年上の女性と恋に落ちた。「なにか朗読してよ、坊や!」──ハンナは、なぜかいつも本を朗読して聞かせて欲しいと求める。人知れず逢瀬を重ねる二人。だが、ハンナは突然失踪してしまう。彼女の隠していた秘密とは何か。二人の愛に、終わ

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    2025年08月25日
  • モモ(絵本版)

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    町外れの劇場にやってきたモモ

    モモは静かに話を聞くことが得意
    話を途中で遮ることも自分の意見を言うこともなくただ黙ってその人の声に耳を澄ませる

    それができるのはわずかな人だけ

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    2025年07月30日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    もっと小説ではなく散文詩として捉えて、そういう製本をするべきだったのでは?ソローキンじゃないんだから。

    内容自体は評価できる。太字はチープだ。

    最後を描きたかったんだな。良い本は光り輝く(本当に目が潰れるくらいの光が)瞬間が一つある。もっと薄い本になれば、その時また読み返したい。

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    2025年07月19日
  • 朗読者(新潮文庫)

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    これはね舞台がそもそも難しい。
    日本人には特に。
    あとね普通に倫理的に無理って人がいると思う。
    人を選ぶ小説だなと。
    全体的な雰囲気は嫌いじゃない。
    景色が浮かぶ。
    映画を観てみようかなって思った。

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    2025年06月14日
  • その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか

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    39歳で非業の死を遂げた作家の自伝的小説。

    ルーマニアのサーカス一家に生まれた彼女が、子どもの視点から「母さん」「父さん」「姉さん」「おばさん」について語る。

    短文なので感情がそのままに伝わってくる。
    怖さや驚きや悲しみや表せない感情をこれでもか、と浴びせてくる。
    常に危険を感じて生きているようで苦しさばかりを感じてしまう。

    悲しいと、年をとる。 これは辛いな…

    そして、子どもはほしくない。の言葉が延々と3ページに渡り続く。

    タイトルにも何かを感じてほしいと投げかけているようで…何を思っても正解などないような気がした。






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    2025年06月13日
  • 車輪の下で

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    ネタバレ

    高校の時に、「俺本読むわ、でも何から始めていいかわからんし」って言った時に母が買ってきてくれた本がこれ。積み本にしてそのまま捨てて、買ってくれた母は今は亡き。
    思い出して大いに猛省し、再度読む機会を得た。
    これはヘルマンヘッセの自伝でもあるという事だったけど、ええ!?主人公最後....オイ
    これは今でいう鬱になっちゃった時期があったんだろうか、神学校から戻ってきてからの話がぶっとぎ過ぎて学生時代こんなむつかしい本理解できんやろうって思いながらも、でもやっぱりこれは学生時代に読んでおきたかったなぁとつくづく思った。
    タイトルの車輪の下って意味が文中に登場し、ああ、そういうことなんだぁって納得した

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    2025年05月15日