松永美穂のレビュー一覧
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ドイツ文学です。
原題はドイツ語で「朗読する男」だったのが、英語訳で出版された時に「The Reader」というタイトルがつけられて、そのまま日本語版では「朗読者」となっています。
読み終えて思うのは、悲しみでもなく、怒りでもなく、もちろん感動でもなく、この複雑な気持ちをどう表現したら良いのか困っています。
これは、個人の意思ではどうすることもできなかった過去の戦争犯罪に巻き込まれてしまった個人が、その人生を狂わされてしまった悲劇の小説だと思います。
物語の前半は、15歳の主人公ミヒャエル・バーグが、ある出来事をきっかけに、母親と言ってもおかしくないほど年上の独身女性36歳のハンナ・シュ -
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19世紀に書かれた小説。アニメのオープニング、断片的なシーンは覚えているが全体のストーリーは全く記憶していなかったのだが、原作の面白さを聞いて読んでみた。病弱なクララが山の生活で健康を取り戻していくというハイライトだけでなく、偏屈なお爺さんが再びコミュニティの一員となっていくなど、大人になっても人は変わることができるというストーリー。一貫して勤勉を美徳とするプロテスタント的な価値観が書かれている。篤い信仰は金銭的にも報われるというオチもあり。ハッピーエンドになるとわかっていて読めるので良い娯楽だった。
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19世紀のスイスは既に中立国となっていたが、お爺さんは若い頃には傭兵として出稼 -
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独裁者によって生活ができなくなった主人公の家族が、国外へ脱出しサーカスの団員として生活をする半生を書いたもの。
社会的な弾圧と家族の中での個々との共存、サーカスという世界、信仰によって造らせた精神がとても危ういと感じる。
子どもという狭い世界での知識による外と内との折り合いの付け方がアンバランスすぎて、環境のせいではあるものの崩れることをこんなにも予感させることはない。
家族をものとして扱う父親や、恐怖で支配し自分で作った世界に押し込める母親、対になる姉、存在することで自分の価値だと思い込むペット、今でいう毒親に育てられ大きく育った主人公の、願いなどなくやっぱりねとなる終わりに向けて読むことを -
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NHKでアルプスの少女ハイジの作者、ヨハンナ・シュピリの特集番組があり、それを見て本書を手に取りました。私自身子供時代にアニメで見たことはありましたが、本書でやっと本当の原作に触れたことになります。本書は大人が手にとっても全然問題ない水準だと思います。ぜひ大人も本書を読んでほしいと思いました。
アニメでは、ハイジ、ペーター、クララという子供たちの交流が中心になっている印象を受けますが、本書を読んで改めて実感したのは、クララという少女が周りの大人たちを幸せにしていく存在だということです。おじいさんを改心させるだけでなく、羊飼いのペーターのおばあさんや、クララのお父さん、おばあさん、さらにフラン -
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ミヒャエル・エンデ『モモ』絵本版。
ある町のはずれにいつの間にか住み始めた風変わりな小さな女の子、モモ。最初は町の皆は怪しいと思い用心していたが、その内にたくさんの人たちがモモに会いに来るようになった。小さなモモがだれよりも得意だったのは、ほかの人の話を聞くこと。そんな聞き上手なモモには、たくさんの友達の中で、特に親しい友達が二人いた。
「聞くこと」に特化して描かれている。
モモのお話が全て描かれているわけではなく、一部分に焦点を当てた絵本でした。
お話を全く知らない低学年児の導入としては難しく思えましたが、一通り読み聞かせをきちんと聞いていたように思います。いつか原作を知った時に思 -
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朗読者を読んだ、泣いた。ハンナの心は永遠に分からない、私たちは戦争を経験したことがない。他人の命を無関心に見たことがない、ホロコーストに賛成したことがない、時代を感じていない。でも愛することは間違いだったんだろうか?どうしたらよかったのか?あなただったらどうした?
ハンナが裁判で、「私はジーメンスに転職を申し出ないほうがよかったの?」と自問する
彼女の文盲を隠すための逃避が恐ろしい、直面しなくていい地獄まで通じているなんて誰もわからなかったでしょう
主人公も手紙を書いてあげればよかった。
でも書けなかった。愛する人が戦争犯罪者だと、自分は断罪者であり受刑者になるから
もう一度読みたい -
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モモは最初に原作を読んで感動し、その後に映画を見て良かったので、絵本もさっそく購入してみました。
この絵本の絵そのものは、とても情感あふれるもので、何かしら心に響くものがありました。
そして、この絵本を見て最初に感じたのは、映画を見ないほうが良かった…でした。
エンデの伝えたかったことを感じたかったのですが、どうしても映画の映像が浮かんでしまい、一読した時はこの絵本の伝えたいものが私には感じられませんでした。
でも絵を見ているだけでも感じるものがあり、むしろこの絵本は文章を読まずに絵からモモを感じることができるものかな、と思いました。
文字を読めない幼い子のほうが、もしかたらエンデの -
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少年の繊細な心は、まるで剥き出しの心臓を見ているかのようでした。受験、宗教、学校教育に対する批判や、後半に描かれる労働や初々しい恋といった要素も含め、心理描写が非常に細やかで、ハンスの葛藤や孤独が強烈に伝わってきます。彼のプライドや挫折、苦悩にも大いに共感しました。結末は悲しいですが、それ故に深く考えさせられる作品だと思います。高校生の頃に読んだ際はハンスと同じく学校への批判的な視点を持ちましたが、30代の今、再読してみると、もう少し器用に生きられなかったのか、不合理や葛藤とうまく付き合えたのではないかと、異なる視点が得られました。読み直して本当に良かったと思います。
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ネタバレバッドエンド、暗い話ウェルカムなので、最高なラストではあった。まぁ、夢オチ、とは言わないけど、ああいうラストはズルい感じもする。けど、わたしは、ああいう風に投げ出して解釈任せて想像させてくれるのも好きだから、良かった。
うーん、でも、ハンスは何一つ間違っていないからこそ、彼を死なせてしまうことにより、やっぱ変わらない世間の肯定になってしまう、彼が車輪の下に轢かれてしまったことを証明してしまうことになるので、それは悔しい。やっぱ絶対生きててほしかった。ハンスは死んではいけなかった。
全体も、試験前・試験後・神学校・地元に戻った後(過去の思い出・現在)、とにかくテンポが良くて、スラスラ読めた。
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是非オススメしたい本です。(私の1番大好きな本)
◆ホロコースト時代の「ドイツ人」と「ユダヤ人」の禁断の悲劇の恋愛物語
【あらすじ】
15歳のドイツ人少年のミハイルが帰宅途中嘔吐してしまい、そこに現れたユダヤ人ハンナが助けたことで、2人が出会った。最初は、お礼の挨拶をするためにお家に行くが、訪問回数を重ねるごとに恋愛へ発展する。ハンナには誰にも言えない『秘密』があり、その『秘密』が2人の関係、人生を大きく動かすことになる。
【ポイント】
1.なぜ、ハンナはミハイルに『本を読んでほしかったのか』
2.なぜ『秘密』を打ち明かすことが出来なかったのか
3.もしあなたがハンナなら/ミハイルな -
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金のある家に生まれて父親に愛され才能にも恵まれたとしても、女、というただそれだけのことで尊厳は奪われ男の肥やしにされたり心身を潰されたりしてしまうのだ、という救いのない話。そのような女の影を無視して男どもは男を讃え続ける。厭世が増す。しかし教育機会や選挙権の歴史を考えれば女の人権の歴史はやっと始まったばかりだ。ただ私は女はこれからだと期待をするよりは、人類はさっさと滅びるべきではないかと思ってしまう。人類はこれまでの犠牲を考えればあまりにも学習ができない動物だからである。
私は、私は恵まれない家庭で育ったけれども努力して仕事を持ち家庭を持つのだとずっと頑張ってきたけれど、結局は金も家族も得ら