松永美穂のレビュー一覧

  • 車輪の下で
    日本語訳が非常にわかりやすく、文学初心者の私でも読み終えることができた。

    主人公ハンスに性格や思考に共感できるところは少なからずあったので、飽きなく読めた。主人公の最終的な結末をみて、少なからず同情の念はわいた。本当の意味で主人公ハンスを理解し支えてくれる大人がいれば、こんなことにはならなかったの...続きを読む
  • オルガ
    小説としては3部構成で面白い。最初はオルガと恋人のヘルベルトの話。次はフェルディナントがオルガを見ている話、最後がオルガの手紙である。
     ドイツの歴史を少し学べる。
  • 才女の運命
    最近、ワシリー・カンディンスキーの愛人、ガブリエレ・ミュンターについて知ったが、完全に『才女の運命』案件だった。カンディンスキーはミュンターから影響を受けた時期さえあったが、長年の愛人関係の末、カンディンスキーは国外移動後すぐに他の女性と結婚してミュンターとの関係を切っている。この本を読んだ後だった...続きを読む
  • 車輪の下で
    ヘッセの2作目。自伝的小説。
    日本で第1作目の「ペーター・カーメンツィント」より売れている理由は、鬱屈した締め付け型の学校教育・競争受験社会への共感かららしい。

    純粋で繊細で不器用な少年ハンスが周囲の期待=圧力からどんどん身のうちに虚栄心を育てていき、虚栄心が自分のエネルギーを食い尽くして、最後は...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    「ぼくたちの逢瀬も、記憶の中ではただ一度の長い逢い引きだったように思える。」美しくも実に刹那い。

    映画『愛を読むひと』の原作

    シャワーを浴びてベットに入るまで、少年は彼女に本の読み聞かせをする。

    それを愛と呼びたい。時代背景が憎い。
  • オルガ
    愛のそばには必ず喪失があるのだろうか、と考えずにはいられなかった。そして人を存分に愛するのに、なんて人生は短いのだろうと、我が身を振り返ってしまった。人生の秋を感じさせる物語。『朗読者』も大好きだが、この作品も大好きだ。

    帝国主義のもと男たちが振りまわされる大義名分や歴史的偉業。それらは人間として...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    面白かった。
    すごい生々しい描写が多いと思ったけど、裁判の話になってからはそんなこともなく。
    生きる上でのプライド、他の人にはわからない部分。

    そこまでして守りたかったもの。
    罪を犯してしまったのは無知が原因ではあるんだけど、それを償おうと必死の様子が伝わってきて、、
    本当に愛してたからこそ、相手...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    何年ぶりかに再読。
    なぜか何度も読み返したくなる好きな本です。

    ハンナの
    「……あなただったら何をしましたか?」
    この真剣な問いに自信を持って答えれる人はなんて答えるのだろう?
    裁判長
    「この世には、関わり合いになってはいけない事柄があり、命の危険がない限り、遠ざけておくべき事柄もあるのです」

    ...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    徐々に明らかになっていくプロットに、点と点が繋がっていく感覚。こうした感覚を覚えるのは久々でした。ただ、映画化の時点で世論が紛糾したハンナの台詞は、内容に没入する余り、あまり気にならなかったかも。どうしてもハンナという名前がアレントを想起させてしまって、彼女の名付けに筆者の意図が絡んでいるのか気にな...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    原題 DER VORLESER

    ミヒャエルの朗読は、少年の頃と大人になってからとでは、いずれもハンナに聞いてもらうというのは同じでも、その目的意識が違う。

    物語は全編を通してミヒャエルの回顧録の形をとっていて、彼の心情の紆余曲折が語られるだけで、人生に対する明確な答えは出ない。

    出るわけないよ...続きを読む
  • 才女の運命
    伝記が出ているレベルの偉人の裏にいた、才女たちの生涯を静かな筆致で描いた本。まず、”偉人”になっている男性(ドストエフスキー、マルクス、アインシュタイン・・・)の方は知っていたが、その妻、また妻やその他女性とどう接していたかに関しては全く知らなったことに気付かされた。才気あふれる彼女たちの記録(日記...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    15才の少年と36才の女性の激しくそして儚い恋を描いた小説。先がまったく読めず、中盤からガラッと雰囲気が変わる。単なる恋愛小説にとどまらず、戦時下で行われたある歴史的な出来事にまで足を踏み入れることになる。そしてラストは衝撃的な展開でさらに心を揺さぶられる。世界的に有名なベストセラーだけあって読者を...続きを読む
  • 朗読者(新潮文庫)
    本を好きな方、読まない方、朗読をする人、朗読が好きな人、老若男女。
    誰もが1度読んで欲しい!20年前の作品ですが、古さを感じません。
    ただ、面白いとか、いい話とか、単純か言葉が当てはまらない本だと思う。
    なんとも言えない読書感。後半は涙なしでは、読めませんでした。
  • オルガ
    『オルガは一九五〇年代の初めにあちこち走り回って、失われた書類や破壊された記録を見つ出し、プロイセンでかつて勤めた国民学校教師として、自分に権利のあったちょっとした年金をもらえるようになった。それからは、ぼくたちの家でだけ、縫い物をするようになった』―『第一部』

    ドイツの起こした戦争を背景に物語を...続きを読む
  • みずうみ/三色すみれ/人形使いのポーレ
    今年、様々な書評で見かけた一冊。

    クリスマスキャロルに匹敵するような、心が暖かくなる物語。
    まず、表題の「みずうみ」。これは、自分の初恋回顧のお話。言ってしまえばそれだけなのだけれど何故かみずみずしさと切なさと、それからちょっぴりの後悔とが心を惹き付けます。色鮮やかな情景が目の前に広がるような繊細...続きを読む
  • オルガ
    19世期から20世紀の激動のドイツを生きたひとりの女性オルガ。
    身分や性別、戦争によって翻弄されながらも常に姿勢を正して毅然と生きる彼女の半生が淡々と語られる第一部。
    中年になった彼女が裁縫師として雇われた牧師一家の末息子「ぼく」によって、晩年のオルガについて語られる第二部。
    そして第三部は書簡小説...続きを読む
  • オルガ
    楽しみにしていた本作。

    他作にも通ずる、一人で生きざるを得なかった女性が身につけた強さ、裏にある葛藤が描かれていた。

    私のペラペラな感想なんてどうでもよいので、人類全員に読んでもらいたいと読後の余韻の中で思う。

    訳も良い。
  • 車輪の下で
    ハンスが死を支えに生きるとき、そして冷たい水の中で帰らぬ人となったとき、安堵した。無慈悲に回る車輪の轟音のふもとで生きるには、彼の心は小鳥の雛のように柔らかくはかなすぎた。人生にピリオドをあっさりと打てる人もいるけれど、そうでない人もたくさんいる。小鳥の心の周りを頑丈な鎧で固めたり、小鳥の心に知らん...続きを読む
  • オルガ
    両親の死で祖母に愛なく育てられたオルガと金持ちの農場主の息子ヘルベルト.二人の友情が愛に育つ純愛と大きな物への果てしない欲望,探検,侵略,戦争.困難な時代を逞しく愛しながら生き抜いたオルガの記録.オルガの時代や流行にとらわれない真実を見つめて揺るがない生き方は素晴らしい.オルガから届くことのなかった...続きを読む
  • オルガ
    偉大なるドイツの幻影を追い求め、若くして北の果てに消えた恋人。彼を想い続けながら、激動の時代を力強く生き抜いた一人の女性。残された手紙が明らかにする彼女の秘められた激情、秘密、死の真相。ささやかな幸福を追い求めながらも男の従属物となることを拒み続けた彼女の心の叫びが静かに胸を打つ逸品。