松永美穂のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
そうなのよ
なんで『車輪の下で』ってタイトルにしたの?って気になるよね
はい、ヘルマン・ヘッセの代表作『車輪の下で』です
みなさんご存知の通り、これまでの翻訳本のタイトルは圧倒的に『車輪の下』なのよ
なんで「で」をくっつけたのか?って気になるよね
ならいない?いや、わいはなるの!
でね、そもそも『車輪の下』ってなんなのよ?って話ですよ
「車輪」って言われるとさ、なんかものすごいでかいのが思い浮かぶのはわいだけ?馬車に付いてるやつ
馬車にひかれてんのよ
しかも「下」にいるってことはひかれた状態キープですからね
腹の上に馬車乗った状態で小一時間です
でもって馬車にひかれたってことはその前に -
Posted by ブクログ
前半の青年の妄想小説のような展開はなかなかインパクトがあるが、中盤以降、ムードは打って変わり、過去の隠された事実、ハンナを取り巻く悍ましい事実が明らかになる。前半が濃密な生の時間だとすれば、裁判以降の章は死の時間のような。時間は前に進んでいるはずなのに、主人公の意識は後ろへ後ろへと遡り続けている。ハンナを愛することは、先代の大きな過ちを肯定することになるのか?次代の子は過去にどのように対峙すればよいのか?もはや歳の差恋愛の物語にはとうに収まらず、加害の歴史をその直接の経験がない世代はいかに受け止めることができるかという、歴史認識のあり方を読者に問う物語だった。この問いは、日本人にも投げかけ考え
-
-
Posted by ブクログ
赦しと別れ
癒しと別れ
目覚めと別れ
裏切りと別れ
若い時に絡まった糸は、歳をとってからでも解すことはできる。それはまるで、深いところにしまってあったものをもう一度表に出すように、別れ、離れていく。
死は別れのプロセスの終着点
その時点で別れられなかった事は、もうずっと離れない。
作者の淡麗でどこか妖艶な文章が彩る九つの物語は、確かに男目線である事は否定できないし、歳を取っても男性なんだなぁ。
自分が歳を取ってしまうと、老齢期を描いた物語は、古い日記を覗き見されたような妙な生々しさが伴ってしまう。
なんともいえず恥ずかしい。
でも、「老いたるがゆえのシミ」……現実では、こんな結末は滅 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公はほぼ全員男性だったが、読み進めるにつれて、それを意識させられる本だなと思った。もし女性目線の「別れの色彩」だったら、これほど昔の恋人や妻を振り返り、そこに湿っぽさを感じることはないように思ったけれど、どうなのだろう。
短編にも関わらず、どれも人生がきゅっと凝縮されているところはすごいと思った。
お気に入りは、自分のせいで障害者となった弟を持つ姉とその姉に恋をしていた主人公が再会する「姉弟の音楽」、夫婦で自殺した兄と兄ともてなかった繋がりに折り合いをつけようとする弟の心境を描いた「ダニエル・マイブラザー」。
(幼少期、病弱だったゆえに親戚の家に預けられていた兄。「クリスは別れを告げな -
Posted by ブクログ
【読み終わって感じたこと】
悲しく切ない物語だと思った。私にはハンナのプライドも、ミヒャエルの行動も全て理解できるわけではない。それでも、ハンナの生涯を思うと辛い気持ちになった。歴史について、教育について、愛について考えさせられる本だった。
【印象に残ったシーン】
ホテルでハンナが激怒したシーン。全てが明らかになってから考えると、本当に悲しいなと思った。どうして自分の秘密を打ち明けられなかったのだろう? それさえできていれば、結末は変わっていたかもしれないのに。
【好きなセリフ】
「苦しい結末を迎えてしまうと、思い出もその幸福を忠実には伝えないのか? 幸せというのは、それが永久に続く場合に -
Posted by ブクログ
どこまでも美しい言葉のリズム
美しい中に痛みを感じる表現
1905年に書かれた作品を今わたしは読んでいる…
100年以上前の言葉に 今の私の心が震えている…
“車輪”という言葉に 絶望と希望が込められているのだろうか…
少年の心の成長の繊細な描写が描き出されている
時に車輪を追い抜き 追い越され 下敷きになりながらも
ヘッセ自身の人生を体現させてくれる
ラストはまるで映画を観終わったかのように
すーっと私の前から物語が消えていく…
心に残る映画を観たあとの
少しずつこちら側の世界に戻ってくるような感じがした…
もしも この作品を読みなおす機会があるならば…
間接照明がほんのり灯る