王城夕紀のレビュー一覧

  • 天盆

    Posted by ブクログ

    面白かったです。盤戯「天盆」を制した人が国政を取り仕切る蓋という国で、平民の末っ子・凡天が勝ち進んでいく。
    国政を取り仕切れると言っても、何年も為政者に平民出の人はいなくて形骸化してるし、蓋は他国の侵略に常にさらされてる。社会の格差も大きい。
    名声や権力のために天盆へ挑む人がほとんどの中、ただ「天盆が楽しい」だけの凡天に敵う人はいないと思いました。無欲は強いし、上達するには好きでいることです。
    全ての人を破って頂点に立った凡天の姿は蓋の人々の力になっただろうけど、その為に他国から全力で攻撃されて滅ぼされるとはなんとも皮肉。精一杯生ききったんだろうな。
    おすすめされた、初読みの作家さんでした。他

    0
    2021年12月30日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    坂知稀が罹ったのは己の意思とは関係なく存在感が分解され、全く別の場所へ転移する「量子病」。この病は何なのか。
    格差は広がり、貧困にあえぐ者とは対照的な、支配する者により変えられていく世界。
    肉体を捨て、自ら量子の世界を選ぶこともできるようになる。
    自分と他人、個と同化。ヒトが存在するというのはどういうことか。
    今の世界にリンクする事柄もあり、こういう未来があるのかも、という世界観と詩的な言葉に引き込まれる。
    いつか彼女に惹かれて集まった人々が、彼女を留める楔となる日が来るのかもしれない。
    世界を漂う彼女が残したものとは。必ずあるもの。そして人生そのものだ。

    0
    2021年09月12日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

    Posted by ブクログ

    年末のどさくさで行方不明になっていたものをやっとの事で見つけ出して読み終わりました。
    新年1冊目。

    量子病という病にかかり1つ所に留まれないマレが、壊れゆく世界の中で色々な人に出会い自分の存在の意味を知る。

    1冊が壮大な叙事詩のようになっていてとにかく美しい言葉が胸を打つ。

    ラスト近くは割としっかりとしたストーリーがあり、むしろそこが少し凡庸に感じたけれど、ラストは元の雰囲気に戻りすごく良かった。

    世界観は少し去年読んだ 『アメリカンブッダ』に似ているかなと思った。
    SFは得意じゃないからこそ敢えて読んでいるのですが、こういう美を孕んだストーリーは好み

    0
    2021年01月03日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

    Posted by ブクログ

    内容が複雑なので読むのが難しい。
    立場の異なる人間が入り組んでいて物語の主軸がどこにあるのかわからないまま話が進んでいく。
    かつ場面転換が多く、さらにその度に新たな人物が登場し、加えてSF的な用語や造語も登場してくる。

    しかしこれは物語上仕方ないというか、目的を持ってそう書かれている節があり、そのわかりづらさが効果的に物語の理解へとつながっている逆説的な面を持っている。

    とは言え難しいのは確かなので、私なりの理解で物語を整理してみたい。

    主人公は坂知稀という女性。
    ある日突然「量子病」を発症し、自分の意思とは関係なしに瞬間移動するようになってしまった。
    時はワールドダウン(世界的経済破綻

    0
    2020年10月07日
  • 青の数学2―ユークリッド・エクスプローラー―(新潮文庫nex)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「やり続けていれば、いつか着く。」という言葉が、印象的だった。自分を見失い始めていた私に、ぴったりな小説だった。私も早く、着きたいと思った。

    0
    2020年07月07日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    坂知稀は、量子病という、世界中どこにでも跳んでしまう病を抱えていた。
    跳ぶ瞬間は突然に訪れ、そのとき身につけている青いものだけ一緒についてくる。
    人との別れも幾度となくあった。
    最初は病気に振り回され、自分の意志など関係ないと思っていたが、次第に、跳ぶ先は人間の意志で決まってくるのだと知る。
    生きることをある意味放棄していた主人公が、自分の人生へ光を見出していく。
    どんな人生でも、意味を見つけて、どう生きるかは自分次第なのだ。
    別れがあれば出会いもあり、数えきれない人との出会いが自分を作っていることに気づく。

    0
    2020年05月13日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

    Posted by ブクログ

    『青の数学』に続き、王城作品三作目。すべての本読みの心の内を的確に表した作品。私たちは物語(小説)を求め続ける限り、何処へでも行ける——そう確信する作品でした(^^ 星四つ半。

    0
    2020年04月19日
  • 青の数学2―ユークリッド・エクスプローラー―(新潮文庫nex)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    前作はストーリーは面白かったのに登場人物が多くゴタゴタとした印象を受けていましたが、(2)は活躍する人物が絞られておりより濃い物語となっている印象を受けました。
    とくに皇と二宮の対決はまるで甲子園を見ているかのような熱を持っているように感じました。

    本作の最も大きな謎である「京の数列」の答えはとても衝撃的なものであり、とても共感できるものでした。
    前作から引き続き『青の数学』は数学という概念を的確に捉えているなと感じ読んでいて楽しく、為になる作品だと私は感じます。

    0
    2020年03月22日
  • 伊藤計劃トリビュート

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    目次
    ・公正的戦闘規範 藤井太洋
    ・仮想(おもかげ)の在処 伏見完
    ・南十字星 柴田勝家
    ・未明の晩餐 吉上亮
    ・にんげんのくに Le Milieu Humain 仁木稔
    ・ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀
    ・フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪 伴名練
    ・怠惰の大罪 長谷敏司

    どの作品も伊藤計劃の気配を漂わせているけれど、特に濃厚なのは王城夕紀の作品(ハーモニーの世界観)と、伴名練の作品(屍者の帝国の世界観)。
    この2作品は好きだなあ。
    特に伴名練作品のナイチンゲールは夢に出てきそうなくらい恐ろしい。

    単純な幸福はない。
    幸福に正解はない。
    けれどどの作品も屈託があり

    0
    2019年08月14日
  • 青の数学2―ユークリッド・エクスプローラー―(新潮文庫nex)

    Posted by ブクログ

    シリーズ2作目
    というか、これで完結なのか?
    キフユというか柊先生が何者なのかよくわからないんだが…?

    あと、思い立って数学を勉強したところで、そんなに急激に成長するものなのか?
    元々素質があったって事か?

    あと、京の数列
    そんなオチなの?
    「数列に解なし」とかってのと違った意味でこれはなくね?
    まぁ、それが数学だと言われてしまえばそうなのかもしれないけど・・・

    なんか、スッキリしない読後感なんだよなぁ

    0
    2019年07月30日
  • 青の数学2―ユークリッド・エクスプローラー―(新潮文庫nex)

    Posted by ブクログ

    続編で完結編。

    「数学は、数学自身で自分が無矛盾である、と証明することができない。数学は自分が確かに無矛盾だ、とは絶対に言えない。と、いうことが証明されてしまった」
    この一文がズシンときました。
    数学にはトキメキがあるなあ…。

    足元が崩れていくような心地になりながら、それでも数学をやる。主人公にとっての「数学とは何か」が示される完結編。

    心象風景が多く、詩的な文章だが、深く数学の自分の世界に潜っていく感覚を追体験できて面白かった。
    作者の数学に対する憧れ、恐れを強く感じる。
    主人公にとってそれは数学であったけれども、他の人にとってはまたその人独自の大切なものがあるのだろう。

    0
    2019年07月19日
  • 天盆

    Posted by ブクログ

    面白かったです。
    H×Hを彷彿とさせられました。
    なんとなく天地明察も。
    家族の絆の物語と天盆を究める物語。

    0
    2019年05月08日
  • 天盆

    Posted by ブクログ

    デビュー作と読後に知り、今後チェックすべき作者が一人増えた気がする。

    天盆(将棋ような?)が人々の娯楽でもあり、また政を司る人を選ぶ科挙制度を持つ時代、一人の童が歴史に挑む。
    凡天の家族はなんて素敵なんだろう。物語の終わり方には寂しさも感じるが、どこか空の下で、家族揃ってまた百楽門食堂を開いていて欲しい。

    0
    2018年05月30日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    私たちは量子という波であり
    他の波に留められなければ
    粒子として存在できない。

    出会いのすべてが偶然だが
    それは必然でもある。

    誰かが必要とするから
    出会いたいと強く願うから
    その波に反応して
    私という波は粒子として顕在化する。

    この一冊の本を通じて とてつもなく
    大きなことを教えられたような気がする。

    爽快なエンディングに心からの喝采を。

    私は強く望む。マレ・サカチに出会うことを。
    そうすればいつか 彼女は私の前に現れるのだから。

    出会うことの本当の意味。教えてくれてありがとう。

    0
    2018年05月24日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

    Posted by ブクログ

    量子力学をテーマにしたSF仕立てですが、生きるっていうことを追求していくような話になってる。全世界的にテロと経済崩壊が連鎖していく未来像が、なんだかとてもリアルに感じる。いつどこに跳ぶかわからない主人公のごとく、物語もあちこちに跳ぶ。そして徐々に結末に向かって収束していく。なかなかスリリングで目が離せない小説でした。

    0
    2018年04月11日
  • 天盆

    Posted by ブクログ

    なんて素敵な家族だろう。
    理由なんて、ないものの方が強いのかもしれない。
    その後も、彼らが家族として過ごしていてくれていたたらいいな。
    お父さんもお母さんも、兄弟みんなも、とても愛しい!

    0
    2017年12月04日
  • 天盆

    Posted by ブクログ

    初夕紀。将棋を模した盤戯“天盆”。初めにパッと浮かんだのが、H×Hの“軍儀”。最期の凡天vs白斗は、王vsコムギのようであり、vsネテロのようでもあった。大変楽しゅうございました^^

    0
    2017年11月05日
  • 走る?

    Posted by ブクログ

    14人の新進気鋭の作家たちが、Number Doに寄稿した「走ること」に関する短編集。走る気になる作と、ならない作があるが、作家さんたちがランナーという訳ではないので仕方ない。でも、その著者なりの「走る」ということの考え方がなんとなくわかり面白かった。

    0
    2017年09月17日
  • 伊藤計劃トリビュート

    Posted by ブクログ

    ページ数のボリューム感に感動した…気に入ったのは「未明の晩餐」「ノット・ワンダフル・ワールズ」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」

    0
    2017年04月15日
  • 伊藤計劃トリビュート

    Posted by ブクログ

    文句なく面白かった。伊藤計劃と同時代のSF作家はこういう世界を作る ということがよく知らされたと思う。第三世界、AI、ドローンなど共通アイテムを持ちながら、それぞれが興味をそそられつつ読んだし、短編ながら充足感があった。
    長編が気に入らなかった某作家が、意外にもここではめっぽうひきこまれるものを読ませてくれたのも発見だった。

    0
    2016年04月12日