王城夕紀のレビュー一覧
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面白かったです。盤戯「天盆」を制した人が国政を取り仕切る蓋という国で、平民の末っ子・凡天が勝ち進んでいく。
国政を取り仕切れると言っても、何年も為政者に平民出の人はいなくて形骸化してるし、蓋は他国の侵略に常にさらされてる。社会の格差も大きい。
名声や権力のために天盆へ挑む人がほとんどの中、ただ「天盆が楽しい」だけの凡天に敵う人はいないと思いました。無欲は強いし、上達するには好きでいることです。
全ての人を破って頂点に立った凡天の姿は蓋の人々の力になっただろうけど、その為に他国から全力で攻撃されて滅ぼされるとはなんとも皮肉。精一杯生ききったんだろうな。
おすすめされた、初読みの作家さんでした。他 -
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ネタバレ坂知稀が罹ったのは己の意思とは関係なく存在感が分解され、全く別の場所へ転移する「量子病」。この病は何なのか。
格差は広がり、貧困にあえぐ者とは対照的な、支配する者により変えられていく世界。
肉体を捨て、自ら量子の世界を選ぶこともできるようになる。
自分と他人、個と同化。ヒトが存在するというのはどういうことか。
今の世界にリンクする事柄もあり、こういう未来があるのかも、という世界観と詩的な言葉に引き込まれる。
いつか彼女に惹かれて集まった人々が、彼女を留める楔となる日が来るのかもしれない。
世界を漂う彼女が残したものとは。必ずあるもの。そして人生そのものだ。 -
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年末のどさくさで行方不明になっていたものをやっとの事で見つけ出して読み終わりました。
新年1冊目。
量子病という病にかかり1つ所に留まれないマレが、壊れゆく世界の中で色々な人に出会い自分の存在の意味を知る。
1冊が壮大な叙事詩のようになっていてとにかく美しい言葉が胸を打つ。
ラスト近くは割としっかりとしたストーリーがあり、むしろそこが少し凡庸に感じたけれど、ラストは元の雰囲気に戻りすごく良かった。
世界観は少し去年読んだ 『アメリカンブッダ』に似ているかなと思った。
SFは得意じゃないからこそ敢えて読んでいるのですが、こういう美を孕んだストーリーは好み -
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内容が複雑なので読むのが難しい。
立場の異なる人間が入り組んでいて物語の主軸がどこにあるのかわからないまま話が進んでいく。
かつ場面転換が多く、さらにその度に新たな人物が登場し、加えてSF的な用語や造語も登場してくる。
しかしこれは物語上仕方ないというか、目的を持ってそう書かれている節があり、そのわかりづらさが効果的に物語の理解へとつながっている逆説的な面を持っている。
とは言え難しいのは確かなので、私なりの理解で物語を整理してみたい。
主人公は坂知稀という女性。
ある日突然「量子病」を発症し、自分の意思とは関係なしに瞬間移動するようになってしまった。
時はワールドダウン(世界的経済破綻 -
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ネタバレ目次
・公正的戦闘規範 藤井太洋
・仮想(おもかげ)の在処 伏見完
・南十字星 柴田勝家
・未明の晩餐 吉上亮
・にんげんのくに Le Milieu Humain 仁木稔
・ノット・ワンダフル・ワールズ 王城夕紀
・フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪 伴名練
・怠惰の大罪 長谷敏司
どの作品も伊藤計劃の気配を漂わせているけれど、特に濃厚なのは王城夕紀の作品(ハーモニーの世界観)と、伴名練の作品(屍者の帝国の世界観)。
この2作品は好きだなあ。
特に伴名練作品のナイチンゲールは夢に出てきそうなくらい恐ろしい。
単純な幸福はない。
幸福に正解はない。
けれどどの作品も屈託があり -
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続編で完結編。
「数学は、数学自身で自分が無矛盾である、と証明することができない。数学は自分が確かに無矛盾だ、とは絶対に言えない。と、いうことが証明されてしまった」
この一文がズシンときました。
数学にはトキメキがあるなあ…。
足元が崩れていくような心地になりながら、それでも数学をやる。主人公にとっての「数学とは何か」が示される完結編。
心象風景が多く、詩的な文章だが、深く数学の自分の世界に潜っていく感覚を追体験できて面白かった。
作者の数学に対する憧れ、恐れを強く感じる。
主人公にとってそれは数学であったけれども、他の人にとってはまたその人独自の大切なものがあるのだろう。 -
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