王城夕紀のレビュー一覧

  • 伊藤計劃トリビュート

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    伊藤計劃って名前のせいなのか?
    この8人の作家による中篇集は、それぞれがかなりの攻撃力を持っている。
    またまた、それぞれが異なる作風で僕をアタックする!
    早逝した怨みを晴らそうとしているようだ。
    たまらん!

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    2019年11月27日
  • 青の数学2―ユークリッド・エクスプローラー―(新潮文庫nex)

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    ネタバレ

    前作ほどの衝撃は受けなかったが、1・2巻合わせた物語としての完成度は非常に高い。

    数学とは何か?、何故数学をするのか?という何度も繰り返された問いに各々が自分の答えを出す。どれも正解ではなく、不確かなものであるが、それが本人にとっての「公理」、届かずとも限りなく近づくための道標である。作中で栢山の見つけた数学の本質がまさに自分が数学をやる意味なんだという結末にはカタルシスを覚えた。

    数学に限らず、理不尽で不合理な世の中を生きる上での1つの回答であることは間違いないと思う。

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    2019年07月01日
  • 天盆

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    独特の言い回しなんで、好みが分かれる気もする。自分のイメージは石川啄木。あくまで個人の感想です。
    この言い回しから繰り出される言葉の数々がなかなかに強力で、いちいちうまい感じで出てくるもんだから、もう、ね。個人的には小勇を子供らが助けに行って暴動が起きる下りが強烈だった。映像無しでここまでやるのは相当やで。
    しかし傍から見れば娯楽にうつつを抜かしてる間に国が亡びるんだから、ろくでもない。
    でもそれが良い。

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    2018年12月08日
  • 天盆

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    「天盆」という名の(将棋に似た?)盤戯。幼い頃、天盆に魅せられた凡天。彼は 大好き という気持ち一つで強くなっていく。父と母、十二人の兄弟たちのことも大好きな彼は貧しいけれども幸せな家族の中にいる。父母の覚悟、兄弟の思いやりも美しい。

    強い凡天を見て思い浮かべるのは中学生でプロ棋士になった彼ですね。やっぱり

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    2018年07月06日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

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    ネタバレ

    量子病、といういきなりどこかにワープしちゃう病気にかかった女の子を主軸に書かれてる。

    SFファンタジーなんだけど、どこか現実の現代の未来がこうなってもおかしくないなって思えるくらいには、いい意味で想像に易いファンタジーで入り込みやすかった。
    あと、細かく章が分けられてて、それが唐突なワープ感を上手いこと描写しててすげ〜って思った。

    SNSとか、カップルアプリとか、出会いを求める人間に比例してツールも増えて、その繋がりが切れないツールや仕組みも同時にたくさんあって、それって離れ難いから作られたものだ。
    おじいさんは「別れなど、なぜ、なくてはいけない。」って言った。
    同じ事を思った人が仕組みを

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    2018年05月29日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

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    量子病??? そもそも"量子"って何? よくわからないままに読み進めても、面白かった。稀が出会う人たちとの会話が、語られる言葉が一つ一つ心に残る。
    ポッ ポッ ポッ ポッ ポッ
    思い出したのは ………
    百億の昼と千億の夜
    スター・レッド
    銀の三角

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    2018年05月28日
  • マレ・サカチのたったひとつの贈物

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    ネタバレ

     本作は、『天盆』に続く王城夕紀さんの第2作だという。読み始めてすぐ感じた。『天盆』とはタイプが大きく異なる作品だ。『天盆』が明快かつ連続的な物語ならば、本作は哲学的かつ断片的な物語だ。それには理由がある。

     主人公の坂知稀(まれ)は、「量子病」という奇妙な病に冒されていた。自らの意思と関係なく、世界中をワープし続ける。いつ跳ぶか、どこに跳ぶか、予測する術はない。稀のワープに伴い、物語も跳ぶから、断片的になるわけである。各節は短く、それほど長い作品ではないのに、実に148節から構成されている。

     跳ぶ先々での出会いが、一期一会のときもあり、何度も会うときもある。なぜか戦乱やテロの真っ只中に

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    2018年04月03日
  • 天盆

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    天盆はその国、背景、舞台となるゲームすべてが架空のものなのに、なぜか光景が浮かんでくる物語です。
    白黒はっきりの世界観がここちよく、大好きなものに一生懸命打ち込む気持ち、大きな権力にも負けない気持ち、家族が信じあう気持ちがストレートに描かれているので、スポーツの試合を見終わったあとのようなさわやかな読後感もあり。
    真夏の暑さや疲れを忘れて楽しみたい方におすすめです。  (将棋はニガテ)

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    2017年09月17日
  • 天盆

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    なんだこれ!Σ( ̄□ ̄;)話にグイグイ引き込まれた!(^o^;)天盆(将棋っぽい盤戯)に夢中になり、家族愛に心が震える(;゜∇゜)あぁ誰かにオススメしたいけれど、近くにファンタジー好きがいない(T-T)

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    2017年09月12日
  • 天盆

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    なんじゃこりゃおもしれええええええ。この家族全員が愛おしすぎて貧乳が破裂するところだよ。父上が格好悪いのに格好良過ぎてなんかもうどうしたらいいのこれ。とにかくこの一言に尽きる。
    「誰かのために戦う奴に勝てるわけがない」

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    2017年09月09日
  • 天盆

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    ネタバレ

    「青の数学」愛読者としては
    手に取らないわけにはいかない。

    驚いた。これが…デビュー作???

    数ページ読み進めただけで、この国の人々や
    時代背景の設定、ここの登場人物の名前と
    キャラクターが、びしびし頭に入ってくる。
    ファンタジーは登場人物がやたらに多く、
    国名なども架空だから、設定そのものを
    消化するだけに一度通読しなくてはならない
    場合だってあるのに。

    それだけじゃない。映像が脳裏に浮かんでくる。
    いきいきと街が周りに浮かび上がってくる。

    凄すぎるよ…この筆力。圧巻だ。

    天盆の対局を経て、凡天の対戦相手たちが
    精神的な成長を遂げてゆくさまは
    どこか「蜜蜂と遠雷」に似て清々しい。

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    2017年08月22日
  • 天盆

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    ネタバレ

     『青の数学』シリーズの王城夕紀さんの作品である。文庫化を機に手に取ったが、この熱量は『青の数学』に匹敵するだろう。設定上の共通点は多い。数学に打ち込む栢山。本作の主人公が打ち込むのは、「天盆」という盤上遊戯。ゲームである。

     架空のゲーム「天盆」とは、将棋に近いイメージだろうか。具体的なルール説明や図は、一切出てこない。それなのに、これほどまでに対局の熱気が伝わってくるのは、なぜなのか。具体的数式をほとんど出さずに、数学の熱気を演出した著者ならではの手腕である。『青の数学』シリーズのファンなら、はまるだろう。

     テーマが架空のゲームなら、時代や舞台も架空。三国志時代の中国を連想する。本作

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    2017年07月27日
  • 伊藤計劃トリビュート

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    いかにも伊藤計劃トリビュートらしい中編集。
    戦争をAIから取り戻す「公正的戦闘規範」、AIが推奨される選択肢を掲示する世界「ノット・ワンダフル・ワールズ」が特に面白し、伊藤計劃らしさがある。
    分厚さもありSFはじっくり読み込んでしまうので時間がかかったが非常に面白かった。

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    2017年04月22日
  • 伊藤計劃トリビュート

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    ネタバレ

    意図的な選択肢を提示し、それを人が受け入れるようになると、選択肢を提示している人は、人を操れるようになりますが、操られている人はそうであることを認識しませんという話が載っている。たとえ、あやつっていたのが人でなかったとしても。

    ノット・ワンダフル・ワールズ

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    2017年01月26日
  • 伊藤計劃トリビュート

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    文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。

    以下、個別作品の感想。

    ◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
    格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化さ

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    2016年04月25日
  • 伊藤計劃トリビュート

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    私的には話がすごく粒揃いだった。
    未明の晩餐はぜひ長篇でもやって欲しい。もっとよみたくなる、話だった。

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    2015年11月24日
  • 青の数学2―ユークリッド・エクスプローラー―(新潮文庫nex)

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    ネタバレ

    一青春ってなんだかわかるか。
    -青春ってのは何かを諦めるまでの季節のことだ。だから終わった後にしか気づけない。終わった時に初めて気づく。自分が今まで青春の中にいたのだと。

    1番衝撃だったシーン……青春は季節なんだ…!
    王城夕紀さんの文体はとても読みやすく、表現が豊かで心地よく、登場人物たちの感情や情景を自然に感じられます。
    物語は数学の問題そのものよりも、数学とは何かを考えることや、数学と青春、哲学的な思索が混ざり合う物語で、数学がわからなくても楽しめました。
    数学世界、、とても面白かったです!

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    2025年10月06日
  • 天盆

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    ネタバレ

    パイセン本。

    王城夕紀『天盆』は、架空の盤戯を舞台にしながらも、人間そのものの業と希望を描き切った稀有な一冊である。

    駒を打つ音や盤上を巡る沈黙が、勝敗を超えた精神の葛藤として響いてくる。

    主人公・凡天が「好き」という純粋な衝動を力へと転じ、幾多の強者と渡り合う姿は、競技の枠を超え、人が生きる理由そのものを問いかけてくる。

    家族との結びつきや師弟の情が温かく紡がれ、勝負の緊張感に人間の柔らかな温もりが対照的に映えるのも印象的だ。

    ルールの細部を語り尽くさぬまま、読者に想像の余地を残した筆致は、天盆というゲームを一つの宇宙として際立たせ、物語に深い余韻を与えている。

    読み終えた後、静

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    2025年09月22日
  • 天盆

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    「いまさら一人増えたところで、かわりゃあしない」
    橋の下でひとりの子を拾う。

    舞台は、建国以来「象棋(中国将棋)」や「日本将棋」のような“天盆”というボードゲームを国戯として広く親しむ“蓋”という小国。

    幼い頃から“天盆”に取り憑かれた主人公の凡天の楽しそうな勝負の様子は、将棋士藤井聡太を見るよう。
    また、舞台は架空の時代の架空の国とされているが、描写される背景からは、中国戦国時代に突然現れて消えていった中山国を思い出す。
    建国時精彩に満ちたこの国も末期には腐敗に塗れて消えていった。その亡国の物語は宮城谷氏の小説『楽毅』で知ることができる。

    孤児たちを拾い育て続けてきた小勇と静は、どんな

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    2025年09月22日
  • 青の数学(新潮文庫nex)

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    あまりフォーカスされない数学という分野の熱い青春の話。中高生でここまで数学世界を体現できる人たちは世界がどのように見えるのだろう。続編も読みたい。

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    2025年09月21日