王城夕紀のレビュー一覧
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“出会いと別れ”
少し前のイチオシ本。
ネット社会の今だからこそ読んでほしい。
少し複雑な文章構成からなる
少し不思議な「量子病」を持つ稀の物語。
世界中を飛びまわる彼女が、出会いと別れを繰り返す。
ある時、自分の存在をネットに移住させる提案を受けるも悩んでしまう。
旅をしながら彼女が出した答えに、ネット社会を生きる私たちもなにか感じるものがあるはず。
私は、人とのリアルな付き合いに恋しさを感じた。
『別れあってこそ、出会いがあるのだ。』
『出会え。別れたって、また、出会え。』
出会いと別れの、どうしようもない大切さを感じた。
もっともっと時間を作りたい。。 -
Posted by ブクログ
前作からの続きで結末を迎える本書。
数学を題材にしているものの、テーマとしては「なぜやり続けるのか」を掲げているように感じた。
様々な意見を受けながら、オリンピックが開幕している。
世界のトップアスリートの活躍を数多く見ることができ、感動を与えられている点では、開催できたことを喜ぶべきだと思う。
トップアスリートには彼らなりの悩みが、自分たちには理解することができない悩みがあるのではないかと思う。
自分が人生をかけて努力してきたことに順位や記録という結果が残る。
国の代表としてやり続けていけばいくほどその先が見えなくなることがあるのではないだろうか?世界のライバルと戦ってさらに高い壁の存在に気づく。その差に驚き、唖然とし、努力自体をやめたくなるときもあるのではないだろうか?
「どうせだったら一番遠くにあるものに。」このモチベーションを持ち続けることが努力の最大のエネルギーになっていると感じた。各国の代表が、お互いのパフォーマンスを見せ合うことで、そのモチベーションをさらに保ちつづける。
スポーツは地球規模で進歩していくのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
かつてどこかにあった国「蓋」。そこでは盤技「天盆」を制するものが国を動かす。天盆に魅入られた少年凡天が、歴史を変える天盆に挑む。
天盆とは将棋に似た架空の遊戯。しかしその大会で勝ち進んだものは、政治の世界での立身出世が約束されているという。その設定からして面白いのです。天盆の細かいルールーは書かれていません。しかし駒が盤上を動き、相手を攻め牽制し駆け引きが行なわれ勝敗を決する、その様子が活き活きと描写され手に汗を握ります。
これはもう表現力の勝利でしょう。具体的でない描写で、盛り上がりだけを見せる。しかしその反面、具体性だけでキャラクターを書き分けることもするのです。
主人公凡天は13人きょうだいの末っ子。兄姉が12人もいる訳ですが、それらの人々は登場して一言二言話すだけでキャラクターが掴め、それぞれが活き活きと動き回るのです。
そのため主人公なのにほとんど語らず心の内も明かさない凡天が浮き立つのです。取り憑かれたかのように、ただ天盆のみに興味を示す。天盆を打つこと以外は何もせず、何もできない。そんな一途さのみが凡天を表わすのです。
天盆しかなかった少年が人々を動かし歴史を動かします。しかし凡天とそれを取り巻く人々の動きは、大きな歴史の濁流に飲み込まれていきます。そして迎える終焉。歴史の中で生きた人々の強い思いが光り輝き、記憶に留まるのでしょう。 -
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ネタバレ量子病、といういきなりどこかにワープしちゃう病気にかかった女の子を主軸に書かれてる。
SFファンタジーなんだけど、どこか現実の現代の未来がこうなってもおかしくないなって思えるくらいには、いい意味で想像に易いファンタジーで入り込みやすかった。
あと、細かく章が分けられてて、それが唐突なワープ感を上手いこと描写しててすげ〜って思った。
SNSとか、カップルアプリとか、出会いを求める人間に比例してツールも増えて、その繋がりが切れないツールや仕組みも同時にたくさんあって、それって離れ難いから作られたものだ。
おじいさんは「別れなど、なぜ、なくてはいけない。」って言った。
同じ事を思った人が仕組みを作った。
おかげで、別れて二度と会えなくなる事とかに対して重みが無くなっていってるかもなあって考えた。
出会いも別れも同じくらい尊いはずなのに。 -
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ネタバレ本作は、『天盆』に続く王城夕紀さんの第2作だという。読み始めてすぐ感じた。『天盆』とはタイプが大きく異なる作品だ。『天盆』が明快かつ連続的な物語ならば、本作は哲学的かつ断片的な物語だ。それには理由がある。
主人公の坂知稀(まれ)は、「量子病」という奇妙な病に冒されていた。自らの意思と関係なく、世界中をワープし続ける。いつ跳ぶか、どこに跳ぶか、予測する術はない。稀のワープに伴い、物語も跳ぶから、断片的になるわけである。各節は短く、それほど長い作品ではないのに、実に148節から構成されている。
跳ぶ先々での出会いが、一期一会のときもあり、何度も会うときもある。なぜか戦乱やテロの真っ只中に跳ぶことが多い。こんな過酷さに、自分なら耐えられまい。しかし、悲しむ間もなく、哲学的問いかけに答える間もなく、場面は次々とザッピングされていく。一気に読まないと、ついて行けなくなるだろう。
時代が近未来であることは察せられるが、現代社会が似たような状況にあることに注目したい。ネットに溢れる虚偽や悪意が、現実に影響を与え、動かしていく。二度のワールドダウンと、人々の喧騒、暴動。これが資本主義の成れの果てか。断片的な物語における巨大な奔流を、絵空事と笑い流すことができるか。
誰よりも世界中を旅した稀に突きつけられた、最後の問いとは。聡明な稀だけに、その提案は魅力的にも映る。人類に究極の選択を迫るという点では、早世した天才・伊藤計劃の作品群に通じるものを感じる。たとえ作り話でも、これが人類にとっての福音だと思いたくはないが、魅力に抗えない人もいるかもしれない。
意思に反して跳び続けた人生から導いた、稀の答えとは。ここに至り、断片的だった物語が、一本の線で繋がれた。『天盆』のようにわかりやすくはないが、『天盆』と同じく、血が通った物語だった。 -
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ネタバレ「青の数学」愛読者としては
手に取らないわけにはいかない。
驚いた。これが…デビュー作???
数ページ読み進めただけで、この国の人々や
時代背景の設定、ここの登場人物の名前と
キャラクターが、びしびし頭に入ってくる。
ファンタジーは登場人物がやたらに多く、
国名なども架空だから、設定そのものを
消化するだけに一度通読しなくてはならない
場合だってあるのに。
それだけじゃない。映像が脳裏に浮かんでくる。
いきいきと街が周りに浮かび上がってくる。
凄すぎるよ…この筆力。圧巻だ。
天盆の対局を経て、凡天の対戦相手たちが
精神的な成長を遂げてゆくさまは
どこか「蜜蜂と遠雷」に似て清々しい。
ラストは少しやるせないけど…佳作です! -
Posted by ブクログ
ネタバレ『青の数学』シリーズの王城夕紀さんの作品である。文庫化を機に手に取ったが、この熱量は『青の数学』に匹敵するだろう。設定上の共通点は多い。数学に打ち込む栢山。本作の主人公が打ち込むのは、「天盆」という盤上遊戯。ゲームである。
架空のゲーム「天盆」とは、将棋に近いイメージだろうか。具体的なルール説明や図は、一切出てこない。それなのに、これほどまでに対局の熱気が伝わってくるのは、なぜなのか。具体的数式をほとんど出さずに、数学の熱気を演出した著者ならではの手腕である。『青の数学』シリーズのファンなら、はまるだろう。
テーマが架空のゲームなら、時代や舞台も架空。三国志時代の中国を連想する。本作はいわばファンタジーなのだが、侮るなかれ。本作はファンタジーでなければならないことが、読めばわかる。この国「蓋」において、天盆はただのゲームにあらず。国家の命運さえ左右する。生きるか死ぬかの真剣勝負なのだ。
10人兄弟の家に拾われた主人公の凡天には、天盆の才能があった。あっという間に兄弟たちを追い越し、大人の名人級も次々と破る。平民の身分だけに、それを快く思わない権力者がいる。現代社会にも通じる、権力者の汚さ。しかし、凡天は妨害に屈しない。家族の力強い応援がある。何より、凡天は純粋に天盆が好きだ。
哀しいかな、親が子を殺し、子が親を殺すニュースが珍しくない昨今。実の子ではない凡天に注ぐ、父と母の愛を見るがいい。立派な親の条件とは何だろう。社会的地位が高いことか。そうではない。本作は、凡天が駆け上がる物語であると同時に、家族の物語でもある。信頼関係があるから、決して諦めない。
真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐな物語の結末は、予想外だった。ファンタジーならではの結末と言えるが、この結末は、凡天を、ライバルを、天盆に挑む者たちを、微塵も否定していない。だからきっと、これでよかったのだ。そう思いたい。