王城夕紀のレビュー一覧
-
-
Posted by ブクログ
ネタバレ量子病、といういきなりどこかにワープしちゃう病気にかかった女の子を主軸に書かれてる。
SFファンタジーなんだけど、どこか現実の現代の未来がこうなってもおかしくないなって思えるくらいには、いい意味で想像に易いファンタジーで入り込みやすかった。
あと、細かく章が分けられてて、それが唐突なワープ感を上手いこと描写しててすげ〜って思った。
SNSとか、カップルアプリとか、出会いを求める人間に比例してツールも増えて、その繋がりが切れないツールや仕組みも同時にたくさんあって、それって離れ難いから作られたものだ。
おじいさんは「別れなど、なぜ、なくてはいけない。」って言った。
同じ事を思った人が仕組みを -
Posted by ブクログ
ネタバレ本作は、『天盆』に続く王城夕紀さんの第2作だという。読み始めてすぐ感じた。『天盆』とはタイプが大きく異なる作品だ。『天盆』が明快かつ連続的な物語ならば、本作は哲学的かつ断片的な物語だ。それには理由がある。
主人公の坂知稀(まれ)は、「量子病」という奇妙な病に冒されていた。自らの意思と関係なく、世界中をワープし続ける。いつ跳ぶか、どこに跳ぶか、予測する術はない。稀のワープに伴い、物語も跳ぶから、断片的になるわけである。各節は短く、それほど長い作品ではないのに、実に148節から構成されている。
跳ぶ先々での出会いが、一期一会のときもあり、何度も会うときもある。なぜか戦乱やテロの真っ只中に -
Posted by ブクログ
ネタバレ「青の数学」愛読者としては
手に取らないわけにはいかない。
驚いた。これが…デビュー作???
数ページ読み進めただけで、この国の人々や
時代背景の設定、ここの登場人物の名前と
キャラクターが、びしびし頭に入ってくる。
ファンタジーは登場人物がやたらに多く、
国名なども架空だから、設定そのものを
消化するだけに一度通読しなくてはならない
場合だってあるのに。
それだけじゃない。映像が脳裏に浮かんでくる。
いきいきと街が周りに浮かび上がってくる。
凄すぎるよ…この筆力。圧巻だ。
天盆の対局を経て、凡天の対戦相手たちが
精神的な成長を遂げてゆくさまは
どこか「蜜蜂と遠雷」に似て清々しい。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ『青の数学』シリーズの王城夕紀さんの作品である。文庫化を機に手に取ったが、この熱量は『青の数学』に匹敵するだろう。設定上の共通点は多い。数学に打ち込む栢山。本作の主人公が打ち込むのは、「天盆」という盤上遊戯。ゲームである。
架空のゲーム「天盆」とは、将棋に近いイメージだろうか。具体的なルール説明や図は、一切出てこない。それなのに、これほどまでに対局の熱気が伝わってくるのは、なぜなのか。具体的数式をほとんど出さずに、数学の熱気を演出した著者ならではの手腕である。『青の数学』シリーズのファンなら、はまるだろう。
テーマが架空のゲームなら、時代や舞台も架空。三国志時代の中国を連想する。本作 -
-
-
Posted by ブクログ
文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。
以下、個別作品の感想。
◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化さ -
-
Posted by ブクログ
ネタバレパイセン本。
王城夕紀『天盆』は、架空の盤戯を舞台にしながらも、人間そのものの業と希望を描き切った稀有な一冊である。
駒を打つ音や盤上を巡る沈黙が、勝敗を超えた精神の葛藤として響いてくる。
主人公・凡天が「好き」という純粋な衝動を力へと転じ、幾多の強者と渡り合う姿は、競技の枠を超え、人が生きる理由そのものを問いかけてくる。
家族との結びつきや師弟の情が温かく紡がれ、勝負の緊張感に人間の柔らかな温もりが対照的に映えるのも印象的だ。
ルールの細部を語り尽くさぬまま、読者に想像の余地を残した筆致は、天盆というゲームを一つの宇宙として際立たせ、物語に深い余韻を与えている。
読み終えた後、静 -
Posted by ブクログ
「いまさら一人増えたところで、かわりゃあしない」
橋の下でひとりの子を拾う。
舞台は、建国以来「象棋(中国将棋)」や「日本将棋」のような“天盆”というボードゲームを国戯として広く親しむ“蓋”という小国。
幼い頃から“天盆”に取り憑かれた主人公の凡天の楽しそうな勝負の様子は、将棋士藤井聡太を見るよう。
また、舞台は架空の時代の架空の国とされているが、描写される背景からは、中国戦国時代に突然現れて消えていった中山国を思い出す。
建国時精彩に満ちたこの国も末期には腐敗に塗れて消えていった。その亡国の物語は宮城谷氏の小説『楽毅』で知ることができる。
孤児たちを拾い育て続けてきた小勇と静は、どんな