望月衛のレビュー一覧
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上巻に比べると下巻は少し退屈に感じてしまった。それは筆者自身についてよりも、投資業界や金融商品の話の比率が多くなるためにやむを得ないことなのかもしれない。ただ、経済にまつわる様々な視点での意見を知ることができるのはとても面白かった。例えば、今まで私が読んだ本では効率的市場仮説を概ね肯定するものが多かったが、筆者は明確に否定している。その仮説とは相反する状況の中で利益を上げてきたのだから当然だろう。特に「100ドル札が落ちてますよ」で始まる、効率的市場仮説の生みの親のユージン・ファーマの逸話は笑える。
ただ、どれだけ稼いでも「人生の時間をどう過ごしたかが重要である」という筆者の言葉は重い。お金はより良い時間を過ごすための手助けはしてくれるかもしれないが、より良い時間そのものよりも価値があるものではない、と解釈した。 -
Posted by ブクログ
効率的市場仮説の不完全性を補完する新しい考え方についての経済本。600ページの分厚さだけど、著者のポエムや昔話などもかなりのボリュームがあって、無味乾燥でお堅い学説といった雰囲気は無い。
金融市場は経済法則だけで動くものではなく、人間が進化の過程で獲得してきた特質によって生物学的に説明されるとしている。
どこまでの範囲を仮説と呼んでいるのか?事例紹介はあるけれど科学的根拠の裏付けがあるのか?など、不明点はいろいろあるけれど、考え方として面白いなと感じた。
■基本原理
・人間は常に合理的でも非合理的でもない。進化によって特徴づけられる気まぐれな存在である。
・人間の行動にはバイアスがある。過去の経験に学んだ結果である。
・人間は思考の速さで進化する。抽象思考、未来予測、環境変化をしうる。
・生存することが競争、革新、適応の原動力である。 -
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ネタバレ風はろうそくの火を消すが、炎を燃え上がらせる。風は避けるのではなく利用する。
耐久性や頑健性ではなく、反脆いものは、耐えるだけでなく利用する。
リスクを計算するのではなく、利用する方法を学ぶ。
危機を生み出しているのは身銭を切らない人たち。
ブラックスワンは後で考えると、予測が可能だったかのように見える。まれなことは発生頻度は計算できない。
「ソビエト=ハーバード流の錯覚」=科学的知識の適合範囲を非科学的に過大評価する現象。
ホルミシス=少量の毒が効用を持つ=低容量の放射線が役に立つ場合がある。ホメオパシーとは違うもの。
過剰補償のメカニズム=くたくたになったら休むよりも別の運動をした方がいい。急ぎの仕事は忙しい人に頼む。声を抑えたほうが、聴こうとして集中させる。
タクシー運転手、売春婦、配管工、大工、歯科医、仕立屋などの職人は、収入は不安定だがゼロにはならない=高給取りの勤め人より反脆弱性は高い。
人生は少しランダムなほうが安定する。
予測する人は破綻する。予測屋が外れることに賭ける。
他人の評価は残酷で不平等=同じ土俵に上がらないことが一番いい。どう評価されようと構わない立場。
成功は非対称性を生み出す=失うモノがはるかに多くなるため臆病になる。セネカは頭の中で財産を帳消しにした。失う痛みを感じなくするよう感情をコントロールした。=反脆弱性とは、良い意味での非対称性の状態。
バーベル型の解決=中間はさほど儲からない。多くを安全資産にし、10%程度を失うつもりでハイリスクに賭ける。両極端の用を即見合わせる。
生物界のバーベル戦略=鳥は安定した相手とつがいになり、浮気によって優秀な子を得る。
重大な危機に注目して小さな失敗には目をつぶる。
黄金の中庸を避ける。バーベル戦略で人生が豊かになる。
人間は因果関係の錯覚に陥りやすい。歴史を記すのは時間を持て余した学者という敗者。 -
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音楽の支出は世界全体で500億ドル (2017年)
世界のGDPの0.06% 世界のエンタテインメントの2%
配信サービス印税 100万回あたり2000~3000ドル
スポティファイ売り上げの60%を印税として払う
レディオヘッド In Rainbows
最初の1か月 100万人のうち60%は支払いゼロ、40%が平均6ドル支払う
それでも過去のデジタル配信合計より多い儲けに
アメリカ人の80%が普段音楽を聴く 平均2~4時間 うち1/3がストリーミング
ミュージシャン21万人 被雇用者の0.13%(2016年アメリカ) 半数が大卒
バンドメンバー数 ビルボードTop100 1976年4.5人が 2016年には3.2人
コラボ作曲 1980年代以降作者が2倍 曲づくり細分化
スーパースター市場 規模の経済
トップ1%のコンサート収入 26%が35年後2017年は60%へ
バンドワゴン効果 2017年3320万曲ストリーミング 人気は人付き合いで決まる
これから変わらないものは何か? 戦略を立てられるのはそっち(ジェフ ベゾス)
録音された音楽への支出、1位アメリカ。2位日本はCDに執着のため。
自国バイアス減少へ。
音楽は、早くて便利なものへ。人と人との付き合いが伴うもの。
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美男美女は得をする。これが本書の結論です。一見自明にも思えるこの結論について、経済学の枠組みを使って分析したたくさんの研究結果を紹介しています。
みなさんの中には、経済学ってこんな分野も扱うの?株とか景気とか、そうゆうのを研究する学問なんじゃないの?と思った方もいるかもしれません。確かにそれらは主要な研究対象ですが、人の意思決定に関わる内容であれば、だいたいは経済学の対象になる。相撲の八百長についてまじめに研究した経済学の論文もあるんですよ。
さて、美貌と収入の関係を経済学的に分析するにはどうすればいいか。やり方は簡単です。たくさんの人の容姿(例えば5点〜1点の5段階評価)と収入のデータを集めて統計分析にかければ良い。
いや、本当にそれでいいのでしょうか。教育が収入にプラスの効果があるのはこれまでの研究で分かっているんですが、仮に容姿のいい人がいい教育を受けやすいとすれば、容姿の効果を過剰に測定してしまうことになってしまいます。だから本書で紹介されている研究(データは1970年代のアメリカ)では、以下のデータも使ってコントロールしています。
・教育、年齢、健康、組合への加入、結婚歴、人種や民族、都市の規模、地域、出身国、家族の出目、会社や工場の規模、勤続年数
さて、結果です。容姿がいい人と悪い人の収入の差は、男性で17%、女性で12%と出ました。けっこう大きな数字にも見えますが、比較対象がないとちゃんと評価できません。で、教育の効果との比較してみたいんですが、通学が1年伸びると収入はだいたい10%増える。つまり、容姿がいい人は、1年ちょい余計に教育を受けているくらい、収入のアドバンテージがあるということです。けっこうですよね。
先ほどの数字は、男性の方が女性よりも収入に影響が出るというものでした。ちょっと意外に思った方もいるかもしれません。本書の仮説はこうです。女性は男性より外に出て働くかどうかの選択を行う余地が大きいから。特に1970年代のデータですからね。容姿に自信がある女性は外で働き、自信がない女性は家で専業主婦になりやすい。
さて、容姿がいいと収入が高くなりやすいことはわかりました。一般的に収入の高い人は、会社に利益をたくさんもたらし、社会の役に立っているわけですが、美形は社会の役に立っているのでしょうか。収入が高いのは、面接官や上司の評価が甘くなっているだけじゃないか?確かに、美形は私的な意味では生産性が高いです。美形がそばにいると嬉しいし、化粧品の販売員が美形だとよく売れます。でも「社会の」役に立っていると本当に言えるのでしょうか。
この分析は非常に難しく、はっきりとした結論は言えません。それを前提として、本書にあるオランダのテレビショーの分析を紹介します。これは参加者5人のクイズ番組です。早押し問題で持ち金をかけて戦います。各ラウンド終了時に一番成績のよかった人が、脱落者を選びます(脱落者のお金は没収される)。これを第4ラウンドまで繰り返し、賞金は最後の2人で山分けとなります。つまり、なるべくクイズに正解しそうな人を残して、アホっぽい人を脱落させればいい。このテレビ番組における参加者の行動を分析すると、脱落者は容姿が平均的に悪かったことがわかりました。他方、正解率に容姿の影響はありません(美形の生産性が高いわけではない)。したがって、世間が美形好きなのは、美形は社会の役にたつから、というわけではなさそうです。
本書では、マッチングサイトの市場分析の研究も紹介しています。分析の結果、男性も女性も美形により良い反応を示していることがわかりました。ただし、そこに男女間で差はありませんでした。少し意外かもしれませんが、男性も方も容姿をしっかり評価されているようです。他方、教育水準の高い男性は女性に好まれるが、女性の教育水準に対してその傾向は強くないという結果も出ています。
最後に、筆者は「ブサイクには政府が保護すべき」という主張をします。え!?っていう感じですが、筆者は、ブサイクが持っているハンディキャップは、アフリカ系アメリカ人の持っているハンディキャップと大差がなく、後者を保護するなら前者も保護すべきと言います。
ここからは私見ですが、ブサイクを政府が保護する点、理屈は同意しますが、それって政府が「この人はブサイクです」というレッテルを張るわけですから、かなりキツい。すごいスティグマですよね。なんとなくブサイクだなと思っていても、曖昧だから希望はある。でも確定しちゃったら立ち直れないですよね。まあ、保護するかどうかはおいといて、容姿と収入に相関がはっきりとあることを統計分析で示したことは興味深かった。すごく俗っぽい内容だけれども、人間や社会を理解するうえでとても重要な切り口だと思います。