熊本にTSMCが、北海道・千歳にはラピダスがやってきて、地元経済は活気に満ちているとのこと。自動運転車やスマホの進化もバンドあってこそ。サプライチェーンにおいて半導体はチョークポイントになっているーー。かつて半導体で世界を支配したとされた日本の地方や日々の生活でいま起きていることと、世界がつながる視
...続きを読む点、視野、視座を持ちたいと思い読んだ。文字通り「半導体戦争」が起きていることを理解できるよい本でした。先に書いておくと、「2030半導体の地政学」(太田泰彦著、日本経済新聞出版)と併読すると、いっそう理解が深まるのでお勧めです。
個々のエピソードがとても面白い。アメリカ、ソ連、日本、韓国、台湾、ヨーロッパ、中国それぞれの覇権争いと棲み分け、起業家や大企業内部の破壊者といった個人の革新性と野心を通じたドラマがテンポよく展開される。いくら名経営者でもアンディ・グローブの下では働きたくないなあ、モリス・チャンはお釈迦様みたい変化の激しい業界で長く君臨できる強かさは恐ろしい、などなど感情移入しながら読めるのもこの本のおもしろさ。
アメリカの半導体産業の浮き沈みはジェットコースターのよう。そしてその裏側には冷戦、ベトナム戦争、湾岸戦争とつねに戦争があった。いまのウクライナ戦争やイスラエル・ハマス衝突もそうなのだろう。そして、米中新冷戦と呼ばれる状況もしかり。なので半導体戦争なのだ。
日本の話題については日本の専門メディアで読んだからディテールがやや物足りないのはやむなしとして、アメリカから見るとそうだったのかと気付かされる。東芝のおかれた状況、NANDの無念などは日本の関係者に示唆が多い。
見えてくる軸としても、民と官、自由と責任、リアルとバーチャル、ボーダレスエコノミーと経済安全保障、ファーストペンギンとキャズム、製品開発とルールづくり、などさまざま。一気に読めたけど、傍に置いてまた開きたいおきたい一冊。もう少し各社のランキングや地図入りの資料があると理解は深まるのだが、それは似た半導体本に豊富だったりするので、先の2030ーなどと一緒に読めばよいかもです。