【感想・ネタバレ】半導体戦争―――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防のレビュー

あらすじ

自動車や家電だけでなく、ロケットやミサイルにもふんだんに使われる半導体は、今や原油を超える「世界最重要資源」だった。国家の命運は、「計算能力」をどう活かせるかにかかっている。複雑怪奇な業界の仕組みから国家間の思惑までを、気鋭の経済史家が網羅的に解説。NYタイムズベストセラー、待望の日本語訳!

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Posted by ブクログ

ここまで重要な半導体に対してなぜ今まで無知だったのか!と気付かさせる良書。
半導体をめぐる世界情勢の理解、投資で話題の半導体の今後を見据える上でも、必読だと思います。

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2024年05月06日

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9月4日のNHKスペシャルは「1兆円を託された男 ~ニッポン半導体 復活のシナリオ~」という番組でした。恥ずかしながら視聴するまでファブレスとファウンダリの違いがわかっていませんでした。つまり半導体会社の世界ランキング1位NVIDIAと2位のTSMCの違いです。慌てて積読だったこの本を開きました。自分の世代の理系の優秀な奴らはNECとか富士通とか日立に就職しています。そろそろ会社から離れ始めた彼らと飲むと日本の会社の半導体事業戦略の失敗と通産省(また経済産業省になる前!)の失策を吐き出すように語ったりしています。そんな日本半導体の成功と凋落も本書のテーマの一部ですが、もっともっと大きな物語、興奮しながら満喫しました。無茶苦茶面白く、世界情勢についての解像度も滅茶苦茶上がります。ローマ帝国興亡史ならぬシリコン帝国興亡史。でも、それは現在進行形の歴史です。書名の「半導体戦争」はビール戦争、液晶戦争のようなビジネスアナロジーとして読み始めましたが、後半にはストレートな意味での戦争と半導体の一体感に慄然としました。AIの発展で半導体は人間生活のますます奥深くに埋め込まれていくと思われます。それは国際政治の緊張感とダイレクトに繋がっていく時代なのだと思いました。

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2025年10月15日

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半導体についてトランジスタ誕生から現在のサプライチェーンまで学べる本。黎明期のシリコンバレーの様子、ソ連の半導体、黄金期の日の丸半導体、そしていかにして台湾が半導体生産の主役に躍り出たか等よくわかる。以前感想を書いた『2030半導体地政学』とともに読んでおいて損はない本。

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2025年04月08日

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めちゃくちゃ面白かった。

半導体が、どこかひとつの国ではなく「多くの国々の共同作品」になるまでの戦国絵巻。地政学的観点が連動する理由がひしと分かる。これからのニュースの見方が明らかに変わる1冊でした

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2025年02月10日

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産業の米ともいうべき半導体の国家間戦争。日本がいかに米国の尾を踏み、技術的にハブにされ、オランダや韓国/台湾に中心地を移されていったか。日本人の視点から読めばまた米国読者と違う世界が浮かび上がる。
とはいえ半導体全盛のころの金曜日夜の羽田は週末バイトで台湾や韓国に向かう、NECや日立の技術者で溢れかえっていたというから自業自得と言えば自業自得。大層な話は一つもなく自分たちで技術流出させて死んだだけなのかもしれん。

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2024年12月16日

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半導体産業の歴史から詳細に解説されており、産業構造について理解が進む。例えば、何故半導体産業は不況期でも巨額投資を行う必要があるのか?は、日本の半導体産業の没落、および韓国半導体企業の隆盛という観点から解説がされている。分厚いが読みやすいのも良かった。

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2024年12月02日

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半導体を取り巻く国家間の課題と歴史を学び、国家間の戦いの内幕を想像することができた。半導体は重要な戦略的資源であり、装置メーカーやサプライチェーンを含めても決して多いとはいえないプレイヤーたちが国家間で微妙なバランスの上に立っていることがわかった。同じ戦略的資源の石油は採掘できる場所は神しか決めることはできないが、半導体を作る場所は人間が決められる。故に国家間の駆け引きは戦争に通づるものがあるようにも感じる。人がつくる戦略的資源の行く末と、米中を中心とした静かでしたたかで狡猾な戦いに注目したい。

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2024年09月24日

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原題Chip War、(2022年10月刊)。
 鉄鋼と石油(と愛国心教育)が20世紀80年代までの軍事の要だったように、チップには一般語で「木っ端≒つまらないもの」の意味があるが縦横10mmぐらいの半導体チップは21世紀の世界支配の要となっている。
 65年提唱のムーアの法則「年間2倍」提唱の見事な長期的実現(途中から「2年で2倍」)。回路は三次元となり線幅2nm加工には超紫外線が必要となっている。
 中国が世界の覇権国になるには進歩の速いチップ技術で最先端となる必要がある。それは軍事でもAIなど最新の応用に決定的な基幹技術で、早い話が半導体供給を大量生産廉売で押さえれば、産業の生死を押さえられるし、軍事的にもミサイルの命中精度が上がれば破壊力は段違い。ベトナム戦争で、
一つの橋を爆撃ではなかなか破壊できなかったが、現在なら遠方の戦闘機からミサイル一発で十分。

各章が瞠目すべき歴史的展開点となりうるエピソード

序章 原油を超える世界最重要資源

第Ⅰ部 半導体の黎明期

第1章 戦後の技術者たち

第2章 トランジスタの誕生
 ’48トランジスタ発明、


第3章 シリコンバレーの始祖と集積回路

‘58集積回路発明(キルビー特許)

第4章 軍に半導体を売りつける
アポロ計画が開発を後押し、

第5章 半導体を量産せよ

第6章 民間市場は存在するか



第Ⅱ部 半導体産業の基軸になるアメリカ

第7章 ソ連版シリコンバレー

第8章 コピー戦略

第9章 日本の経済復興

第10章 どこで半導体を組み立てるか

第11章 ベトナム戦争の誘導爆弾

第12章 太平洋を超えたサプライ・チェーン

第13章 インテルの革命

第14章 チップを載せたスマート兵器

第三部 日本の台頭

第15章 成功しすぎた日本

第16章 日米経済戦争


第17章 「最高に熱いハイテク企業」、日本に敗れる

第18章 「1980年代の原油」と化した半導体

第19章 シリコンバレーとロビイング

第20章 パックス・ニッポニカ

第V部 アメリカの復活

第21章 アイダホ州のハイテク企業

第22章 インテル再興

第23章 敵の敵は友 韓国の台頭

第24章 ミードとコンウェイの革命

第25章 コピー戦略の末路

第26章 思考する兵器無能

第27章 湾岸戦争の英雄

第28章 日本経済の奇跡が止まる



第Ⅵ部 集積回路が世界をひとつにする

第29章 TSMCの隆盛

第30章全員で半導体をつくるべし

第31章 中国に半導体を届ける

第32章 リソグラフィ戦争

第33章 携帯機器の市場規模

第34章 アメリカの驕り



第Ⅶ部 イノベーションは海外へ

第35章 工場を持つべきか

第36章 ファブレス革命

第37章 モリス・チャンの大同盟

第38章 アップルの半導体

第39章 EUTリソグラフィ

第40章  7ナノメートル・ブロセス

第41章 イノベーションを忘れたインテル

第Ⅷ部 中国の挑戦

第42章 中国指導部の方針転換

第43章 半導体の自給自足

第44章 サーバ向けチップを攻略せよ

第45章 台湾の秘宝

第46章 ファーウェイの隆盛

第47章 5Gの未来

第48章 「知能化」する戦争

第Ⅸ部 武器化する半導体


第49章 半導体の支配という土台

第50章福建省晋華集積回路

第51章 ファーウェイ排除

第52章 中国版スプートニク・ショック

第53章 半導体不足とサプライ・チェーン ま

第54章 台湾のジレンマ

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2024年08月15日

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2024.4.19、TSMCの四半期決算が発表され過去最高の増収増益決算であった。売り上げは四分の1を占めるアップル向けスマホからエヌビデアなど生成AI向けサーバー需要(24年10%前半から28年までに20%以上に)の高単価先端品に移行中でAMD・メタなどからも広く受託生産を増やしている。最先端の2nm品は25年量産を目指し開発中で台湾で2拠点、米アリゾナで3工場建設中、「先端パッケージング」も台湾で増産・・・『日経新聞』の当日の記事である。
この決算発表の日、この本を読み終えた。
『半導体有事』に続いて面白く読めた。
半導体は人類の未来を左右するキーファクターだ。
序章に書いてある、「典型的なチップは日本企業が保有するイギリス拠点の企業アームの設計図を使い、カルフォルニア州とイスラエルの技術者チームによって、アメリカ製の設計ソフトウェアを用いて設計される。完成した設計は超高純度のシリコン・ウェハーや特殊なガスを日本から購入している台湾の工場へと送られる。その設計は原子数個分の厚さしかない材料のエッチング、成膜、測定が可能な世界一精密な装置を用いてシリコンへと刻み込まれる。こうした装置を生産しているのは主に5社で1社がオランダ、1社が日本、3社がカルフォルニアの企業だ。その装置がなければ先進的な半導体を製造することは基本的に不可能だ。製造が終わると半導体はたいてい東南アジアでパッケージングとテストが行われ次に中国へと送られて携帯電話やコンピュータへと組み立てられる。」、半導体サプライチェーンのあらましである。     
又、「台湾製のチップは毎年世界の新たな計算能力の37%を生み出している。2社の韓国企業は世界のメモリ・チップの44%を生産している。オランダのASMLという企業は最先端の半導体の製造に欠かせない極端紫外線リソグラフィー装置を100%製造している。それと比べるとOPECの産油量の世界シェアなどとたんに色褪せて見えてくる。」とも書いている。
世界経済における半導体産業の重要性と開発競争の凄まじさ、地政学的駆け引きと日本メーカー復活の可能性など歴史や技術的細部もさらに掘り下げる。

ATTベル研究所のウイリアム・ショックレーが真空管を凌ぐトランジスタを発明し半導体研究所をパロアルトに設立することが口火を切る。テキサスインスツルメント社(TI)のジャック・ギルビーが半導体集積回路を発明する。ショックレーのもとを離れた「8人の反逆者」がフェアチャイルドセミコンダクター社(FT)を立ち上げシリコンバレーの始祖となる。
ベンチャーキャピタルのセコイアを創業するクライナー・パーキンスもその一人である。
ロバート・ノイスがジーン・ハーニーとメサ型(台形)をプレーナー型(平板)にして複数の電子部品をまとめる集積回路を作りそれを他の電子部品と結合してシリコンチップに統合する。ゴードン・ムーアらがその集積回路をNASAのアポロ計画や軍用ミサイル開発用に技術開発を進める。フォトリソグラフィという工程で配線をプリントし集積度・性能を向上させ「ムーアの法則」といわれる集積化の指数関数的進化が始まる。FT社のアンデイ・グローブやTI社のモーリス・チャン(TSMC創業者)らが集積化を進め、購買者を宇宙開発・軍用から民間の大衆市場向けに転換する。
「金持ちになりたい」をエネルギー源としたエリート達の凄まじい競争が展開される。
大型コンピュータ時代のIBM、PCのIntelとMicrosoft、スマホのARMとAppleとTSMC、AIのNvidea等々人や企業の多彩なビッグネームが次々と登場し、スタンフォード大学やMITも人材供給や技術開発のバックグラウンドになる。シリコンバレー発のドキュメンタリーパノラマは興奮ものだ。

技術や人、国の政策や企業の戦略についての徹底した調査と研究をふまえて、正確・冷静な描写で読み手を引き込む表現は絶妙で滑らかな翻訳も手伝いノンフィクションでありながら本格的な科学冒険小説を読んでいるようだ。
急速で不可逆なデジタル社会の進展下、最も重要で本質的な心臓部品である半導体にフォーカスし、将来の社会を洞察するための価値ある一冊であった。
クリス・ミラーのこの作品を五つ星の評価とした。

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2024年04月21日

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ライフラインが石油から半導体に変わりつつあり、故に世界の勢力図も不安定になり国家間の争いも段々と表面化してきているように思います。

世界で起きている国家間の争いを半導体の視点でみるとまた違った見え方ができるのではと思いました。

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2024年04月06日

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クリス・ミラー著の半導体関連のビジネス書。本書はビジネス書として圧倒的な人気を誇っており、加えて、自身が春から半導体関連メーカーで働くため、読まない理由はなかった。本書は戦後から現在に至るまでの半導体の歴史を一冊にまとめた書籍である。産業の中心の米国目線で物語が書かれているため、日本のビジネス書にはない新鮮な目線で楽しみことができた。例えば、日本が米国から半導体の覇権を奪った1980年台では、日本国内では賞賛や歓喜といった喜ばしさ一色の記され方をされると思うが、本書では日本をかなり目の敵にしていて面白かった。本書が素晴らしい理由は圧倒的な文献引用数にあるといえる。そのため、なぜ出来事や発展衰退が起こったかが、あまり専門知識を有さない私にも非常に分かりやすく理解できた。また、現在起こっている半導体バブルの原因も、ただ漠然と記事を読むだけでは決して理解できない理由も、本書を通じて多少理解ができるようになった。このように、様々な分野のインプットを行うことで、世の中の流れの解像度高くなることは非常に会館であり、死ぬまで続けていきたいと再確認した。さらに、本書を通じて半導体や技術の歴史やトレンドに加えて、地政学に対する関心が非常に強くなった。メーカー就職する前に読んでいて本当に良かった思わせる1冊だった。

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2024年03月02日

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現代の国際政治、世界経済、軍事力のバランスを特徴づけてきた立役者は半導体である。では、いったいどのようにして、私たちの世界は100京個のトランジスタと替えのきかない一握りの企業によって特徴づけられるようになったのか?が本書のテーマである。

 1945年に真空管を用いて初期の電子計算機が作られてから現在に至るまでの、各国政府や企業、技術者達による、半導体生産に関する熾烈な競争の歴史を知ることができる本だと感じた。

 この本を読んで、半導体を使ったコンピューターががアメリカで生まれた経緯や、技術の発展に日本が果たした役割、半導体製造のオフショアリングによるアジア諸国の台頭、半導体製造の技術や装置がたった数社に集中している状況など、半導体に関する非常に入り組んだ複雑なサプライチェーンの成立過程などを知ることができた。

 そして、単なる半導体に関わる製品の権利による経済的なことだけでなく、『半導体戦争』というタイトルが示す通り、半導体戦略は国家間の安全保障や国防などの分野にも密接に関係しているということがわかった。

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2024年02月01日

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半導体がこんなに世界情勢と密接だったとは。

何が議論になってたのかが、よくわかる、ものすごく勉強になる本でした

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2024年01月22日

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ネタバレ

半導体の、短い歴史の濃密な物語を、足早に駆け抜ける。その様を雑だと当初は感じたが、読み終えて今、焦点がどこに定められていたかを知った今ではそう思わない。現在の世界情勢、具体的には米中摩擦を語るためだったのだ。

中国は半導体供給を台湾に大きく依存している。半導体製造は容易ではない。何千億ドルを投入して最先端を目指し、数年後に半導体製造を実現したとしても、そのときにはすでに最先端でなくなっている公算が非常に大きい。この投資に見合わないと競争をやめたかつてのメーカーは自前工場を持たず設計のみを行うファブレス企業へと転身した。半導体の能力の差が兵器の差になる。ロシアがウクライナで使用している兵器は無誘導である率が高くなっているらしく、食洗機に使用するような半導体も兵器への転用が図られているという。
軍事においても半導体に非常に依存している状況において、それでもなお台湾有事は起こり得ると、著者はいう。ロシアのようなカッコ悪いことになった場合、半導体の供給なしで継戦することになるリスクを飲めば。

「人間は水と酸素に中毒している。もうひとつくらい増えてもかまうまい」フランク・ハーバートはデューンでこんなカンジなコトを言った。
現実の人類が罹患したかもしれない新たな中毒の名は半導体かもしれない。

アメリカもまた自前で最先端の半導体を製造することはできず、台湾有事が発生した場合、中国と同程度のリスクを負うことになる。

グローバル化というのはパックス・アメリカーナにおいては良い感じに働くが、世界革命やアナーキズムに天秤が傾くと途端にリスクとなる。

カネでいろいろと解決を図ろうとして自前をやめると、有事に大問題になりえるとわかっていても、やはりカネが大切なのでなにもしないというのは身近な例がいくつもあって、人は状況や歴史に学べないということを身に沁みて知る。

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2023年12月29日

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時系列で書かれていたのでとても分かり易かった。
また、今の世界情勢や日本の立ち位置がどの様に
形成されたかが私のような素人でも理解出来る内容だった。

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2023年12月11日

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面白い。およそ500ページを読ませる読ませる。タイトルに全く偽りなく、半導体の世界は既に起こっている戦争と言っても良いのかもしれない。そしてそれは今を生きるすべての人に影響するし、本質的にそこに関わることのできる国家も企業もごく僅かしかいない(そして日本の影響力はゼロではないけど薄い)ことに驚かされる。

Intel ceoパット・ゲルシンガーの言葉として
「石油の埋蔵場所は神が決めた。だが、工場の建設場所はわれわれ自身で決められる」という言葉が引かれている。p450

とは言っても最先端の半導体を作るために必要な投資、それ以上に製造を行うための技術、進歩をリードするための開発投資を行うことのできる企業は片手に満たないし、既にIntel自身が最先端にいないことを踏まえるとこの言葉も余り当たっていないかもしれない。油田のように突然思いもしない場所で噴き出ることはないとしても、どこでも最先端の半導体工場が建てられるかと言えば、それが人智の範囲ではあるとしてもそうではないだろう。
中東の石油、台湾の半導体、いずれもアメリカの影が濃い。現状の偶然さで言ったら台湾の半導体の方が高いかもしれない。

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2023年10月30日

購入済み

歴史を振り返る事の重要性

半導体の誕生から、現在の勢力分布に至るまでの歴史が分かりやすく纏められていて、頭の中が整理できた。

#深い #タメになる

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2023年03月12日

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半導体戦争の歴史について詳細に書かれている。
もう少しコンパクトにまとめられただろう。知識がないせいか読みにくかった。
内容はとても良い

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2025年09月20日

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いわゆる「半導体戦争」というと、米中対立のことをイメージする。スマートフォンやAI、軍事機器などの中核を担うのが半導体だからだ。中国のHuaweiなどへの高性能半導体の輸出規制や、米国製装置を使った製造の禁止などは記憶に新しい。そうした攻防の中で、台湾TSMC(世界最大の半導体受託製造企業)の存在も一気に有名になった。遡って日本とアメリカの半導体摩擦。国同士の半導体戦争というとこれ位のイメージだが、本書はそれらを網羅する。

また、軍事・安全保障における半導体の戦略的重要性について。AIやミサイル誘導、監視システムなど、最先端兵器の性能は半導体に依存している。国家安全保障の観点からも、自国で半導体を安定供給できる体制が求められている。

その製造における実力について。現在、TSMCを超える精度でチップを製造できる会社は、世界にひとつも存在しないらしい。TSMCの世界最先端のエ場「Fab18」では、迷路のように入り組んだ微細なトランジスタのパターンが刻まれていた。その大きさは、新型コロナウイルスの直径の半分以下、ミトコンドリアの直径の100分の1にすぎない。iPhoneはシリコン上に118億個の微細なトランジスタを刻み込んだA14プロセッサ・チップで動いている。

計算の需要性。戦争は計算能力を必要とする。正確に爆弾を投下できるようにする機械式爆撃照準器。精度が悪ければ、戦争の命運を決めるのは投下された爆弾や発射された砲弾の「量」。小室直樹も太平洋戦争の分析でそう言っていた。そして精度を高めるには、もっと多くの計算が必要となった。

他にも「フォトリソグラフィ」の技術。エヌビディアの3次元の画像処理ができるGPUの話など、技術的な話も面白い。分厚い本だが、カバー範囲も広くて読み応えがある一冊だ。

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2025年04月23日

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戦略物資と捉えられるようになった半導体の歴史・情勢に関する本。面白かったです。
半導体の発明から始まり、ロシア・中国・台湾・日本等の時代毎のプレーヤーがテクノロジーに対してどのような動きをしていたかがよくわかります。また、半導体業界が、非常に多くのキーテクノロジーの寄せ集めで構成されていることが理解でき、それらを統合して現在の台湾TSMCのポジションが形成されていることも述べられています。
近年の半導体装置の精密さは、これまでの企業、ならびに、その国の政府の後押しによって成し遂げられたものであり、シンガポールや台湾のにおいては相当程度の覚悟を決めて大きな投資をしてきました。将来の覇権を獲得するために行われている世界各国での工場誘致等の投資が、果たしてその国の成功をもたらすのか、遠い将来に振り返る必要があります。

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2025年03月16日

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ネタバレ

半導体の世界における歴史書。
様々なメーカーと国の威信をかけた
栄枯盛衰の物語。
半導体はもはや軍需産業。
その中で日本の取るべき
戦略は。。。

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2024年12月31日

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サムスン、ASML、東芝、エルピーダ、テキサスインスツルメンツ、インテル、エヌビディア、ファーウェイ、TSMC、、、
それぞれが、それぞれの国を背負って、半導体戦争を行っていた経緯が、克明に記されていて、とても興味深かった。
いま、TSMCとエヌビディアが天下を取る世界を、30年前に予測するのは、難しかっただろうなぁ。。

いま、ソフトバンクがARMを持っているわけで、エルピーダの技術や、周辺作業の厚みを考えたら、日本が、覇権を握ることも出来たのでは、、、と、少し残念にも思った。

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2024年05月03日

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ネタバレ

【ハードウェアの中身】
あらためて、私たちは無形のサービスではなく、物理的な資源やモノがあって初めて生活が成り立っているのだと考える。

この本の原題『Chip War: The Fight for the World's Most Critical Technology 』で、チップという形で人間が発明した半導体という技術作品が、いかに私たちの生活品の中に組み込まれていて、その半導体の技術の発展と普及が、地政学的な展開上に成り立っていることを示している。

例えば今現在私たちが使用しているスマートフォンの製造には、様々な国をまたぐサプライチェーンから成り立っていることは、「グローバル化」についての授業などでよく聞く話だけれど、

今回提示されているのは、半導体を必須とするこれらの生活用品は、東アジア、とくに台湾への依存が進んでいるということ。

一つの機器の製造が複雑化する分、サプライチェーンはグローバル化しつつも、中核となる部品においては、多角化ではなく一点集中、競争からの独占、といった現象が生じていること。

これを、特に筆者の国、アメリカの視点から、安全保障上のリスクとして警鐘を鳴らしている。

20世紀半ば、シリコンバレーの創設者とされる人々の手により発明されたこの技術は、当時の冷戦を背景に、一時は国防のための技術としても発展してきた。

半導体チップのチップ当たりのトランジスタ集積密度の指数関数的な増加を予測する「ムーアの法則」という言葉を生み出したのも、当時のシリコンバレー創設者たちであった。

その予測を実現する形で、今日私たちが使っている半導体チップは1平方センチメートル当たり100億個のトランジスタを搭載するものとなっていると知る。

つまり、半導体チップの微細化がムーアの法則に従って進んできた。

本書では、その過程で突破口を見出してきた個々人について、そして国家間の関係性の移り変わりについて、具体的な人物を紹介しながら論じられている。

当初は、アメリカとソ連間で繰り広げられた戦争は、

今日、米中間に主戦地を移している。

半導体サプライチェーンが、台湾という地政学的な要所を核として武器化していること、

これは米中関係にとどまらず、世界の国際秩序を揺るがすリスクを含んでいるものであり、日本は最も高リスクな関係上に位置していると考えざるを得ない。

インターネットやソフトな技術が注目されてきたIT革命だけれど、半導体の今を知ることで、本当に現実主義的な国際関係が見えてくる。

だからと言って自分に何ができるかと問われると答えられないけれど、

日々使っている技術が、常にあるものとは限らないこと、国際関係のバランスゲームは、私たちの普段の生活を簡単に揺るがしかねないものであることを教えてくれる

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2024年03月24日

Posted by ブクログ

20世紀は石油資源を争い世界大戦となったが、21世紀は「半導体」が戦争に関連し戦争には最先端半導体が鍵となる。 地政学にも半導体は多いに関係する、台湾だ。アメリカをリーダーとする西側諸国はオフショアリングとフレンドショアリングにより友好国が半導体産業の肝を握っている。超大国となりつつある中国の台頭にアメリカは中国に対して半導体輸出規制を友好国でしHUAWEIを弱体化させ一歩先に速く行く戦略を取るが。中国は軍事力でも力を付け台湾海峡を制圧出来る力は有にある、中国は台湾のTSMCが欲しいのだ。

それが近年囁かれる一つの中国を肝にした、台湾侵攻の可能性。付け焼き刃の技術力では身に付かない先端半導体技術を中国が得られば中国は超大国アメリカに肩を並べて越す可能性が出てくる。 ロシアはウクライナに侵攻した、可能性はゼロではない。


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2024年01月29日

Posted by ブクログ

半導体の歴史を概略でつかめる。
著者は若いアメリカ人なのでアメリカ中心の記述。半導体という産業の中心もまたアメリカだし。深掘り度はない。文献を取り寄せて読んで一冊にまとめましたくらいの感じ。

個々の企業の栄枯盛衰、一国の産業の興亡というのはやはり国際経済、一国の経済、金利、技術のトレンド、、時代の流れ、国際関係などが大きく影響するもの。

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●60年代~アメリカで半導体産業が勃興。軍事利用メイン。東南アジアに半導体工場が点在、冷戦で自由主義陣営につなぎとめるための工場と給与所得をアジア労働者に供与。
●70年代、ベトナム戦争で誘導弾デビュー、兵器に半導体。技術的優位=軍事的優位。米国の時代。ソ連は半導体開発競争についてはいけずコピー戦略へ=ずっと遅れ続けることを受け入れた。
●80年代~民需が爆発、日本の時代。米国は超インフレで高金利になり産業壊滅。日本は国家の後押し。貿易摩擦。自由貿易とはあくまでも米国というプラットフォームの上で成り立っているもの。それを忘れて傲慢になった日本。NOと言える日本。「西側につなぎとめるために利益を与えてきたが大きくなりすぎたようだな」米国は日本への対抗から新技術をオランダのASMLに供与、台湾、韓国へ投資。日本は凋落。
●90年代~韓国、そして台湾が台頭、アメリカの復活。より強力な国家の後押し。日本の補助金などかわいいものだった。パソコン需要が爆発。マイクロソフトとインテルが独占。
●2000年代~TSMC、、先端半導体量産を独占。キャッチアップが不可能な領域へ。半導体と安保の融合。中国追放。エヌビディア。

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2023年11月28日

Posted by ブクログ

半導体の歴史について、バリューチェーンと各国との関係性の観点から、アメリカを中心に俯瞰的に勉強できたと思います。

個人的に文章が冗長に感じ、基本的に各章の最初と最後の段落さえ読めば追っていけるような気がしました。ジャーナリズムというか、ドキュメンタリーチックなストーリー仕立てにしたかったのかもしれないのですが、あまり入り込めませんでした。

また、設計・装置・製造に関する各国のプレイヤーやアメリカ、中国、ソ連といった主要国の政策を知ることができましたが、技術的な構造については、本書からではイメージしにくく、別で技術補完したいなと思いました。

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2025年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

地政学についていくつか書籍を読むなかで、半導体についても学んでおきたいと思い読んだ。
が、半導体そのものへの興味と理解の低さが原因か、読みすすめるのがなかなか大変だった。
半導体の産業の構造やその成り立ち・背景について、詳しく書かれており、学ぶことができた。

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2024年12月06日

Posted by ブクログ

面白いけど内容は難しい。
冒頭に用語集があったり読みやすさへの配慮はあるが、歴史やIT知識、国際情勢への理解がある人のほうがより一層楽しめる1冊。難しい箇所は読み飛ばしてしまったが、技術の奪い合いでスパイを紛れ込ませるも、実物を盗んだのに中身が難しすぎて技術まで真似できなかったエピソードなどただ箇条書きにするような本とは違って、登場人物に人間みもある(ただヒトもいっぱい出てくる…)。
株をやっている人にもオススメ。各国の誰しもが聞いたことのある有名企業の盛衰を辿ることができる。

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2024年03月03日

Posted by ブクログ

競争する気持ちはわからなくもないが、度を越しているように思う。あまったエネルギーを自国のためではなく、世界のために使おうというリーダーは出てこないものか。

安いだけの理由で、ファーウェイの製品は買えなくなる。

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

地政学的リスクの高いTSMCに、最先端の半導体がほぼ依存している事の危険性を、改めて認識させてくれる。
日本も国策で最新の半導体を作れる会社を作ろうとしているが、本当に巨額投資を続ける事が出来るのか、甚だ疑問だ。

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2023年12月25日

Posted by ブクログ

デバッキング(虫取り)の語源は、その当時の電子計算機はで使われていた真空管は電球のように白熱をしたため虫が寄ってきてしまい、それを取り除く行為から

半導体産業は3つのカテゴリーに分類できる
①「ロジック」と呼ばれるスマートフォン、コンピュータ、サーバを動かすプロセッサのこと

②「メモリ」と呼ばれる一時的な記憶を提供するDRAMと、長期的にデータを記憶するNAND「フラッシュ」のこと

③センサーなどのアナログチップや携帯などの無線周波数チップや、機器の電力消費を制御する半導体など

アナログチップはトランジスタの微細化が重要なのではなく、巧みな設計の方が重要な意味を持つ。
今日の最大のアナログチップメーカーはテキサス・インスツルメンツ。


半導体もやはり兵器利用から

日本はアメリカ企業が日本国内で販売できるチップの数に制限を課すなどの保護主義的な政策をとっていた

カーバー・ミードとリン・コンウェイがコンピュータプログラムによる半導体設計の自動化の道を開いた。
半導体界のグーテンベルク革命

アプライド・マテリアルズ=加工中のシリコン・ウェハー上に回路をエッチングする専門技術をもつ世界最大の半導体製造装置メーカー

エヌビディア=世界最大のグラフィクチップ(GPU)製造会社
エヌビディアが画期的だったのは、GPUを標準的なプログラミング言語でプログラミングできるソフトウェアを開発し、すべてのプログラマーがエヌビディアのチップを使えるようにした。

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2024年03月30日

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