平谷美樹のレビュー一覧
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『柳は萌ゆる』から繋がる原敬の一生が描かれる本作は、若年期から死までを時系列に沿って丁寧に追っており、どこか吉村昭作品を思わせるようなリアリズムを感じさせる。賊軍とされた盛岡出身の原が、薩長閥に対する反発や複雑な感情を抱えつつも、国のトップへと上り詰めていく、その過程における原の心の動きが、この作品の大きな軸となっている。
首相就任後も、原は護衛を嫌った。その姿勢には、先日読んだ『光陰の刃』の團琢磨の精神と通じ、国家と心中する覚悟がある。團は軍部の過激化によって暗殺されたが、原は民衆により暗殺された。この時代は民衆による爆破・放火・襲撃だらけ。当時の日本社会には、政治への不満が直接的な暴力 -
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最高に面白い。歴史上、幕末にこんな奇跡があったとは。
民衆の力の強さと、人間の汚さ狡さ、色んなことが詰まったストーリー。
一揆にはこんな側面があるのかということを学ぶ。日本に民主主義が無いなんていうのは、大きな間違いなのかも知れない。こうした物語、歴史を知らなかったので、衝撃的である。
社会課題のありのよう、綺麗事では済まない人間の心情のリアル、運動や動きの複雑さ、陥りがちな陥穽が描かれる。美しいだけの物語など無いということと、その混沌の中でどう動くのか、生きるのか。
見栄や役得に動かされる心。辱めない、辱められない。敵であってもというところが大事なのかも。けど、心の奥底では、蔑むのが人。そこ -
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ネタバレゴミソの鐡次、三作目。
敵役の惣助が江戸幕府の転覆を図るというのは、
まあ予想通りだったが、
鐡次が似たようなことを目的で江戸に来ていたとは、
思っていなかった。
津軽から大先達が江戸に現われ、最後には大海戦となる。
一作目で登場していた雄の雉猫、萩の君の魂が
想い人の花魁七瀧を守るべく、
亡魂たちの前に飛び出したのには、ちょっと泣けた。
鐡次が回向するために、
長羽織に縫い付けていた端切れの霊魂たちが、
鐡次の危機に力を使い果たし、
白くなってしまったのにも。
七瀧、膝枕にしてもらえて良かったね。
これでとりあえず、終わりらしい。 -
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ネタバレTさんのお勧め。
ゴミソという言葉を初めて知った。
津軽言葉で占い師のことをいうが、
有名な「イタコ」と違って女性でないこともあるらしい。
占い師と言っても、憑き物祓いや亡霊退治が仕事のようだ。
この本の主人公ゴミソの鐡次は、
筮竹や天眼鏡を持ってはいるが、
人間や場所から漂う気配が映像となって頭に浮かぶ。
成仏させた者の着物の切れ端を縫い付けた長羽織を着ており、
生涯をかけて弔っている。
大店での女雛の行方不明や、
長屋に出た鈴虫の謎、
吉原で起こった萩の花の怪を解いていく。
鈴虫の謎を解いたが長屋の住人に、
悲惨な事実を知らせない優しさや、
子猫の恋心に泣けた。
同じ作者の「蘭学 -
購入済み
事実に徹する
体験に変な解釈をせず、あくまでも体験者が事実と信じる出来事を書くということに徹している。霊を信じる・信じないは個人の自由だが、体験者にとっては、それがどれだけ信じ難い現象であっても、体験したことが事実なのである。第三者が余計な解釈をするのは良くないというのが著者の態度で、その通りだと思う。
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幕末の盛岡藩奥羽越列藩同盟を主導した楢山佐渡の一生を描く。前半は盛岡藩の御家騒動を通じ、佐渡が‘武士だけの政治の限界’に気づいていく。後半は幕末の動乱に巻き込まれ決断を迫られていく。
帯に高橋克彦先生も絶賛、とある通り、非常に良質な歴史大作だった。終盤の戦争の場面は暗く陰鬱なシーンが続きなかなかページを捲る手が進まなかったが、最終盤は涙が止まらなかった。特に父帯刀と佐渡の最後の対面の場面は震えた。国を守るために命をかけているとどんなに理解しても血を分けた息子を目の前にすると我慢ができなくなる。常に冷静で闊達な帯刀だけに読者の涙をより誘う。
幕末、劣勢にある佐幕派の中で盛岡藩は何故参戦し -
ネタバレ 購入済み
日常の怪異譚
実話怪談集と言えどもこわい話ばかりではない。
最後の「クボタ常務」のエピソードは、適度なユーモアがあり、ほっこりとした気分になる。作中の「クボタ常務」曰く、「あっちの世界でも同じような仕事をして忙しい」あの世でも仕事はするのである(笑) -
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うぁぁ。読み終わってしまった。。。
今まで、破竹の勢いで読んできたのに、なぜか読み進める速度がこの巻になって明らかにペースダウン。
体調不良になったとかいかんともしがたい部分はあるけれど、他に気になることを始めたりして、明らかに意欲が落ちている。
なぜか。
サブタイトルで、結末が見えるから。
そこではじめて、明秀の好敵手であった突欲を憎からず思っていたことに気づいたのでした。
生まれが生まれだっただけで、悪いヤツじゃないやん、て同情もあったかもだけど、それでも。
時代が時代なら賢王となったかもしれなくて、歴史的史実からの平谷さんの創作であるにも関わらず、このタイミングでの退場は、惜しくて仕方が