平谷美樹のレビュー一覧

  • 安倍宗任伝 前九年・後三年合戦

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    平安時代の俘囚という立場がそれぞれの道奥羽六郡る、安倍晋三を44代遡る安倍宗任、前九年の役で倒れた安倍頼持(頼義)や貞任の悲劇に端を発し、安倍一族の治める奥羽碌軍の長き平和を企み生き延びる戦略を恥を忍び遂行する宗任であった
    権力を一度握ればより大きな権力を求め、隣の権力をうらやみ、大局を忘れ近視眼的に行動をする愚かな物語、もっとも愚行を行わせるための憎らしい敵役が物語に読者をのめり込ませる(本書には二人もいる)
    ①朝廷の隠密木幡橿几⇨同じ蝦夷の癖に生意気だぞ
    ②頼義の隠密保中⇨橿几にやられた癖に後を嗣ぐな

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    2025年10月31日
  • 貸し物屋お庸謎解き帖 夏至の日の客

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    だいわ移籍後5作目となる作品。

    今回の掌編は粒ぞろい。
    どれも甲乙つけがたいくらいよかった。

    人も怖いし、霊障も怖い、「炬燵の中」
    1年越しの解決編「夏至の日の客」

    個人的に吉原という場所は、
    現実と理想との折り合いをつける中で、
    日本人のグレーな感性が生み出した、
    同時代の世界で最も合理的で有意義なシステムだと思っている。
    美化して描くのはもちろん違うけれど、
    あまりに悪所の側面を強調する描き方も好きではない。
    ただこれは悪所としての吉原の側面の一つを悲しくもたくましく描きとった作品、「揚屋町の貸し物」

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    2025年10月28日
  • 柳は萌ゆる

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    幕末は南部盛岡藩の家老を務めた楢山佐渡の一生を描いた作品。不作により多発した一揆を抑えることを通し、民の暮らしを尊重することの大切さを学んだ青年期、戊辰戦争の折、奥羽越列藩同盟に参加し薩長主体の政治に反発した壮年期の大きく二部構成。何が正しいのかを問いかけ、美しい男の生き様に胸が熱くなります。

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    2025年09月29日
  • 国萌ゆる 小説 原敬

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     『柳は萌ゆる』から繋がる原敬の一生が描かれる本作は、若年期から死までを時系列に沿って丁寧に追っており、どこか吉村昭作品を思わせるようなリアリズムを感じさせる。賊軍とされた盛岡出身の原が、薩長閥に対する反発や複雑な感情を抱えつつも、国のトップへと上り詰めていく、その過程における原の心の動きが、この作品の大きな軸となっている。
     首相就任後も、原は護衛を嫌った。その姿勢には、先日読んだ『光陰の刃』の團琢磨の精神と通じ、国家と心中する覚悟がある。團は軍部の過激化によって暗殺されたが、原は民衆により暗殺された。この時代は民衆による爆破・放火・襲撃だらけ。当時の日本社会には、政治への不満が直接的な暴力

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    2025年05月19日
  • 大一揆

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    最高に面白い。歴史上、幕末にこんな奇跡があったとは。
    民衆の力の強さと、人間の汚さ狡さ、色んなことが詰まったストーリー。
    一揆にはこんな側面があるのかということを学ぶ。日本に民主主義が無いなんていうのは、大きな間違いなのかも知れない。こうした物語、歴史を知らなかったので、衝撃的である。
    社会課題のありのよう、綺麗事では済まない人間の心情のリアル、運動や動きの複雑さ、陥りがちな陥穽が描かれる。美しいだけの物語など無いということと、その混沌の中でどう動くのか、生きるのか。
    見栄や役得に動かされる心。辱めない、辱められない。敵であってもというところが大事なのかも。けど、心の奥底では、蔑むのが人。そこ

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    2024年04月27日
  • 賢治と妖精琥珀

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    宮澤賢治が琥珀争奪戦に巻き込まれる‼️
    銃器や争いには縁の無いような人が・・
    しかも樺太迄の旅の途中である
    面白かったですねぇ
    妖精が入った琥珀が賢治の元に来て、
    (さすが石っこ賢さんwww)
    もうひとつ片割れがあるという
    両方揃えば何が起きるのか
    軍の指揮官、祈祷師、イタコ、
    敵はラスプーチン!
    バトルを背景に、賢治の妹トシに対する死の悲しみや、それを吹っ切れない賢治の心情がある
    これドラマにならないかなw
    宮澤賢治って愛されてるなぁ
    私も好きです(人´∀`).☆.。.

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    2023年11月23日
  • 夢幻∞シリーズ 百夜・百鬼夜行帖108 金属の風車

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    百夜シリーズ108

    平谷美樹さんの本は買ったり、図書館で借りたりして読んでいます。
    夢幻♾️シリーズは電子書籍で購入しています。今回もさっと読めて、謎解きも楽しめました。
    次回も待ち遠しいです。

    #笑える #萌え #癒やされる

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    2023年06月24日
  • 草紙屋薬楽堂ふしぎ始末 唐紅色の約束

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    ネタバレ

    主人公達の過去に触れる今巻
    幕間には脇役たちの物語も充実していました
    旦那の墓前に参らない金魚の想い、無念の幽霊嫌いな理由、短右衛門の妻子、全てが事件と推理によって明かされていく手法が面白い

    ずっと貫兵衛さんが推しなんですが、やっぱりいい人です

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    2022年09月22日
  • 丑寅の鬼~ゴミソの鐵次 調伏覚書~

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    ネタバレ

    ゴミソの鐡次、三作目。

    敵役の惣助が江戸幕府の転覆を図るというのは、
    まあ予想通りだったが、
    鐡次が似たようなことを目的で江戸に来ていたとは、
    思っていなかった。
    津軽から大先達が江戸に現われ、最後には大海戦となる。

    一作目で登場していた雄の雉猫、萩の君の魂が
    想い人の花魁七瀧を守るべく、
    亡魂たちの前に飛び出したのには、ちょっと泣けた。

    鐡次が回向するために、
    長羽織に縫い付けていた端切れの霊魂たちが、
    鐡次の危機に力を使い果たし、
    白くなってしまったのにも。

    七瀧、膝枕にしてもらえて良かったね。
    これでとりあえず、終わりらしい。

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    2022年09月13日
  • 萩供養~ゴミソの鐵次 調伏覚書~

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    ネタバレ

    Tさんのお勧め。

    ゴミソという言葉を初めて知った。
    津軽言葉で占い師のことをいうが、
    有名な「イタコ」と違って女性でないこともあるらしい。
    占い師と言っても、憑き物祓いや亡霊退治が仕事のようだ。

    この本の主人公ゴミソの鐡次は、
    筮竹や天眼鏡を持ってはいるが、
    人間や場所から漂う気配が映像となって頭に浮かぶ。
    成仏させた者の着物の切れ端を縫い付けた長羽織を着ており、
    生涯をかけて弔っている。

    大店での女雛の行方不明や、
    長屋に出た鈴虫の謎、
    吉原で起こった萩の花の怪を解いていく。

    鈴虫の謎を解いたが長屋の住人に、
    悲惨な事実を知らせない優しさや、
    子猫の恋心に泣けた。

    同じ作者の「蘭学

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    2022年08月14日
  • 妖しい怪奇譚 実録怪談集

    購入済み

    事実に徹する

    体験に変な解釈をせず、あくまでも体験者が事実と信じる出来事を書くということに徹している。霊を信じる・信じないは個人の自由だが、体験者にとっては、それがどれだけ信じ難い現象であっても、体験したことが事実なのである。第三者が余計な解釈をするのは良くないというのが著者の態度で、その通りだと思う。

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    2022年08月07日
  • 柳は萌ゆる

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     幕末の盛岡藩奥羽越列藩同盟を主導した楢山佐渡の一生を描く。前半は盛岡藩の御家騒動を通じ、佐渡が‘武士だけの政治の限界’に気づいていく。後半は幕末の動乱に巻き込まれ決断を迫られていく。 
     帯に高橋克彦先生も絶賛、とある通り、非常に良質な歴史大作だった。終盤の戦争の場面は暗く陰鬱なシーンが続きなかなかページを捲る手が進まなかったが、最終盤は涙が止まらなかった。特に父帯刀と佐渡の最後の対面の場面は震えた。国を守るために命をかけているとどんなに理解しても血を分けた息子を目の前にすると我慢ができなくなる。常に冷静で闊達な帯刀だけに読者の涙をより誘う。
     幕末、劣勢にある佐幕派の中で盛岡藩は何故参戦し

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    2022年07月02日
  • 蘭学探偵 岩永淳庵 海坊主と河童

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    江戸時代だが科学!
    捜査する内容も面白い。
    文章もテンポが良く、科学的に説明される物事がとても興味深い。
    又の字と豆吉と、3人で行動しているときが、とても楽しい。続きも読もう。

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    2022年06月22日
  • 風の王国(10) 草原の風の如く

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    風の王国シリーズ。あまりにも壮大で、奇想天外なんで、本当に完結するのだろうか?と心配(?)だったけど、終わったら終わったで、さみしい。もっと続けて欲しかった。

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    2022年05月31日
  • 百物語 第九夜 実録怪談集

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    日常の怪異譚

    実話怪談集と言えどもこわい話ばかりではない。
    最後の「クボタ常務」のエピソードは、適度なユーモアがあり、ほっこりとした気分になる。作中の「クボタ常務」曰く、「あっちの世界でも同じような仕事をして忙しい」あの世でも仕事はするのである(笑)

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    2022年04月18日
  • 柳は萌ゆる

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    文庫化にあたり大幅に加筆したこともあり、非常に大作であり、また、丹念な調査の下、史実に忠実な良作であると思う。鳥羽伏見や大政奉還などの主流となる舞台に対し、その傍流として変化の流れに否応無しに巻き込まれる東北諸藩を会津や仙台を中心に描く作品が多かったと思うが、更にその傍流とも取れる南部藩を武士と民の両方に上手く視点当てていると思った。東北地方の幕末維新史として、あまりメジャーではないものの、語り継ぐべき激戦の史実は多くあり、その一つを描いた作品としても貴重なものと思う。

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    2022年04月16日
  • 義経暗殺

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    義経の死が自刃なのか他殺なのか捜査を進めていくがその捜査によってどんな人物で性格か分かるようになっているところがすごい。
    そしてラストも意外であり頼朝と義経の関係性も泣けるものがある。

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    2022年03月23日
  • 風の王国(7) 突欲死す

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    うぁぁ。読み終わってしまった。。。
    今まで、破竹の勢いで読んできたのに、なぜか読み進める速度がこの巻になって明らかにペースダウン。
    体調不良になったとかいかんともしがたい部分はあるけれど、他に気になることを始めたりして、明らかに意欲が落ちている。
    なぜか。
    サブタイトルで、結末が見えるから。
    そこではじめて、明秀の好敵手であった突欲を憎からず思っていたことに気づいたのでした。
    生まれが生まれだっただけで、悪いヤツじゃないやん、て同情もあったかもだけど、それでも。
    時代が時代なら賢王となったかもしれなくて、歴史的史実からの平谷さんの創作であるにも関わらず、このタイミングでの退場は、惜しくて仕方が

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    2020年06月28日
  • 風の王国(6) 隻腕の女帝

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    ひぃぃ。月理朶怖い!!
    サブタイトル、隻腕の女帝。なるほどな、と思う。

    遼陽城は取ったり取られたりを繰り返す。
    清瀬麻呂も、哀しい最期だったけど、もう、仕方ないよね。裏切り者の末路はこうなる、という教訓に。

    あまり出番はなかったけど、なんとなく好きな夕凪と亞都偉も出番が増えそうで少し嬉しいが、生き延びてほしいから、ちょっと複雑ではある。

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    2020年06月24日
  • 風の王国(4) 東日流府の台頭

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    明秀たち率いる東日流軍は、中国大陸は遼東に、東日流府を作ってしまった。
    契丹と渤海の漁夫の利ぽくもあるけれど、渤海国を救うための、渤海国軍師の策。話のわかるヤツはどこにでもいるのだね。

    明秀はしなやかで強く、須哩奴夷靺鞨ですら、敵の敵は味方、とばかりだ。

    一方、契丹の皇太子突欲にも事情はある。
    敵役が悪いだけの存在でないところに、ラノベとは違う深みがあると思う。

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    2020年06月13日