平谷美樹のレビュー一覧
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唐紅色の約束、か。
なるほど。
おけいちゃんは現在で言えば、生きにくさを抱えた子なのかもしれないな。
金魚という友だちを得たことで少しでも救いになってくれたらいい。
そして無念の幽霊嫌いの原因が明らかに。
七年もの間、よく耐えたね。
「自分だけが生き残ってしまった」という後悔がそうさせてしまったのかもしれないし、本能寺無念というペンネームにも、その気持ちが現れているのかも。
ともかく、少しずつその傷が癒えればいいなぁ。
今巻は、松吉と竹吉の薮入りを描いた短編「薮入り」、勘兵衛とかつての愛弟子との淡い懸想「名月を杯に映して」、真葛が著した『独考』をどうにか本にしようとがんばる長右衛門のスピン -
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久しぶりに、面白い物語に出会えた気がします!
手にしたきっかけは、高田郁さんの推薦文のかかれた帯。平谷美樹さんは、はじめましての作家さんです。
戯作者志願の金魚(きんとと)と、戯作で食べていくのがおっつかっつの、けっこうイケメン本能寺無念のいいコンビが、江戸で起こる不思議を気持ちよく解決していきます。
あと、元御庭乃者(忍びとして情報収集をしていた)北野貫兵衛がいい仕事してます。このご仁もけっこう好きかも。とにかく主要人物のキャラがどれもいいです。
金魚の過去には苦しくなるけれど、それを蹴り飛ばすほどの賢さや洞察力の鋭さとさばさばした性格が、とても好ましく、すべてを応援したくなります。
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ネタバレ著者の主な執筆ジャンルは「SF」である。だが著者は同時に「視える」人でもある。
これは、著者が三十年あまりにわたって体験したり蒐集したりした怪奇譚を、嘘偽りなく本当に百話収録した実話怪談集である……。
このシリーズも大好きです。「視える」人でありながら怪異を受け入れつつも、本来SF畑である人間らしく、怪異に合理的な説明をつけようと試みる話もあります。
中には本当に怪異ではなく、現代科学で解決できた怪異譚もあり、その時は井上円了先生の「お化け談義」を思い出しました。
しかしそうした誤解や勘違いも、体験者自身からすれば正しく怪談なわけで、やはり怪談は主観的な恐怖を前面に出さなければ怪談 -
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ネタバレ毎年刊行されているシリーズの最新作である。筆者の在地が岩手県ということもあり、今巻にはあの「東日本大震災」前後に起きた不可解な出来事も収録されている。
まだ震災の傷が癒えきらないこの時期にそんな話を出版するのは不謹慎だ。そう主張する方もいるかもしれない。
だが以前にも紹介した、稲川淳二さんが語った戦争に関わる怪談と同様、多くの人々が亡くなった事象に関わる怪談というものは、一般的な怪談のそれとは大きく異なる。
単に読者を怖がらせるものほど、「創り」であることがほとんどだ。本物の戦争や震災に関わる怪談は、恐怖を抱かせるものはほとんどない。むしろ生存した方々、亡くなった方々双方への「鎮魂慰撫 -
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幕末の東堂藩の若待の時代に翻済される姿を描く。佐幕、新政府派に分かれた三人。重蔵が早々に討ち死にする展開には正直驚いた。
だが、本作の本質は戦後の新時代との向き合い方を丁寧に描く点にある。隼人は重蔵を死に追いやったことで佐幕の意思を失い、町人たちと過ごしながらも左馬之介に討たれることを潜在的に望む。左馬之介も本意に逆らいながら隼人を打つことを生きがいとしている。武士というのは実にからっぽだと思わずにいられない。現代の政治家もそうかもしれないが権力を失うとただの役立たずになる。そこに「誇り」が加わると、余計に普通の生き方をするにも時間がかかる。互いに思い人が出来、夫婦としての夢を描くことがで