あらすじ
知られざる
もう一つの戊辰戦争!
東北・盛岡藩から見える維新の真実――
高橋克彦氏(作家)絶賛の歴史巨編!
単行本から大幅加筆の大増補版
明治維新の裏側にこういう傑物がいた。そしてこれからは生まれない美しい魂だ。
最後の章でだれしもが号泣し、美しい生き様に羨ましささえ覚えるだろう――高橋克彦(作家)
真の維新とは何か――若き藩家老の決断は!?
幕末、盛岡藩内で貧困と重税に反発し、一揆を起こす百姓たち。そして、その要求を簡単に反故にする藩の重臣。若き藩士・楢山茂太(後の佐渡)は「百姓による世直し」を夢見、家老となってからも、新しい世の政の実現を志す。しかし、維新の混乱の中、奥羽越列藩同盟に属した盛岡藩は新政府軍と対決の時を迎える――。
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Posted by ブクログ
幕末は南部盛岡藩の家老を務めた楢山佐渡の一生を描いた作品。不作により多発した一揆を抑えることを通し、民の暮らしを尊重することの大切さを学んだ青年期、戊辰戦争の折、奥羽越列藩同盟に参加し薩長主体の政治に反発した壮年期の大きく二部構成。何が正しいのかを問いかけ、美しい男の生き様に胸が熱くなります。
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幕末の盛岡藩奥羽越列藩同盟を主導した楢山佐渡の一生を描く。前半は盛岡藩の御家騒動を通じ、佐渡が‘武士だけの政治の限界’に気づいていく。後半は幕末の動乱に巻き込まれ決断を迫られていく。
帯に高橋克彦先生も絶賛、とある通り、非常に良質な歴史大作だった。終盤の戦争の場面は暗く陰鬱なシーンが続きなかなかページを捲る手が進まなかったが、最終盤は涙が止まらなかった。特に父帯刀と佐渡の最後の対面の場面は震えた。国を守るために命をかけているとどんなに理解しても血を分けた息子を目の前にすると我慢ができなくなる。常に冷静で闊達な帯刀だけに読者の涙をより誘う。
幕末、劣勢にある佐幕派の中で盛岡藩は何故参戦したのか。仮に負けたとしても薩長の理不尽な政治・やり方に反発した人がいるということを「国」に訴えかけたかったというのは綺麗事だが納得でき、そして非常に良い格好良い。高橋先生の『天を衝く』で豊臣秀吉に対して最後まで対抗した九戸政実に近いものを感じた。己の利益のみならず他を活かすために立ち上がる姿は実に格好良い。
それにしてもつくづく東北という土地は歴史的に苦渋を味って来たなと思う。古代・阿弖流爲の時代から前九年・後三年、頼朝の奥州討伐、秀吉の奥州統一、戊辰戦争、東日本大地震。それでもどの時代にも熱く人のために命を懸けてきた人がいたというのは九州人の私をも惹きつける理由。
今回所々で登場した原健次郎。彼が佐渡の意思を引き継いで日本のトップまで登り詰める。原に対して佐渡は「今日も柳は萌えていますな」という、このシーンが最後の涙を誘うとともに佐渡が安心して死に向かうことができた一要因だったのだと思う。
辞世の句 花は咲く 柳は萌ゆる 春の夜に
うつらぬものは 武士の道
この解釈を武士の自負ではなく、厭世の句と読んだことが作者の本作の原点だそう。作品の最後にこの句を読むと確かにそう見えてくる。農民も参画できる政治体制に奮闘した佐渡の心の声を表している。