迂闊にも泣きそうになりました 僕は23歳の新社会人です。この本はタイトルに惹かれて購入しました。読んでいて非常に癒される本です。それは文字が手書きだからかもしれません。わざとなのかしりませんが、適度な汚さがとてもよいです。その下手な字が心にゆっくりと染み入るようです。ほんとに。タイプで打たれた活字にはこのように気を許せませんから。僕が迂闊にも泣きそうになったのは、46ページにある表題と同じタイトルの詩「こんなに長い幸福の不在」を読んだときです。この詩の主人公は、ずっと自分自身の不幸に耐えながら、それでも幸福がくる瞬間を信じています。その姿がいじらしい。信じているということは、いまだ幸福が到来していないということで、その悲しさが心を打ちました。とても悲しい。気に入らないところは、後半、この詩集の主人公と想定されている人物(一人ではないかもしれないが)がいくつか恋をしているところです(笑)。純粋な恋にあこがれます。しかし、「僕」を主語にした詩が続くなか、主語のない愛情の吐露が数行あります。「すき、すき、すき...」でも、相手と思われる人物に対し、その主語のない文章は、「わかってないんだなぁ」と、いいます。僕はこの主語のない文章を、「僕」を見ている女性が書いたと解釈しました。そうすると、とても幸せな気分になります。「僕」のことをすっごく好きな人がいるという気分になるからです。いつのまにか、僕は、詩集の中の「僕」と、現実の僕(今、この文章を書いている僕^^)を同一視していました。
とても、やさしくて、清らかでお勧めな本です。銀色夏生さんの文章は、すごく、みずみずしくてやさしいです。この詩集を情景にたとえると、雨がやんだばかりの草原で、葉っぱの上から滑り落ちる無数のしずくだと思います。