古市憲寿のレビュー一覧
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「他人の心がわからないというのは、人間に与えられた一番の贈り物かも知れないな(P193)」
戦時下の日本を描いた古市憲寿さんによる恋愛長編小説。古市さんの小説は全部読んでいて、これまではサブカルネタ満載の現代小説だったが、今作はサブカルネタは封印。戦時下の少年と少女の恋模様を描いた作品だが、ストーリが滅茶苦茶練られていて、最初と最後が美しく繋がっている。読んでいくうちに戦時下は今のコロナ禍になんとなく似ていると気付いた(だからあえてこのタイミングで出したのかな?)。これまでの古市さんの作品とは全く違うが、個人的には一番好き、なんか直木賞あたり取りそうな感じ。 -
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大きな波があるわけではないけれど、雰囲気がとても好きだなぁと。ああ、尊い。
ゆったりと進んでいくふたりの押し付け合っていない愛が私は好きだなぁと思った。その気持ちが自分を変化させてくれたのかな。そうだといいな。
恋愛だけでなく、ひとに対する想いをこんなふうに考えられるのは素敵。こんなふうにひとと接して、割り切りつつも寄り添っていけたらいいよね。
素敵な言葉がたくさんあった。
ある意味おままごとのようなかわいさとピュアさとまっすぐさがあるのに、心のどこかでシビアな現実も受け入れて、だからこそ今この瞬間勇気を持って素直に接する姿が尊い…。なんだよもう、幸せでいてくれよ。
あとご飯が美味しそう -
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ネタバレ『好きって感情は魔物だからな。手懐け方を覚えておいて損はないぞ』
『学校で習うことなんて、常識が変われば役立たなくなるんだから。あらゆる知識は相対的なものだと思っておいたほうがいい』
『誰かの間違いを見つけて揶揄したり、糾弾するのは、とても簡単なのに気持ちいいの。知識なんて暗記さえすれば誰でも身につくでしょう。創造的才能のない人ほど、生半可な知識を楯に他人を批判する』
『幸福だから笑うわけではない。むしろ笑うから幸福なのだ』
『人間とは徹底的に好意に弱い、極めて単純な生き物』
『自分の思想を再確認して安心するような本を百冊読むよりも、常識を揺るがしてくれる本と一冊でも出会えたほうが価値がある』 -
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週刊新潮の連載『誰の味方でもありません』の書籍化第二弾。
2018年から2020年のものなので、時代を振り返ることもできる一冊。
コロナ禍になる前、こんなことで日本は賑わってたんだなぁと、なんだか随分昔のように感じました。
ちなみに、この写真は蜷川実花さんが撮られたそうで。
前のもよかったけど、これは爽やかさが増してとても素敵ですね。
本屋さんで思わず見惚れてしまいました。
当時の連載すべてに後日談が加筆されているので、週刊新潮で拝読済でも楽しめます。
こういう新たな楽しみを作ってくださることに毎回感謝。
古市さんご自身が、当時をどう振り返られるのか興味深く読みました。
こんな世の中を -
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p.196
ほとんどの成功者は、時代に輝かせてもらっているに過ぎない。
時代と共に歩けなくなった時点で、人はどんどん曇り霞んでいく。
p.198
悪い予感ばかりが当たるのは、そもそも未来に期待してないから。
本当に小さくてもいいから、いいことばかりを思い浮かべてみる。
p.209
同じ才能を持っている二人がいたら、勇気があるほうが勝つに決まっている。
勇気がない人は、才能を発揮することなく人生を終えていく
p.242
誤解とは大前提である。
あらゆる関係には、誤解や思い違いやすれ違いが含まれている。
その中で、誤解を解こうとする過程にこそに意味があるのではないか。
完璧に理解し合うことが -
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社会人もそうですが、今まさに日本史の授業を受けている学生にこそ読んでみてほしいと思う内容でした。
『できるだけ固有名詞に頼らずに、引いた視点で、巨視的に日本の歴史を把握したい。まるで神様のような目線で、この国の歴史を描いてみたいと思った』(まえがきより引用)
筆者は第1部通史編、第2部テーマ史編と2部構成で日本の歴史について紐解いていきます。
特に第2部では、年代、文化、時代ではなくテーマに沿って話が進みます。「土地と所有の日本史」「家族と男女の日本史」は最近の話題にも通じるものであり、非常に興味深く読みました。
『歴史とはつまるところ、証拠と推論の組み合わせによって織りなされる叙述で