あらすじ
社会学者・古市憲寿、初小説。
安楽死が合法化された現代日本のパラレルワールドを舞台に、平成という時代と、いまを生きることの意味を問い直す、意欲作!
平成を象徴する人物としてメディアに取り上げられ、現代的な生活を送る「平成くん」は合理的でクール、性的な接触を好まない。だがある日突然、平成の終わりと共に安楽死をしたいと恋人の愛に告げる。
愛はそれを受け入れられないまま、二人は日常の営みを通して、いまの時代に生きていること、死ぬことの意味を問い直していく。
なぜ平成くんは死にたいと思ったのか。そして、時代の終わりと共に、平成くんが出した答えとは――。
『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』などで若者の視点から現代日本について考えてきた著者が、軽やかに、鋭く「平成」を抉る!
※この電子書籍は2018年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
最愛の人に死にたいと言われたらどう答えるだろう。
肯定するのか否定するのか…。
何度もくる問いかけに私は最後まで答えを見つける事はできなかった。
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平成くんを理解したい、でも納得したくない。安楽死という選択肢があるということは理解できても、やっぱり並んで歩きたいと思ってしまう。スマートスピーカーのコンセントを抜いた時の愛ちゃんの気持ちを考えると切ない。そしてセックス描写で泣いたのははじめてだった。注釈があることでよりリアルな出来事のような感じた。
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とても固有名詞が多くて、変にリアリティのある世界観での安楽死合法の世界線。人との関わりで自分が形成されていくんだなと感じた本でした。私個人としては、平成くんはきっと安楽死を選択するんだろうなと思った。きっとそれは愛ちゃんがスマートスピーカーのコンセントを抜いたときと平成くんが安楽死を選択したのが同じくらいのタイミングなのかな。きっとスマートスピーカーの、
「いいよ。愛ちゃんの人生なんだから」
は、平成くんのリアルタイムの言葉なんだろうなって。
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久しぶりに大当たりを引いた。
安楽死というテーマが世の中の議題にあがり、肯定派の意見を聞く度に不安になってたことがドンピシャで描かれていたり、死にたいと言われたときに感じたモヤモヤした気持ちとかが作中にも出てきたから色々と重なって感情移入がしやすかった。
死にたい人と死にかけの猫とどちらにも(死んで欲しくない)と願い自己中心的に死に抗う主人公。誰も間違ってなくて正しくもなくて、どうしもうもなく胸が締め付けられた。
また読むと誓った。
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平成くんの、どこまでも論理的で聡明なのに垣間見える人間らしさとか不器用なところがすごくもどかしいと同時に愛おしかった
人は図らずも、誰かが生きていた記憶を背負ってしまうことがある。本当にそうだと思った
そして安楽死については、少しでも華のあるうちに穏やかに逝きたいという気持ちはすごく分かるけれどそれでは優生思想につながってしまうし、やっぱり難しいなと思った
フィクションとノンフィクションの境が時々分からなくなったけどその曖昧さがまた良かったのかな
Posted by ブクログ
悲しくて愛しくて涙がどんどん溢れた
誰かは違う気持ちを持つかもしれないけど、私にとってこの物語はずっと心に残る作品だと思う。
平成くん、愛ちゃん、ミライ、またあの39階でずっとそのまま。またね
Posted by ブクログ
安楽死が合法化された日本を舞台とした社会派恋愛小説というべき物語。
読者視点となる愛に対して、彼氏である平成くんが安楽死したい旨を伝える場面から物語はスタートする。
タイトルにもなっている平成くんは明らかに著者本人を投影している。著者本人への勝手な先入観もあり、中盤まではいけ好かない奴だなという印象だったが、物語が進むにつれて平成くんは隠しきれない人間味とサイコパス感が同居していく。
物語としては愛視点で淡々と進んでいくが、彼の安楽死を望む理由や平成くんらによる安楽死の現場への取材、彼らの大切な家族との別れを通して読者に生死感を考えさせる内容となっている。
一部感情移入できる場面もあるが、終始彼らのブルジョアな生活を見せられることもあり、大きく感情を動かされることはない。ただし著者の性格的なところも大いに関係していると思うが、登場人物の言動による感情の機微を巧みに表現している。
しかしやはり平成くんはいけ好かない奴ではある。
Posted by ブクログ
安楽死が合法化された日本での話。メディアで平成を代表する人物として注目される、平成(ひとなり)くん。彼は平成が終わるときに安楽死を希望。パートナーの愛は受け入れられず日々説得し最終的には受け入れる。
考え方は様々だが、平成くんが愛の飼い猫が死にそうで苦しむのを見て勝手に安楽死させ骨にしてしまう、という所はびっくりした。予想の斜め上どころか思いもしなかった。そんな彼は自分をAI化、という驚く結末。現在の海外での安楽死の実施条件や手続きよりカジュアルで、そんな時代が来るのかなとぼんやり感じた。
Posted by ブクログ
安楽死が合法化された現代日本。同じ名前で、メディアで平成を代表する人物として注目される「平成(ひとなり)くん」。彼は平成の終わりとともに安楽死をしたいと恋人・愛に告げる。どうすれば平成くんの考え受け入れる事ができるのか、愛は悩みながら二人の最後の日々を過ごす事に。
安楽死の合法化が主テーマとしてあり、加えて「自分の死」に対する周りの感じ方、自分の存在意義を考えさせられました。どんな人にも大事に思ってくれる人がいる一方で、安楽死を望む当人にしか分からない苦しみがあることを上手く表現したお話だと思います。
Posted by ブクログ
物語の終盤まで何故平成くんが安楽死を望んでいるのかわからず、賢いがゆえに私には理解できない次元の思想なのか…?などと感じていたが、明かされた理由ですべてが腑に落ちたというか…同じ立場なら自分でも安楽死を選択したかもしれない、と思った。
最後は読んでいてどうしようもなく寂しくなり、気が付いたら涙をぼろぼろ流してしまっていた。
次作も読んでみようと思う。
Posted by ブクログ
芥川賞候補作品が意外とポップで面白かった。
読んでみた感想として感じたことを書きます。登場人物の生死感と性に対する考え方って似てるのかなって感じました。没頭でセックストイの話から始まるなかなかない話だったのでそう思ったのですが、もし安楽死の対義語があるならセックス(性行為)なのかもしれないですね。
セックスをしたい女性、安楽死を望む男性、この対比が本を読む上で紡がれる生死感の訴えが読者に優しく問いかけてる感じがポップでマイルドに描かれてる気がします。文学作品として文章よりも内容で考えられる話だと思います。
またタイトルにもある平成という時代が懐かしく感じられます、生きて来た時代のはずなのにとても不思議な感覚でした。令和に読む価値がある作品にもなっていると思います。
Posted by ブクログ
5/2
始まり方から度肝を抜かれました。
あ、苦手なやつかも…と。
だけど、読み進めたら安楽死をテーマに男女が対話を繰り広げる物語でした。
どんなに仲がいい親友でも、
どんなに大好きな恋人でも、
相手の死生観って妙に腹落ちしないと感じます。
Posted by ブクログ
だんだーんと温かくなる、そんなお話だった。
「平成くん」という名前も話に味が出て良かったな〜。
「安楽死」とか「価値観の違い」がテーマに感じた。
「ねえ愛ちゃん」「ねえ平成くん」という言葉が心に残っていて、「ねえ」って声をかけられる距離がとても幸せな日常なんだな〜って思った。
Posted by ブクログ
死にたい理由の不確かさと死んでほしくないという確かな思いが釣り合うという不思議な関係が切なくもどかしい気持ちにさせてくれた。
安楽死が実現し、死ぬことへのハードルが下がったら私たちの希死念慮や自殺願望はこのように変容するのだろうか?
設定では現実とのパラレルワールドという設定ではあるがところどころで現実とリンクしているところがあり「平成が終わる」ということ自体、実際に現実では起こっている。それが作品に奇妙なリアリティを与えていて、過去の私があのことをしていた時平成くんは他の世界でこのような生き方をしていたんだと思い出の中に紐付けることが出来るのは良いなと感じた。この作品のような結果を有耶無耶にする終わり方は好き。
Posted by ブクログ
私は死生観について他の人と話すと、たいてい噛み合わなくなるので、なるべく話さないようにしている。平成くんと愛ちゃんも、ミライが死ぬ時どうするかという事一つとっても、考えが違っていて、ピッタリくることはない。正解がない(分からない)ことなので、難しいよね。安楽死についても、様々な意見があるの分かるし、じゃあどうしたらいいのかって、何とも言えないなぁ〜。ただ、平成くんと愛ちゃんの幸せがずっと続くといいなぁと願ってた☆
Posted by ブクログ
Uber、アンダーズ東京、マークジェイコブス、フィオレンティーナのケーキ、性的な描写も出てくるものも(お金持ちではあるが)意図的に執拗に上流の平成らしい価値観を書いているように思う。リメンバーミーや君の名は。がサラッと会話の中で前提として出てくるあたりがリアリティがある。一方で安楽死が合法化された未来、平成くんの最後などが日本で実現可能になりそうな科学技術でSFチックで、平成のリアリティさとうまく融合して書いているなと思った。よくも悪くも著者をテレビでよく知っているからわざとらしさが目についてしまうけど、現代社会批判に偏ることなく、口先では理路整然と言ってても結局は自分の五感で感覚的に生きてる素直でずぼらな平成くんの描かれ方よくて、読後感も悪くない、読んでよかったなと思った。
Posted by ブクログ
安楽死が合法化された現代日本というパラレルワールドが舞台。
描写がリアルで引き込まれました。
これまで安楽死を身近に考えたことはなかったけど、平成くんや愛を通してもしもの世界を体験しました。
他人の物事について、本人の意思を尊重するというのは当たり前のことのようでありながら、死が関わるとこんなにも難しいものなのですね。
Posted by ブクログ
寝る前に少し軽めの本を読み始めよう〜と思ったら、ものの2、3時間で最後まで読み切ってしまった…
初めは「最近よくある軽い風の書き方でちょっと嫌だなあ」「また自殺願望の話かあ」とか「でも手法はかなり面白いなあ」とか考えてたけど、読み終わった頃にはしっかり心に傷がついてボロボロ泣いておりました。
Posted by ブクログ
登場人物は古市さんをイメージして読んでいただけに。
平成くんの「合理的な人間だと思っていたけど、実は愛ちゃんと無駄話をするような時間が、とてつもなく大事だってわかった」という一言がたまらなかった。
Posted by ブクログ
本屋さんで、なんとなくタイトルを聞いたことがあるなと思い、手に取った。
冒頭が刺激的過ぎて、ちょっと動揺。
え、どういう話なの、これ。
しかもたまにTVで見かける古市さんじゃないか。
小説書いてたの?
しかも芥川賞候補作??
というわけで色々気になり、購入に至った本。
読み終わった感想は、色んな感情が残ったけど、やっぱり面白かった!というのが一番かな。
設定も面白い。安楽死が認められているパラレルワールドの日本。変な言い方だけど、現実的っぽくて面白い。
文章も新しいと思う。形容詞が少なく、固有名詞だらけ。人によっては拒否反応を示す人もいると思うけど、テスト的に敢えて使ってみたんじゃないかな、古市さん。私は新鮮に感じて、逆に光景がまざまざと頭に浮かんで、まるでドラマを見ているような感覚で、とても面白い手法だと思った。
結局、平成くんは、終わった人間になりたくなかったというよりは、愛ちゃんの永遠になりたかったのかもしれない。
生きてるんだか、死んでるんだかわからないなんて、私なら一生気になって忘れられない人になると思う。
古市さん、面白かったですよ!
次作も楽しみにしてます!
Posted by ブクログ
時代の中で話題になったものも書いてあって、リアルさがあった。安楽死をする側(選ぶ側)とそれを間近で経験する側の気持ちをそれぞれ考えながら読んでいた。どちらにしても正解なようで、間違いはなくて。最早、正解はどれかなんて考えることすら違うんだろうな。読むタイミングによって感じ方が変わりそうな本だった。
Posted by ブクログ
平成という名の、ヒトナリ君と愛ちゃんの主に2人の物語。彼はなぜか平成が終わるとともに自分も終えようとする。
彼の必要最低限で理論的な性格と、彼女の感情的でまっすぐな性格がパズルの隣同士を感じさせる。
現代を表したかのような小説であるとともに、近未来さを感じさせる小説だった。
Posted by ブクログ
芥川賞候補作、ということで。
そうではないだろうけど結構ご本人とリンクする部分が多く感じられて、いちいち鼻につく(悪い意味では無く)
若きブルジョア層のスマートな生活感の無い日常に沿って進む安楽死制度というテーマは、割とストーリーには馴染んでいたように思うが、自分の生き死にを他人事のように捉えて履行する・しないってやりとりは、今必死に生きる人たちを思うと、所詮他愛もない絵空事・戯言の類だろうなと思う。
今後起こるだろう重要なテーマに踏み込んでいる気がするものの、どうにも登場人物たちに良い印象が持てず、終始「だからどうしたっての」というような投げやりな感想ばかりわいた(悪い意味では無く!)
いかにも、芥川賞の候補になりそうな雰囲気だなと思った。
Posted by ブクログ
平成くんはその名の通り、平成生まれ。
平成が終わろうとしているとき、同棲している恋人の愛に、安楽死しようと思うと伝える。
安楽死が認められるようになり、制限はあるものの自分で死ぬ権利も持てるようになった世の中。
苦しみの中で、生を断ち切りたいと思う人がいる一方、死へと周囲からの圧で追いやられる人もいて。
本当に死を求めているのか、一時的な考えから死にたいのか、その線引きの難しさを思う。
いつか日本も、安楽死が認められる日が来るのだろうか。
Posted by ブクログ
文章が好き ◯
作品全体の雰囲気が好き ◯
内容結末に納得がいった ◯
また読みたい
その他
生と性と死のワードがないまぜになって話が進む。
頭の良すぎる天才の、始末のお話。
物語のラスト、愛と「平成くん」のかみ合わない会話がとても切ない。
物語上安楽死が合法化している設定。
いかにも現実的にありそうな事例としてその場面が表現されているので、少し混乱してしまった。
登場人物のセレブな生活が現実離れしているのも相まって、ありそうで無さそうな、「ファンタジー」。
時々出てくるワードが、実際に存在するモノなので、リアルな世界を描いているんじゃないかと思ってしまう。
Posted by ブクログ
やたら固有名詞が多くて、君津ファンタジーキャッスルとか、若者の主張とか、思わず調べてしまった。安楽死も認められたのかとつい勘違いしてしまうほどに妙にリアルだった。
それを狙っての固有名詞の連発だったのか?
なんだか金持ちの生活をチラリと見せつけてられただけのような気もするけど、きちんと「安楽死」というテーマに目を向けると、切なく苦しい。
大事な好きな人からGoogleホームのようなスピーカーをもらい、相手が生きてるか死んでるのかもわからない状態とはかなりキツい。
でもある意味、見たくないことに背を向けて希望に縋ることもできる。
どちらにしろ、残酷なことだと私は思った。