あらすじ
社会学は役に立つのか? 社会学は誰のためにあるのか? 社会学者には今、何ができるのか? 気鋭の若手社会学者・古市憲寿のあらためての問いに、日本を代表する12人の社会学者がそれぞれの専門分野から熱く答える。社会学の面白さや難しさ、社会学が与えてくる「ものの見方」を学ぶ、新たな入門書。小熊英二、佐藤俊樹、上野千鶴子、仁平典宏、宮台真司、大澤真幸、山田昌弘、鈴木謙介、橋爪大三郎、吉川徹、本田由紀、開沼博。
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Posted by ブクログ
社会学の見解は社会学者によっても異なる。
そのくらい範囲の広い学問。
日常をテーマにしたエッセイや物語が好きでそこに潜む日本文化やノスタルジックさに自分はいつも感動する。時代が変われば社会が変わるように世の中の風潮に適用させながら私たちは歳を取るが、一方で伝統的な文化も残り続けている。その理由は背中をみてきた親や身近な人から直接的に教わりメディアや新聞などで間接的に知ったからだろう。文化はまちを存続させるもの、つまりコミュニティ(つながり)としての共通理解になっている。繰り返しになるが自分は懐かしさが好きでたまに遭遇するあの何とも言えない心の揺らぐ感覚が好き。こういう抽象度の高い主観についても社会学で解明できそうと本書における各学者の論を見て感じる。
社会学の目的についてある学者が言っていた「辛さに耐える力をつけること格差や貧困、ジェンダーなどの問題と対峙していい社会を考えていくこと。」が本書の中で特に印象に残っている言葉だ。これを踏まえて私がノスタルジックに思いを馳せるのはそうじゃない今に何か異和を感じていることからのカウンター心理なのかなとふと思った。現代はもちろんいいこともあるけれどみんなで喋る場が喪失していっているとか諸々少しもどかしい気持ちがしている。また本書のおかげで開沼さんの「はじめての福島学」を読むこともできた。
あらゆる社会を紐解く学者さんの見解は面白くもし大学に入り直せるのならこの本を読んでから進路選択をしたかったなと。
Posted by ブクログ
社会学とは?そもそも社会とは?という問いに社会学者が持論を展開していく。
自分の経験でしか見れない,語れない社会をどのように見ているかを知れるのが面白い。
宮台真司さん,橋爪大三郎さん,本田由紀さんの内容が個人的に気に入った。
Posted by ブクログ
日本を代表する12名の社会学者との対談。
社会学って何ですか?の問いにそれぞれ答えて自らの視点、他の社会学者との違いや古市氏の立ち位置なども織り交ぜた多様な内容。
社会学にも理論社会学、宗教社会学、計量社会学、教育社会学などがあるらしい。
気になる方の著書を少しずつ読んでいきたい。
覚書
ここにはない可能性に対して「ムラムラ」してしまうことと、日常生活の小さな人間関係の「ムラムラ(村々)」のなかで安心していたいという、その両義性に引き裂かれている
自分の居心地のいい共同体と文体が手を結びすぎているためにそれとは異なる方向で常識外しをしようとすると文体が過剰に鋭くなってしまう
嫌がらせは大事 注目を浴びるだけでなく反発を引き出せばそこから自分の意見を展開できる
社会学は生きている人間が必ず持つ関心に応じている 学界の中で素晴らしい評価を得ることとそれが広い社会的なコンテキストの中でそれなりの意味のあるものとして発信されることが車の両輪のようになってなくちゃいけない
社会学は生きるのが不器用な人のための学問
考え続けることによって自由になる 乗り越えていく
戦後日本型循環モデル 仕事⇒家族⇒教育⇒仕事・・・
社会という茫漠としたものを少しずつわかりやすく編集して、見取り図を作りたい。その過程での発見はいつもワクワクします。
Posted by ブクログ
社会学とは何か?という問いが、社会をどう捉えられるか?どという個人的な興味・テーマにハマって面白かった。
どんな社会で生まれ育ったからその人間が生まれたのか?→育てたい人間(子供)を育てるためにはどのような社会(学校)をつくるべきか、という地方創生・教育の観点に置き換えて読み進めた
Posted by ブクログ
読みやすくて、社会学の導入としてとてもよい本だと思いました!
いやあ、いろんなことをたくさん知りたくなります。
切り口は無限にあるけれど、社会学という名をベースに知識吸収していったら少しは世の中を俯瞰できそうな、そんな魅力がこの分野にはありますね。
少なからず、俯瞰は安心につながる気がする。
歳を重ねるごとに社会学という響きにアンテナがたつようになってきたのはそんな思いからだと思います。
気持ちが昂る!この感覚を大事にしたい。
Posted by ブクログ
「社会学」を社会学する、という感じ。
久々の古市くん本。 いやぁ、同世代の社会学「者」でどんどん大物になっていってはるんやなぁ〜。
橋爪大三郎さんや上野千鶴子さん、宮台真司さんと、ビックネームがズラッと並んでた。
この本では、「社会学とは?」「社会とは?」をいろんな社会学者に問いかけに行くことで、この曖昧そうな言葉の輪郭を浮き彫りにしていこうとしていた。
また、「「あり得たかもしれない社会や自分を構想する力」に魅力を感じている」。というのは、何かすごく共感してしまった。
僕もひょんな理由からやったけど、大学で社会学を選んで未だによかったなぁと社会人になっても思い続けてるし、年齢を重ねるごとにその大切さが少しわかるようになって来てる気がする。
そんな時に、もう一度原点に戻り、じっくり社会学や考え方を考える機会をもらえたような気がした。
これからも折に触れてペラペラめくる教科書のような感じになりそうな一冊。
本当に変わってる人の集まりや、職人気質っぽい人が多いなと思っていた直感はどうやらあっていたようでした。笑
でも、それが本当にいいことやし、この変わり者の集まりがそれこそ役所仕事する人ばっかりみたいになれば、社会学が本当に終わったことを意味しているんやなとも思った。
僕も今日から「社会学者」と名乗れるかしら。笑
Posted by ブクログ
一部、難解なところがあったが、割と読みやすかったな。
読んでみたい著者が増えた。開沼博、本田由紀、山田昌宏などなど
ダイアローグ大事なんですね。
Posted by ブクログ
読み応えあり。対談相手の先生方の著書も読みたくなります。
古市さんはインタビュアーとしてかなり上手です。
耳の痛いことを言われてもちゃんと載せてるところも偉いと思いました。
Posted by ブクログ
社会学という学問があることすら知らなかった。社会の現象を言語化することとか、別の社会の可能性を考えるたりするなど、社会学は自分が今の社会で生きて行くために、力になりそうだと思った。
Posted by ブクログ
社会学とは何か、を対話の中で探っていく
この営み自体が社会学なんじゃ?
個人の体験と学問が密接に関わっているのが社会学の面白いところ
社会学を研究する上で大切なことは、古典を読むことと自分の関心を知ること
Posted by ブクログ
「社会学とは、なんですか」と聞かれたら、みなさんはどんな答えを出すでしょうか
テレビでも活躍中の社会学者である古市憲寿さんが、12人の社会学者達と対談をしながら研究者たちにとっての社会学観を探っていく1冊。大澤真幸さん・上野千鶴子さんをはじめとして、代表的な社会学者達がどんな考えを持っているのかが、非常に分かりやすく述べられています。
さて、社会学ってなんだか遠い存在だと思っている人もいるのではないでしょうか
社会学者たちが浸透させた言葉や考え方の中には、みなさんにとって身近になっているものもあります。例えば「婚活」という言葉は、社会学者山田昌弘さんが提案して社会に浸透した言葉です。
この本を読むことで、自分にとっての「社会学」の位置づけが構築される1冊です。ちなみに、私は大澤真幸さんの「社会学を勉強すると、自分が直感的に押さえていたことを、概念を使って、精密に複雑に説明できるようになるんです」という言葉に、非常に納得させられました。
この本を通して、自分なりの「社会学」を見つけて下さい。
Posted by ブクログ
「社会学者」の肩書きで活躍するが批判も多い古市憲寿氏が、「社会学って何ですか?」と日本を代表する様々な社会学者に聞きに行くという趣旨の本。
話を聞きに行く社会学者は、小熊英二氏、上野千鶴子氏、宮台真司氏、大澤真幸氏、橋爪大三郎氏など錚々たる面々で、まさに日本を代表する社会学者たちである。それぞれに話は非常に面白く、本書の意図どおり社会学の魅力を感じることができた。
また、題名のとおりに、各社会学者から古市氏に対して辛辣な「指導」があるのも見どころであり、面白く読めた。一方で、古市氏には、聞き手としての才能があるな、とは感じた。
Posted by ブクログ
わかったようでわからない学問分野のひとつ、「社会学」が、何を勉強する分野なのかがよくわかります。
経済学、法律学、経営学のあたりはなにを勉強するかなんとなく想像ができます。
社会を学ぶ、と言われると、何を勉強したって社会勉強でしょ?となってしまいます。いわゆる「社会勉強」と社会学とが全然ちがうことは、日本の社会学の大家であるセンセイ方の言葉を読めば理解ができます。
年代も学ぶ対象のちがう複数のセンセイを並べ、それって〇〇ってことですか?と、無邪気に聞いてしまえる立ち位置は、今のところ古市センセイが独占しています。
自分が語るのではなく、語らせて、理解する。
聞き上手の進化系が学べるのが、古市本のいいところですね。
Posted by ブクログ
著名な社会学者と、若手論客?としてメディアで活躍する古市さんの対談集。1人1人の学者の専門を深く掘り下げるというよりも、社会学とは何かという問いを皮切りに、それぞれのバックグラウンドや研究者としての考え方を浮き彫りにする内容だった。
社会学を学んだ事が無い自分としては、抽象度が高くわかりにくい話題もあったが、概ね読みやすく他の学問領域にも繋がる話もあると感じ、面白かった。
例えば、古典の読み方や仮説の立て方についての鋭いコメントが飛び出すこともあり唸りながら読んでしまった。
また、対談が12回繰り返されているので、正直誰が何を言っていたか私はわからなくなってしまった。内容をきちんと理解して自分の中に収めるには、何回か読み返さないといけないなぁと感じた。
Posted by ブクログ
古市憲寿さんが、主に「社会学とは何か?」について大物社会学者12人と対談した雑誌の連載を1冊にまとめた本。
古市さん含め、各人の社会学に対する距離感は、十人十色といったところ。役に立つ/立たないだけでも立場はだいぶ異なるようです。
社会学の大家たちが、社会学をどのように見ているかが分かるという点で、とても勉強になりました。
Posted by ブクログ
社会学部を卒業して長い年月が経ちますが、ほんのさわりの部分、その視点自分の血肉なっていたようです。
本書で多くの教授が語るように、社会学とは視点を得るものなんでしょう。何一つ変わらないものはないこと、現在の当たり前こそ消えることを前提に考えること。その視点は生きることをほんの少し楽にしてくれる
Posted by ブクログ
「社会学って何?」と聞かれて答えに困ってしまうのは社会学出身者あるあるだと思うのですが、古市氏が、著名な社会学者に真正面からこの質問をぶつけていく本。
面白かった!
この本を読んでも、「社会学とは」を自分なりに簡潔に言葉にするのは難しいけれど、自分のバックグラウンドはやはり社会学なんだということは確かめられた。
Posted by ブクログ
インタビュー対象の社会学者のメンツが驚きである。古市氏が巧みにインタビューを引き出しているのか、溢れる知に依存しているかわからないが、非常に面白い本であった。
Posted by ブクログ
「?」と思いつつ手に取った本だが、予想外に引き込まれてしまった。
インタビュアーの古市くんは、風来坊のように自在にルポして警句を吐きたいタイプと見える。さすがにインタビューの腕は、学問のプロらしくシャープでパワフルだ。現代日本を代表する錚々たる「社会学者」12人のアウトラインを明瞭にカッティングしていると思う。
全体を通じて、社会学者たちの明晰な言葉遣いに感心する。妬ましいともいえるレベルである。ただしそれゆえに、「評論家然」と寸鉄コメントを量産することが彼らの職業病であることが伺える。また、それが彼らのジレンマあるいは自責でもあり、その反動で、妙なイデオロギーポジションをとって、「アクティベータ」であるべし、という強迫観念に囚われてしまっている人もいるだろう。
Posted by ブクログ
社会学に興味があり、入門書的に手に取った。
(これから社会学やジェンダー関連の読書が続きそう)
本書は、(通称)社会学者である古市典寿氏が12人の日本を代表する社会学者に、曖昧な学問とされがちな社会学に対して改めて存在意義を問いかける。
自分の知識が少なすぎて難解な部分が多くあったので、もう少し勉強してから再読したい。
自分用メモ⇓
佐藤俊樹氏
「つまり、自分は外にポンと立てていると思った瞬間に、"イタい"社会学者になるんです。(中略)外部に立てているかのように語らずいかに頑張れるかが、社会学者として仕事をしていくうえでは重要になってきます」
「まず『こういう前提の下では、こういうことが言えます』という形で、前提を明らかにして話すことが大切です。もちろん、そうやって限定をつけて話すわけだから、大したことは言えません。でも、社会学者としての仕事は、むしろそのあとのやりとりにあるんです。インタビュアーが最初にする質問には、まだぼんやりとしているものがけっこうあるんです。それに対して、僕は受け答えをするなかで、『じつは、こういうことが気になっているんじゃないですか』というふうに返していきます」
「優秀なセラピストは、ある部分以外は絶対に揺れてはいけない。それに対して社会学者は、相手と共鳴しながらゆるやかに答えを生み出していきますから、セラピストにはもっとも向かない職業です。どちらかというとコンサルタントに近いけど、一般的なコンサルタントは『こうすれば赤字は二年で解消できる』というふうに、預言者になることを求められますよね。その点は社会学者と違います」
上野千鶴子氏
「私がゼミで一貫していってきたのは、社会学を含む社会科学は経験科学だから、答えの出ないといは立てないということです」
「(中略)手におえないといは立てないことです。簡単にいえば、風呂敷を畳めということです。手に負える問いでも、一年で出せる答えと、三年で出せる答え、五年で出せる答え、一生をかけないと出せない答えがある。そういう問いのスケール感を間違えてはいけません。」
仁平典宏氏
「それぞれの方法論には、社会とは何か、どう捉えるべきかに関する前提が組み込まれていて、いい研究と言われるものは、その部分への自覚や理解が深いように思います。比較的共通するエッセンスとして、少なくとも次の四つがあるかな。
1つは、『男は戦う生き物』みたいな本質主義はとらず、物事は言語的。意味的に構成されているという見方。第二に、物事の意味は関係性の網の目のなかで決まり、その布置は時代や集団によって変わるという見方。三つめは、個人の行為は社会的な要因によって影響を受けると同時に、その行為によって社会は差異を孕みながら再生産されていくという見方。そして最後に、研究者も社会の外部に立てず、研究や発言はその再帰的なプロセスに組み込まれていることへの自覚」
「大学に所属して一生を終えるルートというのは、それこそ専業主婦や正社員と同じように、特殊な時代だからありえたものだと思うんです。社会学を勉強した人間からすると、そこに乗っかればいいとは素直に信じられません」
大澤真幸氏
「人間は全員、生ける社会学者みたいなところがあるんです。たとえば物理学の素粒子論は、専門家にならなければ興味を持ちません。ところが社会学は、他者と一緒に生きていくという現実そのものに対する反省ですから、誰だって多かれ少なかれ、日常的にやっていることです。つまり、全員がフォーク・ソシオロジストだという側面があって、その中から、洗練された、狭い意味での社会学者が出てくるという風に考えた方がいいんです。」
「まず自分が楽しいかどうかが決定的に重要なんですよ。つまり自分がワクワクするようなことでなければ、他人がワクワクすることは絶対ありませんから。自分が面白いと思ったけど、他人が面白く思ってくれないことはたくさんあります。でも、自分はつまらないけど、他人が見たら面白いということは、まずないんです。だから、自分もそれを知ったことによって、本当に驚いたり、納得したりとか、そういく気持ちで研究しているかどうか。そういう気持ちがなければ、人を深く納得させる発信なんてできないんです。」
「人間っていろいろな生き方が当然あるわけだから、好きなようにすればいいわけですけど、僕自身は、自分が生きていくうえでぶつかっている問題を、社会学でやることである程度乗り越えていくというか、対応できている感じがするんです。その意味では、僕のような不器用な人にとっては、とてもいい学問なんです」
「役立つというか、それを考えることによって解放される感覚です。『この理論は人生のこういう場面で使える』といより、考え続けることで自由になっていく。この社会でなぜこういうことが起きているのかということを、いちばん底の底まで考えていったときに、精神の自由というものがあるんですね。」
「社会学という学問は、どうしてもアイデンティティが拡散しやすい学問です。でも、そこが社会学のいいところでもある。だから、『それは社会学じゃない』とかいろいろ言われますが、そんなことは気にする必要はありません。説得力があればいいだけですからね」
山田昌弘氏
「一見、個人的に見える問題でも、その裏には社会的な構造や、その変化がある。そこをつないで分析するのが社会学なんだ、と」
「私は学生たちに、ユングの言葉をもじって『社会学というのは、社会をあり得ない幸せな状態にするのが目的ではなくて、辛さに耐える力をつけることが目的です』と話すんです。どんな社会になっても、辛いものがなくなるわけじゃないと思うんですよ。社会学的な認識というのは、そういう辛い状態に耐える力になり得ると思うし、人々が辛い状態に耐え得る制度をつくる必要はあるように感じます。少しでも人々が生きやすい社会、生きにくくなったとしても、そこから立ち直りやすい社会にはしたいと思います」
鈴木謙介氏
「たとえば、経済学の処方箋の出し方って、『デフレから脱却したいならリフレです』みたいに、『もし~したいならば、~せよ』という条件付きの処方箋だよね。でも、その手前にある、人々がどうしたいのかという話は、解釈学的に踏み込まないと見えてこない。だから、社会学にしか手当てできたない不安とか、あるいは社会問題があって、その知識をもっと市井の人々に受け渡していく仕事をする人が必要だろうというのは、切実に感じることですね」
橋爪大三郎氏
「(社会学以外の勉強をするときに、どういう基準で本を選べばいいか)天才だと思う人の本を読む。」
「レヴィ=ストロースの戦いを見て、彼がやり残した課題を受け取るということ。レヴィ=ストロースが勝った部分はもちろんすばらしい。だけど、負けているところがあったら、それを課題として受け取ることが大事なんです」
吉田徹氏
「僕は司馬遼太郎がけっこう好きなんです。司馬が書くような史実に基づいて歴史小説と、戦国時代を舞台に人間模様を面白く描くような時代小説とは違う。さらに、単に史実を調べるのが好きなだけなら、たしかな史実の専門書を読めばいい。僕にとっては、たしかな史実に則して歴史小説を書くスタンスが面白く感じられて、社会学でもそういうことができないだろうかという思いはあります。つまり、あえて無機質なデータとして拾った人々の意識を、アウトプットして出すときには、社会的なリアリティの形に戻して出したいという感じです」
「昔と比べて違うのは、みんなが社会的なアイデンティティに敏感になっているということです。七〇年代、八〇年代の日本人は、『俺たちはイケてる国の国民』とい思っていた。要するに、『イケてる国の真ん中らへんで、その真ん中らへんは世界で上のほう』という共通の意識があったんですよ。これはどういうことかというと、戦後の日本社会はずっと坂を上ってきたので、社会の形についても、自分の位置づけについても、大雑把な捉え方しかできない状況だったんですね。でも、バブルが弾けて社会が停滞期に入ると、安定した仕事についているかどうかとか、学歴が大卒か非大卒かとか、いろいろな指標で自分を位置づけられるようになってきました。そういう意味では、私が使っている言葉でいうろ、日本人の格差、階級、回想についてのリテラシーが高まってきている。つまり、アイデンティティを考えるときに、一つだけの基準で決めているんじゃなくて、『こういう観点で見たとき、俺、他のやつと比べてイケてるかな』みたいなことを、複眼的に見るリテラシーが身についてきたわけです。だから、社会意識と社会の仕組みのつながり方は上質化したと思っています。別の言い方をすれば、自分の位置づけをリアルに知って対峙しなければいけないから、辛いわけだけど、リテラシーが高まると辛くなるのは当たり前なんです。」
Posted by ブクログ
貧困だとか、犯罪だとかは、
個人に由来するのではなく
社会が生み出した現象で、
社会の一部だと考える論を
私は強く推しているんだけど、
それを肯定してくれるように感じた。
まさに社会学とは、
みんながなんとなくわかっていたことを
実証する学問と説明する学者がいたが、
それを実行してくれたと思う!
家族社会学 山田先生がいう
前時代的家族が
機能する人と機能しない人の格差が生まれる。
社会では、機能しない家族に生まれた私が悪い自己責任と斬られるけど、
機能しない人をベースとした社会制度ができればいいなぁと思う。
社会学者は分析に徹するべきか、
提言まで行うべきか論について
様々な意見が出ていたけど、
提言まで行って欲しい!
Posted by ブクログ
12人の社会学者に「社会学」とは何かを問う。
社会とは非常にあいまいな概念だが、政治学や経済学ではカバーしきれない部分を社会学が担い、「社会」という抽象的な研究対象を普段とは違った視線で説明することと多くの学者は説明している。
Posted by ブクログ
社会学と聞いてどういった学問かピンとこないものがあったので、解釈の参考になるかと思い読みました。
12人の社会学者達と古市氏の対話を通して、社会学がどういった学問であるか、各者の考えが対話形式の文章で記されています。各者との対話は書籍の都合もあり短いものとなっており、深い知見が得られるという感想ではないですが、各対話における共通点を見つけることで社会学がどういったものであるか、自分なりに考え理解することができました。
Posted by ブクログ
「社会学とは何か?」を10名ほどの社会学者の対談相手に質問していく。素人には小難しい内容。確かに社会学を説明しろと言われると難しい。「○○社会学」となるとなんでもありになってしまう。メディアマーカーへの登録のタグもとりあえずジャンル分けに困ると「社会学」か「雑学」にしている。雑学といっしょにしてしまうのは失礼だけれども。
Posted by ブクログ
テレビでよく見かける若手の社会学者、古市憲寿の社会学入門。社会学とは何か、という質問を、日本を代表する12人の社会学者に尋ねて回る対談の書籍化です。非常に読みやすく、かつ程よくアカデミックですごく読みごたえがありました。それぞれの社会学者が取り組む社会学者としてのアプローチをたどりながら、社会学の位置づけを多角度から理解できたと思う。
最近の学問は理論の探究から、事象の理解にシフトしている。そこに善し悪しはないだろう。だからこそ常にダイアローグを忘れてはいけない。個と全体の、一般と特殊の、理論と計量の。そしていつも問い続けることを忘れてはいけない。私たちの住む社会について、私自身について。
17.3.9
Posted by ブクログ
若手社会学者の肩書を持つ、古市憲寿が12人の社会学者と対談する。最初に聞く質問が、
「社会学ってなんですか?」
というもの。
各人それぞれの社会学の定義を持っているが、その中で橋爪大三郎の定義が一番すんなり受け止められた。
いわく、社会科学の成立と同時に社会学は誕生した。
政府とは何か、法律とは何かを考え始めたら政治学ができた。
市場がだんだん一般的になるにつれて経済学ができた。
政治学も、経済学も扱わない「社会」というものについて、社会を丸ごと考察する社会学が誕生した。
つまり、特定分野の社会科学が誕生していった結果の残り物が社会学である。
そして、特定分野のタコツボ化が進み社会学は細分化している。
実のところ、今必要とされる学問は社会学ではないかと思っている。
イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ現象、それに韓国大統領に対する怒りの声、EUの右傾化、
新聞やTVメディアのエスタブリッシュメントは、これらの現象を見抜けなかった。
その理由は、経済学や政治学に基づきすぎたのであって、経済からも政治からも見放された人たちの分野を見過ごしたからではないのか。
そこに光を当てるのが、社会学だと思う。
最新のテクノロジーを扱う理系分野にも社会学は必要だ。
新しい製品、新しい技術が社会にどのような変革、影響を与えるのかを技術者は自問するべきだ。
そして、社会をより良くする技術を生み出すことが技術者に求められる。
理系から言わせると、文系学問は胡散臭い。
現実にないものをこねくり回して、理論を生み出している。
しかし、理系は専門化しすぎて技術が社会に与える影響を俯瞰することができていないのではないか。
理想を言えば、理系と文系の融合。
社会全体を俯瞰しながら、社会に良い影響を与える技術を生み出すことができる人材が必要だ。
社会学とは何か。
漠然としすぎて分からないが、社会学者の数だけ社会学の定義があるというフワフワした学問、ということがわかった。