昭和18年の夏。アメリカによる戦争が起きてもおかしくない時代、中学生の勇二は同級生から、ある噂を聞く。公園の中に秘密の洞窟があり、そこに魔女がいるとのこと。現場に行ってみると、そこには魔女ではなく、歴史学者の娘・涼子がいた。段々と話していくうちに涼子は日本は戦争に負けると言い放つ。国家のためなら死んでもいいという精神をもつ勇二としては、それが気に食わなかったが、同時に愛情も感じるようになった。
でも、涼子には恋人がいた。それは勇二の兄だった。
もしも戦争がなかったら?そう思うと、自由や死など悔やむ箇所が多くありました。
古市さんの最新作ですが、いつも思うことが。それはテレビで見る古市さんの雰囲気と小説から放つ雰囲気が違うという印象があります。
たしかに理論的な表現をする文章もあるのですが、感受性豊かに書いているので、小説面ではいつも驚かされています。
昭和18年ということで、背景となる戦争の描写もあるのですが、基本的には学生達の青春を中心に描かれています。
時代に翻弄される登場人物達の正義や制限された空間での自由奔放さには青春を感じさせてくれました。いつの時代も、行動力は変わらないなと思いました。
ただ精神面としては、現代人から見れば、勇二という人物に対して異常だなと思いました。その時代にしてみれば、それが一般的であり、大半だと思いますが、今にしてみれば、考えられない考えばかりでした。
戦争という時代の環境が招く恐ろしさに、もしも自分がその時代に生きていたらと思うと、今の時代でよかったとも思ってしまいました。
そんな時代で生きる勇二達が、涼子と出会うことで、様々な体験をしていきます。「東京」という華々しい所へ行ったり、はたまた恋愛、労働、そして戦争などに直面していきます。若いからこその行動力や精神力が、青春小説として引き立たせてくれるので、時折爽やかさがありました。
恋愛面においては、表現が艶かしかったです。淡々と表現しているのではなく、ドキッとさせるようなエロさの表現があて、印象が強かったです。
今までの作品もそうですが、この作品でも死生観が描かれています。国家のためなら死ねる勇二が、様々な死の場面に遭遇します。最初はそれが誇りであると思っていたのですが、次第に気持ちが変化していきます。
やっぱり人の「存在」がなくなることに胸が痛い気持ちでした。死によって、周りの人達は悲しくなります。体験してみないと、なかなか考えを揺るがすことができません。
今も、そういったことが外国で起きています。何のために戦争をしているのか?もう一度原点に立ってほしいなと思いました。