山本やよいのレビュー一覧
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【マープル】
マープルの「推理ではありません。事実です」という言葉が、カッコ良くて痺れた。
編み物をしている優しいおばあさんの姿とは全く違う一面が見れた。
今回の事件は私的なことも含まれているから、いつもは穏やかなマープルが静かに怒っている。だからカッコ良い。
ラストがとても良かった。
このラストのおかげでこの作品が心にいつまでも残る。最後の2行もとても印象的だった。
愛読書の『アガサクリスティー完全攻略』著者の霜月さんが、この作品の解説者だった。
数多いクリスティー作品の中から、自分の好きなタイプの作品を選べるのは霜月さんのおかげなので本当に感謝してます。 -
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ネタバレ途中で最初の事件とは関係ない話が展開し、どうなっていくのだろうと思っていたら最後は綺麗に集約されて行ってさすがだなと思った。
途中で少年犯罪について語る一節があり、それが印象に残っている。
"彼女が気にかけている相手か、もしくは、ポアロが思うにこちらの方が可能性大だが、彼女が守ってやりたいと思っている相手、おそらくほんの子供と言って良い年齢の者。ミセスドレイクから見ると、自分がしたことの恐ろしさがよくわかっていないように思われる者。
ポアロは、ミセスドレイクのことを性格はきついが誠実な人物だと思っている。こういうタイプの女性は、結構いる。しばしば治安判事になったり、協議会や慈善団体の運営に関わったり、いわゆる事前活動に関心を寄せたりする女性。情状酌量の大切さをやたらと信じ込み、若い犯罪者をかばおうとする女性。思春期の少年とか、まだ判断力に欠ける少女とか。すでに、えっと……どういうのだった、施設に入ったことがある子とか。
図書室から出てくる姿をミセスドレイクが見たのがそういう子だったなら、彼女の保護本能が働き始めたと考えても良さそうだ。今の時代、子供たちが犯罪に走ることは結構ある。幼い子供たち。7歳や9歳位の子供たち。こういう子供が少年裁判所の法廷にたたされたとき、どう扱えばいいかと関係者は頭を悩ませる。子供のために色々な言い訳が用意される。壊れた家庭、子育てを放棄した独親。しかし、子供達を最も熱心に弁護し、あらゆる言い訳を持ち出そうとするのは、大抵ロイーナドレイクのようなタイプの人間だ。厳しくて口やかましい女だが、こういう時は別人のようになる。ポアロ自身は、そのやり方には同意できない。彼は、常に正義を第一に考える人間だ。知識というものに、行き過ぎた慈悲に疑問を持っている。ベルギーとこの国の両方でかつて学んだことだが、行き過ぎた慈悲はしばしば、さらなる犯罪の元となる。正義を第一に考え、慈悲を第二にしておけば、被害者にならずに済んだはずの人間が、その犯罪のせいで命を落とすことになる。"
これは、アガサクリスティー自身の少年犯罪に対する私見でもあるのかなと思う。慈悲よりも正義。目先の優しさよりも先々のことを考えて厳しくすることが、かえってよりよい結果を招くこともあるというのはその通りだと思う。
こういった少年犯罪を匂わせる文章が多かったので、少年少女が犯人なのかなと思っていたら真相は金と独善的な美学に酔いしれた大人による犯行だったから全く予想できなかった。最後に出てきたマクベス夫人とナルキッソス、そしてイフィゲニアはそれぞれギリシャ神話とシェイクスピアからの引用。アガサクリスティー作品は、たまにこういった古典作品や神話、聖書からの引用がある。引用元の作品を知っておいた方がより深く味わえると思うので、この辺りの知識も身につけたい。 -
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ネタバレマープルシリーズの中でも間違いなく名前が上がる本作。
「でもマザーグースものか、馴染みないからな〜……」とあまり乗り気ではありませんでしたが、オススメされるのも納得。さすがの面白さでした!
投資信託会社の社長が毒殺され、いつも通り疑いがかかる親族たち。
それにしても、クリスティー作品を読むたびに「いい子だけど闇を抱えた長男、人に好かれる放蕩息子の次男、しっかりものの長女」というきょうだい構成は万国共通なのかなとしみじみ思います。私の兄たちがまさにそうなので……。
閑話休題。
今回はニール警部が捜査の指揮を取るということで、ミス・マープルの登場は中盤近くになってから。セント・メアリ・ミードからは遠く離れたお屋敷が舞台なので、うまく捜査に入れるか不安でしたが、そこはさすがの”おばあちゃん力”ですんなりと溶け込みます。コナン君と同じですね笑
肝心の謎解きの方は相変わらず誰も彼も怪しく見える手法で、犯人にもビックリでしたが、もっと衝撃だったのはラスト一文。
今回は育てたメイドが犠牲に……ということで事件に関わったミス・マープル。ただ、彼女を突き動かすのは正義感だけではないのだとまざまざ思い知らされました。
”何があったのか知りたい”そんな探究心の強さが、彼女をただのおばあちゃんではなく”ミス・マープル”ならしめているのですね。魅力的なのに少し怖い。そんな主人公に我々読者は惹かれてしまうんだろうなぁ。 -
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ネタバレ(上巻より)
ヴィクが、
火の壁の向こうにいる母親と医師ロティを助けられない夢を見たと書いてあった。
それは母親とロティを同一視しているということだろうし、
誰よりもヴィクのことを心配し面倒をみてくれているロティだから、
母親同様だと思っていても当然なことだろうと、
ヴィクともロティとも付き合いの長い自分は心を打たれた。
それにしても、ヴィクの依頼人たちは、
自分がお金を払った仕事をそっちのけで、
他のことにかまけた上に最後には怪我をしてしまっているヴィクに、
よく仕事を頼んでいるものだ。
いや、そういう正義と追いかけてしまう彼女だからこそ、
仕事を頼んでいるのか。 -
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ネタバレ探偵ウォーショースキーの21作目。
久々のヴィク。
なので、こんなに非現実的なぐらいパワフルでしたっけ?と思うぐらい
動き回っていた。
カンザスの峡谷や沼地の中を歩き回ったり、鉄道のホームの下に潜り込んだり。
前に出て来たブーム=ブームの親友の娘バーニーが
軽く付き合っていた男性が殺され、
事件に巻き込まれる。
同時にガード下でおもちゃのピアノを弾き歌を歌っていた女性が、
マリの記事がもとで失踪し行方を追うことになる。
彼女を守ろうとする謎の男に彼の犬を押し付けられ、
犬が三匹になってしまうヴィク。
マリとは、確か付き合っていたこともありましたよね?
それなのに冷たすぎじゃないか、
それとも昔つきあっていたからこそ、
報道のプロとしてのプライドを捨ててしまったことに腹が立っているのか、
と思っていたら、
撃たれてしまい生死の境をさまようとは。
(下巻へ続く) -
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▼サラ・パレツキーさん作、シカゴを舞台にした「女私立探偵ウォシャウスキー・シリーズ」です。海外ミステリ好きなら、知らないはずはないシリーズ。個人的には読むのは二作目。
▼ウォシャウスキー、という名前に既に、WASP的アメリカ社会というか、トランプ的アメリカ社会からのアウトロー的精神が漲っているのですが、さらにはウン十年前からの女性主人公ですから、とにかくマイノリティーの味方、左翼的反骨精神に貫かれています。
▼お話は、9.11の直後なんですね。ですから2002年くらいでしょうか。黒人ジャーナリストの変死体発見から、テロリストの疑いをかけられたアラブ人少年の逃避行へと。「9.11後のヒステリックなアラブ人バッシング」の精神構造へと進んでいくんです。ネタバレで言うと。。。。
▼黒人ジャーナリストは、1950年代の「赤狩り」の時代に活躍した黒人文化人たちの歴史ネタを取材していた。行きついたのは、
・当時、リベラル派として黒人文化人を擁護していたはずの金持ち白人セレブが、我が身を守るために、黒人文化人を含む仲間のことを、赤狩り陣営に「売っていた」という事実。
・それを知られたくない当の金持ち白人セレブの一族が、黒人ジャーナリストを殺害していた。
・さらにその現場を目撃されていたので、アラブ人少年のことも「テロリスト」として射殺してしまう。
・それが、色々証拠はあるのだけど、どこまで裁かれるのかは、「どうなることやら」で終わる。
・・・というなかなか救いがあまりない、お話。
サスペンス、それなりに読ませますが(結構複雑)。
▼なんですが、小説全般から、崩れ行くリベラルへの哀惜と、独善的なナショナリズムへの憤怒が溢れるようで、その熱量にはちょっとグッと来るものがあります。2024年の現在から読むと、なんとも現在が「ディストピア」になっちゃってる感がとにかくしてしまうのですが・・・。こういう熱量のエンタメ小説が、日本でも海外でも、読まれると良いなあと思いました。 -
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ネタバレポアロシリーズ㉑
16年前の母の無実を証明して欲しい。と依頼されるポアロ。
物的証拠は何も無い。16年前の裁判の弁護士、検察官の話を聞き、当時の関係者5人からそれぞれに事件の話を聞く。そして思い出せる限り詳しく手紙に書いてもらう。
一つの事件を何度もなぞっているだけのようで、関係者それぞれの知っていること、印象、思いが加わり少しづつ事件の見え方に違いがでる。
そして、一気にポアロの灰色の脳細胞が事件の真相を明らかにする。誰かがフッと耳にしたこと、誰かが何気なく見ていたことが、ポアロにより真実への大事な手がかりと気付かされる。
犯人は16年間、ずっとこの事件に囚われていた事も印象的だった
やっぱり面白い。 -
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ネタバレ少し前に映画を観て、原作はどんな感じだろうと思い拝見。内容が違いすぎて呆然としました…。ですが、別物と思って読むと、複数の事件と人が重なったとても面白い作品でした。特に子供に対する自分の印象は少々変わったかもしれません。
また、映画のポアロとは違い、悲壮な感じが無く、登場人物もミステリアスでクールな人が多く、時々コミカルなので実に読みやすかったです。
自分はミステリ小説をあまり読んだ事が無いのですが、子供が犠牲になる、という所と、子供と言えども虚言や脅迫など中々アクの強い子達が登場してきて強烈でした。まさに「教育とは聖なる領域」。教える事、学び続ける事で人格が形成されていくのかと改めて思います。ただ、今となってはこの話をポアロとしているのが、犯人という所がなかなかパンチの効いた皮肉に思います。マクベス夫人についてとても興味が出てきました。
子供は親に全てを話すとは限らない。その通りかもと思うのですが、大人は親には話すと思い込んでしまう事が多いと思いました。何が起きているのか、恐怖が感じ取れない。とても難しい事ですが、注意して見たり話したりしないといけないなと思います。
また、犯人や被害者の発言がミスリードである事。
特に被害者を周囲の人達が非難する為、読み手としては同情してしまい、嘘が本当だったと信じてあげたくなるという。本当に巧妙な罠でした。
そして、犯人では無いのに疑ってしまった登場人物達に何となく申し訳ない気持ちになるという。
自分は探偵には向いていなと学びました。
それにしても、残酷な結末です。親が友達を殺して、更には自分も殺されそうになって、そして勝手に自殺されたという。せめて他人であって欲しかったです。とりあえず洗脳が解けると思いたいです。
今回原作オリヴァーに会えて良かったです。映画では心が腐っているのかな?と思わせる人物でしたので、変わった人ではあるけど、ポアロの友人で心の底からホッとしました。
他、この本の中で未だ気になる事と言えば、オリガの居場所を当てた魔女は本当に魔女なのではないだろうかという所です。ハロウィンらしい演出でした。