あらすじ
16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです……娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に、ポアロが探り当てる事件の真相とは? 過去の殺人をテーマにした代表作。
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Posted by ブクログ
現時点でポアロ作品の中で一番好きです。
容疑者たちの一人一人がすごく丁寧に描写されていて、人間ドラマとして面白い。被害者も自業自得でしょとしか言いようがない人だし、癖のある容疑者ばかりで自分勝手な話を聞きながらの推理がすごい。雑音を取捨選択する力が名探偵たる所以ですよね。
私は今回本気で推理しながら読んでいてノートに予想を書きながら読みましたが、予想を上回る面白さ、美しさでした。
ミステリーというより、文学として好き。
Posted by ブクログ
好き!傑作!
なぜ?誰が?どうして?
先が気なる気になる。
最近は大掛かりなトリックより
動機に謎がある方が断然好みになっているから
余計にはまったのかも。
Posted by ブクログ
16年前の殺人事件の真相に迫ろうとするポワロ。もちろん証拠品が新たに出るはずもなく、関係者の証言も記憶があやふやだったりして難しいのだが、この小説での一番の見所は、人によって見方が違うために人物の善し悪しがわかれたり、思い込みが出てきてしまう点である。
関係者の証言は確かに興味深い。事件当時、その話をしなかった理由は、重要だとは思わなかったからだったり、個人的な印象だけだったり、あとから思い出したり様々だ。そして犯人以外は誰も嘘をついていない。
有罪判決を受けて獄中死したキャサリン。亡くなる前に、実は無実だったという手紙を娘に残した以外には無実を訴え続けたりはしなかった。
キャサリンは本当はどんな人だったのか。それを考えていくことが事件の真相にたどり着くカギとなっている。
Posted by ブクログ
30数年かけて、ちょっとずつ読み進めてきたポワロシリーズ。老眼で旧ハヤカワ文庫版が読みにくくなってきたこともあり、新版で買って読みました。
推理小説が乱造される昨今、今までにないトリックだのどんでん返しだの色々読みましたが、そのほとんどが奇をてらったトンデモ犯罪でした。
そんな中、もはや古典の感もあるアガサ・クリスティを読んで「こういうのもあるのかぁ〜」と感心することになるとは。
さすがミステリーの女王。
過去の事件を調べ歩き、人の話を聞き、手記を読む、という形式なので、淡々として大人しい感は否めませんが、それだけに最後のポワロの解決編が鮮やかに引き立ちました。
私たちにもポワロと同じヒントが与えられているので、ポワロと推理競争してみては。
カンの良い人なら割と早い段階で犯人は当てられると思います。でも、ポワロが繰り返すように、大事なのは「なぜそうしたか、その人はどんな人物なのか」というところ。そこまで見抜けるでしょうか?それに、殺人の引き金になったあの言葉…ん?って引っ掛かりは感じるけど、そこから先を当てるのは、相当難しそう。
新版ハヤカワ文庫は、旧ハヤカワ文庫に比べて訳のが良くないと耳にしていたので心配していましたが、杞憂でした。すくなくとも、この一編においては。
ポワロはもうちょっと芝居がかってても良いかなとは思うけど、今、アガサを読み始める若い人たちや子供たちに馴染む言葉でないとね。
登場人物もそんなにおらず、舞台装置も閉鎖的であちこちしないので分かりやすく、アガサの筆の凄さも体感できる、おすすめの一冊です。
Posted by ブクログ
1943年原書 桑原千恵子訳
五匹の豚はマザーグースの数え歌
・ポアロ →探偵
・カーラ.ルマルション→21歳の美しい女性
目がキラキラしている
カーラ母がカーラ父を殺して
叔父夫婦に引き取られ
何不自由なく成長
・アミアス.クレイル→カーラ父 画家 芸術家
・カロリン.クレイル→カーラ母
カーラが21歳の時
父母の遺産と母の手紙を受け取る
カーラがポアロに
父母の事件の調査を依頼
(母の手紙には自分は無実だと..)
・ジョン.ラタリー→カーラの婚約者
・モンタギュー.ディブリーチ卿
・クエンティン.フォック
・ジョージ.メイヒュー
・ケレイブ.ジョナサン →弁護士達
・①フィリップ.ブレイク→株仲介人
アミアス親友
・②メレディス.ブレイク→薬草作り
①フィリップの兄
・③エルサ.グリヤー→ アミアス浮気相手
絵のモデル
〜ポアロからみると
まだ蕾のうちに 霜に襲われた花 の様な人
現ディティシャム卿夫人
一度しかない人生を
思うままに生きた方がいいという
"現代流"の思想の人 英雄崇拝者
一方
カロリン.クレイルは
平凡な人の中にも
人物を見つけることが出来る女性
・④アンジェラ.ウォレン
→カーラ母の歳の離れた妹
〜ポアロからみると
不具という引け目をおっていながら
自信と確信から生まれた
気力.能力のある職業婦人
好ましいとは思っていない
「この人の 姉夫婦 の話は面白かった」
・⑤セシリア.ウィリアムズ先生
→アンジェラの家庭教師
〜ポアロからみると
ヴィクトリア朝時代の
厳しい躾を受けていた為
精神 道徳的に拠り所を持ち
嫉みや不満 後悔 等
受け付けない確固とした自分を持っている
『..大部分の子供は親が
世話を焼きすぎるため..
子供を可愛がりすぎて
世話を焼きすぎるのです
...親が愛しながら
必要以上に構わない
健全ななおざり を実行..』
「耳が痛いけれど...素敵な人だ」
『..結婚というものが
大切に扱われなければ
国全体が堕落して
立ち行かなくなります..
.. 結婚という結びつきを
非常に重要に考えております..』
「こういう事を言う
年配の女性に会ってみたい..
と心の底から思った」
最後の犯人当てはやっぱり面白かった
直接話に関係ないけれど
この本を読んで...
小さい頃に身につけた
〈善悪〉とか〈倫理観〉〈常識〉って
一生を通しての
〔羅針盤〕 の様な役割をしていて
人生の終わりまで
〔自分を守る鎧〕 の様なものだな..
と思った
子供を大人になるまで育てる
機会が 又あったとしたら
(絶対にないと思うけれど..)
一番重要な事だと言って
育てたいな...
(個性とか自由とかいうのに
囚われすぎたな..反省..)
...こんな感想が頭に浮かんだ
この小説は
凄く面白かった
こういう小説を又読みたい
と思った
Posted by ブクログ
期待以上に面白いミステリー作品でした。
過去に起こった殺人事件を捜査することになったポアロ。容疑者は5人。
其々の供述から、パズルのようにバラバラになった真実への道を探究する道筋が面白い。
タイトルの、容疑者を豚に喩えているのが、よくわかりませんでしたが、英国的な感覚なのでしょうか。
ポアロシリーズでも上位に上げたくなる名作ではないでしょうか。
Posted by ブクログ
私はポアロ
会社で不正事件が発覚
毎日関係者に聴き取りを行い
証言を突き合わせると辻褄が合わない
誰かが嘘をついている
でも、それは誰だ
何が真実で何が嘘なのか
関係者が隠そうとしている真実は何だ
↑というのは私の話で
これを聞いた友人が貸してくれた本
まさに私はこの本のポアロだった
Posted by ブクログ
再読。
クリスティの中で好きな作品の一つ。
回想の殺人をあつかうものとしては「スリーピング・マーダー」と並ぶ傑作だと思う。クリスティを読んで思うのはミステリー以上にストーリーテラーとして優れているということ。上手いよねぇ。
Posted by ブクログ
数年振りの再読。
やっぱり面白い。
初めて読んだ時はとてつもなく感動したし、“回想の殺人”というジャンルもこの作品で知った。
過去の事件の真相を関係者五名の証言から導き出す過程が見事。
これこそがポアロの真骨頂だな。
犯人も分かっているのに、あっという間に読み終えてしまった。
Posted by ブクログ
ぐいぐいと引き込まれていく、トリック的なものは存外と簡単だけれど、人の思惑というものの絡み合いというものが丁寧に描かれていて、普遍的な愛憎がもたらす悲喜劇がとても魅力的だった。
面白かった
面白かった。
つくづく自分の目は節穴だなと思った。
なるほど、人間の心理ってそういうことなんだね。
いや自分が世間知らずなだけかな。
とにかく面白かった。
Posted by ブクログ
クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。
クリスティの傑作は沢山あるが、今作は紛れもなく傑作の一つであり、名探偵エルキュール・ポアロとは何物なのかを理解する上で欠かせない作品だ。ポアロの推理方法は人々の心理の中にあり、足跡やタバコの吸い殻といったものを拾い集めるのはかれのやり方ではない。今回は十六年前の事件であり、状況証拠等は存在しないが、5人の当事者達の記憶を巡り手記を書かせ、過去を手繰り寄せながら真相に到達する。
ポアロの元を訪れた依頼者は、結婚するにあたり自身の過去について真実を知る事を望む。彼女の父親は画家であり、母親が殺害容疑で逮捕されていた。獄中からの手紙にて、自身は無実である事を娘に伝えている。母親も亡くなっており、真相は過去に埋もれているが、ポアロの噂を聞き依頼にやってくる。
物語は三部構成になっており、第一部迄はポアロが依頼を引き受け事件の真実を巡る為、過去の関係者達や該当者達から話を聞いていくという流れであり、警察や弁護士、当時の関係者の殆どが逮捕は妥当であり、殺害された画家の妻キャロラインが犯人である事を疑っていない人達が程だ。一部、彼女の義妹等キャロラインの無実を考える人達もいるが、真実だとは感じていない様だ。
二部では当時の事件の該当者五人がポアロから説明を受けながら、彼ら自身各々に過去に起きた事を振り返り手記にまとめ、その手記で構成されたパートだ。各々の当時、そして現在を経ての感情や考えを手記形式で表現している事がとても斬新に思えたし、ポアロが彼らを訪ね面会した時の補完にもなっている。五者五用の受け取り方だが、その中に真実への道筋を散りばめ組み込む様式は見事だと当時は思った(五人の目線では中々足りないのではと最近は思っているが)。
第三部では真実が明らかにされる。
キャロラインは裁判でも抗う意思を示さず全てを受け入れている様にみられたがどういう経緯からその様な行動をとったのか。彼女が犯人ではないとして真犯人は誰なのか。
今回、十六年前、更には裁判により判決が出ている事件であり、証拠も存在しない。最後、犯人は事実を認めているが、流石のポアロでも出来る事は限られており、文字通りキャロラインの死後恩赦と警察への報告だけなのだろう。しかし、当事者達が真相を受け前進する事ができるだろうし、依頼者であるカーラも真実を知る事ができて幸せになれるだろうと感じた。また、現代的な考え方をするとアンジェラもやるせない想いなると想像出来るが、彼女の強さは描写されており今後も強く生きていくと感じた。
総じて非常に完成度が高く感動できる作品であり、クリスティの有名作を読んで次は何にしようかという人に薦めたい作品だ。
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ、ドラマや映画で見たことありましたが、小説ははじめて読みました。
ドラマのポアロもとても魅力的ですが、小説の方がずっと面白かったです!
真犯人がちょっとだけ納得いかなかったですが、伏線の回収やキャラクターの心情描写もすごいし、文章が力強いと感じました。
他の有名な作品もドラマでしか見たことがないので、今度読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
先にドラマを観ていた作品。観たのはかなり前なのに犯人も動機も覚えていたほどの傑作。
浮気や不倫に対しては生理的に受けつけないほど嫌悪感があるが、クリスティ作品と男女の愛憎は切っても切れない関係なので、今回も無駄に腹を立てながら読んだ。
しかしそこはさすがのクリスティ。単純な愛憎のもつれで起きた事件ではなく、なるほどそういうパターンもあるのかと驚かせてくれる。
やはりクリスティ作品は心理描写が秀逸で面白いので、そこを最大限に楽しむには本で読むのが一番かなと思う。
ドラマ版を観るのも大好きだけどね。
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティの攻略本なるもので★5となっていたので、読んでみました。
16年前、妻(キャロライン)が画家の夫を毒殺したとして逮捕され、獄中で無くなった。でも、母は無実だったという娘の依頼で再調査をするポワロ。事件当時現場にいた5人に聴き取りをしていく。
キャロラインの人となりを5人が語るのだけど、その人物像が人によって180度違う。そこに潜む一人一人の想いに注意を払いつつ、また、ちょっとした発言も見逃さない。
また、キャロラインが妹に宛てた手紙。キャロラインをどう見るかで、そこから導き出される結果が見事に異なってくる。
こうだと決めつけて物事を見ると、大変な思い違い、判断ミスをしてしまう。
アガサ・クリスティの人物描写は巧みだと、本書を通しても感じました。
Posted by ブクログ
2025.2.5(水)
久々に、ポアロ。ドラマはよく見てたから、
あのイメージで読んでいた。
記憶の断片から真相を探るって
いやいや、無理ー(笑)
凄いわ。
ちなみに読んだのは
同じハヤカワミステリ文庫だけど
昭和57年15刷の桑原千恵子訳のもの。
実家から持ってきた。(母のもの)
このデータの訳者さんとは違うから
変わってるとこもあるのかもなぁ。
Posted by ブクログ
16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのです・・・娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に、ポアロが探り当てる事件の真相とは?過去の殺人をテーマにした代表作を最新訳で贈る!
過去の事件をそれぞれの関係者からの聞き取りで解き明かす、まさに「灰色の脳細胞」大活躍のミステリ。面白かったなあ。そして最後までミスリードに騙されてえ!と思っていたら真犯人は・・・。日記のように書き記された断片をつなぎ合わせて推理するという面白い作品ですが、よく練られていて殺害動機も含めて面白かった。愛する人がいると、人は本当に強くなるんだなと思います。死を前にしても、心が穏やかでいられるという、不思議。ただ年を重ねて若さを失っただけの人と、愛する誰かのためにひたむきな気持ちで早く亡くなった人、どちらが幸せなのだろうと考えてしまう。
Posted by ブクログ
アガサクリスティー作品は、一番犯人として怪しくない人が犯人という法則があると(個人的に)思っているのだけれど、今回はそれが当てはまらない作品で面白かった。
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ㉑
16年前の母の無実を証明して欲しい。と依頼されるポアロ。
物的証拠は何も無い。16年前の裁判の弁護士、検察官の話を聞き、当時の関係者5人からそれぞれに事件の話を聞く。そして思い出せる限り詳しく手紙に書いてもらう。
一つの事件を何度もなぞっているだけのようで、関係者それぞれの知っていること、印象、思いが加わり少しづつ事件の見え方に違いがでる。
そして、一気にポアロの灰色の脳細胞が事件の真相を明らかにする。誰かがフッと耳にしたこと、誰かが何気なく見ていたことが、ポアロにより真実への大事な手がかりと気付かされる。
犯人は16年間、ずっとこの事件に囚われていた事も印象的だった
やっぱり面白い。
Posted by ブクログ
購入した2010年ハヤカワ文庫と表紙が違う?
豚の像の笑顔が怖すぎないか、、と思っていたけど、もしかして同じように感じる人が多くて変えたのでしょうか?
今回も額面通り捉えない、思い込まない、と言い聞かせていても、最後にガラッと見方が変わりました。ささいなこともなに一つ取りこぼさない。
派手な展開ではないけれど、名作と感じます。
ただ、途中は過去の同じシーンを別な視点から何度も何度も焼き回しており、忍耐と集中力が必要と感じました。
その前に読んだ白昼の悪魔の方が好みではありました。
Posted by ブクログ
前評判通りの作品、面白かった!
何年も前の事件を、当時の証言を元に丁寧に緻密に辿っていく。ポワロの脳細胞冴え渡りまくり!
犯人の最後の言葉がけっこう響く。一気に人間味を感じられたというか。そういう意味でも良作かと。
ほんとは表紙のスタイルが他のと違うから、揃ったバージョンで欲しかったのだけど…まあいいか。
Posted by ブクログ
ポアロもの。
16年前、画家だった父・エイミアスを毒殺した容疑で逮捕・有罪判決を受けて獄中で亡くなった母・キャロラインの無実を信じる娘・カーラより、事件の再調査を依頼されたポアロ。過去の事件の真相解明に乗り出しますが・・・。
所謂“回想の殺人”でございます。
当時の関係者五人へのポアロのヒアリングと、彼らの書いた手記で構成されているのですが、ある事実が五人それぞれの視点から語られる事によって、解釈が変わってくるという“ダブルミーニング”の仕掛けが実に巧妙なのです。
これぞ人間描写に長けたクリスティーならではの展開という感じです。
そして、彼らの供述から真の意味をくみ取り、真相を導き出すポアロに今回も唸らされました。
なお、真相を知った後に、改めてエイミアスが描いたエルサの肖像画を見たポアロが、“怖くなった“・・という場面を読み返すと、思わず鳥肌がたちますね~。
Posted by ブクログ
父親殺しの罪で獄死した母の無実を信じ、名探偵に調査を依頼する娘。ポワロが16年前の真実に挑む。
複数の関係者の証言が微妙に食い違うところが面白く、一方で重複した情報が多いため退屈になる部分もある。個人的に翻訳ものが苦手ということもあるが、それでも面白い小説だった。
多視点の証言から誤解や思い込み、嘘を炙り出す手法のミステリーを何冊か読んだが、クリスティーがルーツなのだなと、今さらながら驚いた。
トリックで引っ張るミステリーは苦手なのだが、人間の視野狭窄や未必の故意で引き起こされる悲劇は好きだ。
Posted by ブクログ
「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇『五匹の子豚(原題:Five Little Pigs、米題:Murder in Retrospect)』を読みました。
『ポワロの事件簿〈1〉』、『ポワロの事件簿〈2〉』、『ヘラクレスの冒険』、『死との約束』、『杉の柩』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
-----story-------------
母は無実だったのです――娘の頼みに「ポアロ」の心は動いた。
事件がおきたのは16年前。
若い恋人に走った高名な画家を妻が毒殺、裁判の末に獄中死したのだ。
殺人犯を母に持った娘の依頼で再調査に乗り出した「ポアロ」は、過去へと時間を遡り、当時の状況を再現してゆく。
関係者の錯綜した証言から紡ぎ出された真相とは?
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1943年(昭和18年)に刊行された「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇、、、
以前、映像化作品の『名探偵ポワロ「五匹の子豚」』も観たことがある作品… 6作品連続で「ポワロ」シリーズです。
■序章
カール・ルマルション
■第一部
1. 弁護人の話
2. 検察側の話
3. 青年弁護士の話
4. 老弁護士の話
5. 警視
6. この子豚はマーケットへ行った
7. この子豚は家にいた
8. この子豚はローストビーフを食べた
9. この子豚は何も持っていなかった
10. この子豚は“ウィー、ウィー、ウィー”と鳴く
■第二部
フィリップ・ブレイクの手記
メレディス・ブレイクの手記
ディティシャム卿夫人の手記
セシリア・ウイリアムズの手記
アンジェラ・ウォレンの手記
■第三部
1. 結末
2. ポアロの五つの質問
3. 再構築
4. 真相
5. その後
■解説 千街晶之
「ポアロ」が過去の事件の真相を追う“回想の殺人”タイプの作品、、、
『杉の柩』と同様の3部構成で、第一部では依頼を受けた「ポアロ」が関係者を訪ね、第二部で“五匹の子豚”の手記によって事件当時の様子を各人の視点から描き、第三部では時を再び現在に戻して「ポアロ」による解決が図られる という展開になっています。
16年前に夫「エイミアス・クレイル」を毒殺した罪で終身刑を宣告され、獄中で死亡した母「キャロライン・クレイル」の無実を訴える遺書を読んだ「カーラ・ルマルション」は、母が潔白であることを固く信じ「ポアロ」のもとを訪れる… 彼女の話に興味を覚えた「ポアロ」は、あたかも“五匹の子豚”の如き5人の関係者との会話を手がかりに過去へと遡り、ついに真実へたどり着く、、、
ちなみに、“五匹の子豚”の如き5人とは…
一匹目:「エイミアス・クレイル」の親友「フィリップ・ブレイク」
二匹目:「フィリップ・ブレイク」の兄「メレディス・ブレイク」
三匹目:「エイミアス・クレイル」の愛人「エルサ・グリーア(現レディ・ディティシャム)」
四匹目:「アンジェラ・ウォレン」の家庭教師「セシリア・ウイリアムズ」
五匹目:「キャロライン・クレイル」の異母妹「アンジェラ・ウォレン」
のことで、「エイミアス」が殺害された当日に邸におり、「キャロライン」以外に「エイミアス」を殺害できる可能性のあった5人の人物です。
『序章』で、「カーラ」が「ポアロ」を訪ねて母親の関与した真相の究明を依頼し、
『第一部』で、「ポアロ」は過去の事件の関係者に会い、各自の記憶をたどることで事実を照合し、会話の端々に犯人特定の糸口を見いだそうとし、
『第二部』で、「ポアロ」が受け取った、重要関係者5人(“五匹の子豚”)に依頼していた回顧の手紙の内容が示され、
『第三部』で、「ポアロ」は5人(“五匹の子豚”)それぞれに最後の質問を行い、ついに真実へたどり着く、
という展開で、徐々に真実の断片が明らかになり、最後に意外な結末が用意してあるという、とても愉しめる作品でした… 映像化作品を観ていなければ、驚愕の結末が愉しめたと思える作品です、、、
「キャロライン」が犯行を否定しなかったのは、妹の犯行だと勘違いして、妹への贖罪の気持ちもあって、自分が全てを背負ったんですよねぇ… 真相が判ると、悲しくてやりきれない感じがしましたね。
「アガサ・クリスティ」らしい展開でした… 面白かったです。
以下、主な登場人物です。
「エルキュール・ポアロ」
私立探偵
「カーラ・ルマルション」
事件の依頼者。エイミアス・クレイルの娘
「エイミアス・クレイル」
画家。カーラの父
「キャロライン・クレイル」
エイミアスの妻。カーラの母
「エルサ・グリーア」
エイミアスの愛人(現レディ・ディティシャム)
「フィリップ・ブレイク」
エイミアスの親友。株の仲買人
「メレディス・ブレイク」
地主。フィリップの兄
「アンジェラ・ウォレン」
キャロラインの異母妹
「セシリア・ウイリアムズ」
アンジェラの家庭教師
「モンタギュー・ディプリーチ卿」
勅撰弁護士。キャロラインの弁護士
「クエンティン・フォッグ」
次席検事
「ジョージ・メイヒュー」
弁護士
「ケイレブ・ジョナサン」
クレイル家顧問弁護士
「ヘイル」
元警視
「ジョン・ラタリー」
カーラの婚約者
Posted by ブクログ
構成も内容もミステリファンをそそるたまらない作品。五匹、五人、五つの手記、五つの解決。よし、手記を読んでポアロと同じように、考察してみようと思ったけど、かなわなかった。ミスリードにやはりやられてしまった。
手記から読み取れる、裏の想いが明かされていくのは面白かった!
Posted by ブクログ
クリスティー作品の中でも「隠れた名作」と名高いこちら。
回想の殺人というのもいまいちピンとこなかったのですが、じっくり読み進めてみて、各々の証言から矛盾を見つけ出すポアロさんの手腕に改めて脱帽でした。
私がこれまでに読んだ中では、『杉の柩』『ホロー荘の殺人』カテゴリに分類されるような、特に人物描写に凝った本作。
16年も前のことであっても、やはり人が一人死んでいるわけで、それぞれに注目している観点や忘れられない出来事があるのが興味深いです。また、真相に関しても二転三転……からの着地で、その美しい自己犠牲精神に驚きでした。
ただ、個人的に愛着の沸く人物があまりいなかったのがハマれなかった点といいますか……。
解説では”名犯人”と評されていましたが、『エッジウェア卿の死』には及ばないかなぁ。
それに、いくら小さかったとはいえ依頼人たるカーラへの言及がほぼなく、娘である自分よりも腹違いの妹への愛情が深かったと知って、どう受け止めていくんだろうか……と少し心配にもなりました(´・ω・`)
大興奮の一冊とはなりませんでしたが、やっぱりクリスティーの安心と信頼感は抜群ですね〜。このところ新規開拓でいろいろな作家さんに挑戦しておりましたが、やはりクリスティーに帰ってきてしまう。
彼女がこれだけの名作をたくさん遺してくれたことに感謝しつつ、今後も”アガサ・クリスティー読破”をライフワークとしていきたいなと思います。
さて、ミス・マープルシリーズの『スリーピング・マーダー』ではどんな展開を見せてくれるのか、今後の楽しみにしたいですね。
Posted by ブクログ
ポアロシリーズ長編21巻目。
1942年の作品。
ハヤカワ文庫版を読みました。
今回ポアロの元に依頼された事件は、16年前に起きた殺人事件の真相を調べてほしいというものだった。
高名な画家エイミアスクレイルの娘カーラ・ルマルションは、夫殺害容疑で終身刑となり獄中で亡くなった母のキャロラインクレイルから無実を訴える手紙を受け取った。ポアロは16年前のこの事件の関係者ー五匹の子豚ーすなわち、画家エイミアスクレイルの愛人だったエルサ・グリヤー、エイミアスの親友だったフィリップ・ブレイクとその兄メレディス・ブレイク、キャロラインの妹のアンジェラ・ウォレン、アンジェラの家庭教師だったセシリア・ウィリアムズのうち誰かが真犯人ではないかと推理し、彼らに当時の回想録を書くように依頼する。
今起きている殺人事件ではなく、16年前に起きた過去の事件を調べるというのが特徴的な作品。「絵」が大きなテーマになっている。
そして誰もいなくなった、などでも用いられるマザーグースの童謡「五匹の子豚」が5人の容疑者を表現するのに印象的に使われている。
また、芥川龍之介の「薮の中」風手法で16年前の事件について5人の容疑者それぞれが各自の立場、視点から語っているが、全員本当のことを言っているわけではないのがミソ。
確かにすごくよく練られていて、素晴らしい作品だと思うんだけど、16年前に終わった殺人事件を調べるというストーリーで、被害者も犯人とされた人物も亡くなっているという点で緊張感はない。(第二、第三の殺人が起きる余地がない)
おなじみのキャラは出てこない泣。全体的に暗くシリアスな雰囲気が漂っているので、個人的には明るいヘイスティングス君の語りや、ポアロに振り回されるジャップ警部や強烈なキャラの濃いオールドミスとかが出てきてユーモア要素が入る作品の方が好きなので⭐︎3にしましたw。
Posted by ブクログ
16年前の事件の真相を暴くという他とは違ったストーリーだった。エイミアスとキャロラインの関係性は想像してた通りだったけど、他のカラクリはやっぱり分からなかったー!人の話だけを頼りに心理学的に解くのはポアロにしかできない。