山本やよいのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
グインに夢中になっていて、読むのを途中で一旦止めていた、ヴィクことV・I・ウォーショースキーのシリーズ。長いこと読んでいるシリーズだと、登場人物が自分の友人のように思ってしまうことがあるけど、このヴィクもそういう主人公のひとり。シカゴを本拠地に活動する私立探偵だ。
読み始めた頃は、憧れのお姉様って感じで、ほんとに身近でカッコいいと思った。こちらが社会人になって、親近感の質は変わっていくが、このシリーズ、作品の中でも時間が経ってるので、もう彼女は50代。でも相変わらずパワフルで美人で、熱い。行動派だ。
ヴィクの姪っ子、バーニーが友達と一緒に持ち込んだ依頼は、オーガストという、映画監督志望の青年を探して欲しいというもの。老女優、エメラルドと一緒にカンザスに行ったきり、行方がわからないという。二人を追ってカンザスに飛んだヴィクだが、女優の生まれ故郷の小さな町にたどり着いた。どうもそこでは、合衆国の空軍が、不可解な核、ないしは、正体のはっきりしない、危険な何かの実験をやっていた過去があるらしいが…。
核は怖い。いや、戦争に使われる兵器は全て怖い。だが、中でも怖いのは、核をはじめ、使っている側にも、使用後にどんな事態が引き起こされるか読みきれない、強大な武器たちだ。ヴィクは当初、行方不明の二人を探しているだけのはずだった。なのに気がつけば、過去の兵器実験にまつわる謎に、どんどん巻き込まれてゆく。
町の人物は、みんな典型的な、スモールタウンのいいひと。ゴシップもよそ者への排除論理も吹き飛ばすような、実に恐ろしいものに目を閉ざしている。だんだん謎が解明されると
「世界の何処かで、こんな恐ろしいことが、実際に起きているかも。」
と、背が凍る思いがする。作品のスケールも大きいし、読み応えがあるが、ふと、現実をなぞっているような恐怖を覚えるのだ。本当は、たった一人の私立探偵に背負えるような秘密ではない。著者は、フィクションを通じて、戦争や、人間の手に負えない兵器の使用への警鐘を、強く鳴らしていると思う。こういうリアルな恐怖への疑似体験を通して、社会に訴えるメッセージがあるのも、パレツキーの作品のの特色だ。
そんな中、敵ばかりの街で、味方が多少なりとヴィクにできると、それだから一層嬉しく、彼女の誠意が伝わると、ぐっと心でガッツポーズをしてしまう。一時期、ほんとにだいぶ前、ちょっとヴィクがパワーダウンしたかと思う時期があったのだが、これだけの事件を解決するとは、さすが。ファンとしては嬉しい。いつも彼女は、怒りも喜びも隠さない。悲しい思いをした人のために怒り、不当なことに怒り、命をかける。でも、その裏に、犬を愛する優しさや、心通じる人を求める温もりも持っている。繊細な一面がある。そこが良いのだけれど。
今回、以前に刑事の恋人と別れたと同じような理由で、スイスに行ってしまったチェロ奏者の恋人に、別れを告げられている。一人涙を見せるヴィク。どんなにかつらかっただろう。
次も既にあと二作。計四冊が上梓されている。同時期に4Fミステリの華として、ともに愛された、スー・グラフトンのアルファベット・シリーズが、作者の逝去によって、幕が下りた。これまた魅力的な主人公だった、キンジー・ミルホーンの活躍が読めなくなったことを思うと、ヴィクには元気でいて欲しいし、さよならしなくていい幸福にも、巡り合ってほしいところ。きちんと邦訳が出ているのはありがたい。山本やよいさんの訳も、相変わらずの冴え。次を読むのが楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
サラ・パレツキーのV・I・ウォ-ショースキー・シリーズ、20作目。
「フォールアウト」の次の作品です。
元夫の姪の失踪事件と、親友ロティの甥に容疑がかかった事件。
家族はいないのだが、身内のために奮闘することが多いヴィク。今回も熱いハートで活躍します。
ロティの甥フェリックスの事件には、中東の考古学の遺物が絡んできます。
助けに行ったヴィクに対して、フェリックスはなぜか、非協力的なのだが。
研究者の所へ赴き、ちょっといい出会いもあったり。
元夫ディックとは、若い頃におそらく互いにないものに惹かれ合って結婚したのだろうが、真逆すぎてすぐ別れた(笑)
その姪にあたる姉妹とは縁が切れていてもおかしくないが、子供の頃に遊んでやった記憶があり、姉リノが行方不明だと訴えてきた妹ハーモニーを放っておくことなど出来はしない。
1982年から書かれている、このシリーズ。
年月とほぼ同じように、作中のヴィクも年齢を重ねているのだが、相変わらず元気でタフなのが素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアンネの日記って知らない人はいないんでないか?って思うくらいの有名な本。
アンネが連れて行かれた時に、アンネが日記をトランクに大事にしまったのに必要ないと言われトランクの中身をぶちまけられ…ずっと大事にして書き続けた日記をそんな風にされたら、すごく悲しいだろーに。
アンネの一家を支援していた人は、アンネが戻ってきたらまた続きを書けるようにって軽い気持ちでナチスに見つからないようにこっそりと自分のオフィスの引き出しにしまっておいた。
鍵がついてる書庫に入れたら、絶対にあやしまれ取られる。
それなら鍵がついてない、何の変わりもない引き出しに。
しかし、アンネは戻って来なかった。
アンネの父にその日記は渡された。
それがアンネの日記。
当初は、信憑性が無いと言われ書籍化もされなかった日記。
結局、密告者が分からない…
その時代は、自分の家族を守るために必死で何でもしてた…
誰が密告してても仕方ないってなってたのかな?
アンネの父は、知ったらしい…
読むのに、すごい時間がかかった。
登場人物も多けりゃ、同じような名前の人が多く… -
Posted by ブクログ
おーフェミニズム小説だなーという強い印象。ただし安易さや甘さを徹底的に軽蔑しており、リバタリアニズムフェミニズムという感じ。
特に面白かったのが、主人公のパートナーになりそびれた男、ラルフの弱々しさ。男性に特有の弱さを上手に掬い取って造形されていると思う。所属する組織を信奉してしまったり、自分の世界の秩序が脅かされるとヒステリックになってしまったり、といった彼の弱さは彼だけのものでなく男性全てが多かれ少なかれ持っていると思う。そしてかれが主人公を信用しきれなかった理由は女性の職業意識を無意識に軽視していたことだというのも、そのような偏見を持ってしまうため物事をフラットに見れなくなるという介錯をすれば男の弱点といえる。
他方で抽象的な議論に淫する「過激派」女性運動家たちが愚か者として描かれるのも面白い。著者の価値観では、実際に行動して勝ち取った小さな陣地だけが女にとって意味のあるものなのだろう。極めて個人主義的だけど、個人として生き方を確立した強い女性同士の連帯は否定しない。個人的な有能さに支えられた甘くないシスターフッド。