山本やよいのレビュー一覧

  • カウンター・ポイント

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    この本の少し前に発売になったパトリシアコーンウェルは見送って、こちらを購入したが正解だったと思う。

    ヴィクが生まれ育った街の紳士達とウォーショースキー家が絡む過去の因縁。
    そして相変わらず身を危険にさらして、その因縁を明らかにしようとする。
    しかし、探偵ヴィクの依頼人は、依頼したことを後回しにして、他の事件でメディアを賑わせていても、クレームをつけないなんて、優しいねと思てってしまう。それとも、いつものことだから、あきらめて(もしくはそれも見越して)いるのかなぁ。

    この本では、いつでもファンをがっかりさせているカブスは、昨シーズン優勝したので、次巻はカブスファンがどのように描かれているか楽しみだ。

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    2017年01月08日
  • セプテンバー・ラプソディ

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    ネタバレ

    よく考えてみると、ウォーショースキーシリーズの場合、事件が解決しても、犯人(と言うか黒幕というか)は、必ずしも逮捕されて終わりじゃないんですよね。この物語でもそう。一応、それなりの代償を負う形にはなって終わりますが、通り一遍の「巨悪が倒れで、目立たしめでたし」ではありません。そこが、このシリーズのもう一つの魅力なのかもしれませんね。
    それはそれとして、V.I.も、そこそこの歳になってきているはずですが、いつまで活躍できるのか?そのあたりが気になっています。

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    2016年08月21日
  • ウィンター・ビート

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    今回は、命の危機は前作、前前作程ではありませんが、謎が謎呼ぶ展開になっています。イラクからの帰還兵、民間軍事会社が出てくるのは時代ですね。

    ところで、最近、ボビー・マロリーが出てこない気がするんですが?って言うか、ちょっと前に定年を思わせる描写が有ったんですが、まだ定年ではない?ちょっと気になります。それに合わせ、シカゴ警察との仲も、微妙になってしまってますね。

    その変わりと言ってはなんですが、ペトラがここ二作品続けて出ています。ころころと態度を変えるところ辺りは、日本で言うと“ゆとり”の雰囲気を感じさせますが、アメリカでそう言う概念有るんですかね?

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    2016年07月31日
  • ミッドナイト・ララバイ

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    なんか、年を経るごとにアクションが激しくなっているような気がするのは、気のせいでしょうか?刑務所に入ったり、激しい暴行を受けたりしていますが、今回は、危うく焼け死にそうになってしまっています。
    このシリーズが終わるときは、昔の刑事ドラマみたいにV.I.の『殉職』で終わるんでしょうか?

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    2016年07月22日
  • ブラック・リスト

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    9.11以降のアメリカの様子がよく描かれています。所謂‘愛国者法”。これによって、疑心暗鬼になるV.I.の姿も描かれています。

    あとがきでも触れられていますが、このところ「年とった」とか「疲れた」とか言うボヤキ話が多かったV.I.ですが、この作品では、そう言ったボヤキ話は減って、若かりし頃を彷彿させるような八面六臂の活躍を示しています。V.I.は、こう来なきゃね。

    気になるのは、ロティの出番が減ってきているところ。V.I.が年齢を重ねているんですから、年上のロティはより年齢を重ねているわけで・・・。まぁ、診療所も運営しているようなので、そう言う点での心配は今のところ無いと思いますが、小説なのに珍しく登場人物が歳を取っていく形式を取っているので、何れはロティとの別れもあるんでしょうね。

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    2016年07月09日
  • ハード・タイム

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    タイトルの通り、ヴィクがハードな目に遭います。これまでも、結構痛い目に有ってきていましたが、その中でも今回は、最高にハードですね。

    この作品の特徴としては、これまでのシリーズでは、マロリー警部補やマゴニガル、ローリングスなどシカゴ警察の“仲間”が登場してきましたが、この作品では、彼らは登場せず、むしろ敵対的なシカゴ警察の刑事が登場しています。この刑事が、ヴィクを執拗に狙うんですけどね。

    それと、ロティーの登場シーンが激減。ロティが還暦を超えたという背景もあるのかもしれませんが、ここまでの作品で、ヴィクの心の拠り所となっていたロティ登場シーンが少ないことも、ハードな理由かもしれません。

    それと、つかず離れず来ていたマリがね・・・。まぁ、仕方ないですね。仕事しないと生きていけませんからね。

    中身としては、十分面白いです。読み応えあります。

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    2016年06月03日
  • バースデイ・ブルー

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    友達とか、親戚とか身近な(非常識な)人の依頼を承けることで、より大きな陰謀やら事件やらに巻き込まれ、命の危険にまでさらされる・・・。基本的には、そう言う流れの話なのがこのシリーズ。この作品もその例に漏れませんが、ラストが印象的ですね。今までのなかで一番好きかも。
    この作品で、一連のシリーズに変化が生じた気がします。次ぎはどうなるのか?

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    2016年05月15日
  • バーニング・シーズン

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    自身の親戚などを相手にすることが多かったウォーショースキーですが、この作品では、ついに犯罪小説定番の警察の不正に切り込んでいます。ウォーショースキー一流のドタバタ劇なので、何でそうなるのかわかりにくく感じることもありますが、やっぱりねぇ、犯罪小説で警察(の不正)を相手にしなければならないというのは、定番ですもんね。中々、面白いです。

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    2016年05月03日
  • 街への鍵

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    いつもながら静かな緊張感が続くレンデルの世界。もう読めないのが本当に残念。P・D・ジェイムズ、レジナルド・ヒル、コリン・デクスター、本格ものの大家がみんな亡くなってしまった。
    ウェクスフォード警部ものを読み返したいが絶版になっているのが多い。

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    2016年01月20日
  • 獣狩り

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    お正月に一気読みしました 面白いですが、いくら自分の家族にまで危険が迫っているとしても、ここまでのことをするのでしょうか? その辺りが不思議な感じがします しかし、この警官が怒るのはよく理解できます ここまでのことを、自分が出来るかというと… ですが、面白かったことは確かです

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    2016年01月05日
  • 亡者のゲーム

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    読み終わるまでにかなり時間がかかりました。それだけ内容が詰まった一冊です。

    スパイが活躍する作品は総じて好きなのですが、その中でも上位に位置する作品になりました。美術系と絡めて物語が進行し、美術が好きな私にとってはとても興味のそそられる作品でした。

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    2015年11月25日
  • 街への鍵

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    ルース・レンデルがこの五月に亡くなっていたのを、裏表紙で知った。そうだったのか…。ここのところ名前を目にしなくなってすっかり忘れていたが、「ロウフィールド館の惨劇」や「引き攣る肉」を読んだときのインパクトを久々に思い出した。これは二十年近く前の作品らしいが、まったく古い感じはしない。さすがの傑作。

    途中までは、正直もどかしい。ロンドンの通りや街の描写にかなりの筆が割かれているし、事件の姿がなかなか見えてこない。何よりも、支配的な恋人(嫌なヤツなんだよね、これが)に毅然とした態度をとらないヒロインにイライラする。あーあ、またそんなこと言って、それじゃダメなんだってば!と何度思ったことか。

    しかし、ジリジリしつつ読み進めていった終盤近く、ある事実が明かされて、え?と驚きそこからはもう一気読み。さらに最後の最後、だめ押しのようなあっと驚くラストが待っていた。慌ててページをめくり直したのは私だけではないと思う。

    全体に漂う雰囲気が独特だ。うまく言えないが、ひどく不穏なのだけれど、それがとても上品な感じ。こういうのを読むと、イヤミスと呼ばれる国産ミステリって底が浅いなあと思ってしまう。

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    2015年10月27日
  • サマータイム・ブルース[新版]

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    90年ごろに旧版で読んで以来の再読。やっぱりおもしろかった。
    前回読んだあと、筋書きや事件の大筋はきれいさっぱりわすれていたんだけど、ヴィクのくらしぶりとか、ロティとのからみは「そうそう!」という感じでしっかり残っていたのがおもしろい。

    正直、あそこまでの独立心はわたしには皆無なので、そんなにがんばらなくてもいいじゃない、と思ってしまうところが多々なんだけど、ジルや、あの女の子(もう名前忘れた)に対する優しさなど、ああ、こういうところがヴィクの魅力だなと再認識した。

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    2015年08月25日
  • セプテンバー・ラプソディ

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    2015.5.6久しぶりのヴィク。
    相変わらずかっこいい。テーマは重く、読むのが辛いところも。
    家族の歴史、絆。

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    2015年05月06日
  • セプテンバー・ラプソディ

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    ロティの幼馴染、キティの家族。マルティナ、ジュディ、マーティン。物理学と家族の愛憎、嫉妬や嘘。時代背景が複雑に絡み合い‥相変わらず大きな力に翻弄されるヴィク。
    IT大企業メターゴンと国家安全保障省による執拗な追跡。
    絶望的な状況の中、小さな事実を積み上げて、仮説を立て真実に辿りつく手法、新旧の友人の手助け、信頼は変わらない安心感。

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    2015年04月10日
  • セプテンバー・ラプソディ

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    シカゴの女私立探偵V.I.ウォーショースキーのシリーズ、長編16作目。
    アラフィフとなっても相変わらず、気風のいいヴィクが活躍します。

    助けを求める電話をのこして、行方が分からなくなった女性ジュディ。
    友人ロティの頼みで、ジュディを探していたヴィクが事件に巻き込まれます。
    高名な医師ロティは年上の親友で、ヴィクが母とも慕う女性。
    そのロティとは親の代からの縁がある一家とはいえ、ジュディは麻薬中毒で身を持ち崩しているらしい。
    行方を追ううちに、ジュディの息子マーティンまでが行方不明とわかります。
    企業の秘密を盗んで逃亡したという疑いがかけられていた‥

    ロティが育ったヨーロッパでの出来事、第二次大戦中の核開発研究までが絡んできます。
    現代のシカゴの巨大企業と、壮大な過去が交錯する‥
    家族の歴史の暗部が次第に明らかに?

    ヴィク自身は、演奏旅行で留守がちだけど理解ある恋人と上手くいっていて、元気がいいのにほっとします。
    途中で出くわした麻薬密売人をやっつけたり、監禁から逃れたりと大車輪。
    ユーモアと皮肉も健在で、かなりややこしい話を面白く読ませます。

    2012年発表の「ナイト・ストーム」から少し間が開いてますね。
    今後も、活躍ぶりを読みたいものです☆

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    2015年04月18日
  • セプテンバー・ラプソディ

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    第二次世界大戦中の核開発、ドイツのユダヤ人迫害、コンピュータ、特許、そして死体、

    第二次世界大戦中のオーストリアと現代のアメリカ・シカゴが交互に描かれ、徐々に真相が明かされ、物理にとりつかれた女性科学者とその子孫の物語が語られる。

    親子の絆と反発、仕事と家族、嫉妬と裏切り、時代を超えて引き継がれるもの、さまざまな要素が詰め込まれ、物語を織りなしている。

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    2015年02月22日
  • 妻の沈黙

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    人生をもっと貪欲に楽しむ資質を持ちながら、どこか控え目な妻ジョディ。彼女の忍耐と沈黙は、単なるプライドではなかったのだなあと思うと切なく、夫の単細胞っぷりがさらに際立って哀しい。

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    2015年01月23日
  • サマータイム・ブルース[新版]

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    いわゆるハードボイルドミステリー。の、看板作品を読んでおこう、という個人的な試みの一つ。
    サラ・パレツキーさんというアメリカの女性作家。V.I.ウォシャウスキーという名前の30代?の女性私立探偵が活躍するシリーズ、1作目。
    未見ですが、キャスリーン・ターナーさんが主人公を演じた映画「私がウォシャウスキー」(1991)もあります。
    キャスリーン・ターナーさんは好きなので、その内観たいものです。

    面白かったです。
    正直に言うと「ゴッドウルフの行方」とは段違いに面白かったです。

    小説のアメリカでの発表は1982年だそうです。舞台はシカゴ。
    私立探偵のウォシャウスキーさんが、大手組合活動家、大手銀行家、大手保険会社、マフィア、の4者が絡んだ陰謀に挑む。
    あらすじは別として、なんで面白かったのか、と考えると。
    主人公のキャラクター。主人公が「正義の味方活動」をするモチベーションというか、主人公の歪みというか、持ち味というか。
    だと思います。

    フィリップ・マーロウさんは、資本主義大国アメリカが独り勝ちに近い爛熟の時期に、
    恐らく人類が初めて経験する欲望の集団マラソンのような大都会で、
    「そこにいるべからざる、高貴な知性とモラル」と持ってしまっている人だったんだと思います。
    そして、そこで生きていくべき撃たれ強さと俗なる人間関係への忍耐能力を持っていたんですね。
    そして、大事なことは、予め自分が敗北と孤独に所属するべき流れを認める虚無さ、自虐趣味を持っている。
    それが何故そうか、という具体的な理由が説明されなくても、それが一人称の文章の意識の根幹にある。と思うんです。
    だから実は、欲望の集団マラソンたる資本主義都会生活を描写する、ある種のパサッージュというか、文明批評というか。
    そういう香りが、エンターテイメントの装いの粗筋を流れながら一貫してあります。
    それが最大の魅力なんだと思います。

    そこンところのいちばんの魅力が、「ゴッドウルフの行方」のスペンサーさんには弱かったと思います。
    「単独行動の正義の味方が世間のシステムの中に存在する悪事を懲らしめる」という枠組みは同じなんですけど、
    スペンサーの視点、という味付けが、欠けている。コリコリした読みごたえがそこには少なかったと思います。
    言ってみれば、歪みが足りないというか。マッチョすぎるかな、というか。
    (でも、「そういう方が読み易いし好きだ」、という嗜好も、もちろん人それぞれ、あるいは読み手がその時に求めているモノによりけりで、大いにアリだと思いますが)

    「サマータイム・ブルース」のウォシャウスキーさんは、やっぱり女性ですから。
    女性だけどタフに暴力の街で自立を貫いていく。孤立を貫いていく。
    それだけでもう、ここの言うところの「歪み」が作りやすいんでしょうね。
    圧倒的に少数派であり、そこに無理がある。要するに、自虐があるんですね。
    主人公が世間のマジョリティから対極の地点に居る、というかそこに居たい、という心情的な背景がはっきりするんですね。
    やっぱりまだまだどうして、世の中の歯車を強引に回しているのは、男たちの世界。
    人種差別と同じく性差別も、無くならない問題です。その問題がそこに在る、私たちの中にも、必ずある。という考え方が当たり前になっただけですからね。21世紀になっても。

    だから、世の中の勝ち組システムに上手く乗じた形での暴力、という強者に対したときに。
    当然、「正義の味方」たる主人公たちは、弱者の側に立つんですが、
    ウォシャウスキーさんが弱者を守るときに、それは、見下して庇護・同情している、というだけでなく。
    「そこで可哀そうな目にあっているのは、自分でもあるのだ」という感じ方をしているのが、判るんですね。感じられるというか。

    「世の中のシステムから切り離された独立独歩の地点に居て、完全自分裁量の経済活動をして、心理的にも自立して。
    個としての能力とコネクションと尊厳に満ちて、誰にも見下されず、そして媚びず。
    最高の距離感の仲間と友人がありながら、独り巨悪に立ち向かい、困難があっても最後には知恵と精神力とストレス解消な自衛暴力の反撃で勝利する。
    そして誰の賞賛も浴びずに背中を見せて去っていく」
    というのが、恐らくハードボイルド・ミステリーの、物語としての疑似体験の甘い美味しい、究極のポイントだと思うんです。

    そうすると、そもそも、そういうスタート地点に居る、説得力とリアリティのある理由、が大人としては欲しい訳ですが、
    それがこの物語には、あった気がしました。
    お話としても、まだまだ60年代-70年代のアンチ権力運動の香りが残る中で、
    ●組合=なんとなく反体制左翼イメージ
    ●銀行家=なんとなく体制側右翼イメージ
    ●保険会社=なんとなく中立的な「大人の難しいシステム」イメージ
    が、実はグルになっている、という「理想無き欲望の街」世界観が作られて、
    それに、アンチ権力運動の中で自家中毒を起こしているのんきな大学生たちが絡む。
    そのどれにも、(どの家族イメージにも)はみ出している主人公と、ベタながらそこに絡むワトソン的な女性下町医師という相棒。

    既存の探偵冒険物語を、なんていうか、ポストモダンな価値観の時代に、男女を裏返しに焼きこむ工夫を積み上げて、
    新鮮な世界観が作れていると思いました。
    起承転結で言うと、ちょっと「承」あたりでダレたんですが。相棒的な女医ロディさんが出てきた辺りで俄然、世界観がハッキリした感じがありました。
    それまではやや、主人公が男性社会に無理矢理肘鉄を打ちまくっている感が、ちと胃にもたれたんですが。
    信頼して依存する相棒が出てきたことで、対比的に小説世界全体が豊穣になった気がします。

    このシリーズは今も健在なようですね。
    その代り、年1作のような多作ペースではないようですが。
    近作では携帯パソコンの時代背景になっているようで、
    そのあたり、また読んでみても良いな、と思わせてくれました。

    新訳らしく、読み易かったです。
    (新訳ではないのか?「新版」?)
    でも、表紙のデザインは、全然好きじゃないですが(笑)。


    ##########以下、個人的な備忘録としてのあらすじ############

    ①大学生男子の息子を探して欲しい、と銀行家からの依頼。
     (実はきっかけは、依頼者が主人公の父=元警官(もう死亡)を知っているからという理由あり)

    ②調査したら、大学生男子は射殺体で発見。同棲していた女子大生は行方不明。
     その女子大生は、大手組合活動家の娘。

    ③大学生のアルバイト先の保険会社を主人公が取材。
     さらに大学を取材。主人公が銀行家の息子なんだけど、左翼志向だったこと。

    ④主人公をギャングが、手を引けと脅して暴力。

    ⑤死んだ大学生男子の妹、の情報。
     そして、逆算思考で、組合活動家と銀行家がつるんでいるのでは、という仮説。
     男子大学生の父=銀行家、が殺害される。

    ⑥大学生男子の部屋の捜索から、「架空保険請求の不正」が殺人の理由では、と思う。

    ⑦組合活動家、銀行家、保険会社の上役、がつるんでいるという状況証拠を得る。

    ⑧大学生への取材と呼びかけから、行方不明の同棲女子大生と接触。

    ⑨男子大学生の妹の、内部情報。そして女子大生の語りから、
     「男子大学生の父=銀行家」そして「女子大生の父=組合活動家」そして「男子大学生のバイト先=保険会社重役」の三者の、
     架空保険金請求による不正収入、という犯罪全貌が判る。無論そこにマフィアが関係している。

    ⑤主人公が取材途中で恋愛関係になっている、保険会社の平社員男性。この人が捜査に協力していたが、主人公を信じ切れずに、上役=悪者、に情報を言っちゃう。

    ⑥平社員男性の自宅で、殺しに来た悪者たちと主人公のアクション、主人公、勝つ。おしまい。

    という流れなんですね。
    まあ、「粗筋は、いちばんのお楽しみどころではない。主人公が迷走する身振りと、その間ににじむ生活感や思考過程がいちばんの味わい」
    というのは、他のハードボイルド・ミステリーと変わらないんですけどね。

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    2014年05月11日
  • ダウンタウン・シスター

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    元気が出てくる、大好きなシリーズ。ヴィクと妹分のキャロラインが会うと必ず言い合いになって、その後半分位はプイッとどっちかが出ていっちゃって、半分位は仲直り。まるで、母と私(苦笑)。

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    2014年03月21日