永嶋恵美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ読書前メモ:
本紹介を見て購入。
舞台が明治から大正にかけての横濱で地元近くというのも相まって興味を持った。
読書後メモ:(要約)
横濱の貿易商、檜垣澤家当主の妾の子として誕生したかな子。火事で母を亡くしたかな子は、檜垣澤スエや花、花の3人の娘たちと共に暮らすことになる。女中や使用人と同じ部屋で過ごしながら、母の教え(人の顔や何を話したのかを絶対に忘れないこと。人には三つの顔があること)を心に留め、時には盗み聞きをして情報収集をしていた。ある日の夜、婿養子が火事で不審な死を遂げ、第一発見者となったかな子は恩人と持ち上げられ、少しずつ表舞台に出ることになる。園遊会や姉たちに連れ回される中でかな子は、自分も使われる立場ではなく、スエのように人を使う立場になりたいと思うようになる。明治末期から大正(関東大震災まで)を描く、ミステリーかつ壮大な少女の成長物語。
読書後メモ:(感想)
時代考証を入念に行なったことがわかるフィクションだけどノンフィクション。大正12年9月1日に何が起こったのかを知っているからこそ、読み進めて行く中でも否が応でも意識しなければならない緊迫感。軍部の話も時代柄よく出てくるが、この後の展開を思うと、非常に胸が苦しくなる。作品内では伝聞でしか伝えられることはないが、背景には「戦争」や「陰謀」がある、私の好みに合った小説だった。
好みと言えば好みの男が出てきた、西原…死なないでくれ…。 -
Posted by ブクログ
題名が『檜垣澤家の炎上』なのでクライマックスとして大火災が起こるのであろう…と勝手に決め込んでいたのですが、ラストに近づくにつれ、もしかしてそれは序章で起こる火事のことかも、と思い込みが揺らいだところでの最後の最後の展開に不意を突かれました。一体、この先何が起こるのだろう?という前のめりな気持ちをいなす様に、維新後の絹のビジネスで膨大な富を蓄積した商家を舞台に、日々の細かな出来事とその家に迎えられた妾腹である女主人公の心の動きが、これでもか、というほど頁数を費やして語られて行きます。ゴールが予想できない不安定な感じが明治・大正の富豪のライフスタイルの描写や次から次にばら撒かれる伏線に幻惑されて、逆に心地よくなっていった時点で、作者の意図に嵌っていたのだと思います。果たしてこの作品をミステリというジャンルで語っていいものかどうか?でもベースには緻密な論理構成による謎の設定があることは確か。ちょっと時代設定は後にずれるけど似たような雰囲気を持つ小説、奥泉光『雪の階』もミステリとしてジャンル分けされていたっけ。そういえば、この文庫の千街晶之の解説では山崎豊子『華麗なる一族』、谷崎潤一郎『細雪』、そして横溝正史『犬神家の一族』を引き合いに出してました。確かに『華麗なる一族』は日本の産業利権、『細雪』は富豪の姉妹の季節の暮らしぶり、『犬神家の一族』も相続に関する女同士の葛藤、と本作の構成要素が入っています。それに加えて自分が感じたのはTVドラマシリーズ『家政婦は見た』味。邸内の秘密に自己防衛策とはいえ、聞き耳を立ている主人公に逞しさとやましさを感じました。そもそもそのシリーズの原作は松本清張『熱い空気』なので、そこから生じるミステリ感、あると思います。で、最後まで読み切ってこの小説ってなんだったんだろう?と考えた時、思ったのが『赤毛のアン』です。孤児の女子が新しい環境で自己実現していく、女子のビルディングスロマンなのではないか?と。確かな意志を持って野望を実現する、そう、かな子はブラック版アン・シャーリーなのではないでしょうか?『黒毛のかな子』…『風と共に去りぬ』のスカーレットのように明日に立ち向かっていくか?ヒロインの今後が気になります。それは戦争というもっと大きな破滅で向かう道であるのです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ幕引きは唐突で乱暴に感じたけど、史実に基づいた出来事に沿って進む、主人公かな子のサクセスストーリーとして興味深く読んだ。
個人的には恋愛要素がもう少し読みたかった。
かな子が親友である暁子に対して「彼女以上に大切な人は今後現れないだろう」と独白する場面があったので、「これは予想を裏切って他の男性と恋に落ちる伏線では!?」と期待していたのですが。
まさか候補の男性が二人とも帰らぬ人となるとは思いもよりませんでした……。
恋愛にうつつを抜かしている暇はない、という作者様からの愛のある試練でしょうか……。
かな子の宿敵も家族も思い出もすべては瓦礫の下に埋まってしまった。
檜垣澤家を復興させるまでの紆余曲折も読んでみたかったです。 -
Posted by ブクログ
アミの会によるアンソロジーを読むのは4冊目ですが、これもどれもじんわり涙するお話が多かったです。特に「猫への遺言」柴田よしき著が良かったです。定年退職した老夫婦の夫がコロナに感染し、急逝してしまう。
その後、妻がみつけた3通の遺言書。妻への遺言書は、読まれるはずのないものだったのに急逝だったために読めてしまう。知らなかった夫の本心。最後に猫への遺言書で、また涙でした。
自分と重ねて何とも言えない気持ちになりました。
「青い封筒」松村比呂美著も良かったです。
あんなお手紙もらってみたい。親子、夫婦もこんなふうに、積み重ねていくものだよなと思いました。
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Posted by ブクログ
携帯サイトで見つけた、恋人を強奪してくれるという「オフィスCAT」に頼る女性たちの物語。恋人を強奪する=泥棒猫派遣業のヒナコの成功率はほぼ100%。しかし単純に「恋人を強奪する」だけではなく、依頼人にとって何が最適なのかを見極め行動する、そんな彼女の姿がとっても魅力的な短編集です。
最初の「泥棒猫貸します」がもう見事。DVの彼と別れたい依頼人をどのように救うのか、もう痛快としか言いようがありません。たしかに一時別れるのに成功したところで、あとあとまで引きずらない保証はないものね。これはもう完璧!
一方で「マイ・フェア・マウス」のような優しい手段があったり、「鳥籠を揺らす手」のようなサスペンスフルな物語があったり、非常に楽しい一冊でした。