永嶋恵美のレビュー一覧
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大正の横浜を舞台に富豪一族の中で妾の子であるかな子が地位を得るために奮闘する物語。
とにかくボリュームのある一冊。女系一族で知略を尽くしてのし上がろうとするかな子と、一族を支配する本妻スヱとの静かな戦いが面白く読み応えがあった。
本妻の『大奥様』スヱは要吉が興した商店を一代で横浜一の大店に育て上げたやり手で要吉が寝たきりになってからは商店の経営を取り仕切っている。その補佐役を担う娘の『奥様』花、さらに花の3人の娘たち。
『檜垣澤に男はいらない』とまで言われる女系一族で使用人と同じような待遇を受けていたかな子だが、自分も要吉の娘であるというプライドと持ち前の知恵と容量の良さで檜垣澤家での地位を確立するため立ち回る。
蔵で不審死を遂げた花の婿、スヱの片腕として暗躍する書生、軍との密談などのミステリー要素もあるが、子供ながらに知恵と度胸のあるかな子と、常に先を読み周囲をうまく操るスヱの腹の探り合いにワクワクした。
成長とともに考え方、立ち回り方がスヱに似てきている部分もあって、かな子にとって大きな壁であったスヱだけど、女の戦いにおける手本でもあったんだよなぁ… -
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横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは──。
Xで旅行記や読書記録をよく読んでいるファンの方が絶賛していた一冊。めっちゃ面白かった!こういう明治・大正時代のお家騒動みたいな話には少し苦手意識があったのだけれど、妾の子として苦難を浴びつつも自分の頭でしっかりと考えて人生を切り開いていこうとするかな子のたくましさに心を打たれる。血のにじむような努力を重ねても重ねても報われなかったり想定外の展開になったりするんだけれど、いったい真実は何なのか?謎を解き明かそうとするかな子や周りの人々の思惑に翻弄されっぱなしだった。ミステリーとしても面白いけれど、大河ドラマを見ているようなスケールで、ひとりの女性の底力に元気をもらえる。 -
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ネタバレこれは、出版社にブラボー!です。
よくぞ上下巻に分けずに800ページを一冊にまとめてくれました。
だって、もう、止められないもの、続きが気になって。
主人公のかな子は、横濱で知らぬ者のない商家、檜垣澤家の当主の妾の娘。
両親に愛されて育ったが、8歳の時に母が火事に巻き込まれて亡くなったのをきっかけに、父のもとに引き取られる。
しかしその時には父は、卒中の後遺症で寝たきりになり、意思の疎通もままならない状態で、予後が良くなることなく父も亡くなった。
女中部屋住まいから、物置部屋へと少しずつ自分の居場所を広げていくかな子。
自分の居場所は自分で切り開かなければならない。
売れっ子芸者だった母が幼かったかな子に教えたのは、人の顔色と声色と腹の色を見極めなさいということ。
誰が敵か味方か、後に覚えた将棋で、手駒を増やすことも考えながらかな子は成長していく。
かな子の父の正妻はスヱ、その長女である跡継ぎの花、さらにその長女の郁乃。
檜垣澤家は女系一族なのである。
花の夫である辰市が事故で亡くなっても、事業には何の問題もない。
郁乃の夫である惣治はいるものの、病弱な郁乃の代わりを徐々にかな子が担っていくが…。
一応はミステリなのだ。
でも、とりあえずミステリでなくても、この女系家族の腹を見せ合わない駆け引きが面白い。
誰も心の内を話さないので、かな子視点で想像するしかないのが、もどかしくも愉快。
郁代の妹の珠代や雪江に可愛がられるために、かな子が取る態度。
檜垣澤家の使用人たちに対する態度。
家にいたって気は抜けない。
でも彼女は頭がいい。
勉強ができるだけではなく、その時自分が求められている役割を間違うことなくこなすことが出来る。
花の妹の初(スヱの次女)の婚家である山名医院の書生である西原が、かな子には腹の色が読めない存在として登場するが、これの存在もかな子の成長を促している。
というかねえ、何気ない描写が後々思いがけないスイッチになったりして、実は良質のミステリだったのだよなあ。
檜垣澤家の炎上とは、SNS上の炎上ではなく、火事のこと。
横濱は火事が多かったらしい。
函館も大きな火事が多かったから、港町って風が強くて炎上しやすかったのかしら。 -
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昨年12月に読んだ複数の雑誌で見掛けて気になり、読みたかった作品。
昨年のうちに買おうと思ったけれど、在庫が書店にもなく、ネットにもなく、予約すらできず、買えたとしても定価以上の値段…。
メ〇カリではなんと、定価の倍以上の値段で販売されていてびっくり(⊙⊙)!!
なので、買うことをすっかり諦めていたのだけれど、重版されたタイミングで手にすることができた。
横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾であった母を亡くしたかな子は、この家に引き取られる。ある夜、婿養子である辰市が不審な死を遂げる。やがて、かな子が辿り着いた真実とはー…?
主人公であるかな子。
幼いながらに母の教えに従い、心を許せる相手がいない檜垣澤家の中でうまく立ち回る。
優れた観察眼を持ち、相手に合わせて臨機応変に接し方を変え、子どもらしさを見せるのは檜垣澤家の三姉妹を喜ばせるための演技をする時だけ。
女中たちからの嫌がらせにも屈しない。
まだ10歳に満たない子どもなのに、達観しすぎていて、そうしなければ生きていけない境遇を思い、読んでいて切なくなった。
かな子の前に立ちはだかる壁、大奥様がまたすごい。
檜垣澤家の中で起こること全てが、大奥様の思惑通りに動いている。
また、同じ妾腹であっても性差があることに驚いた。
男に産まれていたら手に入れられたであろうものが、かな子には手に入らない。
女であることをいいことに、いいように使われ、遠ざけられてしまう。
年齢を重ね、「努力は惜しまない。自らの手で掴み取りたい。」と逆境に立ち向かっていくかな子を心から応援したくなった。
本書は明治から大正時代の物語で、歴史的背景も語られており、歴史に明るくない私はすごく勉強になった。
スペイン風邪の描写はコロナに似ているように感じた。
物語の根底に大きな謎が横たわっているが、ちょっとした謎も織り込まれていて、ボリュームがあっても飽きることなく楽しめた。
読みやすいが故に、サラっと読んでしまいがちで、謎が明らかになる場面では「あっ、あれが伏線だったのか…!」と毎回驚かされた。
それまでのかな子を見守ってきたからこそ、ラストシーンは胸にグッときた。
彼女たちの未来が明るくありますように。