あらすじ
横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは――。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。(解説・千街晶之)
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Posted by ブクログ
これは、出版社にブラボー!です。
よくぞ上下巻に分けずに800ページを一冊にまとめてくれました。
だって、もう、止められないもの、続きが気になって。
主人公のかな子は、横濱で知らぬ者のない商家、檜垣澤家の当主の妾の娘。
両親に愛されて育ったが、8歳の時に母が火事に巻き込まれて亡くなったのをきっかけに、父のもとに引き取られる。
しかしその時には父は、卒中の後遺症で寝たきりになり、意思の疎通もままならない状態で、予後が良くなることなく父も亡くなった。
女中部屋住まいから、物置部屋へと少しずつ自分の居場所を広げていくかな子。
自分の居場所は自分で切り開かなければならない。
売れっ子芸者だった母が幼かったかな子に教えたのは、人の顔色と声色と腹の色を見極めなさいということ。
誰が敵か味方か、後に覚えた将棋で、手駒を増やすことも考えながらかな子は成長していく。
かな子の父の正妻はスヱ、その長女である跡継ぎの花、さらにその長女の郁乃。
檜垣澤家は女系一族なのである。
花の夫である辰市が事故で亡くなっても、事業には何の問題もない。
郁乃の夫である惣治はいるものの、病弱な郁乃の代わりを徐々にかな子が担っていくが…。
一応はミステリなのだ。
でも、とりあえずミステリでなくても、この女系家族の腹を見せ合わない駆け引きが面白い。
誰も心の内を話さないので、かな子視点で想像するしかないのが、もどかしくも愉快。
郁代の妹の珠代や雪江に可愛がられるために、かな子が取る態度。
檜垣澤家の使用人たちに対する態度。
家にいたって気は抜けない。
でも彼女は頭がいい。
勉強ができるだけではなく、その時自分が求められている役割を間違うことなくこなすことが出来る。
花の妹の初(スヱの次女)の婚家である山名医院の書生である西原が、かな子には腹の色が読めない存在として登場するが、これの存在もかな子の成長を促している。
というかねえ、何気ない描写が後々思いがけないスイッチになったりして、実は良質のミステリだったのだよなあ。
檜垣澤家の炎上とは、SNS上の炎上ではなく、火事のこと。
横濱は火事が多かったらしい。
函館も大きな火事が多かったから、港町って風が強くて炎上しやすかったのかしら。
Posted by ブクログ
大河ミステリー。明治から大正にかけて、妾の娘が頭脳を生かして本家の中で生き抜いていく。大戦・パンデミック・自然災害の中、物語が進んでいく。殺人の謎が伏線を回収しながら解決していくので、面白い。750ページがあっという間にすぎていきます。
Posted by ブクログ
ミステリーではない気がするけどとても楽しめた。
1人の妾の子、かな子の目線で檜垣澤家を見たお話。かな子の見る世界を広げすぎず広げなさすぎすでボリュームはあるけどごちゃごちゃせずに濃い内容を効率よく目一杯、という感じだった。
初については結構予想外ではあったし、西原についても想像と違った役割だったことがわかりどんでん返しが面白かった。
もう少しかな子と檜垣澤商店のこの先を読みたい気がする。
Posted by ブクログ
解説に「細雪」や「華麗なる一族」の系譜に残る逸品との言葉があり納得。
生まれによるどうしようもない壁を主人公と一緒に感じながら、大正という時代に感じるロマンチシズムのようなものも同時に楽しめる小説でした。
癖のある登場人物たちがそれぞれ人間的で面白い。
映像で見ているかのように立ち上がってくる描写も見事。
いつか主人公の活躍を続編として読んでみたい。
Posted by ブクログ
主人公が置かれた状況の中でいかに行動して自分のやりたい事を実現するか生き抜くかが早い段階で興味が持て最後まで楽しめました。個人的には西原さん推しです。
Posted by ブクログ
時代物は苦手なのに、引き込まれて先が楽しみでならなかった。読み応えのある厚さ、伏線回収も素晴らしく、女主人として成功していく続編もあれば読みたかったくらい。まだまだ男性中心の世の中であったろう時代に活躍していたスエや花もすごいなと思う。
Posted by ブクログ
「このミステリーがすごい!2025」国内編第3位。最近本も読めていないし本屋にも行けていない…という状況だったので、このミスでまだ読んだことのない作家さんの小説を選択。
舞台は明治〜大正期の横浜、ミステリーであり大河小説であり青春小説でもある。
主人公のかな子は登場時から既に賢い子である。そのかな子を一枚も二枚も上回るのが大奥様のスヱであるが、この2人は本当に似ている。読めば読むほどこの2人の相似性が際立つ。本妻と妾の子という緊張した関係性ながら、単純な愛憎物語にならない、互いの強かさ。
女系家族である檜垣澤家の他の女性たちもまたそれぞれに強い。これだけの女性を、埋没させず描き切っているところが非常に面白かった。
ミステリーの部分の仕掛けもさりげない部分に張ってある伏線が後半で生きてくる。総じて影の薄い男性陣の中で、謎が際立つ男西原(こいつを一筋縄ではいかないやつに見せる描きっぷりが良い)。そして複雑な家族関係、様々な感情…。
そして青春。かな子と暁子の友情にはときめかざるを得ないではないか。日々智略を巡らせて生きるかな子が自分を出せる瞬間は読んでいてもほっとした。
読み進めるうちに、謀略に満ちていると思われた物語の中に、ずっと優しさがあったことに気づく。一癖も二癖もある家族たちの、隠された優しさ。恐ろしさと並立するそれが救いのように感じる。
読み終えたあと、物語の先がとても知りたくなった。
Posted by ブクログ
すごい評判になっていた一冊。かなり分厚いので読み始めるのにちょっと覚悟がいるかもしれない。自分もそうだったのだが、主人公のかな子が学生になったあたりから、かなり面白くなっていって、後半は夢中で読み進めるくらいには面白かった。最初は幼さを武器にし、少しずつ知識と知恵を蓄え、大人たちを追い越そうとする姿はめちゃくちゃ凛々しい。あまりにも優秀すぎてびっくりする。7歳の頃の自分はこんなに賢くなかったよ。明治の世において女系家族というものがどれだけ特別なのか、そしてそれを実行する大奥様たちがどれだけ凄かったのか、ラストになって主人公が否応なく実感するのが上手いなあと思った。あと、きちんと張られていた伏線がほぼ回収されているのも凄い。とても面白い作品だった。
Posted by ブクログ
妾の子であるかな子は、とても子どもとは思えないほど賢く聡明。
生き残るためとはいえ、檜垣澤家に入ったかな子の生活は、常に緊張感があり息が詰まりそうで気が抜けない。
ミステリではないものの、随所に伏線が張られていて、それが終盤に向けて回収されていく展開が面白かった。
かな子の行く末が気になり、特にラストにかけては夢中で読み進めました。
匿名
大正時代の強く生きる少女
愛人の娘なのでつらく当たられるも、本宅の人間の気質を素早く見抜き、幼い頃からうまく転がし戦い抜くことを誓うかな子の姿がとても良すぎてページをめくる手が止まらなかった。
ただ、そうした姑息な姿が苦手とのレビューも見かけたので好きになれるかは人によるかも。
かな子のしたたかさ機転が私には好ましく応援したいものだったので楽しく読みました。
Posted by ブクログ
読んでみたくて取り寄せて手にしたときに、800頁の厚さに圧倒される(汗)。明治から大正を舞台に、檜垣澤家に引き取られた妾の子ども・かな子。読めば読むほど、かな子の生き様から目が離せず、寝る間も惜しんで読んでしまった。ミステリーというよりは人間ドラマ強めで、朝ドラを観てる感覚。面白かったが、ここで終わりかとも思う。続編があれば読みたい。
Posted by ブクログ
永嶋恵美さんの作品、初読みです。
2026年初作家、21人目です!
こちらの作品は2025年このミステリーがすごいの第8位です。
明治から大正にかけての檜垣澤家の人々の話しですが、まず本の厚さに驚きます(笑)
文庫本で800ページ弱‥、そんなに厚いなら400ページ上下巻でお願いしますって感じ。
だいたいいつもの読書だと100ページ過ぎたくらいから調子が出てどんどん読めるようになるんだけど、100ページ超えてもなかなか手強い感じでした。
でも、読みづらいとかそんなことは全くなく、古い時代のお話しだけど、興味深く読めました。
結構好きなタイプのストーリーでした!
ラストがそんな感じか〜とちょっと物足りない感はありました。
Posted by ブクログ
どこら辺からミステリになっていくのかな〜と思いながらかな子の奮闘を読み進めていくと、終盤の伏線回収に痺れました。関東大震災で何もかもチャラになるんじゃなくて、かな子がスエや花を出し抜いて成り上がっていく様を見たかったというのはちょっと望み過ぎか。面白かったです。
Posted by ブクログ
読書前メモ:
本紹介を見て購入。
舞台が明治から大正にかけての横濱で地元近くというのも相まって興味を持った。
読書後メモ:(要約)
横濱の貿易商、檜垣澤家当主の妾の子として誕生したかな子。火事で母を亡くしたかな子は、檜垣澤スエや花、花の3人の娘たちと共に暮らすことになる。女中や使用人と同じ部屋で過ごしながら、母の教え(人の顔や何を話したのかを絶対に忘れないこと。人には三つの顔があること)を心に留め、時には盗み聞きをして情報収集をしていた。ある日の夜、婿養子が火事で不審な死を遂げ、第一発見者となったかな子は恩人と持ち上げられ、少しずつ表舞台に出ることになる。園遊会や姉たちに連れ回される中でかな子は、自分も使われる立場ではなく、スエのように人を使う立場になりたいと思うようになる。明治末期から大正(関東大震災まで)を描く、ミステリーかつ壮大な少女の成長物語。
読書後メモ:(感想)
時代考証を入念に行なったことがわかるフィクションだけどノンフィクション。大正12年9月1日に何が起こったのかを知っているからこそ、読み進めて行く中でも否が応でも意識しなければならない緊迫感。軍部の話も時代柄よく出てくるが、この後の展開を思うと、非常に胸が苦しくなる。作品内では伝聞でしか伝えられることはないが、背景には「戦争」や「陰謀」がある、私の好みに合った小説だった。
好みと言えば好みの男が出てきた、西原…死なないでくれ…。
Posted by ブクログ
なんという壮大な大河小説!そしてちゃんとミステリー!
富豪一族の妾の娘だった、かな子を取り巻く女たちの腹の探り合い。幼いながらも絶対に負けない、絶対にのし上っていくという強い意志を持ったかな子が凄い。
成長するにつれ、周りがもっと良く見えてくる様や、その当時の暮らしぶりなども丁寧に描かれていて、ちょっとずつ散りばめられた伏線も終盤に回収、約800ページという長編なのに中だるみすることなく、ラストの怒涛の勢いが本当に凄かった。
女怖い(๑ᴖ◡ᴖ๑)
Posted by ブクログ
題名が『檜垣澤家の炎上』なのでクライマックスとして大火災が起こるのであろう…と勝手に決め込んでいたのですが、ラストに近づくにつれ、もしかしてそれは序章で起こる火事のことかも、と思い込みが揺らいだところでの最後の最後の展開に不意を突かれました。一体、この先何が起こるのだろう?という前のめりな気持ちをいなす様に、維新後の絹のビジネスで膨大な富を蓄積した商家を舞台に、日々の細かな出来事とその家に迎えられた妾腹である女主人公の心の動きが、これでもか、というほど頁数を費やして語られて行きます。ゴールが予想できない不安定な感じが明治・大正の富豪のライフスタイルの描写や次から次にばら撒かれる伏線に幻惑されて、逆に心地よくなっていった時点で、作者の意図に嵌っていたのだと思います。果たしてこの作品をミステリというジャンルで語っていいものかどうか?でもベースには緻密な論理構成による謎の設定があることは確か。ちょっと時代設定は後にずれるけど似たような雰囲気を持つ小説、奥泉光『雪の階』もミステリとしてジャンル分けされていたっけ。そういえば、この文庫の千街晶之の解説では山崎豊子『華麗なる一族』、谷崎潤一郎『細雪』、そして横溝正史『犬神家の一族』を引き合いに出してました。確かに『華麗なる一族』は日本の産業利権、『細雪』は富豪の姉妹の季節の暮らしぶり、『犬神家の一族』も相続に関する女同士の葛藤、と本作の構成要素が入っています。それに加えて自分が感じたのはTVドラマシリーズ『家政婦は見た』味。邸内の秘密に自己防衛策とはいえ、聞き耳を立ている主人公に逞しさとやましさを感じました。そもそもそのシリーズの原作は松本清張『熱い空気』なので、そこから生じるミステリ感、あると思います。で、最後まで読み切ってこの小説ってなんだったんだろう?と考えた時、思ったのが『赤毛のアン』です。孤児の女子が新しい環境で自己実現していく、女子のビルディングスロマンなのではないか?と。確かな意志を持って野望を実現する、そう、かな子はブラック版アン・シャーリーなのではないでしょうか?『黒毛のかな子』…『風と共に去りぬ』のスカーレットのように明日に立ち向かっていくか?ヒロインの今後が気になります。それは戦争というもっと大きな破滅で向かう道であるのです。
Posted by ブクログ
明治大正時代の富豪・檜垣澤家を舞台に、そこに引き取られた妾の子であるかな子を主人公として話が進みます。女性を中心とした富豪一族において、妾の子という立場上常に家の人の腹を読まなければならない緊張感、一族の秘密というミステリー要素もありながら、その中で頭の良さと努力で自分の道を拓いていくかな子の成長物語の側面もあり、800ページの大作ですが面白かったです。
Posted by ブクログ
幕引きは唐突で乱暴に感じたけど、史実に基づいた出来事に沿って進む、主人公かな子のサクセスストーリーとして興味深く読んだ。
個人的には恋愛要素がもう少し読みたかった。
かな子が親友である暁子に対して「彼女以上に大切な人は今後現れないだろう」と独白する場面があったので、「これは予想を裏切って他の男性と恋に落ちる伏線では!?」と期待していたのですが。
まさか候補の男性が二人とも帰らぬ人となるとは思いもよりませんでした……。
恋愛にうつつを抜かしている暇はない、という作者様からの愛のある試練でしょうか……。
かな子の宿敵も家族も思い出もすべては瓦礫の下に埋まってしまった。
檜垣澤家を復興させるまでの紆余曲折も読んでみたかったです。
Posted by ブクログ
芦辺拓さんの「大鞠家殺人事件」を彷彿とさせるなぁと、読み始めて暫くは感じていた。
この一族の中で、殺人事件が発生するのか?と待ち構えていたら、発端にポツとあっただけ。
かな子が学校に進学するあたりで、おや、事前の予想とはちょっと違う展開だなと思ったが、この中盤から一気に引き込まれていった。
終盤、「こんなにフラグを立てた西原とくっつかないんかーい!おいおい!」などと独りごちながら、病室から出る際の描写では涙ぐんでしまった。
なんとなく、タイトルから予想していた結末ではあったものの、ここまで思い切りよく全滅させるとは思わなかった。
が、しかし、かな子の行く末を読者に委ねるとするなら、最適な締め方か。
人々の気持ちの機微を、ここまで文字化されたのが素晴らしい。できるのは、本当に実力のある作家さんのみだろう。
千街晶之さんが解説で「絡新婦の理」を挙げてらしたが、あちらの一族と比べると、こちらの檜垣澤家は真面目だなぁと思う。まったく異なる属性。
願わくば、かな子がどう生きていったのか、想像でなく文字で読みたいなぁ…
Posted by ブクログ
文庫本とは思えない程の分量。う〜ん面白かったと言えば面白い、そうでもないと言えばそうでもない。山崎豊子の小説は、素晴らしいと改めて認識しました。
Posted by ブクログ
強かで賢い女かっこいい〜!!
自分史上一番の長編だったのと時代設定もあり読むのに時間がかかったけど、ミステリー要素が散りばめられていたり終盤は怒涛の展開だったりでとても面白かったし切なかった。
時代背景がしっかりと書かれているので勉強にもなった。この頃は学校に通ってる間でも有無を言わさず嫁がされることが当たり前で、男が浮気しても許されるのに女は許されなくて理不尽だし、女性は自由がなくて大変だなと思った。
檜垣澤家に来たときこそはギスギスしてたけど、三姉妹や暁子さんとの関係がそれぞれ良くて、想像してたより微笑ましかった。これもかな子が賢く強く成長してきたからだなとも思う。雪江がお嫁に行く場面はじーんときてお気に入り。
Posted by ブクログ
大正時代の横浜を舞台にした長編小説。これをミステリに分類していいものなのかどうか迷うけれど、とにかくおもしろかった。
主人公の高木かな子は、横浜の素封家、檜垣澤要吉が妾のひさに生ませた子であった。母ひさが火災で亡くなり、檜垣澤家に引き取られることになったかな子は、病の床に臥す父の介護をして暮らすが、使用人ですら、妾の子であるかな子にはつらく当たる。程なく父が亡くなり、完全に孤立したかな子は、ひと癖もふた癖もある義理の家族の中、強く立ち回ろうとする。
読んでいて何度か『小公女』を思い出したが、かな子はセーラのような無垢な少女ではない。盗み聞きはじめ権謀術数を駆使して、自らの地位を少しでも高めようと計算高く動くのだ。読み進めていくと、それらの計算が実は子どもの浅知恵で、ほとんど見透かされていたこともわかってくる。
趣が変わるのは、失火で亡くなったと思われた義理の父・辰市がどうやら殺されたらしいということがわかってから。そして、かな子は成長していく。
終盤、物語は文字通り、崩壊する。おおなんと凄い、と唸らずにはいられなかった。その後のかな子を想像せずにはいられない。きっと逞しく生き続けるのだろうと思わせるラストである。
檜垣澤家は女系家族であるが、本書を読むと当時の女性が置かれていた状況も伺い知れる。友人・暁子とのシスターフッドの物語としても読める。実に幾通りもの読み方ができる名作である。
Posted by ブクログ
ゆうこさんの感想で興味を持ちました。
774ページもあって文庫本が分厚い。
いや~、長かったです。
ミステリーということだが、事件なのか事故なのかという謎解きだけではなく、富豪の檜垣澤家の繁栄と災禍、妾の子と蔑まれていたかな子が幼少期から聡明さで這い上がり成長していく姿が描かれた大河小説でもあった。
明治から大正の時代背景は興味深かった。
人と人との関係は好き嫌いとか合う合わないという一言で言い表せない複雑なものであること。
人の心の中には闇を宿していること。
人間臭さも良かった。
Posted by ブクログ
生糸の輸出により一代で富を築いた横濱の富豪檜垣澤要吉と妾との間に生まれたかな子。
妾宅で暮らす母を火事で亡くし、7歳で本宅に引き取られる。
舞台となる大正時代の横濱に相応しい古典的な作りの成長譚で、逆境に挫けず、知恵と信念と少しの運に導かれ自らの道を切り拓いていくさまを、文庫本800頁弱の分量を持て余すことなく、むしろどっぷりと本の世界に浸りつつ堪能できる。
元々聡い主人公だが、成長するに従って家族内の地位や周囲の人々に対する見方、人生の目的が徐々に変わっていく様子や暁子との友情、西原との微妙な関係、欧州大戦、関東大震災を経て社会が移りゆく姿など、大河小説ならではの楽しみが味わえる。
震災によりすべてが瓦礫に帰したあと、かな子がどのように生き抜いていくのか、そこにはさらに日中戦争があり、先の大戦があるのだが、本書はそれら(実兄との関係も)を含みとしつつ結末を迎える。
Posted by ブクログ
ミステリとして読むと終盤まで長いと感じると思う。主人公がどうやって反撃(?)に転ずるのか、が読みどころと思って読んでいたが、最終盤で意外な展開。長かっただけに、そうなるか!といういい意味でのやられた感があった。
Posted by ブクログ
傑作長編ミステリとうたわれているので読んだが、ミステリ感はあまりないのでそこは残念だった。
でも私があまり読んだことのない歴史物、一族物で、妾の娘であるかな子が本妻の家に引き取られ、知識や知恵を生かしながら成長して生き抜いていく様が面白くはあった。
初めは妾の子として疎ましく扱われていたが、なんやかんやで雪姉様や花、スヱから可愛がられたり認められている部分もあり、震災で家族全員を失ったときにかな子自身も悲しみの感情や、スヱを越えたかったと尊敬の気持ちを表しているところが印象的だった。
暁子との友情も素敵だし、度々登場する西原とはお互いに恋心だったのか?というのも気になる。病床の西原と最後に会ったとき、「匡克さん」と初めて名前で呼ばれ心から嬉しそうにするシーンも好きだった。
ミステリと言われている部分の真相はそんなに深いものではなく、ふーんといった感じ。初が大分イカれおばさんだったということ。
これだけ長々とストーリーを描いていたのに、ラストが地震で全員死んじゃうendというのがあっけなくてあまり心にぐっと来なかったが、これが昔実際にあった震災を描写しているというのがあまり知らなかったので新鮮ではあった。
Posted by ブクログ
タイトルの「炎上」は、最近のネット空間で表すような言葉の意味なのかそれとも本来の意味なのか、どちらにせよこの家の末路が暗示されるタイトルです。
明治時代の末から大正時代にかけての物語ですが、主人公はこの檜垣澤商店を興した檜垣澤要吉の妾の子、かな子です。彼女は母を亡くした後この家に引き取られました。かな子は既にこの世を去った父への思慕と同時にその死因に疑念を抱いていました。彼女はその生い立ち故か人への観察眼が鋭く、お屋敷の様々な人物と上手く立ち回りながら。この家を実質取り仕切る本妻スヱへ内なる闘争心を燃やしていたのでした。
内容的にミステリーの要素もあるお話ですが、10歳そこそこで他人同様の家に来た主人公が余りにも大人びた思考回路で、ちょっと現地味が薄れます。かな子の少女時代から思春期にかけての対人関係の心理描写が主な筋書きですが、結末は檜垣澤家の盛衰を描くなら、ここで終わりではなくむしろここからでしょうという感想でした。
Posted by ブクログ
このミステリーがすごい!2025年版第3位
不慣れな日清戦争からの時代が舞台のミステリー作品とのことでワクワクしながら購入。
ミステリー要素は薄いかと感じつつも、沢山の登場人物、主人公である一族の長の妾の子かな子と共に駆け抜ける一冊の中には、きめ細やかな時代背景の描写、当時の少女たち、裕福な起業家一族の様子が描かれている。
たった一冊だが、まるで上下巻ものに詰め込まれたような時代の流れ、一族の成り行きは不思議と詳細で、大急ぎ感もない。
終盤に進むに連れて、様々な出来事や登場人物たちの存在が少しずつミステリーの回収をしてくれるようだった。
穏やかに、しかし激動の時代を迫力をひしひしと感じさせる時代✖️ミステリーものは、新鮮だった。