あらすじ
横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは――。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。(解説・千街晶之)
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
かな子の成り上がりの話かと思っていたらそういうわけでもなく。
しっかりミステリとして謎もあり解決もあり。
総合的にとても面白かった。
Posted by ブクログ
時代は明治末期から大正にかけて。
横浜で絹物商で大企業へと成長した檜垣澤要吉の妾腹の娘に生まれたかな子は、母の死に伴って父の家に引き取られることになる。
本家には、病に臥せる父の他、正妻とその娘、入り婿、長女の孫娘3人と孫娘の入り婿がいた。
女ばかりの女系一族の中で、母に教わった知恵と父譲りの胆力でしたたかに生きていく少女の青春と成長を描く物語です。
終盤にかけて明らかになる真実は、驚きと涙なくしては読めない。
がしかし、主人公の人生はこれから!というところで物語の幕は閉じる……。
続きが読みたいがないのか?
Posted by ブクログ
かな子の、綱渡りの日々と、その中でも少しずつ得た人との縁。長い物語だったけど、飽きずに読んだ。
でも、最後、そうか、そうだったよね、と呆然とした。あんなに慎重に積み上げてきた日々が、あっという間に文字通り崩壊してしまう。ここから立て直していくのは、途方もないことだよね。
読み終わってしばらく余韻が残る。
Posted by ブクログ
これは、出版社にブラボー!です。
よくぞ上下巻に分けずに800ページを一冊にまとめてくれました。
だって、もう、止められないもの、続きが気になって。
主人公のかな子は、横濱で知らぬ者のない商家、檜垣澤家の当主の妾の娘。
両親に愛されて育ったが、8歳の時に母が火事に巻き込まれて亡くなったのをきっかけに、父のもとに引き取られる。
しかしその時には父は、卒中の後遺症で寝たきりになり、意思の疎通もままならない状態で、予後が良くなることなく父も亡くなった。
女中部屋住まいから、物置部屋へと少しずつ自分の居場所を広げていくかな子。
自分の居場所は自分で切り開かなければならない。
売れっ子芸者だった母が幼かったかな子に教えたのは、人の顔色と声色と腹の色を見極めなさいということ。
誰が敵か味方か、後に覚えた将棋で、手駒を増やすことも考えながらかな子は成長していく。
かな子の父の正妻はスヱ、その長女である跡継ぎの花、さらにその長女の郁乃。
檜垣澤家は女系一族なのである。
花の夫である辰市が事故で亡くなっても、事業には何の問題もない。
郁乃の夫である惣治はいるものの、病弱な郁乃の代わりを徐々にかな子が担っていくが…。
一応はミステリなのだ。
でも、とりあえずミステリでなくても、この女系家族の腹を見せ合わない駆け引きが面白い。
誰も心の内を話さないので、かな子視点で想像するしかないのが、もどかしくも愉快。
郁代の妹の珠代や雪江に可愛がられるために、かな子が取る態度。
檜垣澤家の使用人たちに対する態度。
家にいたって気は抜けない。
でも彼女は頭がいい。
勉強ができるだけではなく、その時自分が求められている役割を間違うことなくこなすことが出来る。
花の妹の初(スヱの次女)の婚家である山名医院の書生である西原が、かな子には腹の色が読めない存在として登場するが、これの存在もかな子の成長を促している。
というかねえ、何気ない描写が後々思いがけないスイッチになったりして、実は良質のミステリだったのだよなあ。
檜垣澤家の炎上とは、SNS上の炎上ではなく、火事のこと。
横濱は火事が多かったらしい。
函館も大きな火事が多かったから、港町って風が強くて炎上しやすかったのかしら。
Posted by ブクログ
女性版立身出世のおしんを彷彿させる物語。野心を抱いたかな子の心意気に気分高揚。大正という、近現代の舞台設定はもともと好きだから、心に刺さる!
恩田さんの「なんとかしなくちゃ」バリにいいところで幕を閉じるので、続編に期待。ぜひ、かな子のその後の快進撃と太平洋戦争を乗り越える姿を見たい。
かな子の境遇に夢中ですっかり忘れていたけれど、ミステリーとしての伏線回収も見事で、ハルさんや火事場から去る書生など、後からストン。
Posted by ブクログ
どこら辺からミステリになっていくのかな〜と思いながらかな子の奮闘を読み進めていくと、終盤の伏線回収に痺れました。関東大震災で何もかもチャラになるんじゃなくて、かな子がスエや花を出し抜いて成り上がっていく様を見たかったというのはちょっと望み過ぎか。面白かったです。
Posted by ブクログ
読書前メモ:
本紹介を見て購入。
舞台が明治から大正にかけての横濱で地元近くというのも相まって興味を持った。
読書後メモ:(要約)
横濱の貿易商、檜垣澤家当主の妾の子として誕生したかな子。火事で母を亡くしたかな子は、檜垣澤スエや花、花の3人の娘たちと共に暮らすことになる。女中や使用人と同じ部屋で過ごしながら、母の教え(人の顔や何を話したのかを絶対に忘れないこと。人には三つの顔があること)を心に留め、時には盗み聞きをして情報収集をしていた。ある日の夜、婿養子が火事で不審な死を遂げ、第一発見者となったかな子は恩人と持ち上げられ、少しずつ表舞台に出ることになる。園遊会や姉たちに連れ回される中でかな子は、自分も使われる立場ではなく、スエのように人を使う立場になりたいと思うようになる。明治末期から大正(関東大震災まで)を描く、ミステリーかつ壮大な少女の成長物語。
読書後メモ:(感想)
時代考証を入念に行なったことがわかるフィクションだけどノンフィクション。大正12年9月1日に何が起こったのかを知っているからこそ、読み進めて行く中でも否が応でも意識しなければならない緊迫感。軍部の話も時代柄よく出てくるが、この後の展開を思うと、非常に胸が苦しくなる。作品内では伝聞でしか伝えられることはないが、背景には「戦争」や「陰謀」がある、私の好みに合った小説だった。
好みと言えば好みの男が出てきた、西原…死なないでくれ…。
Posted by ブクログ
幕引きは唐突で乱暴に感じたけど、史実に基づいた出来事に沿って進む、主人公かな子のサクセスストーリーとして興味深く読んだ。
個人的には恋愛要素がもう少し読みたかった。
かな子が親友である暁子に対して「彼女以上に大切な人は今後現れないだろう」と独白する場面があったので、「これは予想を裏切って他の男性と恋に落ちる伏線では!?」と期待していたのですが。
まさか候補の男性が二人とも帰らぬ人となるとは思いもよりませんでした……。
恋愛にうつつを抜かしている暇はない、という作者様からの愛のある試練でしょうか……。
かな子の宿敵も家族も思い出もすべては瓦礫の下に埋まってしまった。
檜垣澤家を復興させるまでの紆余曲折も読んでみたかったです。
Posted by ブクログ
芦辺拓さんの「大鞠家殺人事件」を彷彿とさせるなぁと、読み始めて暫くは感じていた。
この一族の中で、殺人事件が発生するのか?と待ち構えていたら、発端にポツとあっただけ。
かな子が学校に進学するあたりで、おや、事前の予想とはちょっと違う展開だなと思ったが、この中盤から一気に引き込まれていった。
終盤、「こんなにフラグを立てた西原とくっつかないんかーい!おいおい!」などと独りごちながら、病室から出る際の描写では涙ぐんでしまった。
なんとなく、タイトルから予想していた結末ではあったものの、ここまで思い切りよく全滅させるとは思わなかった。
が、しかし、かな子の行く末を読者に委ねるとするなら、最適な締め方か。
人々の気持ちの機微を、ここまで文字化されたのが素晴らしい。できるのは、本当に実力のある作家さんのみだろう。
千街晶之さんが解説で「絡新婦の理」を挙げてらしたが、あちらの一族と比べると、こちらの檜垣澤家は真面目だなぁと思う。まったく異なる属性。
願わくば、かな子がどう生きていったのか、想像でなく文字で読みたいなぁ…
Posted by ブクログ
強かで賢い女かっこいい〜!!
自分史上一番の長編だったのと時代設定もあり読むのに時間がかかったけど、ミステリー要素が散りばめられていたり終盤は怒涛の展開だったりでとても面白かったし切なかった。
時代背景がしっかりと書かれているので勉強にもなった。この頃は学校に通ってる間でも有無を言わさず嫁がされることが当たり前で、男が浮気しても許されるのに女は許されなくて理不尽だし、女性は自由がなくて大変だなと思った。
檜垣澤家に来たときこそはギスギスしてたけど、三姉妹や暁子さんとの関係がそれぞれ良くて、想像してたより微笑ましかった。これもかな子が賢く強く成長してきたからだなとも思う。雪江がお嫁に行く場面はじーんときてお気に入り。