永嶋恵美のレビュー一覧
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ネタバレ大正時代の横濱の富豪である檜垣澤家。
母の死後、妾の子であるかな子は、脳卒中で倒れた父であり当主の要吉の世話係として檜垣澤家に引き取られる。
当主の倒れた檜垣澤家では妻のスヱが貿易商「檜垣澤商店」のすべての舵取りを行い、娘の花と共に会社を大企業へと押し上げていた。
かな子は妾の子として疎まれ蔑ろにされながらも、母の教えと知恵と情報を駆使し、檜垣澤家での地位を得ようと野心を燃やす。
大正時代の華やかな社交の場。裏で糸引く聡く決断力のある女たち。そしてそのネットワーク。
女中たちから嫌がらせをされながらも強かに自分を居場所を作り立ち回るかな子。
本当にドラマを見ているようでした。
かな子の強さもですが、それを覆い隠すほどの賢さと力を持つ、スヱの存在感もまたかっこいい。
それに、郁乃、珠代、雪江の三姉妹も個性的で憎めない。
ミステリーではあるけれど、かな子の成長とそれに関わる人々との駆け引きや友情や淡ーい恋心にのめり込みました。
なんか、性格悪いかもだけど、登場人物の強かさに、私が元気出ますわ。
かな子の母の教えがいい。
「人には三つの色がある。顔色、声色、腹の色。どの色を見るかで、その人の見え方は変わってくる。」
「頭の中の知恵は誰にも奪われない」
今からでも我が子に伝えねば。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ檜垣澤要吉(ひがきざわ ようきち)が興した、留守番の小僧一人きりのちっぽけな店は、絹織物の輸出商「檜垣澤商店」としてのし上がった。いわゆる成金である。
高木かな子は、その檜垣澤要吉の妾の子。母の高木ひさは売れっ子の関内芸者だった。要吉は元町のはずれに気の利いた家を買い与え、かな子の世話をするばあやと、下働きのおチヨねえやがいた。父の来訪はせいぜい月に一度か二度。母はただ養われるのを嫌って元町の旦那衆に長唄などを教えていた。
かな子は幼い頃から、母に「人」の見方を教え込まれた。
『人には三つの色がある。顔色、声色(こわいろ)、腹の色。どの色を見るかで、その人の見え方は変わってくる』と。
母が火事に巻き込まれて亡くなると、かな子は7歳で檜垣澤家に引き取られた。居候扱いであるが、卒中で寝たきりになった要吉の世話ができるのは要吉を「おとうちゃん」と呼んで慕っていたかな子にとってささやかな幸せだった。また、上州出身の要吉は資産家になった後も「おとうちゃん」と呼ばれることを喜ぶ素朴なところがあった。
長女・花の婿・辰市が焼けた蔵の中から焼死体で見つかり、要吉も亡くなると、かな子の立場は微妙。
檜垣澤の家は、要吉の妻・スヱが実権を握っていた。
かな子は、スヱがなぜ自分を引き取ったのか、その理由を考える。男子ならたとえ外腹であっても経営に加わることができたかもしれない。しかし、女子は、政略結婚に利用するくらいしか使い道がない。それは、かな子の望むところではなかった。
檜垣澤の家に男は要らない、と言われるほど、女系が実権を握り、婿たちの影は薄い。
かな子も、檜垣澤の女として、自分の取り分は手に入れたいと思う。
これは、妾の子の本家乗っ取り物語なのか。
かな子にとって越えるべき壁はスヱだった。
このスヱが、また大人物、女傑である。かな子の敵ではない。いろんな意味で。
一つは単純に、かな子のかなう相手ではないという事。
そして、「妾の子として目の敵にする」という態度を一切見せないのが底知れない。
大きな流れで見れば、かな子の師であったかも知れない。
昼ドラみたいなドラマでもあるが、お決まりのヒロインいびりは女中たちの仕事である。
スヱの長女の三人の娘たちのうち、次女の珠代と三女の雪江は、かな子を妹と言って可愛がった。
(続柄上は、叔母である)
スヱの複雑な心のうちは憶測するしかないが、頭の良いかな子を自分の後継の一人の親族として認める方向にはあったのだと思う。
そう考えれば「妾の子の本家乗っ取り」ではなく、正当に引く継ぐ事になった、それがたまたま創業者の妾の子だったという事になる。
解説では、「本書への影響は『華麗なる一族』『細雪』、ミステリ部分では『犬神家の一族』」と述べられているが、ブロンテ姉妹の小説のような味もあると思う。 -
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横浜の富豪・檜垣澤家。当主・檜垣澤要吉の妾の子、高木かな子は母を亡くし、檜垣澤家に引き取られることにとなり、病に倒れた父・要吉の面倒をみていた。
そんな中、要吉の娘婿であり、次期当主となるとみられた辰市が不審死をとげる。
要吉の妻・スエ、娘・花、孫娘の3姉妹、郁乃、珠代、雪江。
陰謀、政略結婚…したたかに生き抜く女系家族の中で、なんとか生き抜いていこうとするかな子。
強かに生きる女系家族の中で、妾の子・かな子がのし上がっていく話かと思いきや…
こんな結末だったとは…
最初は長くて、長くて。途中で何度挫折しそうになったか…
どこがミステリー⁇
途中から徐々に真相が明らかになり始める。
すべてがつながり始める。
驚くべき結末だった。
震災の後、かな子が檜垣澤商店をどう建て直して行くのかを見たかった。
景秋の陰からのサポートを受けながら。
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テーマに沿った書下ろしのアンソロジーを刊行する女性作家の集まり『アミの会(仮)』
今回のテーマは「ラスト・メッセージ」
一冊で多様な作風を楽しめるのがアンソロジーの楽しみ。同じテーマなのに、驚くほどテイストは違う。
「もうひとつある 鷹宮家四訓」 大崎梢
地元の大企業を経営する旧家『鷹宮家』に伝わる四つの 家訓。後から加えられた五つ目の存在を調べる先輩を連れ、末端の分家の娘『絵茉』は本家を訪れる。
謙虚・礼儀・努力・和、しごく基本的でまっとうな家訓に加えられた意外なものとは、「女・子どもにはあとを継がせるべからず」という差別的(現代ではアウトか)なもので、絵茉も憤るのだが…。実は妹を好きな人と結婚させるために考えられたもので。
1作目を飾るにふさわしい、明るく優しい話。
「孤独の谷」近藤史恵
大学講師で風土病を研究している『白柳』のもとに、思いつめた様子の女子学生が現れる。彼女の出身の村では、誰かが謎の死をとげると家族もバラバラになり別の土地で暮らすのだと言う。しかも言葉の通じない異国だと聞き気になった白柳は、ある予測に辿り着く。
言語コミュニケーションにより死ぬ家系。理解できない言語圏に身を置くしかない絶対的な孤独。
「扉を開けて」篠田真由美
寄り付いたものや人の願いを叶える不思議な骨董屋『銀猫堂』。
『銭天堂』を思い出すようなお話。どうせ残すなら、良い思い出にこしたことはない。
「猫への遺言」柴田よしき
コロナで突然亡くなった夫が残した、読ませる気のなかった妻への手紙と猫への遺言。
知らない方が良かったのか悪かったのか。どちらにしても深い愛が伝わってくるちょっぴり切ない話。
「キノコ煙突と港の絵」長嶋恵美
十五年前にロシアから届いた、曾祖母宛の手紙。「預かりもの」とは何なのか。
戦時下の樺太で心を通わせていた二人の日本人少女。戻るのも残るのも命がけ。計り知れない苦労はあったのだろうが、晩年は穏やかに暮らせたようなのが良かったなと思った。
「十年日記」新津きよみ
母が日記に残した心残りと、落とし物の指輪が繋ぐ縁。
そんな都合のいい話がと思うかもしれないが、実際に落とし主と拾い主が結婚した知人がいるので、結構あることなのかも。優しい世界でほっこりする話。
「そのハッカーの名は」福田和代
権力者の不正を暴く凄腕ハッカーと、それを追う女刑事。
テンポが良く気楽に読めるミステリー。実は一緒に追っている部下が当のハッカーで…気づいているのに知らんぷりをするラストがちょっとカッコいいかも。
「みきにはえりぬ」松尾由美
『菩提樹』の歌詞に秘められた娘への伝言。
暗号物は苦手だけれど、十代のころ、何にでも運命を見つけてしまうような初々しさよく表れていた。
「青い封筒」松村比呂美
めっきり会話の減った高三の息子が気がかりな『真穂子』。倹約家の夫は止めろと言うが、週三回息子が連れてきた友人二人に夕飯を食べさせていた。
課題の礼状を息子が誰に宛てるのか、期待はするつもりがなくても母親としては気になるところだろう。だが以外にも不仲だと思っていた父親へ礼状を書いた息子。そして嫌われているのかと思っていた友人が自分宛てに感謝を綴ってくれた。心を温める食事同様に暖かい話。
「黄昏飛行 時の魔法編」光原百合
コミュニティFMで「黄昏飛行」のパーソナリティーを務める『麻尋』と冷静な上司で局長の会話。
言えなかった言葉…そりゃあ人間生きていれば逆に言わなきゃよかったも色々あるんじゃないかな。わかるようなわからないような話だったけど、メイン二人のキャラがいい具合に個性的で楽しく読めた。
「たからのちず」矢崎在美
可愛がってくれた祖母が自分に宛てて残した箱から出てきた家計簿。そこに挟まっていた「たからのちず」と書かれた地図の絵を見た瞬間に蘇る記憶。
たからのちずといちご水、謎を調べながら祖母との思い出を辿る。酸っぱみが勝るラズベリーのジュースは、亡き人との思い出のよう。
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Posted by ブクログ
永嶋恵美さんの作品、初読みです。
2026年初作家、21人目です!
こちらの作品は2025年このミステリーがすごいの第8位です。
明治から大正にかけての檜垣澤家の人々の話しですが、まず本の厚さに驚きます(笑)
文庫本で800ページ弱‥、そんなに厚いなら400ページ上下巻でお願いしますって感じ。
だいたいいつもの読書だと100ページ過ぎたくらいから調子が出てどんどん読めるようになるんだけど、100ページ超えてもなかなか手強い感じでした。
でも、読みづらいとかそんなことは全くなく、古い時代のお話しだけど、興味深く読めました。
結構好きなタイプのストーリーでした!
ラストがそんな感じか〜とちょっと物足りない感はありました。