永嶋恵美のレビュー一覧
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大正時代の横浜を舞台にした長編小説。これをミステリに分類していいものなのかどうか迷うけれど、とにかくおもしろかった。
主人公の高木かな子は、横浜の素封家、檜垣澤要吉が妾のひさに生ませた子であった。母ひさが火災で亡くなり、檜垣澤家に引き取られることになったかな子は、病の床に臥す父の介護をして暮らすが、使用人ですら、妾の子であるかな子にはつらく当たる。程なく父が亡くなり、完全に孤立したかな子は、ひと癖もふた癖もある義理の家族の中、強く立ち回ろうとする。
読んでいて何度か『小公女』を思い出したが、かな子はセーラのような無垢な少女ではない。盗み聞きはじめ権謀術数を駆使して、自らの地位を少しでも高め -
Posted by ブクログ
生糸の輸出により一代で富を築いた横濱の富豪檜垣澤要吉と妾との間に生まれたかな子。
妾宅で暮らす母を火事で亡くし、7歳で本宅に引き取られる。
舞台となる大正時代の横濱に相応しい古典的な作りの成長譚で、逆境に挫けず、知恵と信念と少しの運に導かれ自らの道を切り拓いていくさまを、文庫本800頁弱の分量を持て余すことなく、むしろどっぷりと本の世界に浸りつつ堪能できる。
元々聡い主人公だが、成長するに従って家族内の地位や周囲の人々に対する見方、人生の目的が徐々に変わっていく様子や暁子との友情、西原との微妙な関係、欧州大戦、関東大震災を経て社会が移りゆく姿など、大河小説ならではの楽しみが味わえる。
震 -
Posted by ブクログ
富豪の妾の子として生まれたかな子。母が火事で急死し富豪一族に向かい入れられる。権謀術数を駆使して一族の中で生き残る術を模索していく中で、ある夜婿養子が不審な死を遂げる。
ミステリ、といろんなところで紹介されていますがミステリ要素というよりは上流階級の女性の生きざまみたいなものが強く印象に残りましたし、その部分がとてもおもしろかった。ミステリ的な部分も面白かったですけどね。でも推理とかそういうものでもなかったかな。手がかりが明示されてたりとかでもないし。
出自もあり、主人公のかな子がなかなかに屈折した性格だなあ、と読み手の視点からすると思いました。ほとんど敵視しているような檜垣澤家の女性陣とか -
Posted by ブクログ
ネタバレミステリーだけどそれだけじゃない!大河ドラマに昼ドラ?を読んでる感じかな?
主人公が幼少期から野心に燃えていて強かで、でも大奥様の方がもっと上手で…あれもこれも見通してお茶会を開いたりわざと出かけさせたりしてた…それができないと大企業を動かすのはできないんだろうけど。
ミステリー部分は犯人の言動にえぇ……怖っ!!
あのセリフの1回目と2、3回目に出てくる場面は違った怖さがあって。ん?変な人だなーって思ってたらほんとに変な人でした…
大筋とは関係ないけど、衣装の描写が細かくて良い!洋装も和装も生地から色味、帯との合わせまで書いてあって、さすがお金持ちのお嬢様!という感じ。読んでて楽しかった。 -
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Posted by ブクログ
積んでた本。読みだしたら止められなかったです。
帯にはレベッカとか書いてありましたが、自分は読んで何となく北杜夫の「楡家の人びと」が頭に浮かびました。強気で実権を握る女主人とかそのあたりが。
ミステリー要素というよりは、ヒロインが檜垣澤家で生きていくにあたり、状況を観察し、考察し、生き抜いていく過程で新たに知った家族の過去、という形で紐解かれていくのが面白かったです。
血のつながりというのは愛だけではないし、憎しみだけでもない。一緒に生活するという時間が育てる絆って一言で言い表せない複雑な縁が生まれるんだろうなぁなんて、最後の方に思いました。
ヒロインの人生譚のようなお話でもあるので、コレ -
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Posted by ブクログ
携帯サイトで見つけた、恋人を強奪してくれるという「オフィスCAT」に頼る女性たちの物語。恋人を強奪する=泥棒猫派遣業のヒナコの成功率はほぼ100%。しかし単純に「恋人を強奪する」だけではなく、依頼人にとって何が最適なのかを見極め行動する、そんな彼女の姿がとっても魅力的な短編集です。
最初の「泥棒猫貸します」がもう見事。DVの彼と別れたい依頼人をどのように救うのか、もう痛快としか言いようがありません。たしかに一時別れるのに成功したところで、あとあとまで引きずらない保証はないものね。これはもう完璧!
一方で「マイ・フェア・マウス」のような優しい手段があったり、「鳥籠を揺らす手」のようなサスペンスフ