永嶋恵美のレビュー一覧

  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    大正時代の横浜を舞台にした長編小説。これをミステリに分類していいものなのかどうか迷うけれど、とにかくおもしろかった。

    主人公の高木かな子は、横浜の素封家、檜垣澤要吉が妾のひさに生ませた子であった。母ひさが火災で亡くなり、檜垣澤家に引き取られることになったかな子は、病の床に臥す父の介護をして暮らすが、使用人ですら、妾の子であるかな子にはつらく当たる。程なく父が亡くなり、完全に孤立したかな子は、ひと癖もふた癖もある義理の家族の中、強く立ち回ろうとする。

    読んでいて何度か『小公女』を思い出したが、かな子はセーラのような無垢な少女ではない。盗み聞きはじめ権謀術数を駆使して、自らの地位を少しでも高め

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    2025年11月05日
  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    ゆうこさんの感想で興味を持ちました。
    774ページもあって文庫本が分厚い。
    いや~、長かったです。
    ミステリーということだが、事件なのか事故なのかという謎解きだけではなく、富豪の檜垣澤家の繁栄と災禍、妾の子と蔑まれていたかな子が幼少期から聡明さで這い上がり成長していく姿が描かれた大河小説でもあった。
    明治から大正の時代背景は興味深かった。
    人と人との関係は好き嫌いとか合う合わないという一言で言い表せない複雑なものであること。
    人の心の中には闇を宿していること。
    人間臭さも良かった。


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    2025年10月25日
  • インターフォン

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    なんというか、昭和。
    決して古文ではなく、
    理解できる自然な日本語なのに
    現代ではない事がひしひしと伝わってくる。

    高校生だった長女が現代史を覚えるのに
    「お母さんが◯歳だった時」
    と私の年齢を基準にしていて、
    自分の半生は既に歴史の中に埋もれつつあるんだ、
    と思ったのを再認識。

    コロナ禍で一回時代が一区切りしてて、
    昭和/平成でもう一区切りあって、
    この短編集は間違いなくその前。
    昭和ど真ん中って感じ。
    携帯電話が普通に使われてるから平成なんだろうけど
    時代感が昭和。

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    2025年10月14日
  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    生糸の輸出により一代で富を築いた横濱の富豪檜垣澤要吉と妾との間に生まれたかな子。
    妾宅で暮らす母を火事で亡くし、7歳で本宅に引き取られる。

    舞台となる大正時代の横濱に相応しい古典的な作りの成長譚で、逆境に挫けず、知恵と信念と少しの運に導かれ自らの道を切り拓いていくさまを、文庫本800頁弱の分量を持て余すことなく、むしろどっぷりと本の世界に浸りつつ堪能できる。

    元々聡い主人公だが、成長するに従って家族内の地位や周囲の人々に対する見方、人生の目的が徐々に変わっていく様子や暁子との友情、西原との微妙な関係、欧州大戦、関東大震災を経て社会が移りゆく姿など、大河小説ならではの楽しみが味わえる。

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    2025年09月28日
  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    檜垣澤家という横浜で有名な富豪一族。
    そこへ引き取られた当主の妾の子である主人公。
    妾の母も、当主である父も亡くなってしまい、アウェイ状態。
    しかしクセある檜垣澤家の人達と上手く立ち回り、成り上がっていく様が面白い。
    文中にもあるが、盤面の無い将棋のような展開である。分厚い本ですがオススメです。

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    2025年08月25日
  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    700ページ超えの長編。
    主人公のかな子は、強かで頭が回る女性。
    読んでて、かな子の最終目的は何だったのかと
     
    妾の子として、檜垣澤家に入り、意地悪な女中
    を排除し、3人姉妹と上手い関係性を作り上げ
    自分の思い通りに人生を切り開いていくかな子

    時代が進むにつれ、大正時代に起きた出来事が
    リアルな描写により、イメージできた
    裕福層の生活や大不況で没落していく商家

    ラストで、この話はミステリーだったっけ?
    って感じで、冒頭にあった事件の解明がされる。
    読み応えあったが、ラストはバタバタとした結
    末になってしまったのがイマイチ残念

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    2025年08月14日
  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    富豪の妾の子として生まれたかな子。母が火事で急死し富豪一族に向かい入れられる。権謀術数を駆使して一族の中で生き残る術を模索していく中で、ある夜婿養子が不審な死を遂げる。

    ミステリ、といろんなところで紹介されていますがミステリ要素というよりは上流階級の女性の生きざまみたいなものが強く印象に残りましたし、その部分がとてもおもしろかった。ミステリ的な部分も面白かったですけどね。でも推理とかそういうものでもなかったかな。手がかりが明示されてたりとかでもないし。
    出自もあり、主人公のかな子がなかなかに屈折した性格だなあ、と読み手の視点からすると思いました。ほとんど敵視しているような檜垣澤家の女性陣とか

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    2025年07月25日
  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ミステリーだけどそれだけじゃない!大河ドラマに昼ドラ?を読んでる感じかな?
    主人公が幼少期から野心に燃えていて強かで、でも大奥様の方がもっと上手で…あれもこれも見通してお茶会を開いたりわざと出かけさせたりしてた…それができないと大企業を動かすのはできないんだろうけど。

    ミステリー部分は犯人の言動にえぇ……怖っ!!
    あのセリフの1回目と2、3回目に出てくる場面は違った怖さがあって。ん?変な人だなーって思ってたらほんとに変な人でした…

    大筋とは関係ないけど、衣装の描写が細かくて良い!洋装も和装も生地から色味、帯との合わせまで書いてあって、さすがお金持ちのお嬢様!という感じ。読んでて楽しかった。

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    2025年07月21日
  • これが最後のおたよりです

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    タイトル通りラストレターというか、最後のメッセージをテーマとした短編集。個人的には「猫への遺言」がよかったなぁ。これまでは猫を見送ることばかりだったので、猫に言葉を残すという発想がなかった。人間いつ死ぬかわからないしね。

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    2025年07月10日
  • 檜垣澤家の炎上(新潮文庫)

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    積んでた本。読みだしたら止められなかったです。
    帯にはレベッカとか書いてありましたが、自分は読んで何となく北杜夫の「楡家の人びと」が頭に浮かびました。強気で実権を握る女主人とかそのあたりが。

    ミステリー要素というよりは、ヒロインが檜垣澤家で生きていくにあたり、状況を観察し、考察し、生き抜いていく過程で新たに知った家族の過去、という形で紐解かれていくのが面白かったです。
    血のつながりというのは愛だけではないし、憎しみだけでもない。一緒に生活するという時間が育てる絆って一言で言い表せない複雑な縁が生まれるんだろうなぁなんて、最後の方に思いました。

    ヒロインの人生譚のようなお話でもあるので、コレ

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    2025年07月08日
  • おいしい旅 初めて編

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    旅と食がテーマの作家さん達の短編集。まんまと食べたく、行きたくなっていますw
    ちょうど季節や状況が、一緒の作品が多くて、するりと作品に入って ご飯共にもぐもぐしたかのようでした。

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    2025年04月12日
  • キッチンつれづれ

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    ネタバレ

    【あらすじ】
    世界はキッチンで回っている! 

    大崎梢、近藤史恵、永嶋恵美、新津きよみ、福田和代、松村比呂美、矢崎存美、福澤徹三。短編の名手8人が「台所」をテーマに競演。「ここだけのお金の使いかた」「おいしい旅」シリーズなど、続々重版中の人気ユニットによる全編書下ろし短篇集。

    『引っ越しはどこか人生の棚卸しに似ている。必要のないものを手放し、本当に必要なものを手に入れる。』

    【個人的な感想】
    キッチンの数だけの人生がある。
    私は「姉のジャム」がグッときた。

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    2025年04月07日
  • ここだけのお金の使いかた

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    お金にまつわるあれこれを綴ったアンソロジー。
    やはり身近な問題なので、どの話もそれぞれに面白かった。

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    2025年03月26日
  • ここだけのお金の使いかた

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    ネタバレ

    好きだった短編ランキング
    ❶わらしべ長者のつくり方
    ・「会社を利用しな」
    ・「数年のうちに見極めるんだ」
    ・一日、一日をきちんと生きていく。仕事を楽しむ。楽しめる仕事を探してみる。
    ❷二千万円の差額
    ❸12万円わんこ
    覚悟も勇気も度胸も、自分の中にきっとあるはずだ。

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    2025年03月24日
  • キッチンつれづれ

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    ネタバレ

    黄色いワンピース
    が好み。放置子というワードを初めて知った。おなかをすかせた小学校の低学年の私が、いい香りに惹かれドアに近寄っていく。今どきは無理かもしれないが、空腹の子を助けてくれる人がいることを願う。

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    2025年02月21日
  • キッチンつれづれ

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    「対面式/福田和代」
    「わたしの家には包丁がない/新津きよみ」
    「お姉ちゃんの実験室/永嶋恵美」
    「春巻きとふろふき大根/大崎梢」
    「離れ/松村比呂美」
    「姉のジャム/近藤史恵」
    「限界キッチン/福澤徹三」
    「黄色いワンピース/矢崎存美」
    8話収録の短編集。

    『アミの会』によるアンソロジーも本作で14作目。

    今回のテーマはキッチン。

    HAPPYなものからサスペンスフルなものまで、バラエティに富んでいて大満足。

    強烈なインパクトを残す近藤さんの「姉のジャム」はブラックな読み心地。
    お気に入りの新津さんと松村さんの作品は安定の面白さ。

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    2024年08月29日
  • キッチンつれづれ

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    どのお話も内容が濃くて短編なのに満足。
    食べ物もでてくるけどそれだけじゃない。
    どの話も妙に引きこまれた。

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    2024年08月27日
  • 泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。〈新装版〉

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    旧版読んでたけどドラマを機に読み返し。当たり前だけどドラマより導入も展開も自然!
    一話が短めでご都合主義だけど気楽に読めて好き。赤外線通信とか出会い系サイトとかところどころ古くて懐かしい。楓さんが梨沙に上書きされてるんだなあ。

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    2024年06月09日
  • キッチンつれづれ

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    2024.05.25
    こういうアンソロジーは読む側には楽しいが書き手にとっては厳しい一面もある。
    やはり他の作家との比較をされてしまうから。
    この一冊では、売れているだけあり、福澤さんの作風に一票!

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    2024年05月26日
  • 泥棒猫ヒナコの事件簿 あなたの恋人、強奪します。〈新装版〉

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    携帯サイトで見つけた、恋人を強奪してくれるという「オフィスCAT」に頼る女性たちの物語。恋人を強奪する=泥棒猫派遣業のヒナコの成功率はほぼ100%。しかし単純に「恋人を強奪する」だけではなく、依頼人にとって何が最適なのかを見極め行動する、そんな彼女の姿がとっても魅力的な短編集です。
    最初の「泥棒猫貸します」がもう見事。DVの彼と別れたい依頼人をどのように救うのか、もう痛快としか言いようがありません。たしかに一時別れるのに成功したところで、あとあとまで引きずらない保証はないものね。これはもう完璧!
    一方で「マイ・フェア・マウス」のような優しい手段があったり、「鳥籠を揺らす手」のようなサスペンスフ

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    2024年05月06日