椎名誠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
海辺で作った砂の城が、ゆっくりと乾燥していきいつの間にかもうその形をとどめていないのに気づいてしまった喪失感。最初はそう思った。過去そうであったものが、知らないものに形を変えられてしまったような。
でも読み終わって考えていたらそうではないことに気がついた。もともと砂は一粒の細かな何かで作られていて、ただ形を変えただけのこと。そんな石も貝もそれぞれ元素で構成されていること。
「帰る」とは「還る」ではない。「還る」なら、どこからか生まれてまた違う形になるめぐりめぐる旅だろう。肉体は土に還り、魂は宗教という概念を作り出してしまった人間によって神の御許に戻る。「帰る」とは出てしまったものだ。帰ることを -
Posted by ブクログ
家族がばらばらになっていくこと、老いや病気や死、とか読んでいて気が沈むような話が多かったけれども、嫌いじゃない。気は沈むのだけれど、これも人生の側面だというか、しかたないというか、そういうところを淡々と見せてくれるような感じがして、なにか落ち着くような気も。
まさに、日本文学の私小説っぽいかも、と。
この作品、エッセイと思っていたけれども、ちょっとフィクションも入っているような感じがしてきて、そこがまた私小説っぽいんだけれど、どうなんだろう?(バーで知り合った派手っぽい中年女性のアパートに行った、とか、二人組に暗がりにつれてかれて殴って倒したとか、酔っぱらって植え込みだかどこかで寝ていて警官に -
Posted by ブクログ
20代はじめころまで椎名誠のエッセイはほぼすべて読んでいたのだけれど、いつしか読まなくなってしまい、今回は20年ぶりくらいに読んだかも。
「昭和軽薄体」なんて言われてた文体が、いまや、なんともしっとりと落ち着いていて、読んでいるとなにか心なぐさめられるような気が。
「岳物語」から、子供は成長して家を出て、シーナさんも年をとり。ああ、あの椎名さんの家族でもいつもいつも明るく正しくハッピーってことではなくて、椎名さんでも気弱になることもあるのだなあ、とか思って、逆にほっとするような。
中年期の鬱っぽい感じもすごくよく共感できて、なんだかしみじみと読んだ。よかった。
やっぱりひさびさに読んでも椎名さ