椎名誠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレいつの時代かもわからない、おそらく日本のどこか。
大きな戦争を経て人口が激減し、大都市は崩壊し、わずかに残った人々がギリギリの生活レベルで糊口を凌ぐ中、社会を維持するための物流を守る男たちが働く場所、それが島田倉庫。穀物から生きた娘まで様々な荷受けを扱ってきた島田倉庫だが、最近「北政府」の襲撃が厳しくなり、倉庫を守るために男たちは武器を取る・・・
椎名誠のSF三部作の一つだそうです。鴨は最初に「アド・バード」を読んで、独特の言語感覚と乾いたユーモアの中に見え隠れする骨太なハードSFの骨格の確かさに、こんなSFを書ける人だったのね!と驚いたものです。
この「武装島田倉庫」も、独特の言語感覚、乾いたユーモア、そして実は骨太なハードSFであるところは、「アド・バード」と同様です。ただ、世界観はだいぶ異なって、この作品の世界観は、語弊を恐れずにいうと「ポスト・アポカリプスものSF」としては比較的凡庸です。地形や気象の大規模な変動、異形の進化を遂げた攻撃的な生物、殺戮と強姦と身体改造が当たり前のように繰り広げられる日常・・・と、ベースだけ取り出すと”割とよくある筋立て”ではあるんですよね。
しかしながら、そのようなありがちな筋立てであっても、その上に椎名誠節が乗ると、見事に独自の風景を現出させるのがシーナワールドの底力でしょう。かなりタフな世界観ですが、連作の形で描き出されるエピソード群は、不思議と淡々としていて明確なオチもありません。他方、ところどころで各エピソード間に有機的な繋がりが見られ、そんな物語の網の中からうっすらと見えてくるのは、ギリギリ持ち堪えている人間たちの社会が緩やかに崩壊しつつあること。でも、社会が崩壊しても、個々人はタフに生き続けるだろうな、ということ。
ラストシーン、島田倉庫の職員たちは前向きに状況を打破せんと倉庫を船に変えて旅に出ます。その先に待ち受ける救いは、一切感じられないのに。このSF的想像力。
悲壮感とユーモアを同時に成立させる、シーナワールドならではの幕切れですね。「水域」も読まねば! -
Posted by ブクログ
椎名誠による新たなハードSFが上梓されたと知り、素直に嬉しくなりました。他の人の書評を読むにつけ、この作品はもはや私にしか読み解けない世界観なのではないかと、どこか独り占めしているような気分にもなります。
1990年前後に出版された『アドバード』『武装島田倉庫』『水域』を夢中で読んでいた20代の頃、それらは私のイマジネーションの源でした。あれから30年の歳月を経て本作に触れると、私自身もまた年相応の円熟を重ね、鮮やかな想像力を内側に育ててきたのだと実感します。
説明もなく唐突に「ムロト川」や「百舌」という少年の名前が現れたとき、かつてダムを爆破し北政府を押し流したあの一件が、記憶の底から浮かび上がってきました。読者に説明を与えすぎないこの手つきは、私にとってきわめて効果的でした。
椎名誠の超常小説は、私の頭の中に組み上げられる立体絵本のようなものです。そこには、未知の世界を生きる名もなき人々とロボットたちの日常が確かな手触りをもって広がっています。 -
Posted by ブクログ
(2023/8/30)
ずいぶん昔に一度読んだが、1年ほど前になって無性に読みたくなった。買った。
そうそう、「スーパーエッセイ」だ。「昭和軽薄体」だ。流行した当時は熱狂したものであるが、その饒舌、そのいかにもセーネンぽい熱、そしてその古さには、今読むと閉口を禁じ得ない。
逆に(当時は熱狂ゆえにほとんど気がついていなかったが)、制服へのアンチテーゼと、やがて愛しき制服への帰依というプロセスを、独特の観察によって描き出した意外な深みは、年を経て感じることができた。その観察、ひいては椎名氏の人となりがそのまま描き出されているという点で、やはりエッセイ、文章というものはそれぞれの生き様を映す鏡に他ならないということが大いにわかった。
すなわち、例えば昭和軽薄体を、例えば同時代に、オレが編み出して書いたとしても、面白いものにはちっともならない道理である。 -
Posted by ブクログ
あの屈強そうで逞しい著者も齢(よわい)82歳。
このエッセイを書いてた頃は80歳くらいかな。
腰が痛かったり、車椅子での移動だったり、果ては意識を失い緊急入院、結果は’パーキンソン病”の疑いらしい。
けど、回復してリハビリの成果で元に生活に戻れたのはほんと喜ばしい。
大昔、銀座で著者の写真展に行き、サインをもらった。
大柄で日に焼けていて逞しい二の腕と優しい笑顔が素敵だったな。(遠い目)
相変わらず、ビールやお酒はお好きなよう。
海外で弁護士をしている葉さんと近所に住んでよく孫を連れてくる岳さんとお子さんたちもそれぞれ立派に成長されたのね。
巻末に木村弁護士と岩切氏との鼎談が載っていてそれぞれの抱える病気自慢が面白くも身につまされた。
沢野ひとし氏はお元気なのだろうか…。
定期的に失踪シリーズでエッセイを出版されていたのね。
続編がいつまでも出版されますように。